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前準備
PHASE-1419【対物理に有利】
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「まだまだ発展途上なのは仕方ないってことだね」
「そゆこと。これから強くなっていく連中だよ。そこは俺もミルモンも一緒だ」
「そう言われるとオイラも襟元を正さないといけないけど、やっぱり兄ちゃんの私兵だからね。強くなってもらわないと困るよ」
「そこは心配するな」
語り合う中、眼界では双方がぶつかり合う手前。
本来ならここに騎射を織り交ぜるんだろうけども、目の前の連中は駆けながらの騎射はまだ難しいということもあるのか、今回は単純に接近戦メインといったところ。
そうなるとますますゴブリン、ミストウルフコンビが不利になりそうだな。
「朱色に彩ってやれ!」
先頭を駆けるラルゴの声に合わせて、続く連中が長棒を構える。
右手と脇を締めて柄を固定しての突撃。
狙いを定めて先端の塗料を頭部や胸部に付着させるつもりなんだろうけど……、
「まじで直撃すれば死ぬな……」
演習だから利器は使用しないとはいえ、そこは実戦さながら。
馬の加速を利用しての突きを打ち込む! という気迫に溢れていて、一切の手加減はないとばかりに速度も落ちることはない。
何とも危険な演習だけども、こういったのをこなさないと実戦では簡単に死んでしまうのも事実。
この程度で死ぬようじゃ、どのみち生き残れない――といった思考で見守るしかない。
「ギャ!」
相対するゴブリンが短い声。
聞きようによってはダメージを受けたような声だけども――違う。
ラルゴ達の突撃が迫る中、短い声を合図としてゴブリン騎獣隊の先頭が一斉に跳躍。
「そうか。掻い潜るってことだけじゃないよな。そういった選択肢も出来るわな」
ミストウルフの見せる跳躍。
その跳躍力は軽々と高さの不利を払拭させる。
高さを制したところで先頭のゴブリン達が突きの姿勢に変わる。
ダラリと右腕を下げた状態で長棒を握っていたのは、端から頭上を取ると考えていたからか。
「無駄!」
大音声はラルゴのもの。
迎撃には自分たちの長棒の方が有利。
躍りかかってくる騎獣を突き落としてやるとばかりに、先制の突きを打ち込んだ次には、
「なんだ!?」
と、これまた大音声のラルゴ。
「上手いな」
と、俺はゴブリン達の戦い方に感心。
騎馬サイドの突きに対して、ミストウルフが強味を発揮。
迎撃の突きに合わせて霧状になる。
ああなれば、物理攻撃が通用しなくなるのがミスト系生物の特徴。
迎撃の突きが虚しく空を切る――ではなく空を突く。
ミストウルフに跨がるゴブリン達は霧になる前に狼の背を蹴って跳躍。
そのまま突撃してくる騎馬の方へと躍りかかる。
空を突いた一撃から再びの攻撃態勢に移行するよりも速く、躍りかかってくるゴブリン達の長棒が騎馬サイドのケトルハットを突いた。
次には「くそっ!」と、悔しそうな声が突かれた側から上がる。
攻撃を成功させたゴブリン達は直ぐさま離脱。
突きを見舞った騎兵の体を踏み台にし、足が地面に触れるその前に、ミストウルフが霧の姿から狼へと戻ってゴブリン達を回収してから距離を取る。
「すげぇ!」
俺の横でルッチが興奮。
「先制攻撃は騎獣側が取ったな」
「だね」
相槌を打つミルモンは不服なご様子。
俺の私兵であるのに、ファーストアタックを奪われたことが情けないといったところ。
農耕馬のような大きさからなる軍馬が、騎獣側の変則的な正面突撃に翻弄されてしまったからな。
双方の先頭の動きで初手の明暗が分かれた。
出鼻を挫かれた騎馬側は先頭の動きが鈍くなってしまい、後続の動きは止まってしまう。
立派な四肢を有する騎馬突撃の良さが完全に潰されてしまったな。
「立て直すぞ! 大将が見てるんだ。無様な姿は見せるなよ!」
先頭にいたラルゴは変則攻撃を対処したようで無事。
次が来る前に自軍サイドが崩れないように発破を掛ける。
初手は奪われたが、ラルゴの発言に残った連中は力強く返答。
立ち直りは早いな。
付き合いの長さによる連携がなせるものだな。
騎馬側が素早く隊列を整えたことで、騎獣側は二撃目を中止。
突撃は止められたものの、隊列を整えれば直ぐさま防御円陣にて相手の出方を窺う騎兵サイド。
この円陣に対して騎獣側はどこから仕掛けようかとばかりに、円陣の外周をグルグルと回る。
仕掛けやすそうなところを探しつつも、ラルゴ達の陣形に付け入る隙がないのか攻めあぐねていた。
でもそれはラルゴ達も一緒。
変則的な攻撃が可能なミストウルフによる騎獣となると、下手に動いて反撃されるというのを避けたいようだ。
今回、弓矢などの射撃武器の使用がない分、攻撃手段が限定されていることもあり、お互い次はどうやって攻めればいいだろうか? と、戦術が行き詰まっているご様子。
双方が攻めあぐねるこの状況。現状、それだけの実力しかないってことでもあるんだろうな。
経験値だとラルゴ達が有利。
でもそれは対人戦において。
物理攻撃を無効化してくる生物との戦闘ってのは経験してないだろうからな。
そういった違いで動きが駄目になるのは、多種多様な戦闘を経験していないからこそだ。
物理オンリーの戦いとなると、騎獣側が有利になりそうだな。
重量とリーチだけを見れば圧倒的に騎馬側が優勢だけども、ミストウルフが物理攻撃を無効化できる時点で、ラルゴ達の攻める手段が限られてしまう。
ゴブリンだけを狙えばいいんだろうけど、現在の技量だと難しいだろう。
まずは足となっている狼たちの動きを鈍くしなければ、跨がっているゴブリン達を狙うのは至難の業。
「そゆこと。これから強くなっていく連中だよ。そこは俺もミルモンも一緒だ」
「そう言われるとオイラも襟元を正さないといけないけど、やっぱり兄ちゃんの私兵だからね。強くなってもらわないと困るよ」
「そこは心配するな」
語り合う中、眼界では双方がぶつかり合う手前。
本来ならここに騎射を織り交ぜるんだろうけども、目の前の連中は駆けながらの騎射はまだ難しいということもあるのか、今回は単純に接近戦メインといったところ。
そうなるとますますゴブリン、ミストウルフコンビが不利になりそうだな。
「朱色に彩ってやれ!」
先頭を駆けるラルゴの声に合わせて、続く連中が長棒を構える。
右手と脇を締めて柄を固定しての突撃。
狙いを定めて先端の塗料を頭部や胸部に付着させるつもりなんだろうけど……、
「まじで直撃すれば死ぬな……」
演習だから利器は使用しないとはいえ、そこは実戦さながら。
馬の加速を利用しての突きを打ち込む! という気迫に溢れていて、一切の手加減はないとばかりに速度も落ちることはない。
何とも危険な演習だけども、こういったのをこなさないと実戦では簡単に死んでしまうのも事実。
この程度で死ぬようじゃ、どのみち生き残れない――といった思考で見守るしかない。
「ギャ!」
相対するゴブリンが短い声。
聞きようによってはダメージを受けたような声だけども――違う。
ラルゴ達の突撃が迫る中、短い声を合図としてゴブリン騎獣隊の先頭が一斉に跳躍。
「そうか。掻い潜るってことだけじゃないよな。そういった選択肢も出来るわな」
ミストウルフの見せる跳躍。
その跳躍力は軽々と高さの不利を払拭させる。
高さを制したところで先頭のゴブリン達が突きの姿勢に変わる。
ダラリと右腕を下げた状態で長棒を握っていたのは、端から頭上を取ると考えていたからか。
「無駄!」
大音声はラルゴのもの。
迎撃には自分たちの長棒の方が有利。
躍りかかってくる騎獣を突き落としてやるとばかりに、先制の突きを打ち込んだ次には、
「なんだ!?」
と、これまた大音声のラルゴ。
「上手いな」
と、俺はゴブリン達の戦い方に感心。
騎馬サイドの突きに対して、ミストウルフが強味を発揮。
迎撃の突きに合わせて霧状になる。
ああなれば、物理攻撃が通用しなくなるのがミスト系生物の特徴。
迎撃の突きが虚しく空を切る――ではなく空を突く。
ミストウルフに跨がるゴブリン達は霧になる前に狼の背を蹴って跳躍。
そのまま突撃してくる騎馬の方へと躍りかかる。
空を突いた一撃から再びの攻撃態勢に移行するよりも速く、躍りかかってくるゴブリン達の長棒が騎馬サイドのケトルハットを突いた。
次には「くそっ!」と、悔しそうな声が突かれた側から上がる。
攻撃を成功させたゴブリン達は直ぐさま離脱。
突きを見舞った騎兵の体を踏み台にし、足が地面に触れるその前に、ミストウルフが霧の姿から狼へと戻ってゴブリン達を回収してから距離を取る。
「すげぇ!」
俺の横でルッチが興奮。
「先制攻撃は騎獣側が取ったな」
「だね」
相槌を打つミルモンは不服なご様子。
俺の私兵であるのに、ファーストアタックを奪われたことが情けないといったところ。
農耕馬のような大きさからなる軍馬が、騎獣側の変則的な正面突撃に翻弄されてしまったからな。
双方の先頭の動きで初手の明暗が分かれた。
出鼻を挫かれた騎馬側は先頭の動きが鈍くなってしまい、後続の動きは止まってしまう。
立派な四肢を有する騎馬突撃の良さが完全に潰されてしまったな。
「立て直すぞ! 大将が見てるんだ。無様な姿は見せるなよ!」
先頭にいたラルゴは変則攻撃を対処したようで無事。
次が来る前に自軍サイドが崩れないように発破を掛ける。
初手は奪われたが、ラルゴの発言に残った連中は力強く返答。
立ち直りは早いな。
付き合いの長さによる連携がなせるものだな。
騎馬側が素早く隊列を整えたことで、騎獣側は二撃目を中止。
突撃は止められたものの、隊列を整えれば直ぐさま防御円陣にて相手の出方を窺う騎兵サイド。
この円陣に対して騎獣側はどこから仕掛けようかとばかりに、円陣の外周をグルグルと回る。
仕掛けやすそうなところを探しつつも、ラルゴ達の陣形に付け入る隙がないのか攻めあぐねていた。
でもそれはラルゴ達も一緒。
変則的な攻撃が可能なミストウルフによる騎獣となると、下手に動いて反撃されるというのを避けたいようだ。
今回、弓矢などの射撃武器の使用がない分、攻撃手段が限定されていることもあり、お互い次はどうやって攻めればいいだろうか? と、戦術が行き詰まっているご様子。
双方が攻めあぐねるこの状況。現状、それだけの実力しかないってことでもあるんだろうな。
経験値だとラルゴ達が有利。
でもそれは対人戦において。
物理攻撃を無効化してくる生物との戦闘ってのは経験してないだろうからな。
そういった違いで動きが駄目になるのは、多種多様な戦闘を経験していないからこそだ。
物理オンリーの戦いとなると、騎獣側が有利になりそうだな。
重量とリーチだけを見れば圧倒的に騎馬側が優勢だけども、ミストウルフが物理攻撃を無効化できる時点で、ラルゴ達の攻める手段が限られてしまう。
ゴブリンだけを狙えばいいんだろうけど、現在の技量だと難しいだろう。
まずは足となっている狼たちの動きを鈍くしなければ、跨がっているゴブリン達を狙うのは至難の業。
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