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驕った創造主
PHASE-1693【打ち込みも口論もお粗末】
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「だがそう簡単に認めるわけにもいかねえんだわ!」
某殿と違い、天井方向から聞こえてくる声は未だ戦意を失っていないもの。
急降下からの短槍の投擲。
「無駄です」
軽く籠手で弾いてみせる。
次には蛇の口が開く。
何をしてくるのかは理解済み。
「無駄です」
同じ言葉で継ぎ、ミルモンをベルへと預けてから跳躍。
弧を描くナイフサイズの牙から吐き出される毒液をあえて躱さずに真正面から受けてやる。
ビチャリと体に付着すれば黄色い毒霧へと変わる。
「馬鹿かお前は!」
と、ソドンバアムからは心配の声。
ルーフェンスさんは厳しめの対応だが、俺から見れば良い人物である。
「俺は全ての毒に耐性があるんで」
「ああそうかよ。刀もとんでもねえ力を持っているようだからな。信じてやるよ!」
そう言って次の短槍を投擲して直ぐに抜剣。
迫る短槍をこれまた弾き、降下してくるソドンバアムと上下で交差するその瞬間に――、
「ふんす!」
「うぐぅぅ……」
刀は使用せず、拳を一撃。
胸部へと直撃すれば苦しそうな声を漏らして降下していく。
乗り手を心配しているのか、レッサーワイバーンはゆっくりと羽ばたきつつ地面へと着地。
遅れて俺も着地。
「くそっ! 手心を加えられるとは……」
「すみませんね。手を抜いて」
「手を抜いても十分対応できるってことなんだろ。本当ならコイツもろともバッサリといかれてただろうからな」
心配するかのように主の体に蛇の頭をこすりつける様は猫のようだった。
主、合成獣ともに信頼関係は良好。
「さて、手心を加えたのは別の理由もあります」
「そのようだな。冒険者の心意気、痛み入るとでも言うべきか」
言いつつレッサーワイバーンから降り、自身の足で円形闘技場の地に立てば、
「お膳立てはしましたよ」
「感謝いたします」
俺の横に立つルーフェンスさんから深々と頭を下げられる。
「なんでお前は冒険者にそこまで慇懃なんだ」
「貴様がそれを知る必要はない」
「そう言うってことは、その冒険者はただの冒険者じゃないんだろうな」
「だから知る必要はないと言っている!」
ルーフェンスさんが駆け出せば、主を守るようにレッサーワイバーンが鎌首を上げる。
だがそれを制止させるように頭を撫でるソドンバアム。
「来いよルーフェンス。格の違いってのを見せてやる」
「見せてみるがいい!」
互いに手にするのは剣。
諸手で絞るように柄を握り――、
「「はぁっ!」」
裂帛の気合いは互いに同音。
ギィィィィンと一合。
力と力によるぶつかり合いで生まれた衝撃によって、お互い弾かれる。
膂力は互角ってところ。
「俺に力で並ぶか」
「胸に一撃を受けていながらよく対応したな」
「この一撃が無けりゃ、いつもみたいに俺が吹っ飛ばしてたんだろうがな」
「ぬかせ!」
言葉を投げつけながら双方、再び接近。
ギィン! ギャリン! と、些か不細工な音による丁々発止。
如何に力だけでぶつけ合っているかというのが分かる。
感情まる出しの意地による打ち込みは素人剣術のようだった。
剣の腹部分でしっかりと受けている所だけは評価するけど。
力任せに刃と刃で受け合っていれば、刃は直ぐに駄目になるからな。
「なんてメチャクチャな打ち込みだ……」
と、既に戦う意思のない私兵の一人から声が漏れる。
普段のソドンバアムとは違うとのこと。
いつの間にか俺たちの周囲に集まり、二人の打ち合いを囲むようにして見守る。
ガリオンとジージーも相手に敵意が無いと判断しているのか、警戒をする事もなく腕組みして戦いを眺める。
あまりにも力任せで技量の無い打ち込みだからか、小馬鹿にした笑みを湛えて眺めているけども……。
まあ、ガリオン然としていると言えばそれまでだな。
「騎鳥隊の面汚しめ!」
「汚してねえだろうが! こっちは辞めただけだ! 元騎鳥隊だ!」
「この様な場所で元が頭につく者が、悪道に手を染めているのだ! 面汚しという表現は間違っていない!」
「だから何のことだよ!」
「それを理解できていない事が罪である!」
「無茶苦茶な言い様だな。流石は堅物のルーフェンス隊長。あまりにも厳格すぎて、部下達がしんどいってぼやいていたもんだ」
「な、なにを!」
あ、声が上擦った。ちょっと気になったようだな。
「隊としての時間厳守は当然だが、それを私生活にまで根付かせようとするのが口うるさくてかなわない。と、言っていたな」
「そんな事あるわけがない。そもそも時間厳守を重んじていたのは、貴様が部下達を歓楽街へと連れて行っては次の日に支障が出るような事ばかりしていたからだ!」
――ん?
「だがそいつ等は一度も遅れるという事はなかったはずだ」
「それは――そう」
「他の連中は普通に真面目なんだよ。お前は真面目が過ぎるんだ。しかもそれを他者にまで強要させようとするから駄目なんだ」
「ぐぬぅ! 辞めたヤツが偉そうに!」
「辞めたから気兼ねなく言ってやってるんだよ」
――ふむん。
「なんか口論が子供の言い合いみたいになってんな……」
「双方、鬱積した物を吐き出したいという思いがあるんだろうな」
「双方っていうか、主にルーフェンスさんの方が溜まってるみたいだけどな」
「まあ、そうだな。どちらにしろ――くだらない」
そう言うベルの表情は半眼。
呆れ果てておられる。
某殿と違い、天井方向から聞こえてくる声は未だ戦意を失っていないもの。
急降下からの短槍の投擲。
「無駄です」
軽く籠手で弾いてみせる。
次には蛇の口が開く。
何をしてくるのかは理解済み。
「無駄です」
同じ言葉で継ぎ、ミルモンをベルへと預けてから跳躍。
弧を描くナイフサイズの牙から吐き出される毒液をあえて躱さずに真正面から受けてやる。
ビチャリと体に付着すれば黄色い毒霧へと変わる。
「馬鹿かお前は!」
と、ソドンバアムからは心配の声。
ルーフェンスさんは厳しめの対応だが、俺から見れば良い人物である。
「俺は全ての毒に耐性があるんで」
「ああそうかよ。刀もとんでもねえ力を持っているようだからな。信じてやるよ!」
そう言って次の短槍を投擲して直ぐに抜剣。
迫る短槍をこれまた弾き、降下してくるソドンバアムと上下で交差するその瞬間に――、
「ふんす!」
「うぐぅぅ……」
刀は使用せず、拳を一撃。
胸部へと直撃すれば苦しそうな声を漏らして降下していく。
乗り手を心配しているのか、レッサーワイバーンはゆっくりと羽ばたきつつ地面へと着地。
遅れて俺も着地。
「くそっ! 手心を加えられるとは……」
「すみませんね。手を抜いて」
「手を抜いても十分対応できるってことなんだろ。本当ならコイツもろともバッサリといかれてただろうからな」
心配するかのように主の体に蛇の頭をこすりつける様は猫のようだった。
主、合成獣ともに信頼関係は良好。
「さて、手心を加えたのは別の理由もあります」
「そのようだな。冒険者の心意気、痛み入るとでも言うべきか」
言いつつレッサーワイバーンから降り、自身の足で円形闘技場の地に立てば、
「お膳立てはしましたよ」
「感謝いたします」
俺の横に立つルーフェンスさんから深々と頭を下げられる。
「なんでお前は冒険者にそこまで慇懃なんだ」
「貴様がそれを知る必要はない」
「そう言うってことは、その冒険者はただの冒険者じゃないんだろうな」
「だから知る必要はないと言っている!」
ルーフェンスさんが駆け出せば、主を守るようにレッサーワイバーンが鎌首を上げる。
だがそれを制止させるように頭を撫でるソドンバアム。
「来いよルーフェンス。格の違いってのを見せてやる」
「見せてみるがいい!」
互いに手にするのは剣。
諸手で絞るように柄を握り――、
「「はぁっ!」」
裂帛の気合いは互いに同音。
ギィィィィンと一合。
力と力によるぶつかり合いで生まれた衝撃によって、お互い弾かれる。
膂力は互角ってところ。
「俺に力で並ぶか」
「胸に一撃を受けていながらよく対応したな」
「この一撃が無けりゃ、いつもみたいに俺が吹っ飛ばしてたんだろうがな」
「ぬかせ!」
言葉を投げつけながら双方、再び接近。
ギィン! ギャリン! と、些か不細工な音による丁々発止。
如何に力だけでぶつけ合っているかというのが分かる。
感情まる出しの意地による打ち込みは素人剣術のようだった。
剣の腹部分でしっかりと受けている所だけは評価するけど。
力任せに刃と刃で受け合っていれば、刃は直ぐに駄目になるからな。
「なんてメチャクチャな打ち込みだ……」
と、既に戦う意思のない私兵の一人から声が漏れる。
普段のソドンバアムとは違うとのこと。
いつの間にか俺たちの周囲に集まり、二人の打ち合いを囲むようにして見守る。
ガリオンとジージーも相手に敵意が無いと判断しているのか、警戒をする事もなく腕組みして戦いを眺める。
あまりにも力任せで技量の無い打ち込みだからか、小馬鹿にした笑みを湛えて眺めているけども……。
まあ、ガリオン然としていると言えばそれまでだな。
「騎鳥隊の面汚しめ!」
「汚してねえだろうが! こっちは辞めただけだ! 元騎鳥隊だ!」
「この様な場所で元が頭につく者が、悪道に手を染めているのだ! 面汚しという表現は間違っていない!」
「だから何のことだよ!」
「それを理解できていない事が罪である!」
「無茶苦茶な言い様だな。流石は堅物のルーフェンス隊長。あまりにも厳格すぎて、部下達がしんどいってぼやいていたもんだ」
「な、なにを!」
あ、声が上擦った。ちょっと気になったようだな。
「隊としての時間厳守は当然だが、それを私生活にまで根付かせようとするのが口うるさくてかなわない。と、言っていたな」
「そんな事あるわけがない。そもそも時間厳守を重んじていたのは、貴様が部下達を歓楽街へと連れて行っては次の日に支障が出るような事ばかりしていたからだ!」
――ん?
「だがそいつ等は一度も遅れるという事はなかったはずだ」
「それは――そう」
「他の連中は普通に真面目なんだよ。お前は真面目が過ぎるんだ。しかもそれを他者にまで強要させようとするから駄目なんだ」
「ぐぬぅ! 辞めたヤツが偉そうに!」
「辞めたから気兼ねなく言ってやってるんだよ」
――ふむん。
「なんか口論が子供の言い合いみたいになってんな……」
「双方、鬱積した物を吐き出したいという思いがあるんだろうな」
「双方っていうか、主にルーフェンスさんの方が溜まってるみたいだけどな」
「まあ、そうだな。どちらにしろ――くだらない」
そう言うベルの表情は半眼。
呆れ果てておられる。
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