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天空要塞
PHASE-1576【緩和しても依存はしない】
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「貴男の不思議な力。魔王軍の中では話題になっているわよ。それも短期間のうちにね。この閉鎖された地にすら、わざわざ報告が入ってきたくらいですもの」
「デミタス――か」
名を口にすれば、小さな頷き。
エルフの国での出来事だな。
デミタスによってもたらされた報告を耳にすれば、貪欲な存在であるショゴスが俺の所有物に強い関心を持つのは当然。
「妾達が目にしたことのないような不思議な物を次々と召喚できるそうね」
「ああ、はい」
「この要塞の門を破壊した鋼鉄の象もそういった力なのでしょうね。初めて目にするものだったから」
「見てたんですね」
「もちろん。そして――あの程度じゃないのでしょう。貴男の力は?」
「それはどうでしょうか。俺にだって限界はありますからね」
「アレが限界であるなら、ショゴスは貴男に興味を示さないでしょう」
「ティーガーをあの程度って言われるのは心外ですね」
「鋼鉄の象はティーガーと言うのね。火力は凄まじかったけど、動きは鈍重そうなのよね。アレだと的になる。堅牢さがあろうとも、妾なら通用するだけの攻撃手段を持っているわよ」
「――確かに」
如何に堅牢で高火力であろうとも、本気のファンタジーパワーを前にすれば、流石にティーガー1でも耐えられない。
ベスティリスで可能なのだから、それ以上であるショゴスともなれば、その程度では興味を示さないってのは当然。
デミタス。やっぱり最後に見せたのを報告したのかな。
あの時は戦いを終えたかったから、俺のストレージデータにある中の最強格を見せつける事で戦闘回避に成功はしたけども……。
魔王護衛軍の中でも精鋭であるレッドキャップス所属なんだからな……。報告はきっちりとしてるわな……。
自分の中の最強手札を見せたのはやはり下策だったかな……。
だが、中途半端な物を見せていたら、あの場で戦闘続行になって殺されていただろうしな。
深手は負わせていたけど、あのまま続けていたら俺だけでなく、俺を守ろうとしてくれたゴブリン達も命を奪われていただろう。
あの場ではあれが最適解だと思いたい。
――……でも……。
「後悔でもしてるかのような顔で考え事ね」
相対する方からは見透かされているし……。
「貴男はショゴスから狙われる立場。誰よりも優先的に――ね」
ただでさえ冷え切るような内容なのに、わざわざ氷を思わせるような語調で言わなくてもいいのにね……。
「人類を中心とした者達による反転攻勢。滅亡一歩手前からのこの奇跡。それをもたらした者の存在。現魔王も貴男の力を目にした報告者の発言内容に、それはそれは耳を傾けたことでしょうよ」
軽く言ってくれるね……。
絶望的なところから些か押し返した程度でしかないだろうが、それを可能としていることがやはりショゴスとしては驚きなんだろう。
「ご執心であり試されてもいる」
「試す? 翼幻王殿のように?」
「力量を見るという意味では同じね」
ベスティリスは風龍を救い出すための力――俺達の協力を欲し、ショゴスは自身の力を更に高めるため、俺の能力を欲するってところか。
「ショゴスはどうやって俺を試すんですかね? 大幹部の一角が敗れたとなればそれを見極めとし、己が動くってところでしょうか?」
「直々に攻めてくれるなら事が早く済んで助かる。こちらの進行条件が色々と省けるからな」
ベルの発言。
実際にそれが出来そうだからと、ベスティリスは空笑い。
空笑いの後、
「それは無いわね。腰はかなり重いから。見極めつつ、利用し、そして奪うって感じかしらね」
「利用ですか」
デミタスも俺に似たような事を言っていたな。
「お互い利用関係であるが、これ以上は力をつけさせたくないってことなんでしょうかね」
継げば、
「蹂躙王は自身の配下以外からはすこぶる嫌われているから」
「でも、まだ互いに利用価値があると思っているんでしょうね」
「当然ね」
「と、なれば――脅威としてはなんら変わらないわけか。こうなると俺達の方にも新たな力が加わってほしいですよね」
「まったくよね」
――……他人事みたいに返してくる顔は悪戯じみたもの。
「翼幻王殿。我々の実力はどうでしたか?」
ここはそんな表情を無視しつつ、神妙な面持ちとなって問う。
そうすることで、ベスティリスも今まで浮かべていた表情とは違うものに変わってくれる。
「強かったわね。何よりも妾の想像を超えるだけの力を有している者たちが揃っている。その中心にいる勇者はまだまだだけど」
「理解しています」
「理解しているなら怠惰に溺れず、これからも精進するんでしょうね。最後の最後は締まらなかったけども、それでも妾を煩わせるだけの力は見せてくれたので今後に期待。そして――勇者が持つ力にも期待したいわね」
「ああ、はい」
「あら? 重い返事ね。使用する事に何かしらの問題か制約でもあるのかしら?」
別段ないんだけども、
「甘えは許さないので」
「ああ……。なるほど……」
ベルによる発言で全てを理解したようで、ベスティリスは苦笑い。
「でもね剣神。甘えがどうこうとか言っている場合じゃない時は使用させることも大事よ。でなければ、目に見え手が届く者達は守れても、その範囲外にいる者達は救えないという状況にもなる。あまり勇者に制約を強いるのはよくないわね。今後の戦いでは緩和させたほうがいいでしょう。今までと違って、勇者や剣神達の範囲外の者達が、当たり前のように圧倒的な力の前に晒されるのだから」
「――正論ですね」
長々と語るベスティリスの内容に頷くベル。
「まあ、勇者個人の底上げも重要なのは妾も理解した。個の力を育てながら、有した力も扱うという柔軟性も持たないとね」
こちらのスパルタ二人に滔々と語るこの地の主。
これにはベルだけでなく、ゲッコーさんも小さく頷く。
俺自身、最初の頃は召喚した存在に全てを丸投げしようとしていたけど、それじゃいかんと思って要所要所でしか使用していなかったが、これからは大軍勢を相手にすることになる。
使うべき時は使わないとな。
「だが、勇者よ」
と、ここで水龍タレスが細長い口を開く。
「力の使用はよくても、使い続けることに感覚が麻痺すれば、その先にあるのは闇が支配する奈落。奈落の縁に立つ事だけは決して避けよ。努々それを忘れぬ事だ」
「もちろんです」
そうなる前に頼れるスパルタ二人が俺を止めてくれる。
頼ってばかりじゃなく、自分自身でも律しないとな。
「デミタス――か」
名を口にすれば、小さな頷き。
エルフの国での出来事だな。
デミタスによってもたらされた報告を耳にすれば、貪欲な存在であるショゴスが俺の所有物に強い関心を持つのは当然。
「妾達が目にしたことのないような不思議な物を次々と召喚できるそうね」
「ああ、はい」
「この要塞の門を破壊した鋼鉄の象もそういった力なのでしょうね。初めて目にするものだったから」
「見てたんですね」
「もちろん。そして――あの程度じゃないのでしょう。貴男の力は?」
「それはどうでしょうか。俺にだって限界はありますからね」
「アレが限界であるなら、ショゴスは貴男に興味を示さないでしょう」
「ティーガーをあの程度って言われるのは心外ですね」
「鋼鉄の象はティーガーと言うのね。火力は凄まじかったけど、動きは鈍重そうなのよね。アレだと的になる。堅牢さがあろうとも、妾なら通用するだけの攻撃手段を持っているわよ」
「――確かに」
如何に堅牢で高火力であろうとも、本気のファンタジーパワーを前にすれば、流石にティーガー1でも耐えられない。
ベスティリスで可能なのだから、それ以上であるショゴスともなれば、その程度では興味を示さないってのは当然。
デミタス。やっぱり最後に見せたのを報告したのかな。
あの時は戦いを終えたかったから、俺のストレージデータにある中の最強格を見せつける事で戦闘回避に成功はしたけども……。
魔王護衛軍の中でも精鋭であるレッドキャップス所属なんだからな……。報告はきっちりとしてるわな……。
自分の中の最強手札を見せたのはやはり下策だったかな……。
だが、中途半端な物を見せていたら、あの場で戦闘続行になって殺されていただろうしな。
深手は負わせていたけど、あのまま続けていたら俺だけでなく、俺を守ろうとしてくれたゴブリン達も命を奪われていただろう。
あの場ではあれが最適解だと思いたい。
――……でも……。
「後悔でもしてるかのような顔で考え事ね」
相対する方からは見透かされているし……。
「貴男はショゴスから狙われる立場。誰よりも優先的に――ね」
ただでさえ冷え切るような内容なのに、わざわざ氷を思わせるような語調で言わなくてもいいのにね……。
「人類を中心とした者達による反転攻勢。滅亡一歩手前からのこの奇跡。それをもたらした者の存在。現魔王も貴男の力を目にした報告者の発言内容に、それはそれは耳を傾けたことでしょうよ」
軽く言ってくれるね……。
絶望的なところから些か押し返した程度でしかないだろうが、それを可能としていることがやはりショゴスとしては驚きなんだろう。
「ご執心であり試されてもいる」
「試す? 翼幻王殿のように?」
「力量を見るという意味では同じね」
ベスティリスは風龍を救い出すための力――俺達の協力を欲し、ショゴスは自身の力を更に高めるため、俺の能力を欲するってところか。
「ショゴスはどうやって俺を試すんですかね? 大幹部の一角が敗れたとなればそれを見極めとし、己が動くってところでしょうか?」
「直々に攻めてくれるなら事が早く済んで助かる。こちらの進行条件が色々と省けるからな」
ベルの発言。
実際にそれが出来そうだからと、ベスティリスは空笑い。
空笑いの後、
「それは無いわね。腰はかなり重いから。見極めつつ、利用し、そして奪うって感じかしらね」
「利用ですか」
デミタスも俺に似たような事を言っていたな。
「お互い利用関係であるが、これ以上は力をつけさせたくないってことなんでしょうかね」
継げば、
「蹂躙王は自身の配下以外からはすこぶる嫌われているから」
「でも、まだ互いに利用価値があると思っているんでしょうね」
「当然ね」
「と、なれば――脅威としてはなんら変わらないわけか。こうなると俺達の方にも新たな力が加わってほしいですよね」
「まったくよね」
――……他人事みたいに返してくる顔は悪戯じみたもの。
「翼幻王殿。我々の実力はどうでしたか?」
ここはそんな表情を無視しつつ、神妙な面持ちとなって問う。
そうすることで、ベスティリスも今まで浮かべていた表情とは違うものに変わってくれる。
「強かったわね。何よりも妾の想像を超えるだけの力を有している者たちが揃っている。その中心にいる勇者はまだまだだけど」
「理解しています」
「理解しているなら怠惰に溺れず、これからも精進するんでしょうね。最後の最後は締まらなかったけども、それでも妾を煩わせるだけの力は見せてくれたので今後に期待。そして――勇者が持つ力にも期待したいわね」
「ああ、はい」
「あら? 重い返事ね。使用する事に何かしらの問題か制約でもあるのかしら?」
別段ないんだけども、
「甘えは許さないので」
「ああ……。なるほど……」
ベルによる発言で全てを理解したようで、ベスティリスは苦笑い。
「でもね剣神。甘えがどうこうとか言っている場合じゃない時は使用させることも大事よ。でなければ、目に見え手が届く者達は守れても、その範囲外にいる者達は救えないという状況にもなる。あまり勇者に制約を強いるのはよくないわね。今後の戦いでは緩和させたほうがいいでしょう。今までと違って、勇者や剣神達の範囲外の者達が、当たり前のように圧倒的な力の前に晒されるのだから」
「――正論ですね」
長々と語るベスティリスの内容に頷くベル。
「まあ、勇者個人の底上げも重要なのは妾も理解した。個の力を育てながら、有した力も扱うという柔軟性も持たないとね」
こちらのスパルタ二人に滔々と語るこの地の主。
これにはベルだけでなく、ゲッコーさんも小さく頷く。
俺自身、最初の頃は召喚した存在に全てを丸投げしようとしていたけど、それじゃいかんと思って要所要所でしか使用していなかったが、これからは大軍勢を相手にすることになる。
使うべき時は使わないとな。
「だが、勇者よ」
と、ここで水龍タレスが細長い口を開く。
「力の使用はよくても、使い続けることに感覚が麻痺すれば、その先にあるのは闇が支配する奈落。奈落の縁に立つ事だけは決して避けよ。努々それを忘れぬ事だ」
「もちろんです」
そうなる前に頼れるスパルタ二人が俺を止めてくれる。
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