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矮人と巨人
PHASE-1311【弱し】
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「お、お前!」
ようやく一人がはたとなり、こちらに怒号を飛ばしつつ幹を蹴って俺へと接近。
後方からの矢による掩護はない。
無駄な接近だよね。
「対してこちらは」
「シッ!」
キレのいい呼気と共に俺の後方からシャルナによる一矢。
躍りかかってくるカクエンの鎧を貫き、胸に突き刺されば、俺の前で力なく手にした利器を落とし、自らも地面へと落下する。
「あの女を抑えろ。ついでにそのまま犯せ!」
発言が一々こちらの癇に障る連中だよ。
怒りは俺に向けるべきなんだろうが、それ以上に性欲が勝っているようで、同じ目線の高さにいるシャルナへと三人が飛びかかる。
「馬鹿が一塊になって、こっちに来るのは有り難いよ」
言って矢を三本同時に番え、弓を横へと寝かせてから、
「アッパーテンペスト」
と、まずは一塊になっている連中の足元から竜巻を発生させ、跳躍している連中のバランスを奪いつつ宙を舞わせれば、
「はい終わり!」
同時に三本の矢を放つ。
――エルフの弓術は魔法と見紛う。
一本が一直線。二本が弧を描きながら飛んでいく。
まるで矢による半包囲のようだった。
そして三本は同時に三人のカクエンへと突き刺さる。
スリットからなる面頬のわずかな隙間から矢が入り、頭部を射抜くという神業。
「すげえ」
単純な感想だけしか出なかったが、射手はこっちにガッツポーズ。
着飾った称賛よりも素直な感想が嬉しかったようだ。
「これで初手のコクリコのも入れて六だな」
大人数であり装備はいいが、その装備に不釣り合いな弱さだ。
ダークエルフの集落で戦闘したマッドマンの方がよっぽどやっかいだった。
一般レベルのオークとゴブリンの中間ってのがよく分かる。
数の暴力ってのは脅威ではあるが、コイツ等からはそれが感じられない。
多くても連携が取れていないなら、攻め用はいくらでもあるからな。
「女たちを奪え!」
仲間が容易く討ち取られようともお構いなし。
――さっきの考えはちょっと訂正。
連携が取れてなくても数の暴力は脅威ではあるな。
弱くても数が多ければ、それに比例して気が大きくなる。
戦意が高いとなれば、弱い相手でも面倒になることもある。
引き際も知らないで無駄に攻めてくるから、こっちは疲労を蓄積することにもなるし。
「蓄積する前に倒すけどね! っと!」
女性陣ばかりに目がいっているから隙だらけなんだよな。
側撃によるマラ・ケニタルにて、横一文字を書いて胴を斬る。
鎧を装備していようが、断ち切る切れ味は残火といい勝負。
「邪魔をするな男!」
「するさ。女だろうが男だろうが守るのが前衛の仕事だからな」
苛立ちのまま数人が俺へとターゲットを変更すると、遅すぎるロングソードの振り上げ。
こっちの間合いに入っての振り上げは、
「胴を斬ってくださいと言っているようなもんだ」
「ギャ!?」
今度は残火で胴斬り。
「お前!」
胴斬りで一人を倒したところで、側面から腰の入っていない振り下ろしにて上方から躍りかかってくる相手には、マラ・ケニタルによる斬り上げで迎撃。
鍛練もなっていない相手の振り下ろしよりも俺の斬り上げの方が速く、下半身から刃を入れて逆袈裟で仕留めた。
「これで俺個人で四人」
「躊躇ないですね」
「お前が言わないように」
初手できっつい電撃を顔面に二度ぶち込むような少女には言われたくない。
そんなコクリコはアークウィップをワンドから発動し、戦いというよりは、女性に対して興奮することでの雄叫びを上げるカクエン達を薙ぎ払っていく。
「うん! 弱いですね!」
「ですが数は多いです。ストーンブラスト!」
パロンズ氏からの掩護。
面制圧とばかりに地面から無数の飛礫を放つ魔法が見舞われれば、鉄製の鎧はガンガンと激しい音を立てる。
防具では防ぎきれなかった衝撃により数人が片膝をつき、盾で防ぐことに成功した者も足を強制的に止められる。
デミタスの同じ魔法と比べれば威力は低いけども、相手を怯ませるには十分。
「これは時間がかかりそうだ」
継ぐパロンズ氏は相手の動きを止めたところで、ぐるりと現在の状況を確認する。
俺もその視線を追う。
「――包囲しようって考える頭は持ってんだな」
「完全に包囲され遠距離から攻撃を受ければ、防げたとしても防戦一方になるかもしれません」
双剣を逆手で構えるコルレオンが俺の言葉に続いていくれる。
タチアナの方へと近づいてきそうな素振りをするカクエン達に対して双剣を向けながら、犬のような唸りをあげて歯をむき出しにして樹上の相手を威嚇。
小柄なコボルトの唸りに背を反らしているのが見て取れた。
頼りになる威嚇である。
「どうします会頭」
「簡単だよコルレオン。包囲される前に穴を作ればいいだけだ」
後衛をコルレオンに任せて、俺は跳躍。
「ぬるいですね。穴を作るより殲滅すればいいだけです」
「過激だな」
跳躍する俺の横に直ぐさま並ぶコクリコ。
「数は残り三十ほど。やつらの練度は下の下。ならば殲滅するのも難しくないですからね」
「――だな」
先頭で包囲しようと動く、表面上だけの仲間に当たるかもしれないからか、後方に陣取る連中からの掩護の矢は少ない。
しかも仲間の隙間を縫って放つという技量は無いようなので、仲間のいない射線からしか矢は飛んでこない。
こちらはその部分だけを警戒していればいいから回避も容易。
それに矢を放てば、どこから飛んできたかを即座に把握したシャルナが、相手とは天壌の差である射術によって、次々と射手に射当てていくから、ただでさえ掩護回数の少ない矢による射撃は、瞬く間に滞る。
ようやく一人がはたとなり、こちらに怒号を飛ばしつつ幹を蹴って俺へと接近。
後方からの矢による掩護はない。
無駄な接近だよね。
「対してこちらは」
「シッ!」
キレのいい呼気と共に俺の後方からシャルナによる一矢。
躍りかかってくるカクエンの鎧を貫き、胸に突き刺されば、俺の前で力なく手にした利器を落とし、自らも地面へと落下する。
「あの女を抑えろ。ついでにそのまま犯せ!」
発言が一々こちらの癇に障る連中だよ。
怒りは俺に向けるべきなんだろうが、それ以上に性欲が勝っているようで、同じ目線の高さにいるシャルナへと三人が飛びかかる。
「馬鹿が一塊になって、こっちに来るのは有り難いよ」
言って矢を三本同時に番え、弓を横へと寝かせてから、
「アッパーテンペスト」
と、まずは一塊になっている連中の足元から竜巻を発生させ、跳躍している連中のバランスを奪いつつ宙を舞わせれば、
「はい終わり!」
同時に三本の矢を放つ。
――エルフの弓術は魔法と見紛う。
一本が一直線。二本が弧を描きながら飛んでいく。
まるで矢による半包囲のようだった。
そして三本は同時に三人のカクエンへと突き刺さる。
スリットからなる面頬のわずかな隙間から矢が入り、頭部を射抜くという神業。
「すげえ」
単純な感想だけしか出なかったが、射手はこっちにガッツポーズ。
着飾った称賛よりも素直な感想が嬉しかったようだ。
「これで初手のコクリコのも入れて六だな」
大人数であり装備はいいが、その装備に不釣り合いな弱さだ。
ダークエルフの集落で戦闘したマッドマンの方がよっぽどやっかいだった。
一般レベルのオークとゴブリンの中間ってのがよく分かる。
数の暴力ってのは脅威ではあるが、コイツ等からはそれが感じられない。
多くても連携が取れていないなら、攻め用はいくらでもあるからな。
「女たちを奪え!」
仲間が容易く討ち取られようともお構いなし。
――さっきの考えはちょっと訂正。
連携が取れてなくても数の暴力は脅威ではあるな。
弱くても数が多ければ、それに比例して気が大きくなる。
戦意が高いとなれば、弱い相手でも面倒になることもある。
引き際も知らないで無駄に攻めてくるから、こっちは疲労を蓄積することにもなるし。
「蓄積する前に倒すけどね! っと!」
女性陣ばかりに目がいっているから隙だらけなんだよな。
側撃によるマラ・ケニタルにて、横一文字を書いて胴を斬る。
鎧を装備していようが、断ち切る切れ味は残火といい勝負。
「邪魔をするな男!」
「するさ。女だろうが男だろうが守るのが前衛の仕事だからな」
苛立ちのまま数人が俺へとターゲットを変更すると、遅すぎるロングソードの振り上げ。
こっちの間合いに入っての振り上げは、
「胴を斬ってくださいと言っているようなもんだ」
「ギャ!?」
今度は残火で胴斬り。
「お前!」
胴斬りで一人を倒したところで、側面から腰の入っていない振り下ろしにて上方から躍りかかってくる相手には、マラ・ケニタルによる斬り上げで迎撃。
鍛練もなっていない相手の振り下ろしよりも俺の斬り上げの方が速く、下半身から刃を入れて逆袈裟で仕留めた。
「これで俺個人で四人」
「躊躇ないですね」
「お前が言わないように」
初手できっつい電撃を顔面に二度ぶち込むような少女には言われたくない。
そんなコクリコはアークウィップをワンドから発動し、戦いというよりは、女性に対して興奮することでの雄叫びを上げるカクエン達を薙ぎ払っていく。
「うん! 弱いですね!」
「ですが数は多いです。ストーンブラスト!」
パロンズ氏からの掩護。
面制圧とばかりに地面から無数の飛礫を放つ魔法が見舞われれば、鉄製の鎧はガンガンと激しい音を立てる。
防具では防ぎきれなかった衝撃により数人が片膝をつき、盾で防ぐことに成功した者も足を強制的に止められる。
デミタスの同じ魔法と比べれば威力は低いけども、相手を怯ませるには十分。
「これは時間がかかりそうだ」
継ぐパロンズ氏は相手の動きを止めたところで、ぐるりと現在の状況を確認する。
俺もその視線を追う。
「――包囲しようって考える頭は持ってんだな」
「完全に包囲され遠距離から攻撃を受ければ、防げたとしても防戦一方になるかもしれません」
双剣を逆手で構えるコルレオンが俺の言葉に続いていくれる。
タチアナの方へと近づいてきそうな素振りをするカクエン達に対して双剣を向けながら、犬のような唸りをあげて歯をむき出しにして樹上の相手を威嚇。
小柄なコボルトの唸りに背を反らしているのが見て取れた。
頼りになる威嚇である。
「どうします会頭」
「簡単だよコルレオン。包囲される前に穴を作ればいいだけだ」
後衛をコルレオンに任せて、俺は跳躍。
「ぬるいですね。穴を作るより殲滅すればいいだけです」
「過激だな」
跳躍する俺の横に直ぐさま並ぶコクリコ。
「数は残り三十ほど。やつらの練度は下の下。ならば殲滅するのも難しくないですからね」
「――だな」
先頭で包囲しようと動く、表面上だけの仲間に当たるかもしれないからか、後方に陣取る連中からの掩護の矢は少ない。
しかも仲間の隙間を縫って放つという技量は無いようなので、仲間のいない射線からしか矢は飛んでこない。
こちらはその部分だけを警戒していればいいから回避も容易。
それに矢を放てば、どこから飛んできたかを即座に把握したシャルナが、相手とは天壌の差である射術によって、次々と射手に射当てていくから、ただでさえ掩護回数の少ない矢による射撃は、瞬く間に滞る。
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