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驕った創造主
PHASE-1605【お願い】
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「――んっぐ。それで居場所は?」
作業場の長テーブルでオートミールのチーズリゾットを口に運びつつワックさん。
血色が良くなってなによりだ。
「場所はロイル領です」
「ロイル領!? かなり離れた場所だよ」
「先生も馬で八日はかかると言っていましたからね。でも、事実です」
「信じるよ」
別に陸路だけが移動方法じゃないからね。
飛行能力を有している生物だっている。
なんとも当然とばかりに語るワックさんのこの発言に引っかかる。
「まるでゴロ太が言えば飛行能力を有している生物が協力するみたいな言い方ですね」
「あ……」
しまった! とばかりに口を塞ぐというありきたりなリアクションを見せてくれる。
子供のように純粋な人だな。
「なにを隠しているんだい。不安な気持ちがオイラにビビッと届くよ」
負の感情を堪能して高揚しているミルモン。
「ミルモンには隠し事は出来ませんよ」
まるで全てを見透かすことが出来るかのように言う。
実際はそんなことはないんだけども。
「ゴロ太の事でなにか隠していますね?」
相対して座った姿勢から、ズイッと身を乗り出して距離を縮めれば、
「別に隠すつもりはないんだ。ただ悪用する者が出てきたら嫌だったから黙っていたんだよ」
「水くさいじゃないですか。俺達は仲間なんですから。そしてその仲間が失踪してしまった。保護しないと」
「そうだね。その通りだよ……。トール君たちには伝えるべきだった……御免よ」
「気にしないでください。ゴロ太を思っての事でしょうから。ゴロ太の事は皆と合流してから説明してもらいますね」
「有り難う。それとお願いがあるんだ」
「俺の装備の生みの親であるワックさんのお願い。俺が出来る範囲でなら可能な限り聞き入れましょう」
「僕もロイル領行きのメンバーに入れてほしい」
おっ! インドア派のワックさんが外に出るとな。
体力には自信がないし、戦闘なんて出来もしない。
足を引っ張るだけの存在になってしまうけど、それでもお願いしたい。
と、頭を深々と下げられたら――、
「もちろんですよ。ゴロ太の育ての親なんですからね。子を思う親。その思いを無下には出来ません」
「有り難う」
「後、体力に自信が無いってのは自分を過小評価しすぎですよ」
「そうかな?」
「俺の装備を――火龍の鱗という加工に苦労する素材を相手取り、見事に装備として作り上げた精神力と忍耐力。並の人間では出来ない体力の持ち主ですよ」
「そう言ってもらえると自信が漲ってくるよ。ちょっと待っててほしい。身支度を整えてくるから」
そう言って皿に残ったオートミールを一気に掻き込むと、作業場内にある自室へと駆け出す。
立ちくらみしていた時とは違って、力強い足取り。
その背中を見ていれば、背後から作業員の面々にお礼を言われる。
自分たちの代表が元気を取り戻してくれたことに安堵し、その切っ掛けを与えてくれた会頭には感謝します。という背中がむず痒くなる言葉をもらう。
――場所は変わってギルドハウスは執務室。
「よし! 準備は出来たな!」
ベルの快活さよ。
普段はやる気というのは表に出さないけども、今回は大いに出している。
「行く前にワックさん。ゴロ太のロイル領への高速移動の謎をお願いします」
ゴロ太が有するなにかしらが原因だと思える。
「ここに集まっている皆さんなら知っているでしょうが、ゴロ太は他の生物と言葉を交わすことが出来ます」
「凄い能力です」
心の底からそう思っているようで、ゴロ太の能力に大いに感服するベル。
「他の生物と話しをしてお願いをすれば、協力してくれる。と、以前ゴロ太は僕にそう言ったんだ」
「確かに」
そういった所は目にしたことがある。
初めて出会った時、王族の湯治場であるクレトス村の森の中で、森の生態系の頂点であろう山の王者ケーニッヒス・ティーガーと会話をし、その後、山の王者は静かに去っていった。
チコ達もゴロ太と仲が良かったしな。
そしてそれは他の生物にも同様の効果があるそうで、お願いをすれば大抵はゴロ太に協力をしてくれるそうな。
大抵ってことだから、完全に聞き入れられるわけじゃないらしいが、聞き入れてくれたと考えれば、大型の飛行生物なんかがゴロ太を背に乗せた可能性がある。
これなら短期間でゴロ太がロイル領に移動できたことにも納得がいく。
「お願い――ね~」
引っかかる所があったのかゲッコーさんの声は訝しい。
だがこれはゲッコーさんだけでなく、執務室に居並ぶ者たち全員が思ったことだろう。
S級さん達の報告を耳にしていなければ聞き流していたかもしれないが、聞いた後だと聞き流せない。
「大小の鳥の群れに追跡を阻まれたという報告は聞いていますか? ワックさん?」
「聞いているよ。そうだね……。自然の摂理の中で狩る側と狩られる側が一緒になって追跡を妨害。とてもじゃないけどお願いって次元ではないね」
「はい。お願いと言うより、命令に従ったと表現する方がしっくりときますね」
「でも、ゴロ太にそこまでの力があるとは思えないよ」
他の生物と会話をし、少数にお願いするのが関の山。
鳥の群れは大規模すぎるとワックさん。
――うん。
「ゴロ太がチコ達と一緒になって東へと移動する時、ゴロ太自身もいつもと雰囲気が違ったという報告も入っていますからね」
となれば、鳥の群れを支配していたのはゴロ太ではなく、ゴロ太に近い力を有した存在の可能性もある。
その存在がゴロ太も支配し、東へと向かわせたってことになるのかもしれない。
まだまだ分からない事だらけだが、ワックさんでも分からない事があるんだからな。
付き合いの浅い俺達がゴロ太の全てを理解できないのは、当然と言えば当然か。
作業場の長テーブルでオートミールのチーズリゾットを口に運びつつワックさん。
血色が良くなってなによりだ。
「場所はロイル領です」
「ロイル領!? かなり離れた場所だよ」
「先生も馬で八日はかかると言っていましたからね。でも、事実です」
「信じるよ」
別に陸路だけが移動方法じゃないからね。
飛行能力を有している生物だっている。
なんとも当然とばかりに語るワックさんのこの発言に引っかかる。
「まるでゴロ太が言えば飛行能力を有している生物が協力するみたいな言い方ですね」
「あ……」
しまった! とばかりに口を塞ぐというありきたりなリアクションを見せてくれる。
子供のように純粋な人だな。
「なにを隠しているんだい。不安な気持ちがオイラにビビッと届くよ」
負の感情を堪能して高揚しているミルモン。
「ミルモンには隠し事は出来ませんよ」
まるで全てを見透かすことが出来るかのように言う。
実際はそんなことはないんだけども。
「ゴロ太の事でなにか隠していますね?」
相対して座った姿勢から、ズイッと身を乗り出して距離を縮めれば、
「別に隠すつもりはないんだ。ただ悪用する者が出てきたら嫌だったから黙っていたんだよ」
「水くさいじゃないですか。俺達は仲間なんですから。そしてその仲間が失踪してしまった。保護しないと」
「そうだね。その通りだよ……。トール君たちには伝えるべきだった……御免よ」
「気にしないでください。ゴロ太を思っての事でしょうから。ゴロ太の事は皆と合流してから説明してもらいますね」
「有り難う。それとお願いがあるんだ」
「俺の装備の生みの親であるワックさんのお願い。俺が出来る範囲でなら可能な限り聞き入れましょう」
「僕もロイル領行きのメンバーに入れてほしい」
おっ! インドア派のワックさんが外に出るとな。
体力には自信がないし、戦闘なんて出来もしない。
足を引っ張るだけの存在になってしまうけど、それでもお願いしたい。
と、頭を深々と下げられたら――、
「もちろんですよ。ゴロ太の育ての親なんですからね。子を思う親。その思いを無下には出来ません」
「有り難う」
「後、体力に自信が無いってのは自分を過小評価しすぎですよ」
「そうかな?」
「俺の装備を――火龍の鱗という加工に苦労する素材を相手取り、見事に装備として作り上げた精神力と忍耐力。並の人間では出来ない体力の持ち主ですよ」
「そう言ってもらえると自信が漲ってくるよ。ちょっと待っててほしい。身支度を整えてくるから」
そう言って皿に残ったオートミールを一気に掻き込むと、作業場内にある自室へと駆け出す。
立ちくらみしていた時とは違って、力強い足取り。
その背中を見ていれば、背後から作業員の面々にお礼を言われる。
自分たちの代表が元気を取り戻してくれたことに安堵し、その切っ掛けを与えてくれた会頭には感謝します。という背中がむず痒くなる言葉をもらう。
――場所は変わってギルドハウスは執務室。
「よし! 準備は出来たな!」
ベルの快活さよ。
普段はやる気というのは表に出さないけども、今回は大いに出している。
「行く前にワックさん。ゴロ太のロイル領への高速移動の謎をお願いします」
ゴロ太が有するなにかしらが原因だと思える。
「ここに集まっている皆さんなら知っているでしょうが、ゴロ太は他の生物と言葉を交わすことが出来ます」
「凄い能力です」
心の底からそう思っているようで、ゴロ太の能力に大いに感服するベル。
「他の生物と話しをしてお願いをすれば、協力してくれる。と、以前ゴロ太は僕にそう言ったんだ」
「確かに」
そういった所は目にしたことがある。
初めて出会った時、王族の湯治場であるクレトス村の森の中で、森の生態系の頂点であろう山の王者ケーニッヒス・ティーガーと会話をし、その後、山の王者は静かに去っていった。
チコ達もゴロ太と仲が良かったしな。
そしてそれは他の生物にも同様の効果があるそうで、お願いをすれば大抵はゴロ太に協力をしてくれるそうな。
大抵ってことだから、完全に聞き入れられるわけじゃないらしいが、聞き入れてくれたと考えれば、大型の飛行生物なんかがゴロ太を背に乗せた可能性がある。
これなら短期間でゴロ太がロイル領に移動できたことにも納得がいく。
「お願い――ね~」
引っかかる所があったのかゲッコーさんの声は訝しい。
だがこれはゲッコーさんだけでなく、執務室に居並ぶ者たち全員が思ったことだろう。
S級さん達の報告を耳にしていなければ聞き流していたかもしれないが、聞いた後だと聞き流せない。
「大小の鳥の群れに追跡を阻まれたという報告は聞いていますか? ワックさん?」
「聞いているよ。そうだね……。自然の摂理の中で狩る側と狩られる側が一緒になって追跡を妨害。とてもじゃないけどお願いって次元ではないね」
「はい。お願いと言うより、命令に従ったと表現する方がしっくりときますね」
「でも、ゴロ太にそこまでの力があるとは思えないよ」
他の生物と会話をし、少数にお願いするのが関の山。
鳥の群れは大規模すぎるとワックさん。
――うん。
「ゴロ太がチコ達と一緒になって東へと移動する時、ゴロ太自身もいつもと雰囲気が違ったという報告も入っていますからね」
となれば、鳥の群れを支配していたのはゴロ太ではなく、ゴロ太に近い力を有した存在の可能性もある。
その存在がゴロ太も支配し、東へと向かわせたってことになるのかもしれない。
まだまだ分からない事だらけだが、ワックさんでも分からない事があるんだからな。
付き合いの浅い俺達がゴロ太の全てを理解できないのは、当然と言えば当然か。
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