異世界冒険記『ストレージ・ドミニオン』

FOX4

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驕った創造主

PHASE-1635【頭を抱えるのはクセかな】

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「佩刀は許可するが、可能であれば――」
 対面する兵がチラリと壁側を見る。
 向ける先は――ジージー。
 ――……ああ……、言葉の続きが容易に理解できる。

「兜は取ってもらいたいのだが」
 はたして正にだな。

「断ればどうなる?」
 壁側からの質問。

「君たちの心証が悪くなる」

「兜を取ればそれ以上に心証が悪くなるかもしれんぞ」
 語気を些か強めるジージー。これ以上の詮索はしないほうが身のためだと言わんばかりだ。
 
 対する兵士からすれば、この辺りで見ない冒険者一行の素性は把握しておきたいところだろう。
 その為には全員の顔を記憶しておきたいというのも理解できる。

 ここで拒否を続ければ、いらぬ不信感を抱かれるな。
 
 亜人が人間側にいるのは珍しくはないので、その事を伝えれば理解をしてもらえるかもしれない。
 この地にもドワーフであるレギラスロウ氏がいるからな。
 ――……だがしかし……。ジージーはまた別枠だ。
 インセクトフォーク・シケイダマンとなれば兵士たちは警戒するだろう。
 この大陸でその手の亜人を見るってのは珍しいというか、魔王軍の手の者と判断するかもしれない。
 
 俺が熟考する間もジージーは頑なに拒否し続ける。
 当然、兵達の表情は強張ったものへと変わってくる。
 
 ――……どうするべきか……。
 
「失礼する」
 腕を組み、どう対処するべきかと考えを巡らせ渋面となっている俺の耳朶に届く声は、聞いたことのある人物のモノ。

「これは!?」
 詰所に駆け込んできた人物の登場を目にして、相対する兵士が勢いよく立ち上がる。

「ルーフェンスさん」

「お待たせいたしました。事の次第はレギラスロウ殿より聞き及んでおります」
 あの場に残ったレギラスロウ氏、俺たちを助けるためにタークさんがいるハダン伯爵の邸宅を訪れたそうだ。
 で、待機していたルーフェンスさんがリレントレス・アウルの背に乗って大急ぎでここまで来てくれた。

「この方々はこちらで預からせていただく。宜しいか?」

「騎鳥隊の隊長が自ら馳せ参じるとは……」
 この者達は一体、何者なのだろうか? 訝しくこちらを見てくる兵に対し、

「君たちは気にしなくていい。通常の任務に戻ってほしい。どのみちこれから三十人以上を相手にしないといけないのだろう? ならばこちらの方々は自分が対応しよう」

「わ、分かりました」
 炯眼のルーフェンスさん。
 余計な詮索は無用と目だけで伝えていた。

「では、こちらの指示に従ってください」

「お手間を取らせました」
 ルーフェンスさんだけでなく、詰所まで誘導してくれた警邏の兵にもあわせて挨拶を述べる。

 ――。

「偽名で大立ち回り……ですか……」

「申し訳ありません……」

「いえ、我々の方に非が有ります」
 邸宅は執務室に戻れば、タークさんは頭を深く下げてくる。
 礼節を知らないメメッソの冒険者たちによる暴力。
 そういった者達に対して指導が滞っているのは全て自分に責任があるとタークさん。

「冒険者なんて自由な生き方の連中ですからね。指導なんて聞き入れませんよ」

「自由な生き方と、常識を逸脱した行為は違いますので……」

「まあ、そうですね」

「市中で飛び道具に魔法とは……。しかもそれを勇者である公爵様とその御一行に……」

「身分を隠して行動しているので不敬罪は適用しないでください。街中での武器の使用に対しての罰だけにしてもらえればいいです」

「畏まりました。当分の間、ギルドの活動を停止――」

「したいところですが――と、続けたいんですね」

「……はい……」
 伯爵が頼りにしているクルーグ商会。
 その商会の護衛にも携わっているあの連中。
 どうあがいても盾代わりにしかならないけども、勝手が良いから使っている。
 どういった使い方であろうとも需要はある。その需要を妨げるのはこの領地の損失にも繋がる。
 かといって厳罰に処さなかったなら、自分たちは特別と勘違いし、これまたいろんな方々に迷惑をかけるのも想像に難くない。

 ――タークさん。罰と損失回避の板挟みで頭を抱えておられる。
 
「市中において投擲武器を使用した者だけに限り、罰を与えればいいでしょう」
 と、ベル。
 市中での迷惑行為の中でも逸脱した行為の者に強めの罰を与えて、残りの者達は戒告だけに留めておけばいいとのこと。
 駄目駄目な連中ばかりだったが、仲間のために行動を起こせる者達もいたので、そういった者達には慈悲を与えたいと当事者の一人であるベルがタークさんへと伝える。
 
 ウォーリアーであるザンザがスカウトのウッドを救い、気を失いながらも決して放さず、守るように倒れた姿に感心していたからな。
 戦う者としての矜持を見せる者に対し、ベルは敵味方関係なく寛容。
 反面、あの時、自分だけ距離を取ったリーダーのクアントに対して心証がかなり悪いものだったのは、グーパン制裁が物語っている。

 ――最低限の活動は許すという俺たちの対応にタークさんは深々と頭を下げてくる。

「それで――公爵様たちは進展がありましたか?」
 ここで話しは俺たちがこの地へと訪れた目的に戻る。

「案内役としてエマエスなる人物からの協力を得られました。クルーグ商会で輸送を担当している方です」

「それは何よりです。それで今度は何処へ?」
 
「この地で流行っている飲み物がありますよね」
 と、タークさんからの問いかけに遠回しにて返す。

「ああ……」
 タークさんの表情が曇り、声が暗くなる。
 スティミュラントだと一発で理解したようだ。
 
 戦いに身を置く者達から恐怖を取り除く効果があることに期待をしていたが、本来の使い方ではない方向で人気を博したことを公爵である俺が知ったことで、恥ずかしいところを知られてしまったと、ここでも頭を抱えていた。
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