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矮人と巨人
PHASE-1307【ランタンを囲んで】
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「皆、大活躍……。次はオイラも戦闘で活躍するからね!」
車内で休まずに、ランタンの小さな灯りを囲む側に参加するミルモンが、俺の左肩から立ち上がって意気込みを語る。
どうしても戦闘という範疇で活躍したいようだ。
ゲームの中だと相手の小悪魔と戦うって設定だからな。そういった思いに駆り立てられるのも仕方がないんだろう。
明日になればまた見通す力で移動先を指し示してくれるという大活躍をしてくれるから、それだけでも有り難いんだけどな。
「しかし妙でしたな」
とぷんと音を鳴らしながら酒瓶から直飲みのパロンズ氏。
発言と共に酒気が一帯に広がる。
ギムロンが目の前にいるのかと錯覚してしまいそうな強い酒気。
「なにが妙なのでしょう?」
「アジャイルセンチピードです」
本来なら森のもっと奥側に生息しているという。
王都付近の森でもそんな感じだったな。
「森の外側に移動しているということは、自分たちよりも強い存在が縄張りに居座ってしまったと考えるべきですかね?」
「そうなるでしょうな」
――となると、
「カクエン?」
「あり得ません」
きっぱりと言い切るパロンズ氏。
平均的なオークとゴブリンの中間くらいの力だって話だからな。
巨大ムカデがそいつらを恐れるってことは可能性としては低い。
そもそもこの森を知るドワーフが妙って言っている時点で、森の奥地を縄張りにしているのはムカデの方なんだろうし。
「考えられるのはミルモンが見たモコモコの存在か、以前に見た巨人が原因なのか――」
はたまたどちらもか。
「いずれにせよ。先に進めば分かることですな」
「ですね」
「どうされました会頭? 自分の顔になにか?」
「いえ、自信に溢れた発言でしたから」
「ああ、いや……。その……」
ちょっと茶化した言い方をすれば畏まる。
そこが駄目なんですよね~。
全長が二十メートルくらいある空飛ぶ巨大ムカデが四体出現しても、落ち着いてスリングが使用できるくらいには胆力もあるんだから、そういった胆力を普段からの自信へと変えることに成功すれば、本筋である翼幻王の本拠地へと辿り着くためってのとは別な案件だけども、この冒険でのパロンズ氏の目的は達成したと言ってもいいだろうからな。
「よし!」
ここでグビリと酒を呷れば、
「見ていてください会頭! 皆さんを立派に支えてみせますから! マッドゴーレム以外にも大地系の魔法は中位まではいくつか習得していますので、物理と魔法による二つを使用した後方支援は任せていただきたい。そして己の自信へと繋げてみせます!」
俺の思考でも読み取られたかのような意気込みだった。
「頼らせてもらいますからね」
「お任せを!」
「だからそういうのはこの冒険が始まる前に言ってください。あと五月蠅いです。丁度、四人いるのですから見張りは二人を残してさっさと寝て、明日に備えてもらいたいですね」
JLTVのドアを少しだけ開いたコクリコが、半眼に似つかわしい気だるさを纏いながら発してくる。
で、言うだけ言ってバタンと閉じた。
でも言っている事は正しい。
だからだろう、マッドゴーレム召喚時の指摘の時と同様に、パロンズ氏は腰掛けていた倒木からつと立って、俺達とドアが閉じられたJLTVへと向かって、ドリンキングバードの如く頭を下げてくる。
――。
「ふぁぁ~……」
「大丈夫かミルモン?」
「うん。眠いけど……」
クシクシと小さな手で目を擦る仕草は愛らしい。疲れもあるのか先端が矢印のような形状からなる尻尾が力なく垂れている。
「もう少しで交代だからそれまで頑張れ」
「うん」
夜の見張りは俺とミルモン。コルレオンとパロンズ氏の二組に分かれて交代しながら行う事になった。
――――。
「ふぅぅん……」
両手を空へと向けて背伸びのパロンズ氏。
「眠れましたか?」
「いや~なかなか……。会頭とミルモン殿は交代の間はよく眠れていたようで」
冒険の経験が乏しいパロンズ氏は、脅威が存在する中で寝るというのは難しかったようだ。
そういった緊張もあるんだろうけど、俺の勝手な予想だが、戦闘にて活躍できたことで興奮して眠れなかったというのも理由として有りそうな気がする。
どっちにしても経験が乏しいってのが理由の根幹にはなるけども。
「自分も眠りは浅かったです」
コルレオンは浅いとは言ってくるけど、パロンズ氏と違ってクエストなんかはこなしているだけあって、最低限の睡眠はとれているようで、疲れが残っているというようには見えなかった。
最終の見張り役であった俺とミルモンは二人して眠気覚ましにと、俺が使用できる水系の初歩障壁魔法であるウォーターカーテンを顕現させて、そこに手を突っ込んで水を掬い、顔を洗うという本来の使用法とは違った使い方をする。
顔が洗えるのは便利だ。
「なんとも面白い使用ですね」
「戦い以外にも使用できるのっていいですよね」
と、パロンズ氏に返し、起きた二人の前に新しいウォーターカーテンを顕現させる。
お礼を言ってくれば二人してそれで顔を洗っていた。
同時に四人分顕現させれば格好いいんだろうけど、二つ目を顕現させれば俺とミルモンが使用していたのは消滅。
この辺のネイコスをコントロールする力は乏しいな。
タチアナはこれ以上にややこしいプロテクションを同時に三つ出せるんだしな。
シャルナに至ってはそれ以上だし。
剣術にピリアとネイコス。両方のマナのコントロールや向上も目指さないといけないのは大変の一言につきるな。
「見張りご苦労様です」
そう言ってJLTVから降車すれば、倒木の側に置いてあるパロンズ氏の背嚢を許可もなく開けると、こちらへとポーションを三本投げ渡してくる。
ギルドハウスに併設されたショップでコクリコが身銭を切ってくれたポーションだ。
有り難くいただくように――と、付け加えてくるが、普段はしわいコクリコからの奢りってのは中々に経験が出来ないので、発言どおり有り難く四人でいただく。
ミルモンはゲノーモスから貰ったカップに俺の分を少し注いでから飲ませてやる。
初のポーションの味の感想は――、
「薄いお茶みたいな味だね」
俺の初ポーションと同じような感想だった。
――。
「うん。やっぱり便利だなポーション」
干し肉や缶詰の簡単な朝食を用意している間に、ノーマルポーションの効果が現れる。
飲んでから五分から十分くらいかけて出てくるので即効性がないのがノーマルの欠点でもあるけど、戦闘時でない限りその欠点も問題ない。
なにより治癒以外にも疲労を取り除いてくれるという効果もあるのがこの世界のポーション。
エナジードリンクも裸足で逃げ出す疲労と眠気覚ましはファンタジー世界のなせるもの。
是非ともポーションを元の世界で販売したいね。
車内で休まずに、ランタンの小さな灯りを囲む側に参加するミルモンが、俺の左肩から立ち上がって意気込みを語る。
どうしても戦闘という範疇で活躍したいようだ。
ゲームの中だと相手の小悪魔と戦うって設定だからな。そういった思いに駆り立てられるのも仕方がないんだろう。
明日になればまた見通す力で移動先を指し示してくれるという大活躍をしてくれるから、それだけでも有り難いんだけどな。
「しかし妙でしたな」
とぷんと音を鳴らしながら酒瓶から直飲みのパロンズ氏。
発言と共に酒気が一帯に広がる。
ギムロンが目の前にいるのかと錯覚してしまいそうな強い酒気。
「なにが妙なのでしょう?」
「アジャイルセンチピードです」
本来なら森のもっと奥側に生息しているという。
王都付近の森でもそんな感じだったな。
「森の外側に移動しているということは、自分たちよりも強い存在が縄張りに居座ってしまったと考えるべきですかね?」
「そうなるでしょうな」
――となると、
「カクエン?」
「あり得ません」
きっぱりと言い切るパロンズ氏。
平均的なオークとゴブリンの中間くらいの力だって話だからな。
巨大ムカデがそいつらを恐れるってことは可能性としては低い。
そもそもこの森を知るドワーフが妙って言っている時点で、森の奥地を縄張りにしているのはムカデの方なんだろうし。
「考えられるのはミルモンが見たモコモコの存在か、以前に見た巨人が原因なのか――」
はたまたどちらもか。
「いずれにせよ。先に進めば分かることですな」
「ですね」
「どうされました会頭? 自分の顔になにか?」
「いえ、自信に溢れた発言でしたから」
「ああ、いや……。その……」
ちょっと茶化した言い方をすれば畏まる。
そこが駄目なんですよね~。
全長が二十メートルくらいある空飛ぶ巨大ムカデが四体出現しても、落ち着いてスリングが使用できるくらいには胆力もあるんだから、そういった胆力を普段からの自信へと変えることに成功すれば、本筋である翼幻王の本拠地へと辿り着くためってのとは別な案件だけども、この冒険でのパロンズ氏の目的は達成したと言ってもいいだろうからな。
「よし!」
ここでグビリと酒を呷れば、
「見ていてください会頭! 皆さんを立派に支えてみせますから! マッドゴーレム以外にも大地系の魔法は中位まではいくつか習得していますので、物理と魔法による二つを使用した後方支援は任せていただきたい。そして己の自信へと繋げてみせます!」
俺の思考でも読み取られたかのような意気込みだった。
「頼らせてもらいますからね」
「お任せを!」
「だからそういうのはこの冒険が始まる前に言ってください。あと五月蠅いです。丁度、四人いるのですから見張りは二人を残してさっさと寝て、明日に備えてもらいたいですね」
JLTVのドアを少しだけ開いたコクリコが、半眼に似つかわしい気だるさを纏いながら発してくる。
で、言うだけ言ってバタンと閉じた。
でも言っている事は正しい。
だからだろう、マッドゴーレム召喚時の指摘の時と同様に、パロンズ氏は腰掛けていた倒木からつと立って、俺達とドアが閉じられたJLTVへと向かって、ドリンキングバードの如く頭を下げてくる。
――。
「ふぁぁ~……」
「大丈夫かミルモン?」
「うん。眠いけど……」
クシクシと小さな手で目を擦る仕草は愛らしい。疲れもあるのか先端が矢印のような形状からなる尻尾が力なく垂れている。
「もう少しで交代だからそれまで頑張れ」
「うん」
夜の見張りは俺とミルモン。コルレオンとパロンズ氏の二組に分かれて交代しながら行う事になった。
――――。
「ふぅぅん……」
両手を空へと向けて背伸びのパロンズ氏。
「眠れましたか?」
「いや~なかなか……。会頭とミルモン殿は交代の間はよく眠れていたようで」
冒険の経験が乏しいパロンズ氏は、脅威が存在する中で寝るというのは難しかったようだ。
そういった緊張もあるんだろうけど、俺の勝手な予想だが、戦闘にて活躍できたことで興奮して眠れなかったというのも理由として有りそうな気がする。
どっちにしても経験が乏しいってのが理由の根幹にはなるけども。
「自分も眠りは浅かったです」
コルレオンは浅いとは言ってくるけど、パロンズ氏と違ってクエストなんかはこなしているだけあって、最低限の睡眠はとれているようで、疲れが残っているというようには見えなかった。
最終の見張り役であった俺とミルモンは二人して眠気覚ましにと、俺が使用できる水系の初歩障壁魔法であるウォーターカーテンを顕現させて、そこに手を突っ込んで水を掬い、顔を洗うという本来の使用法とは違った使い方をする。
顔が洗えるのは便利だ。
「なんとも面白い使用ですね」
「戦い以外にも使用できるのっていいですよね」
と、パロンズ氏に返し、起きた二人の前に新しいウォーターカーテンを顕現させる。
お礼を言ってくれば二人してそれで顔を洗っていた。
同時に四人分顕現させれば格好いいんだろうけど、二つ目を顕現させれば俺とミルモンが使用していたのは消滅。
この辺のネイコスをコントロールする力は乏しいな。
タチアナはこれ以上にややこしいプロテクションを同時に三つ出せるんだしな。
シャルナに至ってはそれ以上だし。
剣術にピリアとネイコス。両方のマナのコントロールや向上も目指さないといけないのは大変の一言につきるな。
「見張りご苦労様です」
そう言ってJLTVから降車すれば、倒木の側に置いてあるパロンズ氏の背嚢を許可もなく開けると、こちらへとポーションを三本投げ渡してくる。
ギルドハウスに併設されたショップでコクリコが身銭を切ってくれたポーションだ。
有り難くいただくように――と、付け加えてくるが、普段はしわいコクリコからの奢りってのは中々に経験が出来ないので、発言どおり有り難く四人でいただく。
ミルモンはゲノーモスから貰ったカップに俺の分を少し注いでから飲ませてやる。
初のポーションの味の感想は――、
「薄いお茶みたいな味だね」
俺の初ポーションと同じような感想だった。
――。
「うん。やっぱり便利だなポーション」
干し肉や缶詰の簡単な朝食を用意している間に、ノーマルポーションの効果が現れる。
飲んでから五分から十分くらいかけて出てくるので即効性がないのがノーマルの欠点でもあるけど、戦闘時でない限りその欠点も問題ない。
なにより治癒以外にも疲労を取り除いてくれるという効果もあるのがこの世界のポーション。
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