異世界冒険記『ストレージ・ドミニオン』

FOX4

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驕った創造主

PHASE-1694【合わせていただけ】

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「騎鳥隊隊長を辞めてまで就くほどの魅力が此処にあるとは思えんな!」

「あるさ。あいつを見ろ。新たなる力の可能性だ。それを生み出す者達と行動する事がこれから先どれほど為になると思う」
 レッサーワイバーンを指させば、

「残虐な連中と行動する先に有益なものなど絶対にない!」
 と、返すルーフェンスさん。

「新しい力が誕生するってことは、それだけ魔王軍との戦いに対しても有利になるって事なんだよ! 新たなる戦力が生み出される事はこの世界の為だ!」
 ――なるほど。ソドンバアムはそういった考えを持っているわけだ。
 その部分を上手い具合カイメラに利用されたってところかな。

「馬鹿馬鹿しい、命と別の命を組み合わせ、果てはアンデッドまで投入する。このような悪道を歩む者達に正義などあるものか!」

「全ては魔王軍をこの大陸から追い払い、そして討伐する為だ! 善悪なんてのは後の連中が決めてくれる。それに、この世界が守られるなら俺は悪道でも堂々と真ん中を歩いてやるよ!」

「ぬかしたなソドンバアム!」

「ああ、ぬかしたぞ。ルーフェンス!」

「ここで勝利して貴様を否定してやる!」

「負けようが勝とうが否定してくれて結構。俺は俺が正しいと思った道を突き進むだけだ」
 覚悟が極まっているね。
 
 これは――、

「勝負有りだ」

「ベルもそう思うか」

「ああ」
 双方、剣の間合いから外へと移動。わずかな睨み合いの後に――一足飛び。
 お互いが一足で飛び込めば、当然、互いに剣の間合い。

「ワックさん、ハイポーションの準備を」
 言ったところで決着。
 終始、力みによって剣を振るっていたルーフェンスさん。
 そして、決着の一振りの時には脇を締め、足、腰、腕が連動しての見事な胴打ちを見舞ったソドンバアム。
 どうやら初撃から決着の一振りの前までルーフェンスさんの力みある振りに、ただ付き合っていただけだったようだ。
 
 リレントレス・アウルに騎鳥しての空戦による戦いとなればどういった決着になるのかは分からないけども、地に足をつけた状況ではソドンバアムの方が上だった。
 というか、最初から決まっていたのかもな。
 騎鳥隊の矜持と怒りだけに身を任せて挑んだところで勝てるわけなどない。

 力みある振り合いだけでなく、荒々しく喋々と言葉をぶつけ合う事にもソドンバアムは付き合ってやっただけだろう。

 決着の成り行きを見届ける。
 
 ルーフェンスさん、地面へうつ伏せで倒れ込むも動いている。
 胴部分からの出血量が少ないことから斬撃は浅いもの。
 ソドンバアムはトドメへとは移行しない。
 ルーフェンスさんが倒れたと同時にジージーが二人の間に土の壁を展開してくれたからね。
 そんな事をしなくても動くつもりは毛ほども無かったんだろうけど。

「手心に感謝しますよ」

「それはこっちも一緒だ冒険者」
 自分の仲間達に対し、発言どおり命を奪う事無く対応してくれたその返礼とのこと。
 自分たちは手加減はしないとか言ってたのにしてくれるんだからな。
 この人も十分にお人好しだ。

 この間に俺がお願いしていたハイポーションをワックさんがルーフェンスさんへと使用してくれる。
 ワックさんの護衛とばかりにガリオンが側についてソドンバアムや私兵達に睨みを利かせてくれていた。
 ジージーとガリオン。言わなくても動いてくれる。
 更にパーティーとしての連携が取れるようになってきたな。

「くそっ!」
 ハイポーションによる回復からの開口一番は悔しさをまる出しにした短い発言。
 
 次には、

「まずは感謝だろうが」
 と、ガリオンが拳骨を喰らわす……。
 再び地面に倒れ込むルーフェンスさん。
 ソドンバアムの一閃よりダメージを受けているみたいだった……。
 地面を転がりつつも――、

「感謝いたします。クボッタ殿」
 立ち上がり涙目で一礼。

「さてさてさて」
 ここで代表して俺がソドンバアムへと歩み寄る。

「次は冒険者が相手か?」

「決着はついているでしょう。お二人のはエキシビションってところですよ」

「――は?」

「それで、こちらが勝ちでいいですかね?」

「ルーフェンスの野郎を倒したってのに負けを俺に問うてくるとか」

「局地戦で勝っても、戦略的に負けてたら意味ないですよ」

「言うじゃねえか。こっちは延長戦でもいいんだぞ」

「引き際を知らない指導者が原因で多くが命を失う。そんな浅はかで馬鹿げた戦い方をするなんてことしませんよね? なんたって魔王軍と戦うため、自分なりのプランを考えている方なんですから」

「――言うね」
 返してくればわずかに生まれる静寂。
 ややあって、

「分かった。俺たちの負けでいい。それでいいか」
 私兵の面々へと問えば、悔しそうに歯を食いしばりながらも俺たちには太刀打ち出来ないという現実はしっかりと受け入れているようで、ソドンバアムの発言に重々しく頷きで返していた。

「ならば次へと進まなければならない。我々を白衣の者達の所へと案内してもらおう。それと貴男には聞きたい事もある」

「そう言われて、分かりました舞姫――と言うとでも思うかい?」

「おい、こちとらまだ暴れたりねえんだ。もし断るなら強烈なのを顔面にぶち込んでやるぞ」

「おお、怖えぇ~」
 ゴキバキ指を鳴らしながら凄んでみせるガリオンに恐怖する素振りを見せるも、声音には余裕がある。
 ガリオンを相手にしてもその余裕。
 ソドンバアムの胆力は大したもんだ。

「いい加減にしろ。敗北を認めたなら素直に従うものだ」

「敗北宣言したからって、必ずしも従う定めはねえよルーフェンス。こっちはいつでも首を落とされてもいいと覚悟を持って戦ってんだからな。それに――回復して直ぐさま勝者の立ち位置につかれても言葉に凄味はねえぞ」

「うっぬぅぅ……。それは……そう」
 勝負自体には負けているからか、そう言われれば何も言い返せないでいるルーフェンスさんなのであった。
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