異世界冒険記『ストレージ・ドミニオン』

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天空要塞

PHASE-1531【鉄壁】

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 次々と飛んでくるクロウス氏の大魔法を躱していくユーリさん。
 とはいえ、無数に飛んでくる攻撃を回避させ続けるのもよろしくない。

「ユーリさんを掩護」
 術者を攻撃すれば意識を阻害することも出来る。
 そうなれば、高火力装備による攻撃も可能。
 
 マスリリースを放てば、同時にコクリコもポッブフレアを放ってくれる。
 ユーリさんの回避による時間稼ぎもあってかマナを練る事が出来たようで、ポップフレアのサイズはラージサイズ。
 これも十分に高火力なんだよな。

 高火力なんだけども……、

「バーストフレアの如し――ですね」
 言いながら俺達の攻撃に対してアナイアレイションを発動――消滅させてくる。
 大魔法を発動しながら上位魔法の同時発動。

「やはり強いですね」
 感服したとばかりにコクリコは笑みを見せつつ言う。
 脅威となる相手だけども、自分が思い描く以上の力を持っている存在となれば、悔しさよりも敬服するというのは先ほどと同様。

「攻撃を防がれながらも笑みを見せてくる。いまだ余裕といったところですね。勇者殿」
 と、俺もコクリコと同じような表情になっていたようだ。
 余裕があると思っているところは訂正したいけど。

「楽しそうで何よりですが、現状を打破するまでには至らないようで私としては安堵しております」

「そうでもないさ」

「んん!?」

「素早いな」
 クロウス氏が強張った顔になれば、直ぐさま翼を羽ばたかせて天井へと移動。
 ユーリさんと俺達に意識を向けていたクロウス氏の背後までゲッコーさんが接近していたようだけど、すんでのところで逃げられた。

「姿を消し、気配を殺しておいて背後から声を発するのは下策なのでは?」

「そうだろうか?」

「なるほど!」
 天井までの移動――というより追いやられたと言ったところか。
 ゲッコーさんに上へと追い立てられたことでユーリさんは黄金の時間を得たといったところ。
 
 もちろん、俺達も。

「それは以前、見た記憶があります」
 ユーリさんが構えるのはスティンガー。
 その威力はクロウス氏も以前、目にしている。

「発射」

「これは厄介」
 ミサイルが発射機から飛び出し、ユーリさんから離れた位置でミサイル後方から勢いよく火を噴き出せば、クロウス氏へと向かっていく。

「プロテクション」
 流石にパッシブで展開している障壁では対応できない火力と判断したようで、分厚い障壁を展開。
 プロテクションだって使用できるよな。まあ、分かってはいたけど……。
 これには歯を軋らせてしまう。
 
 ネイコスとピリア。両方のマナ攻撃を消滅させるアナイアレイションに、パッシブで展開している不可視の障壁。
 これに加えて物理、マナの両方に対応可能なプロテクション。
 とんでもない攻撃力に加えて、豊富な防御方法よ……。
 
「でもって器用なことで……」
 スティンガーが着弾するところでプロテクションを展開すれば、謁見の間に爆風を広げたくないということなのか、展開した障壁の形を球体へと変化させ、爆発を障壁内部に閉じ込める。

「いやはや肝を冷やします。可能な限りこの場を傷つけたくないので」

「そりゃ申し訳ない」
 ここぞとばかりにゲッコーさんもユーリさんに続く。
 姿を見せて構えるのはこれまたスティンガー。

「やれやれ……。お姿を目にしたと思えば、また困った攻撃をしかけてきますね……」
 嘆息を混じらせて言葉を漏らしながら、向かってくるミサイルを同様に対処。

「よっしゃ!」
 仕掛けるなら正に今!

「!? これはいい連携!」
 ゲッコーさんの発射に合わせて跳躍。
 強者であるゲッコーさんが姿を見せたことでクロウス氏はミサイルだけでなく、ゲッコーさん本人にも意識を傾けたことで俺の接近をゆるした。
 プロテクションの内部で生じている爆発を横目に、下方からクロウス氏に向かって残火で斬り上げる。
 
 ブレイズを纏わせた斬撃。
 タイミングとしては最高の斬撃。

 ――……なんだけども……。

「手で受け止めるとか!」
 白手袋をしている右手が俺の斬撃を掴む。

「オーラアーマー。ガルム氏お得意のやつだ!」
 ついでにガリオンも。

「ガルム殿はお元気でしょうか?」

「ええ。すこぶる」

「それは何より」

「というか、こっちにいるって知ってんですね」

「レティアラ大陸から前魔王様を拉致したとなれば、ガルム殿だけでなくアルスン殿も貴方方の支配下に置かれていると考えるのが当然でしょう」

「言い方よ!」
 まるでこっちが極悪人のようじゃないか。
 掴んだ残火を放させるため、左手にマラ・ケニタルを持って斬りかかれば、もう片方の拳に纏ったオーラアーマーで受け流されてしまう。
 でも残火の刀身は手放してくれた。

「鉄壁な守りですね」

「ええ、攻めより守りが得意なんですよ」

「ひゅぃい!?」
 言ったそばから嘘を吐きやがる!
 なんちゅう鋭い蹴りだ……。
 背を仰け反らせながらハイキックを回避。
 鼻を掠めていく。
 あと少し遅れていたら鼻が俺の顔から無くなってたな……。

「しかも……」

「ガルム殿もお得意だったでしょう」
 着地してクロウス氏を見上げれば、腕だけでなく足にもオーラアーマーを纏っている。
 四肢にだけ纏わせているからか、厚みがある。
 どうせ体全体にも纏うことが出来るんだろうな。

 でも、

「こちとら一対一で豺覇を攻略してるんですよ!」

「それは素晴らしい!」

「あ、どうも」
 今までで一番の高い声。
 俺がガルム氏の豺覇を攻略している事がなぜか嬉しいようである。

「なんなら同様の技でも使いますか。突破してやりますよ」

「残念ですが私はガルム殿のようにファースンとアンリッシュを極めておりませんので、あのような絶技は扱えません」

「おう!?」

「拳打、蹴撃が関の山です」

「そうですか……」
 急降下からの白戦に対しては、全力回避で精一杯
 初手でノーマルな蹴りをくらって即座にハイポーションを飲まされた俺からすれば、現状の強化された白戦による攻撃を見舞われたら死に直結と言っても過言ではない。
 
 背中を伝う冷たい汗で体全体が震えるってもんだ……。
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