異世界冒険記『ストレージ・ドミニオン』

FOX4

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驕った創造主

PHASE-1604【統治に専念しているようで何より】

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「ただでさえ悪い顔をしてるってのに、そういった笑い方。領主として忙殺の日々を送る主殿の評判を下げることになると思うぞ――ガリオン」

「安心しろ。お前以外にはちゃんとしている。これでも外交担当として活動している身だからな」
 ――……。
 
「なんだ?」

「……プッ! ぶっはぁっ!」
 耐えていたけど無理。
 これは無理!

「ハハハハハハ! き、聞いたかコクリコ。ガ、ガリオンが外交担当だってよ!」

「ちょっと言わないでくださいよ。私だって耐えて……アハハハ――――」

「なんだお前ら。失礼な奴等だ」

「何が外交担当だよ。地上げ屋、取り立て屋の類いだろうよ。よりによって、なんでマジョリカはお前を外交担当に選んだんだよ。強制外交でもしようってか?」

「ふざけた事を言う」
 久しぶりに見た極悪人顔。
 俺とコクリコ。そんでもって、俺らが言葉を出せば出すほどに、俺達の後ろにいるゲッコーさんやシャルナも口元を隠して笑っている。
 だってこんなもん笑うだろう。
 見た目ヤクザが外交担当とか。
 
 まったく。こっちはゴロ太がいなくなって気分が暗くなっているってのに、まさかここでこんな笑わせ方をしてくるなんてな。
 気が沈んでいたけど、少しはやわらいだってもんだ。

「有り難う。って言うべきなんだろうな。その悪辣顔に」

「再戦を受けてくれるなら喜んで挑ませてもらうが?」

「残念だなガリオン。もう俺は、お前では太刀打ち出来ない男になってしまったよ」
 俺らしくない不敵な笑みを浮かべて言ってやる。

「腹立たしいが――事実のようだな」
 日々鍛練はこなしているが、若造の伸びしろには追いつけないと真面目に返してきたので、こっちが照れくさくなってしまう。

鋼鬼こうきガリオンにそう言われれば、俺も誇らしいよ。ちなみに別の巧鬼こうきとの戦いも苛烈だったな。南伐が始まればその巧鬼とも戦うことになるからな。頼りにしているぞ鋼鬼!」

「俺は外交担当だからな。今後は戦闘には参加しないと個人的には考えている」

「強制外交がメインに思われるような顔立ちが戦闘に参加しないとか」

「勇者とは思えない凡骨面ぼんこつづらが最前線に立っているのも大概だけどな」
 ――……。

「よし、修練場に来いよ!」

「そんな悠長な時間はないんじゃないのか?」

「確かに。しかし参加しないとか。武闘派なお宅の主がそれを耳にすれば、情けないという理由でぶった斬りそうだな」

「……それはあり得るな。参加しないと考えているというのは、ここだけの話で留めておいてくれ」
 声の調子からして、本当に他言しないでほしいといったところか。

「で、勇者達はこれから東に向かうんだよな?」

「そうだぞ」
 準備が整い次第、天空要塞から帰還して休むことなく東だ。
 本来なら南に対して覚悟を決めないといけない時に、また東へと移動するってことになるのは面倒な事だよ。
 愚痴を零せば、

「俺も便乗させてもらおう」
 と、ガリオン。
 マジョリカが伯爵を襲爵し、統治することとなったクガとネアシスの二領。
 いざこざの後は爺様が上手く統治していたから引き継ぎもスムーズだったが、やはり慣れないことをするのは大変なようで、今は領地を治めることで手一杯のようだ。
 
 爺様や荀攸さんに丸投げし、自由に動き回っている俺が羨ましくて腹立たしい。と、悪態もついているという。

「統治も大変だろうけど、時期が来たら否が応でも南伐に参加してもらうから」

「公爵としての命令か?」

「勇者としてのお願いだよ」

「頼まなくてもこっちの主は動くさ」
 心強いったらないね。流石は俺を殺す一歩手前まで追い込んだ女傑。
 シャルナとリンがいなかったなら実際、死んでいたしな。

「じゃあ、俺は謁見の間に集まっていた面子でまだ挨拶を交わしていない連中に顔を見せてくる」

「顔を見せるにしても、ちゃんと見せるべきだぞ」
 左目は常に前髪で隠しているからな。

「おっかない顔に更に義眼となれば、相手が震えるだろうよ」

「震えるかよ。謁見の間の貴族をちゃんと見てたか? 万人が思い描くよな貴族とは違っただろう」

「確かに。俺よりおっかないのが揃い踏みだった」
 バリタン伯を中心とした王都に留まっている面々は、ゴリゴリの武闘派だからな。
 むしろガリオンとは気があうかもしれない。
 といった助言をし、後で合流することを約束し――、

「お邪魔します」

「ああ、トール君……」
 うむ……。実際に見れば、ベル以上に憔悴しているな……。
 椅子に全体重を預け、上の空にて俺と言葉を交わすワックさん。
 専用の作業場には活気ある金属音も響いていない。静かなものだ……。
 作業場の外では他の職人さん達も元気がなく、陰鬱を纏わせて力なく座り込んでいた。
 トップがそうなってしまえば、周りにも伝染するようだ……。

 ――情報を耳に入れてあげて、少しでも元気を取り戻してくれればいいが。

「ワックさん。ゴロ太の居場所が掴めましたよ」

「…………ふぇ!? 本当かい!?」
 報告すれば、矢庭に立ち上がり、

「ぉああ……」
 倒れる……。

「急に立つから立ちくらみを起こすんですよ」
 血色の悪い顔。
 現状を見るに、ろくに体を動かしていないようだし、食事もまともに取っていないようだな。
 心身共にズタボロ状態だ。
 
 
 
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