異世界冒険記『ストレージ・ドミニオン』

FOX4

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驕った創造主

PHASE-1685【多分、知性がある】

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「ゴブリンゾンビに羽を無理矢理につけて飛ばしているアンデッドキメラってところかな? 見た目としては」

「あれもアーティフィシャルアンデッドという種類なのだろうな」

「そんな種族名だったな」
 ベルへと返しながらも吊り橋を全力疾走する中で思い出すのは、カプセルの中にいたゴブリンの子供。
 もしこういった扱われ方をされているとなると、怒りが湧き上がってくる。
 アルスン翁が本当にこの場にいなくてよかったよ。

 アンデッドとなった空飛ぶゴブリンは、忌々しい生者がこの場をうろついているのが許せないようで、大型のコウモリの羽を羽ばたかせ、生気を失った濁った黄色い瞳にて睨んでくる。
 
 目と目が合えば、

「キャァァァァアアァァァア!」
 と、甲高い叫び声を嚆矢代わりにして戦いの開始を伝えてくる。

「思ってたよりも遅い」
 無理矢理に羽を背中にくっつけているということが原因なのか、直線的な飛行は苦手なようで、ガクンと下に落下したかと思えば、必死に羽を羽ばたかせて姿勢を制御しながらのジグザグ飛行。
 これなら渡りきれると思うんだけども、

「さらに反応があります」
 ジージーの発言に心で舌打ち。
 前方にも顕現するジャンパーから現れる羽付きゴブリンゾンビ。

「本当にいやらしい配置だよ!」

「宜しければ最後尾からの配置変更を願います」

「頼むよ」

「お任せを」
 言えば翅を動かし宙へと舞うジージー。

「マジで飛行能力のある味方って頼りになるよね」

「オイラだってできらぁ!」

「いやいや、ミルモンは俺の側でフォローしてくれよ」

「仕方ないな」
 ジージーを褒めれば対抗心を見せる可愛いミルモン。
 前方へと突き進むジージーは、現れた空飛ぶゴブリンゾンビを――、

「不安定な飛翔の小さき体躯で何が出来ようか!」
 ロングソードを抜剣しての力任せの振り。
 振れば振るだけ対象を斬り落として様は正に斬獲。
 頭部を狙わなくても胴体ごと羽を斬れば、甲高い声を上げながら空堀の底へと落下していく。

「じゃあ俺も!」
 残火とマラ・ケニタルを抜刀してからの、

「マスリリース! そしてウインドスラッシュ!」
 二刀から放つ遠距離用の斬撃。
 命中させれば二人のゴブリンゾンビが錐もみ回転しながら落ちていく。

「ジージーと俺に任せて他は一気に駆け抜けてくれ」

「分かった」
 颯爽と吊り橋を駆け抜けるベル。

「ガリオンは――」

「デカ頭の代わりにワックを補助してやるさ」

「助かるよ」
 少ない会話で意思疎通が出来はじめているのはいい事だ。

 いい事だが……。

「わぁ!? わぁわぁわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ――」
 補助ではなく、ワックさんを肩に担いでの全力疾走。
 揺さぶられるワックさんは驚きの声を上げながらもガリオンに必死にしがみついていた。
 その後ろを続くルーフェンスさん。
 この面子を掩護するように殿となった俺。

「来いや! 迎撃してやらぁ!」
 気を引くように大音声で発せば、

「「「「キャァァァァァア!!!!」」」」
 叫声を揃えて俺へと向かって来てくれる。
 俺にだけに狙いを定めてくれるのは有り難い。
 前方のはジージーに任せて、側面と後方から出てきたのは俺が請け合おう。
 
 と、思った矢先に……、

「キャキャキャ!」

「やめい!」
 マスリリースにて迎撃。
 コイツ等……。いま普通に吊り橋の方を狙ってきやがった……。
 そういった指示を受けているのか?
 侵入者が現れたら、吊り橋ごと落とせという命令でもあるのだろうか。
 リンが使役するアンデッドのように知性があるのか?
 そう仮定した場合、面倒な展開になりそうなので迅速に対処しなければ!
 
 マスリリースとウインドスラッシュで次々と落としていく。
 羽が生えているだけで実力は並のゴブリン。
 しかも飛行は出来ても飛行が不得手な感じだから難しい相手ではない。
 あまりにもジグザグで飛行するから未来予想位置ってのを考えながら遠距離攻撃をしないといけないのが難しいけど。

「あ! 下方から来るんじゃない!」
 十一人目を仕留めたところで、こちらの攻撃を避けるかのように下方から吊り橋を狙ってくる。
 マスリリースとウインドスラッシュで対応すれば吊り橋ごと斬ってしまう。
 やっぱり知性があるみたいだな。

「くろいバリバリ!」

「キャァア!?」

「おお! なんかアンデッドだけど効果がある」
 俺の左肩から離れて下方から迫る空飛ぶゴブリンにミルモンの技が炸裂。
 暗黒の電撃が体を覆えば、アンデッドでありながらも驚きからか動きが鈍くなった。

「ナイスだミルモン」
 言いつつ手にするのは、久しぶりにホルスターから抜いたチアッパ・ライノ。
 ミルモンのお陰で動きが鈍くなり、恰好の的となってくれる空飛ぶゴブリンゾンビ――ゴブリンウィングに向かって一発を放つ。
 乾いた音が響いて頭部に命中。

「やっぱりゾンビにはマグナムが最適解だな!」
 ――皆を見れば、

「渡り終わったな」

「兄ちゃん、オイラ達も」

「おうよ!」
 チャンバーに残る五発の.357マグナム弾を撃ちつつ駆ける。

「後は自分が」
 吊り橋の袂近くへと移動すれば、ジージーが俺に代わって橋を狙おうとするゴブリンウィング達を迎撃。
 自由に空中を移動できるのやはり強い。
 俺と違って地形を無視して多方向からの攻撃が可能な分、瞬く間に残りのゴブリンウィング達を仕留めてくれた。
 
 ――無事に渡りきれたところで、心の中で勝手に命名したゴブリンウィングの事をプレイギアで調べようとしたが、亡骸は全て空堀の底。
 データを収集できなかったのは残念だった。
 ジージーに頼むのもいいが、落下にて頭部が潰れているであろう亡骸を堀底から持ってきてもらうのは気が引けるし、なにより先を急ぎたい。
 
 ここの連中を捕らえてから情報は手に入れればいいだけだしな。
 カプセルの中にいるゴブリンたち共々、こちら側に全てを引き渡してもらおう。
 
 お返しに、こちらからは監獄行きの刑をプレゼントしてあげないとな。
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