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天空要塞
PHASE-1550【器でかし】
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「妾の右腕に勝利した者達よ。何を望む?」
じっと、俺を見てくる。
独特なオッドアイに見られるとゾクリとする。
でも今のところ恐怖や殺意をぶつけてくるという事はない。
「この要塞に囚われている四大聖龍の一柱を解放していただきたい」
「おもしろみのない当然の言い分ね」
「おもしろみが無くて申し訳ありません。可能ならば友好的な関係を結べればとも思っております」
「へえ。おもしろみを通り越してお馬鹿な発言ね勇者。魔王軍に属する者達と友好関係なんて考えを――しかも大幹部である妾を前にして言うのだから」
「誰もが実行しなかったことを実行しようとする者を愚か者として見る者も多いでしょう。ですが成功する者は実行した者です。フロンティアスピリッツってやつです」
「――単純なお馬鹿ではないようね。勇者なのだから、それなりの教養があるのは当然といえば当然か」
「「「「教養?」」」」
「おい!」
なんで教養と言う部分で皆して声を合わせる。
確かに人よりやや劣る頭だが、相手のトップが素直に褒めてくれているのだから、そこは皆して鷹揚に頷いていればいいんだよ!
「一連の流れで仲間達とも気さくな関係を築いているというのも理解した。まあ、こんなところまで一緒に来てくれるのだから、十二分に強い結束力ではあるのでしょうけど」
「もちろんですよ!」
ここは胸を張って言わせてもらおう。
俺だけでなく、俺の左肩に座っていたミルモンも俺と一緒の動きを見せてくれる。
「うん!」
相対する美人様からすこぶる機嫌の良い、はねた声が俺へと届く。
なんか好感度が高いような。
これは敵対する中で生まれる愛――というものがありそうな予感。
「よい話し合いが出来そうですね」
「なんで気持ち悪い声になるんですかね?」
なんで決めている時にばかりそういう言い方をするんだい? コクリコ。
「話し合いもいいでしょうけど、この地の長がこのまま勇者と対話だけで事を済ませるというわけにはいかないのよね~」
体に走る寒気は先ほどのとは違う。
敵意が伝わってくる睨み。
右目の黒い結膜を見開かせ、黄色い瞳の瞳孔を絞るようにしての睨み。
瞬時にして俺達は構える。
「カイディルを倒した力を妾にも示してみせよ」
「示しましょう!」
「そこは対話で! と、縋らないのね」
「問答は全てが終わってからのほうがいいでしょう。力を示さない限り、どのみちまともに取り合ってはくれないのでしょう?」
「物わかりが良くて好感が持てるわね。妾と同じ立場である愚か者共とは比べものにならないくらいに好感が持てる」
「嬉しい限りです。片方の品格はまだ把握していませんが、三百万の頂に立つ存在の性格を受け付けないというのは自分も同じです」
「蹂躙王は自らの見栄えだけに重きを置く狭量で矮小な存在だから」
「それは部下の質からも分かるというものです。それに比べてここの兵達は好感を持てる方々ばかり。羨望の眼差しを向けたくなる方々も多くおります」
「嬉しい事を言ってくれるわね」
「上がちゃんとしてれば、下の者達もちゃんとする。お手本のような組織作りですよ」
「誑し込むのも得意のようね」
「本心です」
「なら素直に受け取り、その礼として妾の力を見せましょう」
できれば見せてほしくはないんだけど……。
なんて、弱気を口から漏らすどころか、心底でも思っちゃいかんし、態度に出してもいけないよな。
気取られれば好感度は下がることだろう。
「ポームス。離れていなさい」
「御意!」
「提案なのだけど、そちらの左肩の君も離れていなさい」
「オイラのことかい?」
「そう」
流石はこの要塞の主。
相手側への配慮も忘れない。
ミルモンの見た目から幼子と判断してくれたんだろう。
「配慮には感謝するけど、勲功爵であるオイラを見た目だけで判断してもらっては困るよ!」
この地のトップであろうとも、物怖じせずに左肩で立って胸を反らせて言い切ってみせる。
「私も相手方の配慮に賛同なんだがな」
「お姉ちゃん! オイラは兄ちゃんと共に戦うから!」
「わ、分かった!」
ベルを威圧するなんて凄いじゃないかミルモン。
「体は小さくとも器は巨大。ミルモンと言ったわね」
「そう! 魔族が住むアザアル界の勲功爵ミルモンとはオイラのこと!」
「聞いたことのない場所ではなるけれど、勇者一行の立派な戦力として判断し、しかるべき対応を取らせてもらいましょう」
「もちろんだとも!」
「本当にいい気概ね」
優しさのある声でミルモンを称え、
「三爪痕が一人。翼幻王ベスティリス・バルフレア・エアリアス。手ずから勇者一行の相手をしてあげましょう」
三対六枚の純白からなる翼を大仰に広げての名乗り。
「おう!」
ミルモンに負けじと気合いを発しつつ、周囲を警戒。
――…………。
――……。
「あれ、お一人ですか? 一人で相手をすると?」
「ええ、そうよ」
「通路にストームトルーバーが二十人はいたようですけど」
「この場においての戦いとなれば、申し訳ないけどあの子たちでは邪魔になるだけ。ここへと辿り着いている時点で、貴方たちの相手にはなり得ないもの」
痛烈と取るべきか、部下に被害が出ないようにという優しさからか。
それとも、どちらもか。
決して弱くはないんだけどね。
でも、タイマンなら俺でも勝てるからな。
俺以上の面々が揃っているこの状況となれば、いても確かに意味は無いか。
翼幻王が全力で戦うと決断したとなれば、他に意識を散らすことなく俺たちに注力したいだろうしな。
――クロウス氏や他の幹部たちが束になって仕掛けても太刀打ちできない存在が目の前に立つ。
「今までで経験してきた高難易度を軽く更新してくる存在――」
「そのようだな」
こちらの最強枠であるベルの声にもやや強張ったものを感じた。
「でも、ここを限界と定めてしまえば、ショゴスを倒すことなんて土台無理。なので――翼幻王殿」
「なに?」
「貴女には俺の――俺達のロイター板になっていただく!」
「ロイターバンがなんのことなのかは分からないけど、屈服させたいという強い思いは伝わってきたわよ」
なんか屈服とか言われると、エロい想像をしてしまうよ。
「はい余裕! トールが余裕みたいです! 頭の中で今の発言をいやらしい方向で考えているというのが筒抜けです!」
「最低だね!」
「二人しておかしな勘ぐりはやめてもらおうか!」
最近のコクリコとシャルナのツッコミはキツいや……。
「ああ、お尻の辺りがムズムズする~」
キッーってなってる二人に加わるように、左肩からは不快な声が上がってくる。
「ここ一番なんだから気を引き締めろよ!」
「トールが一番ゆるんでいるんですよ!」
「そうだよ!」
「分かったもういい。俺が悪かったから目の前に集中しなさい!」
最高難易度となろう相手の前でアホなやり取りしちまったぜ……。
「雑談はもういいかしら?」
「緊迫感がなくてすみませんね……」
「気にしなくて良いわよ。見ていて楽しかったから」
こういったやり取りを待ってくれているところでも、翼幻王の器のデカさが分かるってもんだよ。
じっと、俺を見てくる。
独特なオッドアイに見られるとゾクリとする。
でも今のところ恐怖や殺意をぶつけてくるという事はない。
「この要塞に囚われている四大聖龍の一柱を解放していただきたい」
「おもしろみのない当然の言い分ね」
「おもしろみが無くて申し訳ありません。可能ならば友好的な関係を結べればとも思っております」
「へえ。おもしろみを通り越してお馬鹿な発言ね勇者。魔王軍に属する者達と友好関係なんて考えを――しかも大幹部である妾を前にして言うのだから」
「誰もが実行しなかったことを実行しようとする者を愚か者として見る者も多いでしょう。ですが成功する者は実行した者です。フロンティアスピリッツってやつです」
「――単純なお馬鹿ではないようね。勇者なのだから、それなりの教養があるのは当然といえば当然か」
「「「「教養?」」」」
「おい!」
なんで教養と言う部分で皆して声を合わせる。
確かに人よりやや劣る頭だが、相手のトップが素直に褒めてくれているのだから、そこは皆して鷹揚に頷いていればいいんだよ!
「一連の流れで仲間達とも気さくな関係を築いているというのも理解した。まあ、こんなところまで一緒に来てくれるのだから、十二分に強い結束力ではあるのでしょうけど」
「もちろんですよ!」
ここは胸を張って言わせてもらおう。
俺だけでなく、俺の左肩に座っていたミルモンも俺と一緒の動きを見せてくれる。
「うん!」
相対する美人様からすこぶる機嫌の良い、はねた声が俺へと届く。
なんか好感度が高いような。
これは敵対する中で生まれる愛――というものがありそうな予感。
「よい話し合いが出来そうですね」
「なんで気持ち悪い声になるんですかね?」
なんで決めている時にばかりそういう言い方をするんだい? コクリコ。
「話し合いもいいでしょうけど、この地の長がこのまま勇者と対話だけで事を済ませるというわけにはいかないのよね~」
体に走る寒気は先ほどのとは違う。
敵意が伝わってくる睨み。
右目の黒い結膜を見開かせ、黄色い瞳の瞳孔を絞るようにしての睨み。
瞬時にして俺達は構える。
「カイディルを倒した力を妾にも示してみせよ」
「示しましょう!」
「そこは対話で! と、縋らないのね」
「問答は全てが終わってからのほうがいいでしょう。力を示さない限り、どのみちまともに取り合ってはくれないのでしょう?」
「物わかりが良くて好感が持てるわね。妾と同じ立場である愚か者共とは比べものにならないくらいに好感が持てる」
「嬉しい限りです。片方の品格はまだ把握していませんが、三百万の頂に立つ存在の性格を受け付けないというのは自分も同じです」
「蹂躙王は自らの見栄えだけに重きを置く狭量で矮小な存在だから」
「それは部下の質からも分かるというものです。それに比べてここの兵達は好感を持てる方々ばかり。羨望の眼差しを向けたくなる方々も多くおります」
「嬉しい事を言ってくれるわね」
「上がちゃんとしてれば、下の者達もちゃんとする。お手本のような組織作りですよ」
「誑し込むのも得意のようね」
「本心です」
「なら素直に受け取り、その礼として妾の力を見せましょう」
できれば見せてほしくはないんだけど……。
なんて、弱気を口から漏らすどころか、心底でも思っちゃいかんし、態度に出してもいけないよな。
気取られれば好感度は下がることだろう。
「ポームス。離れていなさい」
「御意!」
「提案なのだけど、そちらの左肩の君も離れていなさい」
「オイラのことかい?」
「そう」
流石はこの要塞の主。
相手側への配慮も忘れない。
ミルモンの見た目から幼子と判断してくれたんだろう。
「配慮には感謝するけど、勲功爵であるオイラを見た目だけで判断してもらっては困るよ!」
この地のトップであろうとも、物怖じせずに左肩で立って胸を反らせて言い切ってみせる。
「私も相手方の配慮に賛同なんだがな」
「お姉ちゃん! オイラは兄ちゃんと共に戦うから!」
「わ、分かった!」
ベルを威圧するなんて凄いじゃないかミルモン。
「体は小さくとも器は巨大。ミルモンと言ったわね」
「そう! 魔族が住むアザアル界の勲功爵ミルモンとはオイラのこと!」
「聞いたことのない場所ではなるけれど、勇者一行の立派な戦力として判断し、しかるべき対応を取らせてもらいましょう」
「もちろんだとも!」
「本当にいい気概ね」
優しさのある声でミルモンを称え、
「三爪痕が一人。翼幻王ベスティリス・バルフレア・エアリアス。手ずから勇者一行の相手をしてあげましょう」
三対六枚の純白からなる翼を大仰に広げての名乗り。
「おう!」
ミルモンに負けじと気合いを発しつつ、周囲を警戒。
――…………。
――……。
「あれ、お一人ですか? 一人で相手をすると?」
「ええ、そうよ」
「通路にストームトルーバーが二十人はいたようですけど」
「この場においての戦いとなれば、申し訳ないけどあの子たちでは邪魔になるだけ。ここへと辿り着いている時点で、貴方たちの相手にはなり得ないもの」
痛烈と取るべきか、部下に被害が出ないようにという優しさからか。
それとも、どちらもか。
決して弱くはないんだけどね。
でも、タイマンなら俺でも勝てるからな。
俺以上の面々が揃っているこの状況となれば、いても確かに意味は無いか。
翼幻王が全力で戦うと決断したとなれば、他に意識を散らすことなく俺たちに注力したいだろうしな。
――クロウス氏や他の幹部たちが束になって仕掛けても太刀打ちできない存在が目の前に立つ。
「今までで経験してきた高難易度を軽く更新してくる存在――」
「そのようだな」
こちらの最強枠であるベルの声にもやや強張ったものを感じた。
「でも、ここを限界と定めてしまえば、ショゴスを倒すことなんて土台無理。なので――翼幻王殿」
「なに?」
「貴女には俺の――俺達のロイター板になっていただく!」
「ロイターバンがなんのことなのかは分からないけど、屈服させたいという強い思いは伝わってきたわよ」
なんか屈服とか言われると、エロい想像をしてしまうよ。
「はい余裕! トールが余裕みたいです! 頭の中で今の発言をいやらしい方向で考えているというのが筒抜けです!」
「最低だね!」
「二人しておかしな勘ぐりはやめてもらおうか!」
最近のコクリコとシャルナのツッコミはキツいや……。
「ああ、お尻の辺りがムズムズする~」
キッーってなってる二人に加わるように、左肩からは不快な声が上がってくる。
「ここ一番なんだから気を引き締めろよ!」
「トールが一番ゆるんでいるんですよ!」
「そうだよ!」
「分かったもういい。俺が悪かったから目の前に集中しなさい!」
最高難易度となろう相手の前でアホなやり取りしちまったぜ……。
「雑談はもういいかしら?」
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