異世界冒険記『ストレージ・ドミニオン』

FOX4

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驕った創造主

PHASE-1634【仕事が出来る方々のようで】

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「オルト殿」

「ありがとう」
 外していた籠手をジージーから手渡され、装備をしていたところで――、

「皆、この場を動かないように!」

「お! 警邏の連中がお出ましのようですね」

「現着は速いね」
 三十人以上を相手にしたけども、大したことなかったから直ぐに決着がついた。
 苦戦していれば戦闘中にでも来てくれたんだろうけど。
 だが速いのは速い。これだけでもここの兵達の練度が高いのは分かる。
 ゴールドポンドの冒険者なんかよりも遙かに強いだろうな。

「…………これは何とも……」
 俺たちをチラチラと見つつ、警邏の兵が状況を把握している。
 言葉を漏らした人物が、どういった経緯でこうなったのかを周囲から聞き取るように。と、他の兵達に指示。

 ――十分に情報を咀嚼してから嚥下したようで、

「市中で投擲武器と魔法にて攻撃を受けたのは事実かな?」
 と、俺に問うてくる。

「はい。自分たちが酒場から出てきたところで攻撃を受けました。周囲の方々も自分たちが襲われたというのを目にしてくれています」

「それは間違いないようだ。しかし、この大人数を四人で一瞬のうちに倒すとは……」

「練度が低いのだ」
 と、ジージー。

「あまりにも低すぎる。手心を加えてこれなのだからな。どうにもならん!」

「あ、ああ……」
 継ぐ発言を受ければ、それを自分たちに言われても……。と、警邏の兵達は困惑気味に苦笑いを顔に貼り付ける。

「と、とりあえず、これ以上の戦闘意思はないと判断していいかな?」

「もちろんですよ」

「立派な装備を佩いているがそれを使用せず、そちら側は素手のみで対応したようだし、何より向けられる暴力に正当な力を行使しただけだから罪には問われないだろう。だが我々には当事者たちから聴取を行わなければならない責務がある」

「でしょうね」

「詰所まで同行してもらえると助かるのだが」

「ああ! なんでそんな面倒くさいことになるんだ。楽しかった酒が台無しになったあげく、聴取なんてだるいことやりたくねえぞ」
 おい外交担当……。

「当主の伯爵に迷惑をかけるような事は――」
 耳元で囁けば舌打ちからの、

「分かったよ!」
 マジョリカを引き合いに出せば素直に聞き入れてくれるのは助かる。

「こちらの連れが大声を出してすみません」

「い、いや……従ってくれるのならば結構。では、同行願う」
 現着は速かったが、流石にガリオンの圧を受け止めるだけの気骨さはなかったようだ。
 
 ――警邏の兵を先頭に大通りを歩めば、俺たちに対して称賛の声を口々に出してくれるオーディエンス。

「この状況を見れば、あの者達に咎があったのは明白のようだ」
 そう言う先頭の兵。

「あの連中はどうなるんです?」

「むろん、連行する」
 三十人以上がダウンしているからな。
 全部を運ぶとなれば馬車や荷車が必要だろう。

「事後処理に感謝します」

「素行の悪いギルドではあったが、それでも最低限の事は守っていた」
 最低限は守ってはいるんだな。
 当然と言えば当然か。
 守らなかったならギルド自体が取り潰されるからな。
 レギラスロウ氏はギルマスは話が通じる人物と言っていたしな。

「だが今回は腹に据えかねる事があったようだな」
 と、継ぐ先頭の兵士。
 アップことベルを自分のモノに出来ず、俺というクソガキに一撃で倒された事がブリオレには我慢できなかったんだろう。
 
 と――、

「レギラスロウ氏がいないな」

「やっこさん、あの場に留まったみたいだ。残った警邏の兵に説明してくれているんだろうさ」

「感謝だな。だからガリオンも感謝を無下にしないように節度ある行動をとってほしいね。兵士の皆さんを恫喝しないように!」

「相手の出方次第だ」

「オルトが節度を持てと言っている。そうしろ」

「お、おお……。分かった……」
 あれだな。ガリオンはベルに任せとけばいいな。
 ベルが言った途端、背筋を伸ばして対応するからな。
 コイツ――間違いなく強い女にめっぽう弱いな。

 まあ、

「分かる分かる」
 デカい体の肩に手を当ててから理解を示してやる。
 直ぐに撥ね除けられてしまったけど。

 ――ハマードから二百メールほど歩いたところで、

「ここで聴取を行う。虚言だけは避けるように」

「もちろんです。正直者ですから」

「う、うむ……」
 なんだよ。まるで俺たちが正直者じゃないみたいなリアクションじゃないか。
 ガリオンとジージーに目を向けていたようだから、素行と風体で俺たちを怪しんでいるということだろうか。
 俺、ベル、ワックさんでその辺は余裕で帳消しだと思うんですけどね。

 ――二階建ての詰所の中へとお邪魔する。
 天井中央と四隅に吊されたランタンが室内を暖色で灯す。
 中央には取り調べ用の机と、対面するように置かれた背もたれのついた簡素な椅子。

「代表者」

「はい」
 先頭で俺達を案内していた兵士が着席を指示。
 俺が座ったのを確認してから自らも腰を下ろす。
 で、その間に別室から数人が入ってきて、こちらの面子を警戒するように注視。
 俺以外の面々は壁に沿って立つ。
 
 ――ふむ。

「佩刀した二振りを預かるとかしなくていいんですか?」

「現場での聞き取りはしている。預けるように言えば預けてくれるだけの人間性は持っているだろう。何より素手であれだけの数を倒した面々がもしここで大立ち回りしたならば、我々では止められない。得物を持っていようが素手だろうが関係なく我々は倒されるだろう。大切な得物をこちらに渡すように! といった発言でそちらを刺激したくない」
 クレバーだね。
 規律も大事だが、話せば分かる相手となれば今の関係性を崩さないためにも、こちらに対して規律を緩めてくれる柔軟性を持っている。
 こっちを信頼してくれていることに感謝するし、こっちも好感を持てる。
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