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前準備
PHASE-1421【負傷者なし】
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「攻め時です! 各個撃破といきましょう!」
反面、騎馬隊の方は挟撃が成功したことで一気に士気が上がる。
その中心となって騎兵を率いようとしているのは、ラルゴではなく――リーバイ。
逃げる騎獣隊の中で最も少数な箇所に狙いを定め、手にする長棒の先端をそこへと向けて駆け出す。
確実に倒せるところから叩き、数を削るという考えは戦術のお手本のような戦い方だ。
新参者でありながらも皆を牽引しようと励む。
「リーバイに続くぞ!」
新入りの発言を受け入れるように隊長であるラルゴが発せば、全体から返事が上がる。
新入りであるリーバイの提案を隊長が介することで、全体が素直に受け入れるという流れだな。
「いい部隊ができ上がりつつあるな」
「兄ちゃん、ご満悦だね」
「俺の為に活躍しようとしてくれる兵が成長していく姿を直に見ることが出来るんだからな。気分も良くなるさ」
最高の私兵になってくれるであろう者達の追撃により、散り散りとなって逃げていく騎獣隊は、リーバイの思惑どおりとばかりに各個撃破されていく。
そんな中、逃げにばかり転じず、反撃に打って出る気骨さを見せてくれた騎獣隊もいたが、数に圧倒されて容易く朱色を塗布されていった。
数の差が開けば開くほど、反撃するだけの力も気骨も削がれ、騎獣側全員が朱色を塗られたところで殲滅戦は終了。
ラルゴたち騎兵の残存は三十二。
「初撃は出鼻を挫かれたけども、それだけだったな」
「危なげなく勝てましたね」
「だね」
模擬戦を一緒に見たことで少しは打ち解けたのか、ルッチではなくカルエスの方から俺に語りかけてくれた。
「ダメダメだったね~」
「結果だけを見ればな」
「あれ、兄ちゃんの感想はちょっと違うみたいだね」
「まあな」
ラルゴたち私兵が強く成長してくれているのは嬉しいし、騎獣サイドもいいところがあった。
挟撃後からグズグズだったけども、最初の意外性から来る攻撃方法は相手からすれば予想外の攻撃だっただろうからな。
更に磨き上げれば、偵察時、偶発的に会敵した時の戦法としても使える。
相手の意表を側面や後方からではなく、正面から突けるのは意外性があるからな。
正面からの不意打ちで相手に攻撃を仕掛け、相手を混乱させた後、即時撤退という流れが作れれば犠牲を出さない――最低限に抑えらることも可能だろう。
なので今回の反省点を活かし、逃げる時には考えて撤退するという経験をこれから積んでいき、可能ならば逃げ遅れた味方の救出にも対応できるような撤退術を習得できればより良い偵察兵になる。
そのためにもゴブリン同士の結束力だけでなく、共生関係となってくれているミストウルフとの絆をもっと深めないといけないだろう。
――――といったことを模擬戦後に翁と話すのは、ゴブリンとミストウルフ達だけでなく、ラルゴ達も参加してのミーティングにて。
自分たちも急な遭遇戦となった時、正面から意表を突いてくる攻撃だけでなく、様々な戦法があることを考慮しつつも、それにばかり思考を傾倒させて初撃が鈍るという事にならないよう、経験則を培うために更なる修練が必要だ。と、俺の発言を翁がゴブリン達に通訳してくれている側でラルゴ達が語り合っていた。
――なんか剣道の試合後のミーティングを思い出させてくれる光景だよ。
――うん。いいね。
「それにしても――」
「皆、以外と元気だよね」
「そうなんだよな」
ミルモンへと返しつつ、今回の合同演習に参加した面々を見渡す。
体中に塗布された朱色を見れば、当然ながら胸部や頭部に付着している。
殲滅戦ルールだったからゴブリン達のは特に目立つ。
騎馬突撃による刺突を見舞われてもゴブリン達は元気そのもの。
回復魔法が使用されたからってのは分かるんだけども……。
だとしても……、
「死傷者が出なかった不思議」
「そうなんだよな」
と、ミルモンに同じ台詞で返す。
回復担当がファーストエイドで即座で対応はしていたけども、下位の回復魔法だけで対応できることじゃないと思う。
考えられるのは他の要因だろう。
ゴブリン達に今後の事を伝えている翁へと再び目を向ける。
模擬戦だから気合いを入れての戦闘装束とは言いつつも、メインの理由があるという事だったよな。
ここで周辺一帯を見渡す。
少し離れた位置には――ガルム氏もいれば他のヴィルコラクさん達もいる。
厚手のトレンチコートを思わせるレザーローブは、俺達が初めて目にした時と同じ。
つまりは戦闘時の装備だ。
更にはガルム氏たちを四方から守るようにバラクラバ――S級さんが四人。
「なるほど。得心がいった」
これは挨拶にいかないといけないな。
「お会いになりますか?」
「もちろんです」
ゴブリン達への総括を述べているところで、俺の視線がある部分を捕捉したことに気付いた翁は、話を中断して俺に問うてくる。
こんな所まで来てくれているんだからね。会わないと失礼になるってもんだ。
――翁の誘導で足を進める。
ガルム氏たちの四方に立つS級さん達に軽く会釈をすれば、同じ動作で返してくれる。
手には皆してアサルトライフルであるタンカラーのSCAR-Lを装備。
「なんか物々しいね」
「まあ物々しくもなるよ」
更に足を進めれば、
「久しぶりだな勇者。壮健そうでなによりだ」
「そちらもお元気そうでなによりです」
「この王都では英気を養わせてもらっている」
長身でシャープな顔立ちは狼からなる人物。
牙を見せての笑みを湛え、この地で安息な生活を送れていることに感謝をするのは、お久しぶりの再会であるガルム氏。
ヴィルコラクのリーダーである目の前の御仁は、相も変わらず佇まいからだけでも圧倒的強者の風格を漂わせてくる。
反面、騎馬隊の方は挟撃が成功したことで一気に士気が上がる。
その中心となって騎兵を率いようとしているのは、ラルゴではなく――リーバイ。
逃げる騎獣隊の中で最も少数な箇所に狙いを定め、手にする長棒の先端をそこへと向けて駆け出す。
確実に倒せるところから叩き、数を削るという考えは戦術のお手本のような戦い方だ。
新参者でありながらも皆を牽引しようと励む。
「リーバイに続くぞ!」
新入りの発言を受け入れるように隊長であるラルゴが発せば、全体から返事が上がる。
新入りであるリーバイの提案を隊長が介することで、全体が素直に受け入れるという流れだな。
「いい部隊ができ上がりつつあるな」
「兄ちゃん、ご満悦だね」
「俺の為に活躍しようとしてくれる兵が成長していく姿を直に見ることが出来るんだからな。気分も良くなるさ」
最高の私兵になってくれるであろう者達の追撃により、散り散りとなって逃げていく騎獣隊は、リーバイの思惑どおりとばかりに各個撃破されていく。
そんな中、逃げにばかり転じず、反撃に打って出る気骨さを見せてくれた騎獣隊もいたが、数に圧倒されて容易く朱色を塗布されていった。
数の差が開けば開くほど、反撃するだけの力も気骨も削がれ、騎獣側全員が朱色を塗られたところで殲滅戦は終了。
ラルゴたち騎兵の残存は三十二。
「初撃は出鼻を挫かれたけども、それだけだったな」
「危なげなく勝てましたね」
「だね」
模擬戦を一緒に見たことで少しは打ち解けたのか、ルッチではなくカルエスの方から俺に語りかけてくれた。
「ダメダメだったね~」
「結果だけを見ればな」
「あれ、兄ちゃんの感想はちょっと違うみたいだね」
「まあな」
ラルゴたち私兵が強く成長してくれているのは嬉しいし、騎獣サイドもいいところがあった。
挟撃後からグズグズだったけども、最初の意外性から来る攻撃方法は相手からすれば予想外の攻撃だっただろうからな。
更に磨き上げれば、偵察時、偶発的に会敵した時の戦法としても使える。
相手の意表を側面や後方からではなく、正面から突けるのは意外性があるからな。
正面からの不意打ちで相手に攻撃を仕掛け、相手を混乱させた後、即時撤退という流れが作れれば犠牲を出さない――最低限に抑えらることも可能だろう。
なので今回の反省点を活かし、逃げる時には考えて撤退するという経験をこれから積んでいき、可能ならば逃げ遅れた味方の救出にも対応できるような撤退術を習得できればより良い偵察兵になる。
そのためにもゴブリン同士の結束力だけでなく、共生関係となってくれているミストウルフとの絆をもっと深めないといけないだろう。
――――といったことを模擬戦後に翁と話すのは、ゴブリンとミストウルフ達だけでなく、ラルゴ達も参加してのミーティングにて。
自分たちも急な遭遇戦となった時、正面から意表を突いてくる攻撃だけでなく、様々な戦法があることを考慮しつつも、それにばかり思考を傾倒させて初撃が鈍るという事にならないよう、経験則を培うために更なる修練が必要だ。と、俺の発言を翁がゴブリン達に通訳してくれている側でラルゴ達が語り合っていた。
――なんか剣道の試合後のミーティングを思い出させてくれる光景だよ。
――うん。いいね。
「それにしても――」
「皆、以外と元気だよね」
「そうなんだよな」
ミルモンへと返しつつ、今回の合同演習に参加した面々を見渡す。
体中に塗布された朱色を見れば、当然ながら胸部や頭部に付着している。
殲滅戦ルールだったからゴブリン達のは特に目立つ。
騎馬突撃による刺突を見舞われてもゴブリン達は元気そのもの。
回復魔法が使用されたからってのは分かるんだけども……。
だとしても……、
「死傷者が出なかった不思議」
「そうなんだよな」
と、ミルモンに同じ台詞で返す。
回復担当がファーストエイドで即座で対応はしていたけども、下位の回復魔法だけで対応できることじゃないと思う。
考えられるのは他の要因だろう。
ゴブリン達に今後の事を伝えている翁へと再び目を向ける。
模擬戦だから気合いを入れての戦闘装束とは言いつつも、メインの理由があるという事だったよな。
ここで周辺一帯を見渡す。
少し離れた位置には――ガルム氏もいれば他のヴィルコラクさん達もいる。
厚手のトレンチコートを思わせるレザーローブは、俺達が初めて目にした時と同じ。
つまりは戦闘時の装備だ。
更にはガルム氏たちを四方から守るようにバラクラバ――S級さんが四人。
「なるほど。得心がいった」
これは挨拶にいかないといけないな。
「お会いになりますか?」
「もちろんです」
ゴブリン達への総括を述べているところで、俺の視線がある部分を捕捉したことに気付いた翁は、話を中断して俺に問うてくる。
こんな所まで来てくれているんだからね。会わないと失礼になるってもんだ。
――翁の誘導で足を進める。
ガルム氏たちの四方に立つS級さん達に軽く会釈をすれば、同じ動作で返してくれる。
手には皆してアサルトライフルであるタンカラーのSCAR-Lを装備。
「なんか物々しいね」
「まあ物々しくもなるよ」
更に足を進めれば、
「久しぶりだな勇者。壮健そうでなによりだ」
「そちらもお元気そうでなによりです」
「この王都では英気を養わせてもらっている」
長身でシャープな顔立ちは狼からなる人物。
牙を見せての笑みを湛え、この地で安息な生活を送れていることに感謝をするのは、お久しぶりの再会であるガルム氏。
ヴィルコラクのリーダーである目の前の御仁は、相も変わらず佇まいからだけでも圧倒的強者の風格を漂わせてくる。
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