異世界冒険記『ストレージ・ドミニオン』

FOX4

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天空要塞

PHASE-1457【UMAのやつ】

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 こちらの圧によって挫かれた攻勢。
 攻めてこないとなれば、こちらとしては好都合。
 
 その隙に――、

「アクセル」
 と、独白し一気に通路を駆ける。
 一度のアクセルでは屋根のある所まで走りきれないが、二回ほど使用すれば行ける。
 高所を取られることもないし、一方的な包囲からも脱することが出来る。

「い、行かせるな! そうだ! 通路を破壊しろ」
 おん!?

「いいのか?」

翼幻王ジズ様の要塞を破壊するのは申し訳ないが、勇者を進ませるのはもっと良くない。勇者を仕留める為に必要だったなら仕方ない。と、お許しになる寛大さはお持ちだ」
 発しつつ、自分が責任を負うとばかりに言い出しっぺが火球を俺が走る前の通路へと放つ。
 と、同時に俺の後方に位置取りしたもう一人も同様の火球を放つ。

「やめないか!」
 そんな事をされれば、通路が壊れて俺が落ちるでしょうが!
 俺が通路に寝かせたお仲間の事を指摘しようとすれば、すでに回収済み。
 仲間意識と連携は称賛するよ。
 マスリリースとウインドスラッシュで迎撃しようとしたところで――、ド、ドドン! と、二つの火球は俺が立つ通路に着弾することはなく、別の火球によって迎撃される。
 
 こっちも連携では負けてないね。

「ナイス、コクリコ」

「自分だけさっさと行かないでほしいですね」
 一回転いれながらの華麗な着地で俺の側に立つ。

 続いて、

「ブラストスマッシュ」
 と、レビテーションで宙を舞うシャルナが、圧縮した風の塊を相手に向けて放つ。
 複数人が固まっているところに放てば、近接信管とばかりに圧縮された風が斬撃の風へと変化して、放射状に広がって相手を襲う。
 圧縮された風の衝撃で動きの自由を制限されたところで斬撃系へと変化。
 見舞われた連中が次々と落ちていく。

「はい救助!」
 指摘してやれば、急いで助けに動く。
 仲間意識が強いのはいいことだ。
 こちらへの攻めが鈍るからな。
 
 それにしても、

「俺とは違って見事な着地だったな」

「シャルナに運んでもらいましたからね」
 いいな。俺もそうしてほしかったよ……。
 リンのヤツが蹴り落とさなければ、もっと格好良く。尚且つもっと安全な位置で着地だって出来ただろうに。

「で、俺を蹴り落としたのは?」

「まだベルと一緒にツッカーヴァッテに乗ってますよ。こちらに比べれば大した数ではないですが、向こうも敵に囲まれている状況ですからね」
 ツッカーヴァッテになにかあったら一大事だからな。
 ベルはモフモフに対して脅威が無くなるまでは、こちらと合流することはないだろうし、ベルの目がある以上、リンは真面目に対処するだろう。
 ざまあねえなリン。
 降りるタイミングを逸して、この世界で唯一の天敵と言っていい最強さんと一緒に戦うことになるんだからな。
 俺を蹴り落とした罰が当たったようでなによりだ。
 痛めることのない胃をせいぜい痛めるがいいさ。
 
「話は安全地帯で。今のうちに一気に駆けましょう」
 コクリコとシャルナがいればこの程度の数は脅威じゃない。
 頼れる仲間が側にいるだけで安心感は大いに増す。

「まっておくれよ~」

「お!」
 忘れてはいけないもう一人の頼れる存在が、バタバタと一生懸命に羽を動かし――俺の左肩へと着地。

「オイラをおいていくなんてヒドいよ」

「いやいや、俺、蹴り落とされたからね」

「まあそうだけど。あの黒髪ロングの美人、ベルの姉ちゃんとは違う意味で怖いね」

「ああ、うん……」
 後半の部分はベルには聞かせられないな。
 苦手意識どころか、ミルモンにとってベルは怖い存在になっているようだからな……。
 ――ミルモンの着地に合わせて通路を疾駆。
 アクセル使用はコクリコとの足並みが揃わないから使わない。
 四人になれば遠距離からの脅威も軽減。屋根がある箇所まで問題なく移動できそうだ。

「そうそう思い通りにはさせん!」
 ――と、あとわずかといったところで聞こえてくる強い語気。

「兄ちゃん、正面」

「おうよ!」
 屋根付きの通路側から勢いよく飛び出してくるのは――赤い目の存在。

「おっとレッドキャップスかよ!」
 ぎらついた赤い目となれば真っ先に思い浮かぶ強者の存在。
 魔王護衛軍はここにもいるのかと思っていれば、

「違う」
 と、こちらへと迫りながら否定の言葉を発しつつ、一蹴り入れてくる。
 籠手で防ぐが中々の威力。前に進む勢いを止められてしまった。
 
 挨拶代わりの蹴撃を見舞い、俺の刀の間合いから離れれば、空中の一点で留まってこちらを見下ろしてくる。
 留まるために翼――羽……翅を動かせば、キラキラとしたものを周囲に撒き散らす。
 鱗粉?
 鱗粉と思われるものを周囲に舞わせる根源となっている翅は大きく、前方に羽ばたかせる時は体を包むマントのようにも見えた。
 
 兜は装備しておらず顔はまる出し。
 だからこそ目立つ、赤く大きな丸い目。
 人間のような腕はなく、代わりに黒みがかった銀色の翅。
 翅にはまだらの紋もある。
 翅とは違い、体中を覆う体毛は明るい銀色。
 胴体は他の連中と同様のブレストプレートを装備。
 他と違って特徴的な装備はレッグアーマーで、猛禽の爪を模した鉄靴てっかからなる。
 籠手で受けていなかったら、顔面は無事ではすまなかったな。
 
 そして何よりも風貌に既視感――。

「……モスマンじゃねえか」

「如何にも」

「ええ!? 都市伝説のUMAじゃねえかよ」

「ん? ユーマ?」
 聞き慣れない言葉に、疑問符を浮かべるように首を傾げるモスマン。
 丸く大きな目と傾げる動作は梟っぽかった。
 動作は梟のようだけど、先ほど俺が倒した梟頭のタンガタ・マヌとは実力は別格。
 受けた蹴りの衝撃から、手練れだというのは伝わってきた。
 
 そして、自分自身が強者だとも思っているんだろう。
 
 俺達が目指す屋根のある場所から出現しておいて、通路の破壊をすることなく俺に仕掛けてくるんだからな。
 こちらを落下させるという選択を取らなくても、勝てるという自信があるんだろう。

 その自信に感謝をしつつ、それが過信だということを分からせてやる。
 
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