異世界冒険記『ストレージ・ドミニオン』

FOX4

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天空要塞

PHASE-1592【随行者】

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 ――さてと。
 
 ――皆して広間から移動しての――、

「帰ります」

「次に出会う時は、互いに背中を預けながらの戦場ということで」

「喜んで委ねますね」

「いいわよ」
 と、クロウス氏と戦った謁見の間にてベスティリスに別れの挨拶。
 いいわよ――の妖艶な言い様に、朝っぱらから俺のERO値が上がる上がる。

「勇者としての顔で対応してもらいたいですね」

「本当だよ!」
 はいはい、反省しますよ。いつもの如く二人して怒らないでいただきたい。

「男前が上がったね。ケサランパサラン」

「そっちこそ。コウモリ」
 相対する方では、ポームスがベスティリスの側でちびっ子ワイバーンに騎乗して待機。
 俺の左肩に座るミルモンと棘のある声音でやり取り。
 そうなればベスティリスは第二ラウンドが始まるのかと不安げ。
 でも、昨日よりはまだ穏やかな感じだ。
 二人揃って腫れ上がった顔。ライバル関係だからだろう。相手が回復をしないなら自分も意地でもしないってのが伝わってくる。
 ポームスもゲッコーさんのアドバイスを受けて寝なかったみたいだし。
 腫れや痛みが理由でもあるのだろうけど、戦いの興奮で眠れなかったってのもあるんだろうな。

「次に会った時は完勝させてもらうよ」

「は! 言ってなよ。側付きなんかじゃ夢のまた夢だけどね。最前線で活動するオイラは今以上になるからね。次に会う時は天壌の差ってやつさ」

「はいはい。二人ともそこまで。俺と翼幻王ジズ殿との話が進まないからね」

「では話を戻して。お互いが協力関係となるわけだから、こちらからも助力をしたい」

「助力ですか?」
 弁償もしなくていいし、コクリコには高価な魔道具を賜った。
 十分なんだけどね。

「こちらから二名を同行者として出したいと思うのだけれど」

「二人の同行者ですか?」

「ええ、少なすぎて申し訳ないけどね」
 本来なら大隊規模の兵員を動かしてやりたいが、現状は秘密協定みたいなもの。当然ながら大げさには動かせない。
 なので二人。
 この二人ってのは、こっちサイドとベスティリスサイドとの関係性を維持するための役割なんだろうね。

「それで、その二人というのは?」

「まずは――」
 チラッと横を見るベスティリス。
 昨日と一緒の定位置に立つのは、盆を持っていた美人ストームトルーバー。

「ミルディ」

「はい」
 ベスティリスがそう呼べば、俺の方へと近づき典雅な一礼。

「そのミルディを王都に派遣させてもらいたいのよ。わらわの最も側にいる者だから実力は確かよ。戦闘もだけど、それ以上に内務に長けている優秀な子よ。急な申し出だから、そちらの王も間者と疑うかもしれないけど、そこは勇者が取り成してくれれば助かるわね」
 と、ここでも羊皮紙。
 ミルディという名のフェイレンの才が書かれたものらしい。
 推薦状や履歴書みたいなもんだな。

「分かりました。もし宜しければ、内のギルド預かりという体でいいでしょうか。城勤めよりも自由だと思います。なにより様々な種族が活動していますからね」

「それは願ってもないわね。様々な種族というのも好感が持てるし」

「今までとは違いますよ」
 驕り高ぶった人間により、亜人達が苦しめられた時代もあったというのは知っている。
 俺達のギルドは、そんな壁を取っ払っていくからね。

「唯才是挙が第一なので」

「素晴らしい。才なら妾が保証する。その子のことを宜しくお願い」

「はい」
 横に立つミルディさんに軽く会釈をすれば、

「ミルディ・ホーネスです。お気軽にミルディとお呼びください。ベスティリス様と勇者殿との関係性を更に強固なものとするため励む所存でございます」

「よろしくお願いします。内務に秀でているとなれば、先生――ギルド副会頭も喜ぶことでしょう」

「敬語も結構です」

「ああ、はい。あ、うん。分かった。よろしくミルディ」

「はい」
 微笑みが返ってくる。
 ライトグリーンの艶やかな髪は、お団子タイプのアップヘア。
 碧眼で切れ長の瞳。
 微笑みの中に見える強者としての風格も感じ取れるフェイレン。
 うむ。美しい。
 
 戦闘だけでなく内務にも長けているのなら、先生の近くで活躍してもらうのがいいだろう。
 適材適所の神であり、人物の内面も見極めることが可能な先生なら、ミルディを上手く起用してくれることだろう。
 念のため、監視することも考えておかないとな。
 信じてはいるけど、一応、魔王軍でもあるからな。
 先生の護衛メンバーには、その辺のこともお願いしとかないとな。

「念のために監視はつけたほうがいいと思うの」

「は!? へっ!?」
 俺の考えは筒抜けか!? まさかベスティリスから言ってくるなんてね。

「妾たちはまだ魔王軍に席を置いているわけだし、監視は必要。そっちのほうがお互いに気を遣わなくていいでしょうからね」
 腹の探り合いから疑心暗鬼になるよりは、最初から監視対象としておいたほうが良いという提案は有り難いね。

「お互い波風が立たないように、その提案に賛同させていただきます」
 同様の考えで助かったよ。
 ミルディも了承してくれる。
 お互いが信頼しあうためには、まずはその土台作りが大事だからな。
 
 付き合いの中で生まれる絆が信頼へと繋がっていくことで、監視対象という立場も自然と無くなるってもんだ。

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