異世界冒険記『ストレージ・ドミニオン』

FOX4

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矮人と巨人

PHASE-1400【部屋でゲームするだけ】

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 そうか。やはり――そうか。まあそうなるよな――。

「で、どうだい。オタサーの姫と同じムーブをかました感想は?」
 自分の中で最高に男前な声で発してやる。
 嘲笑と共に――。

『言わないでよぉぉぉぉぉ! あそこまでの空中分解をするなんて思わなかったのよ!』

「周囲がもてはやすから調子に乗る。調子に乗って会話が弾む。弾めば自然とバランスが崩れてくる。一人との会話が増えれば、その分、周囲の野郎共は躍起になって自分に振り向いてほしいとなる。結果、今まで仲良くやっていた野郎共は互いの陰口を始める。そしてそれをセラに告げ口するという最低行動をとる。そうなると、聞かされる側であるセラは嫌気が差す。それがずっと続き、野郎共はとうとう陰口からお互いを罵り始める。そしてセラを奉っていた連中は去っていく。もしくはセラから距離を置くってところか。どちらのルートだとしても、野郎達の友情が崩壊するという共通ルートだけども」

『喋々と正解を言うわね……。なんなの!? トールは神なの!? 見通す神って言われれば信じてしまいそうよ』

「神が神を信じるってなんだよ。だがその声音。さぞ醜い争いだったんだろうな」

『私は皆と楽しく一緒に語り合いながらゲームをしたかっただけなのに……』

「フランクに話すってのはいい事ではあるんだけど、女に免疫のない野郎共はその気安さが嬉しくなって勘違いをしていくんだよ」

『本当に詳しいわね』

「だろ。俺もその勘違いする立ち位置の野郎達と似たタイプだからな」

『まあ、そうよね。死ぬ前に18禁のゲームをポチるくらいですものね……』

「五月蠅いよ! そんな生前のことを掘り返すんじゃない! 今の俺は普通に女の子と話せるだけの男になってます!」

『それは自慢することなのかしら? 当然のことだと思うのだけど』

「小馬鹿にするならこの会話は終わらせよう」

『終わらせないでよ!』
 フッ、セラのやつ、俺がいないと本当にダメなんだからな。
 ――って、俺も勘違いしそうになってんな……。
 事実、俺以外の野郎共とゲームしてた事に対して、変な嫉妬心が芽生えていたからな。
 悔しさからモノに当たるってことをしなかったのは、この世界で美人、美少女と普通に接しているという事で、その部分の欲求が満たされているというのがあったからだろうな。

『さあさあ、久しぶりに伸び伸びとしたゲームをしましょうよ!』

「囲まれてチヤホヤされて嬉しかったのは最初だけだったのが、今の発言で分かったよ」

『もう……無理にフレンドを増やすという事は止めようと思います……』

「良い心がけだよ」
 そうさ、セラは俺だけと遊んでりゃいいんだ!
 って、やはり優越感から勘違いをしそうになってしまうダメな俺……。

「ちょうどいいや。CFコンバットフィールドをやろうじゃないか」

『いいわよ』

「今度は天空要塞だからな。雲の壁を突破した先では空中戦もあるかもしれない」

『となると、空中戦の練習もしとかないとね』
 ゲームをすればそれが練習になるってのはいいよな。
 だがしかし……。

「俺、ヘリの操縦が苦手なんだよな」

『基本は歩兵メインだもんね』
 正直、俺より上手い人ばかりだろうという理由から、ヘリや戦闘機どころか戦車なんかの戦闘車両も他のプレイヤーに譲っていくスタイルだからな。
 乗るとしたら、リアフレとやる時くらい。
 パーティー特有のテンションで、気が大きくなっている時だけだ。

「上達したいからコツを教えてくれ」

『良いわよ。私が歩兵の撃ち合いだけじゃなってところ見せてあげましょう』
 ありがたいね。
 
 ――パーティーを組んでCFをプレイ。
 セラの要望でパーティーは自由参加ではなく招待制。
 空中分解したようだけども、まだ囲っていた野郎共とはフレンドのままのようだ。
 一兆人いるとか嘘を言うだけあって、フレンドを欲するという気持ちは捨てきれないようだな……。
 セラのヤツ、また同じ過ちを犯しそうな気がしないでもない。
 まあいい。もし同じ過ちを犯したら、今度は俺から距離を取ってやろうじゃないか。
 そして俺という存在の有り難みを痛感するがよい。

『まずはヘリで練習をしましょう。攻撃ヘリの操縦を任せるわね。私がガンナー席でバンバンとポイント稼いであげるから』

「お願いするよ」
 てことで、ヘリに搭乗からの上昇。

『……なんか上昇させるだけで既にふらついているんだけど……』

「うむ。無駄にスティックを触ってしまう」

『ちなみにだけど、どれくらい操作できるの?』

「ほぼほぼ操作しないからな。基本は同乗させてもらうだけ」

『だから肝心な操作技量は? 周囲からの評価とかあるでしょう』

「リアフレ達からは。ヘリを操縦すればCAPC〇M製と言われ、戦闘機や攻撃機を操縦すれば〇MEGA11と言われる」
 ――…………。

『降ります! 降ろして! なんなのその最凶モータルコンボ! 死神の私もビックリよ!』

「直ぐに撃墜させられるし、操作ミスで直ぐに落ちる。地面にキスだけはするな――って言われる前に落ちる。それが俺、遠坂 亨。十七歳」

『これ乗ると間違いなくキルレが落ちるんじゃないからしら……』

「キルレとか気にしたら負けだぞ。そんなもんを気にするのはプロだけでいいよ。楽しめばいいんだよ」

『私は楽しくプレイして勝ちたいタイプだから』

「ああ、ガチ中のガチ勢だもんな」

『なんでよ! エンジョイ勢よ!』

「楽しく勝つってのは、別の例えだと、アットホームな職場ってのと同義だから」

『いいことじゃない』

「いやいや、よくないから。アットホームな職場ってのはブラックの常套句だから。だから楽しく勝つって発言するヤツってガチ勢率が高いから」

『高校生がブラック企業の何を知っているのか……』

「現状、俺は我が身を粉にして東奔西走しているからな。ブラックもブラックだからな。そんな俺が言うんだから説得力がある」
 元の世界に戻っても優秀な社員として頑張れる自信があるね。
 二十四時間働けますか? と問われれば、四十八時間働いてやる! と、言い返してやれるくらいのメンタルと体力をこの世界で鍛えている。

『貴男が励んでいる事は分かっているから、その励みの足しになるためにも練習に付き合ってあげましょう』

「本当に助かる」
 ――――……。

 ――……。

『……ねえ……』

「……なんだ……」

『わざとやってる?』

「わざ出来るようなら芸術点の高い墜落をするさ。天然で落ちてるだろ」

『開き直らないでくれるかしら!』

「開き直らないと自分のへっぽこさに向き合えないからな!」

『すっごい下手……』
 ズシリとくる発言をイヤホンマイク越しに言ってくれるじゃないか……。
 
 VCを繋いでベッドに寝転がって始めたゲーム。
 ――その後、直ぐさま姿勢を正してプレイに専念するも、俺にはヘリを操作するって才能が皆無だというのが理解できた……。

「待ってくれ。スティックでコレだぞ……。キーマウで巧みにヘリ操作してるPC勢って変態の集まりなのか? もちろん称賛の意味だぞ」

『戦闘機やヘリを操作する時だけパッドに変更って人もいるみたいだけどね』
 だとしても俺には無理だ。
 すぐに墜落してしまうし、敵航空戦力からは恰好の的で直ぐさま落とされる。
 対地はともかく、俺の操作が残念すぎて射角が取れないから、ガンナーであるセラは対空ではその力を発揮できずにいる……。
 
 ――……そして、窓から見える空が白んでくる頃、一つの結論に辿り着く……。

「うん。CFのヘリをこの世界に召喚するのは諦めることにしよう……」

『懸命ね。これだと貴男、命がいくつあっても足りないわよ……』

「だな……」
 諦めが肝心ってやつだよ……。
 向き不向きがあるからな。俺なんか一生かかってもRendeZookという曲技の極技を成功させるなんて事は出来ないだろう……。
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