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トール師になる
PHASE-1106【魅入っちゃ駄目よ】
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「でだ。本当に来るのか?」
「はい!」
城から一緒に屋敷へと戻ってきた一番弟子の返事は一人前。
「弟弟子が心配ですから」
継いでそう言う言葉には強さがあった。
「それにハウルーシがどうなっているか心配ですから」
さらに継ぐ内容は、騒乱の中心部となり、混迷へと進んで行くであろう集落にいる友人が、今どういった状況下にあるのか気が気でないようだ。
「本当にいいんじゃな。サルタナ」
「はい」
「ここからは死地となるかもしれませんよ」
「心得てます」
ギムロンとコクリコからも覚悟を問われれば、それに対して強い語気で返す。
「じゃったらその木剣だと頼りないの」
「これでも戦えますよ」
戦闘となればサルタナを戦わせるって事はしないけどな。
「バカタレ! 鍛錬と実戦ではちゃんと得物は選べ。それが戦いに出る者の基本じゃ!」
と、大目玉。
「でも、僕はこれ以外は……」
「ほれ。とっておきを貸しちゃる」
革帯に差す革製の鞘に収まった剣を手にするギムロン。
久しぶりだな。
ギムロンの装備といえば、バトルアックスと手斧。
そして――、
「ドワーフご自慢のミスリルじゃ!」
俺に貸した時と同じような言い様だな。
よっぽど自慢したい一振りなんだろうな。
ミスリルと聞かされれば緊張して後退るサルタナ。
下がるサルタナに対してギムロンが一歩前へと出て、ズイッと鞘に収まる剣を差し出す。
迫力に負けたのか、サルタナは恐る恐る――そして恭しく両手でソレを持つ。
――柄はグルグルと巻いているだけの革巻きからなるもので、以前も思った感想だが、外見は無骨そのもの。
だが、その抜かれる剣身は無骨さからかけ離れ、洗練された青白い輝き。
正に神秘を具現化させた業物なのだが……、最近はその神秘な輝きが大安売りされてるかのように思えるからな……。
結構な頻度で目にするようになったし、コクリコが振るう得物に至ってはフライパンだしな……。
でもって俺が装備するのは火龍の鱗からなる残火と防具。ゴロ丸というミスリルゴーレムも召喚できるようになった。
他にもオリハルコンや緋緋色金から作られた業物も目にした。
目が肥えてきた事もあってか、ファーストコンタクトの時のような感動はない。
こういうのもパワーインフレにカテゴライズされるのかな?
「うわ~」
「どうよ! エルフのミスリル加工以上じゃろ」
「はい! 素晴らしいと思います。普段ミスリルを目にする機会はないですが――これは凄いモノだと剣から伝わってきます!」
「さもあろう、さもあろう」
呵々と笑って上機嫌なギムロン。
普段は使用しないミスリル剣。もしかして自慢したいが為に革帯に差してんのか? と思っちゃうよね。
若干、冷めてしまった感想を抱く俺とは違い、鞘から抜き、露わになった剣身を眺めるサルタナは大いに感動していた。
でもな――、ずっと見ているとベルに魅入るな! と怒られて蹴られちゃうぞ。
だが、俺の予想とは反して――、
「魅入ってはいけない」
って俺の時とは違い、優しく言っていた……。
俺だったら間違いなく外側広筋を蹴られているだろうに……。
なぜだろう。愛らしい子供だからかな?
でも年齢だけなら俺達より超年上なんですけどね……。
――……納得いかねぇ……。
ベルの警告を素直に受けて、鞘に戻して帯に差すサルタナ。
そういった素直さが俺にはないって事なんでしょうかね? その差が蹴りとなって見舞われるのかな?
いいですけど。
「よっぽどの事がない限りその剣は抜かなくていいからな」
「分かりました」
サルタナに抜かせないように俺が師として努力しないとな。
まだ戦いの場に出せるだけの実力じゃないし。
本当は連れて行きたくないけども――、
「どうしました師匠?」
「いや」
目力だけは一丁前だからな。
「師匠、道案内は――」
「お弟子殿、ここは私が」
と、ここでルーシャンナルさん。
俺と目を合わせると笑みを湛える。
俺の考えをくみ取ってくれたような笑みだった。
まだまだサルタナには無理はさせられないからと、先頭での道案内役を自ら買って出てくれる。
「では参りましょう。樹上移動よりも地を駆けようと思います」
ルーシャンナルさんの提案に頷いて返す。
見張りの目は地面よりも樹上に向くと思われるからだろう。
基本この国のエルフは樹上移動だからね。そちらを警戒するのは当然のこと。
「ですが油断はせずに行きましょう」
「分かりました」
ルーシャンナルさんの俺達への配慮は一級。
サルタナの事も考えてくれているからな。
ククリス村の方々の治療をしてくれなかったことに関してルーシャンナルさんには幻滅した事もあったけど、やはり優先すべき事がその時あったのかもな。
ここまで配慮が出来る方なんだから。
「はい!」
城から一緒に屋敷へと戻ってきた一番弟子の返事は一人前。
「弟弟子が心配ですから」
継いでそう言う言葉には強さがあった。
「それにハウルーシがどうなっているか心配ですから」
さらに継ぐ内容は、騒乱の中心部となり、混迷へと進んで行くであろう集落にいる友人が、今どういった状況下にあるのか気が気でないようだ。
「本当にいいんじゃな。サルタナ」
「はい」
「ここからは死地となるかもしれませんよ」
「心得てます」
ギムロンとコクリコからも覚悟を問われれば、それに対して強い語気で返す。
「じゃったらその木剣だと頼りないの」
「これでも戦えますよ」
戦闘となればサルタナを戦わせるって事はしないけどな。
「バカタレ! 鍛錬と実戦ではちゃんと得物は選べ。それが戦いに出る者の基本じゃ!」
と、大目玉。
「でも、僕はこれ以外は……」
「ほれ。とっておきを貸しちゃる」
革帯に差す革製の鞘に収まった剣を手にするギムロン。
久しぶりだな。
ギムロンの装備といえば、バトルアックスと手斧。
そして――、
「ドワーフご自慢のミスリルじゃ!」
俺に貸した時と同じような言い様だな。
よっぽど自慢したい一振りなんだろうな。
ミスリルと聞かされれば緊張して後退るサルタナ。
下がるサルタナに対してギムロンが一歩前へと出て、ズイッと鞘に収まる剣を差し出す。
迫力に負けたのか、サルタナは恐る恐る――そして恭しく両手でソレを持つ。
――柄はグルグルと巻いているだけの革巻きからなるもので、以前も思った感想だが、外見は無骨そのもの。
だが、その抜かれる剣身は無骨さからかけ離れ、洗練された青白い輝き。
正に神秘を具現化させた業物なのだが……、最近はその神秘な輝きが大安売りされてるかのように思えるからな……。
結構な頻度で目にするようになったし、コクリコが振るう得物に至ってはフライパンだしな……。
でもって俺が装備するのは火龍の鱗からなる残火と防具。ゴロ丸というミスリルゴーレムも召喚できるようになった。
他にもオリハルコンや緋緋色金から作られた業物も目にした。
目が肥えてきた事もあってか、ファーストコンタクトの時のような感動はない。
こういうのもパワーインフレにカテゴライズされるのかな?
「うわ~」
「どうよ! エルフのミスリル加工以上じゃろ」
「はい! 素晴らしいと思います。普段ミスリルを目にする機会はないですが――これは凄いモノだと剣から伝わってきます!」
「さもあろう、さもあろう」
呵々と笑って上機嫌なギムロン。
普段は使用しないミスリル剣。もしかして自慢したいが為に革帯に差してんのか? と思っちゃうよね。
若干、冷めてしまった感想を抱く俺とは違い、鞘から抜き、露わになった剣身を眺めるサルタナは大いに感動していた。
でもな――、ずっと見ているとベルに魅入るな! と怒られて蹴られちゃうぞ。
だが、俺の予想とは反して――、
「魅入ってはいけない」
って俺の時とは違い、優しく言っていた……。
俺だったら間違いなく外側広筋を蹴られているだろうに……。
なぜだろう。愛らしい子供だからかな?
でも年齢だけなら俺達より超年上なんですけどね……。
――……納得いかねぇ……。
ベルの警告を素直に受けて、鞘に戻して帯に差すサルタナ。
そういった素直さが俺にはないって事なんでしょうかね? その差が蹴りとなって見舞われるのかな?
いいですけど。
「よっぽどの事がない限りその剣は抜かなくていいからな」
「分かりました」
サルタナに抜かせないように俺が師として努力しないとな。
まだ戦いの場に出せるだけの実力じゃないし。
本当は連れて行きたくないけども――、
「どうしました師匠?」
「いや」
目力だけは一丁前だからな。
「師匠、道案内は――」
「お弟子殿、ここは私が」
と、ここでルーシャンナルさん。
俺と目を合わせると笑みを湛える。
俺の考えをくみ取ってくれたような笑みだった。
まだまだサルタナには無理はさせられないからと、先頭での道案内役を自ら買って出てくれる。
「では参りましょう。樹上移動よりも地を駆けようと思います」
ルーシャンナルさんの提案に頷いて返す。
見張りの目は地面よりも樹上に向くと思われるからだろう。
基本この国のエルフは樹上移動だからね。そちらを警戒するのは当然のこと。
「ですが油断はせずに行きましょう」
「分かりました」
ルーシャンナルさんの俺達への配慮は一級。
サルタナの事も考えてくれているからな。
ククリス村の方々の治療をしてくれなかったことに関してルーシャンナルさんには幻滅した事もあったけど、やはり優先すべき事がその時あったのかもな。
ここまで配慮が出来る方なんだから。
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