異世界冒険記『ストレージ・ドミニオン』

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PHASE-1401【いつもなら出迎えてくれるのに】

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 ――――。

「ふぃぃぃぃぁぁぁぁぁぁぁ……」

「溜め息なのか、あくびなのか分かりにくい事ですね」

「どっちもなんだよ。コクリコさん」

「器用ですが、朝から聞かされるとこっちまで気怠くなりますよ」

「そりゃ失敬」
 昨晩はセラに付き合ってもらって練習したけども、結局は上達しなかった……。
 どうしても力んでスティックを強く倒し込むというクセが抜けず、情けない操作ミスばかりで墜落やらビルや山に突撃をかましてしまったな……。
 だからこそ諦めもついたけどね……。
 
 そもそも俺がヘリを操縦できなくても、ゲッコーさんやS級さん達が実際にヘリを操縦してくれるだろうから、俺は白兵戦と戦車という地面にしっかりと接した安心感あるフィールドで励みますよ。
 
 セラも気分転換できたみたいだったからよかったよ。
 キルレが下がった事にブーたれながらも、イヤホンマイクから届くセラの声は明るく、純粋にゲームを楽しんでいた。
 囲みの野郎共から招待してほしいってメッセージがプレイ中に送られたようで、トーンダウンするところが時折あったけども……。
 
 俺自身も戦闘ではなく、楽しむという内容で夜更かしが出来たってのも久しぶりだったし、こういった時間を過ごせることが幸せな事だと再認識。
 魔王を倒して、こういった時間を皆が過ごせるようにしたいというのも目標の一つにしようじゃないか。

 などと新たな目標が出来たところで――、

「戻ってきたな」
 王都外周を守る木壁が俺の視界に入ってくる。
 と、同時に――。

「相も変わらず素早い展開ですね」

「だな」
 コクリコと一緒になって感心する。
 王都へと続く街道。
 その道中では、俺達を目にした旅商人や旅人の方々にもの凄く迷惑をかけてしまったが、コクリコとシャルナが乗る馬車には公爵家の紋章が刻印されているので、それを見せて立場を明確にすることで混乱を避けることは出来た。
 
 だけども――、

「やっぱり街道から少し離れて移動するべきだったかな……」
 木壁付近でこちらを窺う王都へと訪れようとしている人々から悲鳴が上がり、その声がこちらにも届いてくる。
 その度に申し訳ない気持ちになる……。
 完全に魔王軍が侵攻してきたと勘違いしているな……。
 木壁の守備兵たちが訪れた人々を落ち着かせているし、念のためにこちらに対して迎撃態勢もとってくる。
 俺たちの事は確認しているだろうけども、背後の存在はやはり不安になるってことなんだろう。

「先触れを――」

「私が行くよ」
 馬車の窓からシャルナが出てくれば、そのままレビテーションで木壁へと向かってくれる。
 その間、木壁周辺の一般人を刺激しないように、俺達は街道から少し離れた位置で待機。
 ――程なくして数騎の騎兵がやってくる。

「勇者殿」

「どうも。配慮が足りませんでした」

「いえいえ、要塞トールハンマーへの敵襲の報と共に、勇者殿のご活躍も耳にしておりましたので」
 騎兵の一人がそう言い、

「それにしても――」
 発言を途中で中断し、俺達の後方にいるキュクロプス三兄弟と、エビルレイダーに目線を移す。
 その表情は呆気にとられており、口をポカンと開いていた。
 呆気にはとられているけど、恐怖に支配されていないあたり、肉体だけでなく精神面も鍛えられているのが喜ばしい。

「なんとも巨大ですね」
 再開した発言からの感想は、見たものをそのまま言うだけのものだった。

「王都へと訪れる者達には少しの間、道を譲ってもらいます」

「申し訳ないですね」

「いえ、この世界の為の活動を優先するのは当然ですので」
 そう言ってもらえるとありがたい。

 ――騎兵さん達の先導で木壁を潜らせてもらう。
 木壁の門を潜るのに三兄弟とエビルレイダーが苦戦していたけども、それでも潜れるんだから、門の大きさにも驚かされるよな。

「ベルやゲッコーが出迎えてるよ」

「そうか」
 王都の防御壁までひとっ飛びのシャルナが戻ってくると、そう伝えてくれる。
 
 ――シャルナの報告通り、南門の前には久しぶりと錯覚してしまいそうな頼りになる最強さん二人が待ってくれていた。

「よくやったな」
 開口一番ゲッコーさんからお褒めの言葉をいただけば、

「わ、我々がいなくても……や、やりとげたな……」
 続くベルからの称賛は上擦った声音によるもの。
 原因は分かっているけどね。
 俺達の背後にいるデッカい芋虫が原因だよな~。

「そういえば、シャルナはそこまで怖がっていないよな。エビルレイダーのこと」

「ダイヒレンなんかは嫌だけど、流石にこれだけ大きいとね。それに一緒に行動していれば愛着も湧くよ」
 そう返しつつ、

「だからベルも愛着が湧くよ」

「あ、ああ……。その会話の内容からして、今後は一緒に行動するということになりそうだな……」
 継ぐシャルナの発言にベルは物怖じしながら返していた。

「まずは王の元へと行くか」

「そうですね。それにしても――」
 キョロキョロと見渡す。
 壁上やタレットから物珍しそうに三兄弟とエビルレイダーを見る王兵が目には入ってくるけども――、

「あの、先生は?」
 いつもなら出迎えてくれるはずなんだけど。

「色々と立て込んでいてな。ギルドハウスで励んでいる」

「あ、そうなんですね……」
 王都に帰ってくるといつも出迎えてくれるのが普通だったから、それが無いとちょっと寂しかったりもする……。
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