異世界冒険記『ストレージ・ドミニオン』

FOX4

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驕った創造主

PHASE-1602【塩対応】

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 ええっと、

「つまり、その消えた五人が怪しいと?」

「主のご想像通りかと。ユルガンに五人の人相を聞きましたが、顔も名を分からないということでした」

「多くを従えてきたから、その中に潜んでいれば気づかれずにすむってことか」
 人の中に紛れさせたいのなら人の中。

 ――!?

「これが先生とゲッコーさんが言ってた……なんだったかな……。なんちゃら神父の話か」

「ブラウン神父だ」

「そう、それですよゲッコーさん」

「賢い人物はどこへ小石を隠すか? 浜辺に。木の葉をどこへ隠すか? 森の中に。ですね」
 先生が続く。
 護衛の中で護衛を目的としていないのが五人。

「そいつ等がゴロ太の失踪に関与していると考えていいわけですね?」

「あると見て間違いないかと」
 先生が間違いないと言うなら、それは間違いないんだろう。

「ハダン伯」
 膝をついて目線を合わせつつ名を発せば、

「今すぐにその者達の事を調べさせます!」
 さっきと違って力強く立ち上がれば、玉座方向に一礼し、待機室へと向かって猛ダッシュ。
 あり得ないガバガバ編制だったようだからな。ユルガンとその他の上役たちは叱責を受けるだろう。
 そこはロイル領の中だけで反省会でもしてもらおう。

「しかし、ここまで子グマであるゴロ太に執着するとは……。ゴロ太を取り入れることで成し得る――何かがあるんだろうか?」
 ――カリオネルもゴロ太のことを狙っていたな。
 実際はカリオネルにすり寄ってきたミラージュと名乗った人物が欲していたようだけど。
 ネポリスで隠れて実験をしていた組織――カイメラ。
 このミラージュことゲッコーさん命名のジョン・ドゥもこのカイメラの一員と思われる。
 そして今回のハダン伯の側でもゴロ太。
 
 ――ゴロ太、ゴロ太、ゴロ太。

「ゴロ太って一体なんなんだ?」
 人語を話し、他の動物とも会話が出来る。
 いつまでも成長することなく、愛らしくもゲッコーさん並の渋い声である子グマ――ってのが俺らの認識。
 その認識以外の事を知っているからこそ、欲する者達がいる。
  
 そして、今回の件には――、

「カイメラが関わっているのかな?」

「間違いなく」
 ここでも先生から間違いないと太鼓判。

「――この中でカイメラに関して情報を持っている方はいらっしゃいますか?」
 謁見の間に居並ぶ貴族と、玉座に腰を落とす王様に問うも、

「すまんな。報告は受けているから我々も調べてはいるが、未だ尻尾を掴めていない」
 代表して王様が答えてくれる。
 裏でコソコソと動き回り、何とも不気味な実験をしている連中だからな。
 簡単に尻尾は掴ませないか。
 人間と熊、人間とリザードマンをかけ合わせた人体実験もやっているイカれた連中だ。
 もしこの件が本当にカイメラなら、ゴロ太の身も危ない。
 さっさと捕まえて罰を受けさせないといけないな。

「これは直ぐにでもロイル領にお邪魔しないとな」

「当然だ!」
 息巻くベル。
 このままだとまた独走しかねない。

「じゃあ準備に取りかかっててくれ。くれぐれも独断専行はやめてもらいたい」

「分かった」
 平静を取り戻してくれたのはこっちとしても助かる。
 それでも、返事をすれば風の如く謁見の間からいなくなるけど。
 ゴロ太の事になれば仕方ない。

「美姫の怒りの感情を少しくらい分けてほしいものだ」

「誰にですか? まさか王様ご自身に?」

「いやいや、ワックにだ」
 そういえばワックさんがいないな。

「ゴロ太がいなくなったと聞いて焦燥していてな。憤りを外側に出さずに内側に溜め込んでいるようだ」

「いつそれが爆発するか分からないってことですね」

「そうだ」
 探すにしても、どうすればいいのか分からないという苛立ちと不甲斐なさから、かなり落ち込んでいる。と、王様。
 自室もある作業場に閉じこもってしまっているそうだ。

「後で会ってみましょう」
 あまり時間を割きたくないとベルは苛立つだろうけど、ゴロ太の育ての親を無下にするのはよくないからな。
 ミルモンの見通す力でロイル領にいるところまでは分かっている。
 それを報告するだけでも少しは気分が晴れるだろう。

「して――トールよ」

「はい」
 俺へと目を向けた後に、その視線を俺の後方へと移したのが分かった。
 肩越しに見れば、ミルディと人間の装備より一回り、二回りはある茶褐色のグレートヘルムを被ったジージーが待機。

「その者達は――我々にとって重要な存在と考えてよいかな?」
 背中から生えた純白の翼を有するミルディ。
 その時点で種族と、どこの所属かを理解する王様。

「もちろんです。重要も重要。この大陸に住まう方々の運命を左右すると言っても過言では無いでしょう」

「「「「おおっ!」」」」
 謁見の間がどよめく。
 恐れではなく、歓声に近い声。

「ここにいる者達は全員、信頼の置ける者達だ。箝口は約束できる。トールよ紹介を頼む」
 喜んで! と、返事をしようとしたところで、

翼幻王ジズ様の名代としてまかり越しました。ミルディ・ホーネスです。普段は翼幻王ジズベスティリス様の側仕えであり、戦いとなれば先遣隊として動く精鋭ストームトルーパーに所属しております」

「おお! 翼幻王ジズ殿の側仕えが我々の元へお越しくださるとは、感謝いたす」
 玉座より立ち、深々と一礼。
 この大陸の人間のトップが一外交官に頭を下げれば、玉座から見て左右に並ぶ貴族の面々もこれに続く。

「王都ロン・ダリアスの主、コールブランド王とそれに従属する方々は随分と腰が低いようですね」
 ――……おう……。
 なんで刺々しい語調で言うの。ミルディ……。
 俺達には物腰が柔らかだったのに、今は真逆の塩対応……。
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