異世界冒険記『ストレージ・ドミニオン』

FOX4

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驕った創造主

PHASE-1603【目隠れ】

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「ミルディ殿……」
 高圧的な態度と発言に、横に立つジージーは困惑気味だった。
 
 当然、俺もジージーと一緒……。

 初めて出会った時から他のストームトルーバーとは違い、物事を一方向からしか見る事が出来ないタイプとは真逆の存在だったし、落ち着きもあり礼儀作法も完璧。
 
 だが王様を前にすれば、まるでベスティリスが憑依したかのような刺々しさ。
 
 しかも……、

「見下ろしてるな~……」
 深々と頭を下げる王様を背を反らせながら見下ろしていた。
 対して王様は、

「腰が低くなるのも当然であろう。以前、こちらは翼幻王ジズの軍によって大痛打を見舞われた。大地に縛られている我々と違い、自由に動ける者達との戦いは脅威でしかなかった。故にその者達を怒らせたくはないのでな」

「なんと弱い発言なのでしょう。ですが、彼我の差を理解しているのは殊勝と判断しましょう」
 おいおい……。
 そんな笑顔も出来るんだね。
 ――……悪い意味で……。
 口端のつり上がった無茶苦茶に煽った笑み。マジでベスティリスが憑依してんじゃないの? 
 もしくはベスティリスがミルディに変身しているとか? デミタスという前例もあるしな。

「彼我の差は理解しているつもりだ。もし次に貴女方と戦うことがあるとすれば、今度はこちらが勝たせてもらう」
 お!?
 腰を低くしているだけかと思えば、すくりと体を起こす王様。
 逆に見下ろす立場になった王様の自信に溢れる笑みよ。

「あ、今の発言の一部は訂正させてもらおう。勝たせてもらうと言ったが、こちら側の代表である勇者一行が既に勝利しているな。ならばこちらの方が戦勝側として高圧的に出てもよいのだろうな」
 初対面の頃の落ちくぼんだ目、骨張った手の持ち主とは別人とばかりに心もお強くなられて……。
 お互い、上から目線の外交に発展しそうで俺の心臓は激しいビート……。

「フフ――」
 小さな笑いをミルディが零す。
 継いで、

蹂躙王ベヘモトの者達からは、臆病で王城に籠もるだけの
駄目な王という話でしたが、今はそのような事は無いようで安心いたしました」

「敗北が続くにつれ、心に巣くった怯弱に苛まれた男を奮い立たせてくれたのは、勇者とその一行の奮闘のお陰」

「良き出会いでしたね。我々にとってもトール殿との出会いは僥倖でした」

「それは何より」
 ここで場の空気がやわらぐ。

「王に対し、失礼な発言の数々お許しを」

「いやいや、こちらも無礼な発言をした。試されていたようだな。それで、ミルディ殿から見て我々は翼幻王ジズ殿と轡を並べる事が出来るだろうか?」

「問題なく」
 との返答に、ここでも謁見の間では皆さん声を揃えて喜びのリアクション。
 声が静まったところでミルディが俺を見てくるので、それを合図に、
 
「こちらを」
 ベスティリスから渡された親書を王様へ、

「ミルディ殿、拝見させていただく」
 手を払うように動かせば、それに従うように貴族の方々が謁見の間から退出。
 バリタン伯だけが残る。
 払った手の動きにから連動するように羊皮紙を諸手で恭しく俺から受け取り、広げて一読――。

「まずは南伐で結果を出さねばならんようだな」

「はい」

「そしてそこからは――」
 こちらを見てくる王様。

「俺達がそこから海の底へと挑む事になります」

「トール達にばかり頼ってしまうことになるな」

「それは私達も同様です」
 王様とミルディ。二人揃って俺へと頭を下げてくる。
 ベスティリスとの同盟が密約から公のものに変わるのは、俺達の頑張り次第だからね。
 
 風龍を救い出すことで全てが動き出す。
 ベスティリスは風龍を救いたい。
 こっちサイドは救うことで強力な同盟が成る。
 どっちみち、四大聖龍リゾーマタドラゴンの救出と瘴気の浄化ってのが至上命題だから、俺の使命に変化はない。

「やる事をやるだけです。そして結果を出す。最高の結果をね」
 語末は最高に格好つけて言ってみた。

「トールのために我々も励まないとな」

「そうですね」
 と、二人仲良く揃って笑顔。
 こっちサイドはフェイレンに対して恐れを抱いている者達がいると不安視していたが、王様を筆頭に問題なかったな。
 昔と違い、今の皆さんは体も胆力もゴリゴリに鍛えられているからな。
 余計な心配だったようだ。
 
 ――ミルディとジージーはギルド預かりになるということを説明し、加えて天空要塞への物資援助の確約も貰えたので、一安心しながら俺達は謁見の間を後にする。
 
 出立が遅れるとベルが五月蠅いだろうから、ワックさんと話しをして直ぐにでも準備をしないとな。
 
 ――と、

「派手に活躍しているようだな」
 謁見の間で気になっていたヤツが通路の壁に背中を預けて佇む。

「そっちはそっちで活躍してるようで。まさか謁見の間で王様たちと一緒にいるなんてね。あの場にいたのは王様から信頼されている面々だろうからね。短期間でよく信頼を勝ち得たもんだよ」

「領主として多忙な日々を送る主に代わり挨拶に来てただけなんだがな。勇者一行の勝利を祝うからと参加を強要された。子グマがいなくなったことでお流れになったがな」

「一つ解決すれば、問題が一つ増えるってのは困ったもんだよ」

「勇者ってのは大変なもんだな」
 心にも無い発言だな。くつくつと笑いやがって。
 発言と表情がマッチしてないんだよ! 左目隠れおっさん!
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