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天空要塞
PHASE-1527【誰にでも敬語】
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悠々と鉄扉を開いていくコクリコの背を見続けるのも勇者としてあれなので、俺も一緒になって押す。
で、俺達の後ろでは、
「ユーリ」
「了解」
と、ゲッコーさんとユーリさん。
二人が俺の方を見て小さく頷き、そのまま視界から消える。
光学迷彩にて視界から消えると同時に気配も消し去ることで、直ぐ側にいるのに存在を感じ取れなくなってしまうステルス能力は神業。
「卑怯な事だな」
ラズヴァートから上がる声に二人から返事は無い。
相手にされなかった苛立ちからか舌打ち一つ。
それを背で聞きつつ鉄扉を開ききり、
「お邪魔しますよ」
鉄扉から先の光景は今までと同様、白亜な空間。
床には白が映える金色の絨毯が奥まで続く。
鉄扉を開き、一歩足を踏み入れたところで靴底が絨毯と接触。
毛足の長い黄金絨毯は、俺の半長靴の踝までを余裕で隠す。
周辺に目を落とせば、現状、俺とコクリコの踝だけが絨毯に隠れる。
光学迷彩組は絨毯を避けて室内へとおじゃましているようで、毛足を踏んで潰すということはしない。
「謁見の間――といったところかな……」
俺達が立つ位置から絨毯をたどり、途中の存在達を避けてから最奥を見やれば、客人を迎えるであろう主が鎮座する椅子がある。
作りはいたってシンプル。
白亜の空間に合わせるように、乳白色の石材から切り出して作られたものだと思われる。
絢爛豪華ではないが、椅子にも緻密な細工が施されているというのは遠目からでも窺えた。
ギムロンを筆頭にドワーフ達がこの場にいれば、椅子に施された石彫りの素晴らしさを褒め称えていたことだろう。
「でも……」
予定とは違うか。
違うけども、俺の心臓はロックバンドのドラマーにでも叩かれているかのように荒ぶる。
「翼幻王ではありませんね。残念です」
「違うが、残念でもないな」
「油断は一切できない相手ですからね」
「そういうこと」
「トール。いよいよ大立者のご登場ですよ」
「おうよ……」
謁見の間の最奥にある椅子と、開いた鉄扉の近くに立つ俺達の中間地点に立つ存在。
先ほどは避けて椅子を見たが今度はちゃんと見る。
――カラスのような頭部。
黒の三つ揃いに白手袋は以前の姿のまま。
コクリコが言うようにいよいよだ。
大立者と共にいるのは、ポームスとアル氏。
こちらの情報を伝えている最中といったところ。
でもって、俺達がすんなりとここへと辿り着いたことで表情には驚きがあった。
「いよいよではあるが、相手取るのは避けたいね」
「それは無理でしょうね」
おう。
相対する側が俺の独白に返してくれる。
「ご壮健で何よりです。勇者殿」
左手は胸元。
右手を腰へと回しての典雅な一礼。
「執事然とした挨拶ですね。大立者」
「大立者という分不相応な呼称を与えられ、日々、重圧に苦しんでおります。自分としては執事という立場だけでいいのですが」
「余裕ある佇まいは十分に大立者ですよ。なんといっても私を前にしてその余裕なのですからね!」
「いえいえ、大層に肝は冷えていますよ。コクリコ女史」
「お、おお……! 我が名を知っているとは」
「皆様の活躍は耳にしております。実際、目にもしましたしね。あの頃の奇怪な武器を使用する方々はいらっしゃらないようですが」
「います! 奇怪なモノを使用する者達はいます!」
姿を消してこの場にいます! と、続けるラズヴァート。
「その通り!」
実際に背後を取られて気絶させられたアル氏も警戒するように嘴を開く。
「なるほど。姿を消すだけでなく、こちらに悟られないほどに気配を消すことができるとは、いやはや強い方々のようだ」
「隠れているのは二人です大立者!」
「ありがとうございますラズヴァート。強いお二方と訂正しましょう」
この敬語っぷりよ。
下の者に対しても敬語を使用するヤツ、大体やばいくらい強い説を提唱したいところだな。
でも、そんな強者であってもゲッコーさんとユーリさんの存在を気取ることは出来ないというのはこちらとしては朗報だ。
あの二人なら大立者――クロウス氏に対しても戦いを有利に運べるということでもあるからな。
「それにしても、すんなりと謁見の間までいらっしゃいましたね」
「ボク達じゃないよ……たぶん……」
チラリとポームスとアル氏を見るクロウス氏に、二人して背筋を伸ばして応えていた。
「こちらとしてはもっと他の部屋に足を踏み入れてもらい、強者たちと戦っていただきたかったのですが。まさかアル達との会敵以降、一度も戦闘を行う事なくここまでこられるとは」
「立哨の女性二人の存在を忘れてはいけませんね。命は奪ってませんよ。眠ってはもらいましたが」
と、まるで自分が対処したかのようなコクリコさん。
対して、
「無益な流血を避けてくれることに感謝します。ストームトルーパーである彼女たちがこちらに報告をすることなく倒されるということには驚きですね」
「扉の外が騒がしくなっていた時点で気づいてはいたのでしょう?」
「多少ですが」
「十全で理解しておいて飄々と! 強者してますね!」
「称賛と受け取りますよコクリコ女史」
「ぬぅぅ……ぶれないその姿勢。トール、あのタンガタ・マヌは強敵ですよ」
「知ってますよ」
相対するクロウス氏。
側にいるアル氏とポームスはこちらの進入に対して未だに焦燥感を纏わせているけど、大立者ともなれば大人数でお邪魔しても問題なしといったところ。
真っ直ぐと伸びた背筋。
綺麗な姿勢で佇んでますわ。
で、俺達の後ろでは、
「ユーリ」
「了解」
と、ゲッコーさんとユーリさん。
二人が俺の方を見て小さく頷き、そのまま視界から消える。
光学迷彩にて視界から消えると同時に気配も消し去ることで、直ぐ側にいるのに存在を感じ取れなくなってしまうステルス能力は神業。
「卑怯な事だな」
ラズヴァートから上がる声に二人から返事は無い。
相手にされなかった苛立ちからか舌打ち一つ。
それを背で聞きつつ鉄扉を開ききり、
「お邪魔しますよ」
鉄扉から先の光景は今までと同様、白亜な空間。
床には白が映える金色の絨毯が奥まで続く。
鉄扉を開き、一歩足を踏み入れたところで靴底が絨毯と接触。
毛足の長い黄金絨毯は、俺の半長靴の踝までを余裕で隠す。
周辺に目を落とせば、現状、俺とコクリコの踝だけが絨毯に隠れる。
光学迷彩組は絨毯を避けて室内へとおじゃましているようで、毛足を踏んで潰すということはしない。
「謁見の間――といったところかな……」
俺達が立つ位置から絨毯をたどり、途中の存在達を避けてから最奥を見やれば、客人を迎えるであろう主が鎮座する椅子がある。
作りはいたってシンプル。
白亜の空間に合わせるように、乳白色の石材から切り出して作られたものだと思われる。
絢爛豪華ではないが、椅子にも緻密な細工が施されているというのは遠目からでも窺えた。
ギムロンを筆頭にドワーフ達がこの場にいれば、椅子に施された石彫りの素晴らしさを褒め称えていたことだろう。
「でも……」
予定とは違うか。
違うけども、俺の心臓はロックバンドのドラマーにでも叩かれているかのように荒ぶる。
「翼幻王ではありませんね。残念です」
「違うが、残念でもないな」
「油断は一切できない相手ですからね」
「そういうこと」
「トール。いよいよ大立者のご登場ですよ」
「おうよ……」
謁見の間の最奥にある椅子と、開いた鉄扉の近くに立つ俺達の中間地点に立つ存在。
先ほどは避けて椅子を見たが今度はちゃんと見る。
――カラスのような頭部。
黒の三つ揃いに白手袋は以前の姿のまま。
コクリコが言うようにいよいよだ。
大立者と共にいるのは、ポームスとアル氏。
こちらの情報を伝えている最中といったところ。
でもって、俺達がすんなりとここへと辿り着いたことで表情には驚きがあった。
「いよいよではあるが、相手取るのは避けたいね」
「それは無理でしょうね」
おう。
相対する側が俺の独白に返してくれる。
「ご壮健で何よりです。勇者殿」
左手は胸元。
右手を腰へと回しての典雅な一礼。
「執事然とした挨拶ですね。大立者」
「大立者という分不相応な呼称を与えられ、日々、重圧に苦しんでおります。自分としては執事という立場だけでいいのですが」
「余裕ある佇まいは十分に大立者ですよ。なんといっても私を前にしてその余裕なのですからね!」
「いえいえ、大層に肝は冷えていますよ。コクリコ女史」
「お、おお……! 我が名を知っているとは」
「皆様の活躍は耳にしております。実際、目にもしましたしね。あの頃の奇怪な武器を使用する方々はいらっしゃらないようですが」
「います! 奇怪なモノを使用する者達はいます!」
姿を消してこの場にいます! と、続けるラズヴァート。
「その通り!」
実際に背後を取られて気絶させられたアル氏も警戒するように嘴を開く。
「なるほど。姿を消すだけでなく、こちらに悟られないほどに気配を消すことができるとは、いやはや強い方々のようだ」
「隠れているのは二人です大立者!」
「ありがとうございますラズヴァート。強いお二方と訂正しましょう」
この敬語っぷりよ。
下の者に対しても敬語を使用するヤツ、大体やばいくらい強い説を提唱したいところだな。
でも、そんな強者であってもゲッコーさんとユーリさんの存在を気取ることは出来ないというのはこちらとしては朗報だ。
あの二人なら大立者――クロウス氏に対しても戦いを有利に運べるということでもあるからな。
「それにしても、すんなりと謁見の間までいらっしゃいましたね」
「ボク達じゃないよ……たぶん……」
チラリとポームスとアル氏を見るクロウス氏に、二人して背筋を伸ばして応えていた。
「こちらとしてはもっと他の部屋に足を踏み入れてもらい、強者たちと戦っていただきたかったのですが。まさかアル達との会敵以降、一度も戦闘を行う事なくここまでこられるとは」
「立哨の女性二人の存在を忘れてはいけませんね。命は奪ってませんよ。眠ってはもらいましたが」
と、まるで自分が対処したかのようなコクリコさん。
対して、
「無益な流血を避けてくれることに感謝します。ストームトルーパーである彼女たちがこちらに報告をすることなく倒されるということには驚きですね」
「扉の外が騒がしくなっていた時点で気づいてはいたのでしょう?」
「多少ですが」
「十全で理解しておいて飄々と! 強者してますね!」
「称賛と受け取りますよコクリコ女史」
「ぬぅぅ……ぶれないその姿勢。トール、あのタンガタ・マヌは強敵ですよ」
「知ってますよ」
相対するクロウス氏。
側にいるアル氏とポームスはこちらの進入に対して未だに焦燥感を纏わせているけど、大立者ともなれば大人数でお邪魔しても問題なしといったところ。
真っ直ぐと伸びた背筋。
綺麗な姿勢で佇んでますわ。
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