異世界冒険記『ストレージ・ドミニオン』

FOX4

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驕った創造主

PHASE-1678【任せて次へ】

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 ――ふむん。

「余裕の相手だったな」
 息切れする事無く発言どおり余裕の佇まいなガリオン。
 不気味な球体クリーチャーの群れを倒すも倒したり。

「大小合わせて百はいたようだな」

「数だけだ。俺一人でも問題なかった」
 得意げになるガリオンの発言に、地べたにへたり込んでいる私兵や商人の面々はどんな体力してるんだよ! と、ガリオンだけでなく俺やジージーを見てくる。
 なにより俺たち以上に目を注いでいたのが、可憐な美女だと思っていた舞姫が誰よりも余裕な佇まいでいるもんだから、目を向ける面々の表情は驚きで統一されていた。

 楽勝ではあったけども――、

「なんと不愉快な光景だ……」
 倒しておいてなんだが、地面に広がる豊饒な臓物という光景にベルは顔をしかめながら口を開く。
 この場にいる全員が同意見なので、ベルの発言に強く頷く。

「こんな連中を大量に用意しているのですから、余程の企てがあるようですな」
 ロングソードにこびり付いた体液を布きれで拭い、剣身に刃毀れがない事を確認してから鞘へと収めるジージーがベルに続く。

「そうだジージー」

「何でしょう?」

「閉じられたジャンパーを開くっていう芸当は可能?」

「無論」
 その台詞が聞きたかった。

「じゃあ直ぐに次へと移行しよう。休憩が欲しいとか言わないよな?」

「なんで俺を見ながら言うんだよ」

「俺が提案を出せば何かしら直ぐに水を差してくるからな」

「速度が大事なんだろう。ならさっさと動かないとな」
 素直だね。
 ――ベルセルクルのキノコ。
 マジョリカのとこの領地に自生していたキノコ。
 そのキノコで主の人生が大きく狂わされているからな。
 人生を狂わせたキノコをカリオネルが手に入れ、人工栽培で生産していたのがカイメラだからな。
 連中に対して思うところがあるんだろう。
 狂わされたとはいえ、それを利用もしているけどね。
 マジョリカ個人には同情するけど、破邪の獅子王牙という組織には同情はしてやらない。

「オルト殿!」

「お、来ましたね」
 ルーフェンスさんが上空から登場。
 黄色い羽を持つ二メートルほどの梟を目にすれば、

「リレントレス・アウル!? 騎鳥隊だと!」
 驚きのモーリスのおっさんは、着地したリレントレス・アウルに乗っていた人物を目にして、

「新人と一緒にいた冒険者じゃねえか!? 冒険者が騎鳥隊!? 装備もさっきまでと違うし」
 と、更に驚く。

「そういったことは追々と話しますので、今はここにいる皆さんの避難に協力して頂きたい」

「わ、分かった」
 深く詮索しないで今は人命優先とルーレフェンスさんに従うモーリスのおっさんは、他の私兵にも指示を出す。
 直ぐに駐屯兵がやってくるので、連携しての活動となると手早く説明もしていた。

「オルト殿たちは?」

「次へと移行しますよ」

「自分も随行よろしいでしょうか?」
 この場は駐屯兵と私兵に任せて、自分も同行したいとのこと。
 ソドンバアムが何処この場にいないのか? 白衣連中と一緒にいなくなった時点でこういった事に関与しているのでは? と、その辺りをちゃんと把握したいとのこと。
 断る理由はないので共に行動してもらう。
 
 ――会場があった建物へと再びお邪魔する。
 
 会場で眠っているアプールのおっさんやシミットのおっさん達は、私兵と駐屯兵によって馬車や荷台で次々と運ばれていく。

「搬送と避難をお任せします」

「任せておけ。お前たちも無事でな」
 製造所内の地理に詳しいモーリスのおっさんを中心とし、私兵と駐屯兵に後処理を担当してもらう間、俺たちは俺たちで励ませていただく。

 ――会場から続く廊下から休憩室へと戻ってくる。

「コイツ等は……なにやってんだ……」
 外が大騒ぎだった中、そんな事は関係ないとばかりに未だに抱き合って幸せそうに眠っている上半身裸の私兵二人。
 ソファで眠る二人を目にしてガリオンが若干引き気味。

「人にはそれぞれの巡り逢いってのがあるのさ。たまたま二人がそういった仲になるという運命だったんだよ」

「そんなもんかよ……」

「そんなもんだよ」
 俺には分からんね。と、首を左右に振るガリオンのその横では、ベルが半眼で俺を見てくる。
 嘘を吹聴して二人を陥れるんじゃない! という言葉がエメラルドグリーンの瞳から強く伝わってきたので早々にこの場を後にする。

 ――外へと出た後は轍の跡を道しるべにし、防御壁の角から数えての狭間と楼閣の位置を確認しつつ目的の建物へと到着。
 再び入り、一階から坑道へと移動。

「なんか臭いな……」

「ここでも戦闘が発生したからな」
 言いつつ目的の場所へと移動すれば、アローンガットの亡骸。
 臓物が広がる地面は外とは違って換気の悪い場所だから臭いが滞留しており、皆して顔を歪めてしまう。

「この行き止まりの右側なんだけども」 
 鼻を押さえながら指を向けてジージーに説明。

「ああ、確かに感じますな。この隠し方の不出来さからして、大した事の無い術士かと思われます」

「あ、そうなんだ……」
 ジージーからすれば目に見えないだけで、それ以外は筒抜けだという。
 雑に隠したマナを容易に感知できるそうな。

「ガリオンはどうだ?」

「なんも感じねえよ」

「おっ! そうか!」

「なんで嬉しそうなんだ?」
 ジージーがマナ――ネイコスに関して優秀なもんだから、不出来な仲間がいて安心してしまう俺氏。
 
 ともあれ、これで次へと進める。

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