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天空要塞
PHASE-1538【それはそうとして】
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釈然としない俺を除き、無事に勝利を得たことを喜ぶ三人を眺める中、
「そうだ! お前たちの勝利だよ! 満足かな? 四人で一人を相手にして得た勝利は!」
「暴れるんじゃない」
怒気にて言葉を投げつけてくるのはアル氏。
ロマンドさん達に拘束される中であっても発言を続ければ、
「その通りだよ! 勇者だけなら間違いなく勝利を得る事は出来なかったね!」
ちびっ子ワイバーンに跨がり、離れた位置から怒号を飛ばしてくるポームス。
「本当の勝利を得たいのならば、勇者一人で戦いやがれ!」
ここで戦闘中は静かにしていたラズヴァートも二人に続くように声を荒げてくる。
「まっ! 一人だと勝てないよな――勇者! 保護者と付き添いがいないと勝てないもんな!」
「ふむん」
「どうしたよ。言い返せねえのか?」
ヘラヘラと笑ってくるじゃないかラズヴァート。
――――フッ。
「相手方の言は正しい」
「はぁ?」
「素直にお宅等の発言が正しいと言っただけ。俺一人で別次元の強さを有している存在に勝てるわけがない」
「なにを胸を張って堂々と言い切りますかね……」
「だって真実だから仕方ないさコクリコ。初手の段階でやばかったからな。タイマンなら間違いなく一撃目の後、回復も出来ずに死んでたぞ。それくらいクロウス氏と俺には明確な差があるって事だ。俺一人で勝てるような存在じゃない」
「力説されてもね……。まあトールが言うように、それだけの相手ではありましたけど」
「そうだろう。流石は俺と実力が近いだけあって理解が早いなコクリコ」
「事実、カラス頭の力に羨望の眼差しを注いでしまいましたからね」
「だよな」
「チッ! 全くよ。こっちの発言に対して、まんま受け入れるとかどんな神経してんだか。プライドないのかよ」
「あっても真実だから仕方ないだろう。俺はラズヴァートと違って素直な性格なんでね」
「ケッ!」
素直に自分たちの発言を俺が受け入れたもんだから、ラズヴァートは押し黙ってしまう。
でも、納得をしていない方も当然おり、
「勇者。次は自分と戦ってもらおう! カイディルは四人と戦った。自分も多くのスケルトン達と戦い――敗れた。敗れた側がこういうのも恰好の悪いことだと重々理解しているが、一対一にて戦ってもらいたい!」
コクリコを捕らえていた時とは違って言葉が荒いな~。
それほどクロウス氏の敗北を認めたくないってことなんだろう。
仲間意識が強いねアル氏。
そんな性格――嫌いじゃない。
「心意気――買いましょう」
「勇者はそうでなくては!」
拘束されている中、興奮と共に言葉を発するアル氏。
動きを制しているロマンドさん達からは本当にいいのか? といった視線を眼窩に灯る輝きにて向けてくるので、ゆっくりとした首肯で返せば、警戒をしつつ解放――しようとしたその時だった。
「……みっともな……いことこの上ないので……。――止めておきましょうか。アル」
「おっ」
お早いお目覚めだな。
でもって、発言の後半は呼吸を整えたようで、詰まらせることなく述べるのも流石。
「カイディル!」
「心配させて申し訳ないですねアル。ですが我々の敗北は揺るぎませんよ」
「何を言うカイディル。一対四だぞ!」
「それを言うならば勇者殿たちはここへ至るまで連戦に次ぐ連戦。しかも自分たちよりも多い数を相手にしてきたのです。数的不利にて負けたなどといった発言を我々が使用することは出来ませんよ」
「ぬぅ……」
と、諭されて押し黙るアル氏。
これにはラズヴァートだけでなくポームスも口を一文字に結ぶ。
「この場において我々は負けました。素直に敗北を受け入れましょう」
倒れていた姿から立ち上がる。
震えもなく、背筋の伸びた美しい佇まいにてクロウス氏が説得。
「うぅ……ぬぅぅぅ……」
アル氏は唸るだけだったが、
「……我々の負け……か……」
と、絞り出す。
「そうです」
「悔しいことこの上ないな」
「全くです」
会話のキャッチボールを交わしていくうちに、アル氏の声が穏やかなものへと変わっていく。
「負けか……」
「負けです」
「大立者がそう言うなら受け入れるしかないな」
クロウス氏が目覚めたと同時に体は自然と臨戦態勢となって強張ったけども、この場でこれ以上の戦闘がないと分かれば、俺の体は一気に弛緩する。
そんな俺の動きを見透かしたかのように、
「今の発言が欺瞞だったならどうしたのでしょうか」
指摘される。
油断したところに一撃。
クロウス氏の一撃を不意打ちで食らえば余裕で死ねる自信がある。
「そうしないと判断したからってのもあるだろうが、連戦続きで注意力が散漫になっているのが最たる原因。もう少しの間、神経を尖らせておけ」
と、注意を受ける。
注意しつつも、クロウス氏の背後に立ってくれるゲッコーさんのフォローには感謝。
何かしらのアクションを取っても速攻で制圧してくれる。
「負けました勇者殿」
「敗北宣言――確かに耳にしました」
「ですが、ここでは――ですので」
「もちろんです。ここまでくれば翼幻王殿にも力を示すだけです」
倒すという直接的な発言を避けておく。
「示す事で勇者御一行の見方も変わるかもしれません」
「良い方向で見てもらいたいですね」
クロウス氏が見方が変わるとか言ってくれる辺り、魔王軍の中では分かり合えるとは思える。
実際、ここの面々と戦ってきたけど悪い印象はあまり感じない。
相手からすればこっちは命を奪っている立場だから、印象は最悪でしかないだろうけど。
だとしても、指呼の距離に立つ強者からは悪感情は伝わってこない。
「最後の一撃、お見事でした」
「あの、本当に自分では何が起こったのか理解していないんですよ」
「では、一心不乱にて打ち込んだ一撃で私は敗北したということになりますね」
「ええ、まあ。はい……」
翼幻王軍の大立者であり、序列二位であろう立場をがむしゃらな一撃。
しかも自分でも把握できていないラッキーパンチで倒してしまっていると耳にすれば屈辱でしかないよな。
打ち込んだ俺が申し訳なく思う……。
返す言葉も自然と弱々しくなってしまった……。
――が、それはそうとして、
「一体、どういった一撃だったんでしょうか?」
「見舞われた者に質問するというのは、中々の胆力」
「胆力じゃなく、そいつの場合は慚愧という精神が欠如してるんですよ。大立者」
ここぞとばかりに馬鹿にしてくるラズヴァート。
でも反論できない……。
倒した相手に自分がどんな一撃を放ったんですか? といった発言は煽り行為とも取られるし、なによりも自分で打ち込んでおいて理解していないとか格好悪すぎなんだよな……。
「そうだ! お前たちの勝利だよ! 満足かな? 四人で一人を相手にして得た勝利は!」
「暴れるんじゃない」
怒気にて言葉を投げつけてくるのはアル氏。
ロマンドさん達に拘束される中であっても発言を続ければ、
「その通りだよ! 勇者だけなら間違いなく勝利を得る事は出来なかったね!」
ちびっ子ワイバーンに跨がり、離れた位置から怒号を飛ばしてくるポームス。
「本当の勝利を得たいのならば、勇者一人で戦いやがれ!」
ここで戦闘中は静かにしていたラズヴァートも二人に続くように声を荒げてくる。
「まっ! 一人だと勝てないよな――勇者! 保護者と付き添いがいないと勝てないもんな!」
「ふむん」
「どうしたよ。言い返せねえのか?」
ヘラヘラと笑ってくるじゃないかラズヴァート。
――――フッ。
「相手方の言は正しい」
「はぁ?」
「素直にお宅等の発言が正しいと言っただけ。俺一人で別次元の強さを有している存在に勝てるわけがない」
「なにを胸を張って堂々と言い切りますかね……」
「だって真実だから仕方ないさコクリコ。初手の段階でやばかったからな。タイマンなら間違いなく一撃目の後、回復も出来ずに死んでたぞ。それくらいクロウス氏と俺には明確な差があるって事だ。俺一人で勝てるような存在じゃない」
「力説されてもね……。まあトールが言うように、それだけの相手ではありましたけど」
「そうだろう。流石は俺と実力が近いだけあって理解が早いなコクリコ」
「事実、カラス頭の力に羨望の眼差しを注いでしまいましたからね」
「だよな」
「チッ! 全くよ。こっちの発言に対して、まんま受け入れるとかどんな神経してんだか。プライドないのかよ」
「あっても真実だから仕方ないだろう。俺はラズヴァートと違って素直な性格なんでね」
「ケッ!」
素直に自分たちの発言を俺が受け入れたもんだから、ラズヴァートは押し黙ってしまう。
でも、納得をしていない方も当然おり、
「勇者。次は自分と戦ってもらおう! カイディルは四人と戦った。自分も多くのスケルトン達と戦い――敗れた。敗れた側がこういうのも恰好の悪いことだと重々理解しているが、一対一にて戦ってもらいたい!」
コクリコを捕らえていた時とは違って言葉が荒いな~。
それほどクロウス氏の敗北を認めたくないってことなんだろう。
仲間意識が強いねアル氏。
そんな性格――嫌いじゃない。
「心意気――買いましょう」
「勇者はそうでなくては!」
拘束されている中、興奮と共に言葉を発するアル氏。
動きを制しているロマンドさん達からは本当にいいのか? といった視線を眼窩に灯る輝きにて向けてくるので、ゆっくりとした首肯で返せば、警戒をしつつ解放――しようとしたその時だった。
「……みっともな……いことこの上ないので……。――止めておきましょうか。アル」
「おっ」
お早いお目覚めだな。
でもって、発言の後半は呼吸を整えたようで、詰まらせることなく述べるのも流石。
「カイディル!」
「心配させて申し訳ないですねアル。ですが我々の敗北は揺るぎませんよ」
「何を言うカイディル。一対四だぞ!」
「それを言うならば勇者殿たちはここへ至るまで連戦に次ぐ連戦。しかも自分たちよりも多い数を相手にしてきたのです。数的不利にて負けたなどといった発言を我々が使用することは出来ませんよ」
「ぬぅ……」
と、諭されて押し黙るアル氏。
これにはラズヴァートだけでなくポームスも口を一文字に結ぶ。
「この場において我々は負けました。素直に敗北を受け入れましょう」
倒れていた姿から立ち上がる。
震えもなく、背筋の伸びた美しい佇まいにてクロウス氏が説得。
「うぅ……ぬぅぅぅ……」
アル氏は唸るだけだったが、
「……我々の負け……か……」
と、絞り出す。
「そうです」
「悔しいことこの上ないな」
「全くです」
会話のキャッチボールを交わしていくうちに、アル氏の声が穏やかなものへと変わっていく。
「負けか……」
「負けです」
「大立者がそう言うなら受け入れるしかないな」
クロウス氏が目覚めたと同時に体は自然と臨戦態勢となって強張ったけども、この場でこれ以上の戦闘がないと分かれば、俺の体は一気に弛緩する。
そんな俺の動きを見透かしたかのように、
「今の発言が欺瞞だったならどうしたのでしょうか」
指摘される。
油断したところに一撃。
クロウス氏の一撃を不意打ちで食らえば余裕で死ねる自信がある。
「そうしないと判断したからってのもあるだろうが、連戦続きで注意力が散漫になっているのが最たる原因。もう少しの間、神経を尖らせておけ」
と、注意を受ける。
注意しつつも、クロウス氏の背後に立ってくれるゲッコーさんのフォローには感謝。
何かしらのアクションを取っても速攻で制圧してくれる。
「負けました勇者殿」
「敗北宣言――確かに耳にしました」
「ですが、ここでは――ですので」
「もちろんです。ここまでくれば翼幻王殿にも力を示すだけです」
倒すという直接的な発言を避けておく。
「示す事で勇者御一行の見方も変わるかもしれません」
「良い方向で見てもらいたいですね」
クロウス氏が見方が変わるとか言ってくれる辺り、魔王軍の中では分かり合えるとは思える。
実際、ここの面々と戦ってきたけど悪い印象はあまり感じない。
相手からすればこっちは命を奪っている立場だから、印象は最悪でしかないだろうけど。
だとしても、指呼の距離に立つ強者からは悪感情は伝わってこない。
「最後の一撃、お見事でした」
「あの、本当に自分では何が起こったのか理解していないんですよ」
「では、一心不乱にて打ち込んだ一撃で私は敗北したということになりますね」
「ええ、まあ。はい……」
翼幻王軍の大立者であり、序列二位であろう立場をがむしゃらな一撃。
しかも自分でも把握できていないラッキーパンチで倒してしまっていると耳にすれば屈辱でしかないよな。
打ち込んだ俺が申し訳なく思う……。
返す言葉も自然と弱々しくなってしまった……。
――が、それはそうとして、
「一体、どういった一撃だったんでしょうか?」
「見舞われた者に質問するというのは、中々の胆力」
「胆力じゃなく、そいつの場合は慚愧という精神が欠如してるんですよ。大立者」
ここぞとばかりに馬鹿にしてくるラズヴァート。
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