異世界冒険記『ストレージ・ドミニオン』

FOX4

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驕った創造主

PHASE-1620【周囲の評価も低いようで】

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「――うん」
 ワックさん大きく頷き、

「店員さん。これはいくらで売っているんです?」

「その樽に入ってるのは雫型金貨が数枚あれば買えるよ。円形金貨を使う予定なら店内だな」
 ダーナ雫型金貨数枚だから数万円か。
 高いとみるべきか、命を預ける物なんだから妥当と考えるべきか。

「この作りでその価格帯とはかなり良心的ですね」
 と、ワックさん。

「冒険者には頑張ってもらいたいからね」
 ここで店員さんの声に明るさが混じる。
 ワックさんの屈託のない評価で俺達が冷やかしではないと判断してくれたようだ。
 俺もワックさんを真似て手にする。
 手にしたのは弧を描いた利器――サーベル。
 引っかかりを感じることなく革鞘から抜刀。

「鋳物による生産性重視の刀剣だけど、作りは本当にいいものだね」

「そのようですね」
 ワックさんにはそう返すも、俺の審美眼ではどう凄いのかはいまいち分からない。
 試し斬りでもすれば分かるんだろうが、ワックさんが笑顔で褒めている時点で、ここに有る物を生み出した作り手はかなりの職人のようだ。
 となれば、店内の物はこれ以上にいい業物があるってことだな。
 時間があるなら店内を隈無く見て回りたいくらいだ。
 
 だが今回は――、

「女性用の防具は置いてますか?」

「ああ置いてるよ。その人のかい?」

「そうです。動きやすいのが――」

「いいな」

「――て、ことです」

「美人さんを引き立てるような装備ってなると、こりゃこっちも気合い入れないといけないかな」
 ノリノリの店員さん。中に入って左側の方が防具専門だと教えてくれた。
 
 ――広々とした店内には外とは違い、利器だけでなく防具が整然と陳列されている。
 
 別の冒険者も何組かいる。
 真剣な眼差しだ。
 欲しい商品と自分たちの懐事情と要相談ってところのようだ。
 
 中には渋面になっている面々もいた。
 まだまだ身の丈には合っていないといったところ。
 
 そんな面々も俺達が入ってくれば、凄い装備の連中が入ってきたとばかりに凝視してくる。
 やはりここでもベルを見る視線が多いが、次には直ぐに目を反らす。
 こっちをジロジロ見るな! とばかりに、ガリオンが睨みを利かせれば効果覿面。
 ガリオンの睨みくらいで目を反らすってなると、まだまだ途上の胆力だな。
 店内のパーティーは新米さん達が多いみたいだ。ゴールドポンドにだけは関わらないでほしいものである。

「いらっしゃい。なにを求めてんだい?」
 立派なヒゲをしごきつつ、店内担当の人物が応対してくれる。
 ヒゲのしごき方は共通だね。

「ドワーフが作ってるなら信頼できるな」

「別に俺っちが作らなくても、ここの連中はいいもんを作るぞ」

「尚更に良いことだ」

「それで顔の怖いの。求めるものは?」

「内のパーティーの女――婦人の装備をな」
 言い直した。ガリオンともあろうものが、ベルが怖いからって丁寧に言い直したよ。

「なるほどな。確かに眼鏡の兄ちゃんを除けば、他の面子と比べると軽装が過ぎるな」
 軍服だからな。
 しかも防弾チョッキとかそういった装備もないからね。
 この世界の冒険者の装備と比べれば、普段着のようなもんだ。
 それでも問題ないのは、まず攻撃が当たらない。
 当たる前に相手を倒すし、何より攻防一体の浄化の炎が無敵すぎるからな。

「軽装ではあるけども、この面子だと圧倒的に強いんだろうな」

「分かってるようだな」

「厳ついアンタが言葉を正すくらいだからな」
 ちょっとしたガリオンの訂正から察する目前のドワーフ。
 ――レギラスロウ・ザールと名乗ってくれた。
 ロイル領内のチュロリス窟という初めて耳にする洞窟の出自だという。
 領内にはあるもののハダン伯の支配下にはなっておらず、窟は独立しているそうだ。
 長命であり物作りに秀でた種族ということもあり、ハダン伯はドワーフ達に敬意を払って接しているという。
 無駄に自信家ではあっても、出来た人間だというのはこういったところからでも分かるというもの。
 
 で、このレギラスロウ氏はハダン伯に懇願され、この中心都市メメッソで冒険者だけでなく、兵達の装備の製作監督としての肩書きも持っているとのことで、結構、偉い地位にいる御仁だった。
 
 ゴールドポンドの近くにそんなやり手が経営する店があるなんてね。

「よい腕の職人がいる側に駄目なギルドというのも皮肉が効いている」
 いつもならコクリコが俺の思いを代弁するかのように口に出してくれるが、今回はジージー。

「ここいらじゃ大手だからな。内部が残念でもそれを知らずに訪れる新米もいる。そいつ等の命を守るために、ここに店を構える俺っちの判断は正しいと思ってるよ」

「なるほど。周囲の者達もあのギルドは駄目と理解しているようだ」

「当たり前よデカい兜の人。ただ数だけはいるからクルーグ商会は護衛として頼ってんだよ」
 街道の治安もいいし、最低限の護衛でいいなら実力は矢盾程度でいいんだろう。と、毒を吐いて継ぐレギラスロウ氏。

「あのギルドの話はどうでもいいや。それよりも装備を見繕う前にちょっと気になってる事があるんだが――」
 じっと俺を見てくるレギラスロウ氏。
 カウンターから上半身を乗り出してからの凝視は、正確には俺ではなくミルモンに向けられたものだった。
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