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矮人と巨人
PHASE-1316【軍監】
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「だが我々とて中々にやるところを見せないとな」
「我々って……」
ヘタレて動かないどころか、幹に体半分を隠して状況を窺っているだけの連中なんだけども……。
「少しは戦おうって気概はないのかね……」
「その者達も、こちらが励めばやる気を見せてくれることだろう」
「やる気って、コイツ等の場合は下半身を使うだけのヤル気しかないよね」
「そういった種族だ。なのでそう思って付き合ってやらないとな」
「寛容な事で」
「実力差があるからと、話に付き合ってくれる勇者も寛容な事だな」
「じゃあ――仕掛ける!」
「来るがいい!」
アクセルを発動して一気に距離を詰める。
「受けて立つ!」
こちらがヤヤラッタの側面へと回り込んだところで、こちらの動きを読んでのハルバート槍部分で刺突。
俺の顔面ルートに穂先とソレに続く斧刃。
上半身を傾けながら回避し、足を止めることなく俺が手にする刀の間合いまで入り込もうとするけど、それはさせないと、強靱な尻尾による薙ぎで間合いに入り込ませないように対抗してくる。
――胴斬りを狙ってもう一歩入りたかったけども――、
「ぬぅ!?」
予定を変更して右前腕に残火で小手を打ち込む。
断ち切る事は出来なかったが、ガントレットに刃が入りダメージは与えられた。
マラ・ケニタルにて追撃をしたかったが、中断して一撃だけに留めておく。
双方にバックステップ。
余裕が出来れば直ぐさまヒールを唱えるヤヤラッタだけども。
「ぬぅぅ……。ただの刀ではないようだな……」
上位魔法のヒールであるのに、回復に時間がかかっていることに驚きを見せるが、存外、冷静な声音でもある。
で、そんな冷静な声音から、
「救われたぞ小悪魔」
「え? オイラ?」
「我が尾による攻撃の部分にお前がいてくれたからな。勇者がこちらへと深くは入り込めなかったようだ」
「あ……」
「気にしなくていいぞミルモン」
「でも、オイラが左肩にいるから……」
自分のせいで主が攻撃の機会を失った事に落ち込む。
「だから気にしなくていいって。実力差があるからな。いつでも仕留められる」
フォローしてあげるけど気が滅入っているご様子。
「オイラ、離れてるよ……」
「タチアナ――頼む」
最後衛のタチアナにミルモンのことを任せる。
「いつでも仕留められるとは言ってくれる。流石に癇に障るぞ」
「癇に障るのはこっちだよ。可愛い使い魔をヘコませやがって」
「こちらは感謝したつもりなのだがな」
「よかったよお宅。この場に最強さんがいなくて。可愛いのを悲しませると、即座に圧倒的な力を振るうからな。今ごろ浄化されていたぞ」
「それは怖いことだし残念でもある。その最強なる者と手合わせしてみたかった」
「やめとけ。俺に押されてる時点で太刀打ち出来ないよ」
「それほどか」
「俺なんて大腿四頭筋に蹴りを一発入れられるだけで、地面を転がる情けない姿になるからな……」
「――言い様からして事実のようだな」
「おうよ。で、ヒールの効果は出てきたかな?」
「おかげさまでな」
「まあ、回復してもまたダメージを与えてやるけども」
「ここまで上から言われ続ければ、逆に清々しいものだ」
力量差はこちらに分があるとしても、流石はグレーターを冠する悪魔なだけあって、佇まいには悠然さがある。
初期の頃に出会っていたなら、間違いなく俺一人だと手も足も出ない相手だったんだろうけど、強者達との戦いを経た今では脅威にはならない。
「よほどの死地をくぐり抜けたのだろうな」
継いで発してきたので、
「お宅よりもおっかない魔王軍の連中と渡り合ってきたからな」
「そうか。誰が最も脅威だった?」
「一番の脅威だったのは――やっぱりデミタスだな」
「なんだと……? デミタスだと……」
「知っているようだな。まあ名のある強者だからな」
「強者? いや、まあ強者ではあるか。ちなみに野狐のデミタスのことだな?」
「今は仙狐になっているけどな」
「仙狐だと!? フーヤオ族最後の一人は、この一年ほどでそこまで成長しているのか!」
えらく驚くな。
――ああ、そうか。
「王都と窟に攻め込んできたのは蹂躙王の軍勢だもんな。そら驚くよな。驚くよりも戦慄を覚えた方がいいと思うけど」
このグレーターデーモン・ヤヤラッタも蹂躙王の配下ってことになるんだろうからな。デミタスにとっては憎むべき存在にカテゴライズされる。
強者となって自分の前に現れれば、命を奪われる事もあり得るわけだから、そら驚くよな。
――バチクソ驚いてもらうために、俺との戦闘と、どのように姿が変わり、どれだけの強者となっているのかを詳しく教えてやった。
デミタスから話を聞かされているから、蹂躙王の連中に対する俺の評価はゼロを通り過ぎてマイナスだからな。
戦々恐々な姿になってもらいたいよ。
「立派になったのだな」
――……あれ?
「なんだよ。恐怖しないのか?」
「なぜしなければならない。成長したのならば喜ばしい事だ」
「蹂躙王の――配下なのにか?」
「誰がそんな事を口にした」
――……。
「してないよね……」
俺が勝手に思っていただけだね。
「我は魔王護衛軍に籍を置いている。同胞であるデミタスの成長は喜ばしいのが当然だ」
「そうなのね」
護衛軍ってなれば、真っ先に思い浮かぶのがデミタスも所属するレッドキャップスだけど、あいつ等は護衛軍の精鋭であって、護衛軍全体じゃなかったな。
「我は軍監という立場で、ランドグリット様の軍に参加している」
非道が目立つ蹂躙王配下の戦い方は問題にもなっているからと、護衛軍から派遣され、蹂躙王配下を監視するお目付役という立場だという。
「我々って……」
ヘタレて動かないどころか、幹に体半分を隠して状況を窺っているだけの連中なんだけども……。
「少しは戦おうって気概はないのかね……」
「その者達も、こちらが励めばやる気を見せてくれることだろう」
「やる気って、コイツ等の場合は下半身を使うだけのヤル気しかないよね」
「そういった種族だ。なのでそう思って付き合ってやらないとな」
「寛容な事で」
「実力差があるからと、話に付き合ってくれる勇者も寛容な事だな」
「じゃあ――仕掛ける!」
「来るがいい!」
アクセルを発動して一気に距離を詰める。
「受けて立つ!」
こちらがヤヤラッタの側面へと回り込んだところで、こちらの動きを読んでのハルバート槍部分で刺突。
俺の顔面ルートに穂先とソレに続く斧刃。
上半身を傾けながら回避し、足を止めることなく俺が手にする刀の間合いまで入り込もうとするけど、それはさせないと、強靱な尻尾による薙ぎで間合いに入り込ませないように対抗してくる。
――胴斬りを狙ってもう一歩入りたかったけども――、
「ぬぅ!?」
予定を変更して右前腕に残火で小手を打ち込む。
断ち切る事は出来なかったが、ガントレットに刃が入りダメージは与えられた。
マラ・ケニタルにて追撃をしたかったが、中断して一撃だけに留めておく。
双方にバックステップ。
余裕が出来れば直ぐさまヒールを唱えるヤヤラッタだけども。
「ぬぅぅ……。ただの刀ではないようだな……」
上位魔法のヒールであるのに、回復に時間がかかっていることに驚きを見せるが、存外、冷静な声音でもある。
で、そんな冷静な声音から、
「救われたぞ小悪魔」
「え? オイラ?」
「我が尾による攻撃の部分にお前がいてくれたからな。勇者がこちらへと深くは入り込めなかったようだ」
「あ……」
「気にしなくていいぞミルモン」
「でも、オイラが左肩にいるから……」
自分のせいで主が攻撃の機会を失った事に落ち込む。
「だから気にしなくていいって。実力差があるからな。いつでも仕留められる」
フォローしてあげるけど気が滅入っているご様子。
「オイラ、離れてるよ……」
「タチアナ――頼む」
最後衛のタチアナにミルモンのことを任せる。
「いつでも仕留められるとは言ってくれる。流石に癇に障るぞ」
「癇に障るのはこっちだよ。可愛い使い魔をヘコませやがって」
「こちらは感謝したつもりなのだがな」
「よかったよお宅。この場に最強さんがいなくて。可愛いのを悲しませると、即座に圧倒的な力を振るうからな。今ごろ浄化されていたぞ」
「それは怖いことだし残念でもある。その最強なる者と手合わせしてみたかった」
「やめとけ。俺に押されてる時点で太刀打ち出来ないよ」
「それほどか」
「俺なんて大腿四頭筋に蹴りを一発入れられるだけで、地面を転がる情けない姿になるからな……」
「――言い様からして事実のようだな」
「おうよ。で、ヒールの効果は出てきたかな?」
「おかげさまでな」
「まあ、回復してもまたダメージを与えてやるけども」
「ここまで上から言われ続ければ、逆に清々しいものだ」
力量差はこちらに分があるとしても、流石はグレーターを冠する悪魔なだけあって、佇まいには悠然さがある。
初期の頃に出会っていたなら、間違いなく俺一人だと手も足も出ない相手だったんだろうけど、強者達との戦いを経た今では脅威にはならない。
「よほどの死地をくぐり抜けたのだろうな」
継いで発してきたので、
「お宅よりもおっかない魔王軍の連中と渡り合ってきたからな」
「そうか。誰が最も脅威だった?」
「一番の脅威だったのは――やっぱりデミタスだな」
「なんだと……? デミタスだと……」
「知っているようだな。まあ名のある強者だからな」
「強者? いや、まあ強者ではあるか。ちなみに野狐のデミタスのことだな?」
「今は仙狐になっているけどな」
「仙狐だと!? フーヤオ族最後の一人は、この一年ほどでそこまで成長しているのか!」
えらく驚くな。
――ああ、そうか。
「王都と窟に攻め込んできたのは蹂躙王の軍勢だもんな。そら驚くよな。驚くよりも戦慄を覚えた方がいいと思うけど」
このグレーターデーモン・ヤヤラッタも蹂躙王の配下ってことになるんだろうからな。デミタスにとっては憎むべき存在にカテゴライズされる。
強者となって自分の前に現れれば、命を奪われる事もあり得るわけだから、そら驚くよな。
――バチクソ驚いてもらうために、俺との戦闘と、どのように姿が変わり、どれだけの強者となっているのかを詳しく教えてやった。
デミタスから話を聞かされているから、蹂躙王の連中に対する俺の評価はゼロを通り過ぎてマイナスだからな。
戦々恐々な姿になってもらいたいよ。
「立派になったのだな」
――……あれ?
「なんだよ。恐怖しないのか?」
「なぜしなければならない。成長したのならば喜ばしい事だ」
「蹂躙王の――配下なのにか?」
「誰がそんな事を口にした」
――……。
「してないよね……」
俺が勝手に思っていただけだね。
「我は魔王護衛軍に籍を置いている。同胞であるデミタスの成長は喜ばしいのが当然だ」
「そうなのね」
護衛軍ってなれば、真っ先に思い浮かぶのがデミタスも所属するレッドキャップスだけど、あいつ等は護衛軍の精鋭であって、護衛軍全体じゃなかったな。
「我は軍監という立場で、ランドグリット様の軍に参加している」
非道が目立つ蹂躙王配下の戦い方は問題にもなっているからと、護衛軍から派遣され、蹂躙王配下を監視するお目付役という立場だという。
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