1,695 / 1,861
驕った創造主
PHASE-1695【導かれるように】
しおりを挟む
負けたことで言葉を詰まらせていたルーフェンスさんとは違い、
「おお! よう吠えた。ならば我がその願いを叶えてくれよう」
ここでジージーがソドンバアムへと接近し、首どころか体を容易に両断できそうなロングソードの切っ先を触れるか触れないかの距離で額へと突きつける。
「まったく、豪腕で大立ち回りをしていた強者二人は凄む事しか出来ねえのかよ冒険者」
「勝者側として余裕ある言動をとってほしいね」
苦言を述べればガリオンは舌打ちをし、ジージーは剣を鞘へと収めて俺の後方へと移動。
会話しやすくなったところで、
「死を覚悟して対峙しているってのは、この二人への対応で本気だというのは理解しました」
「そうか」
「でも死なれるのは困るので、ここは話し合いで解決したいですね」
「良い提案だな」
関係性を良いものとするため、俺は雑嚢からポーションを取り出しソドンバアムへと手渡せば、軽い会釈から何の躊躇もなくソレを煽ってくれる。
俺に対して信頼を見せてくれていると判断していいみたいだな。
なので――、
「……にわかには信じられんな」
「真実ですよ」
――製造所ではアローンガットと名付けられた不気味なアンデッドが出現し、参加者が襲われる事態に陥っていた事を伝えた。
ソドンバアム達が白衣組と会場を後にする前に香炉を設置したが、その煙によって参加者の一部と私兵達が凶暴化した事も伝えれば渋面となる。
後者の方で特に眉尻が上がった。
私兵の面々の結束力は強いようだ。
「ルーフェンスの野郎が怒気を纏ってとち狂った事を言い出した時は小馬鹿にした笑みになっちまったが、冒険者が滔々と説明してくれればこちらも冷静に話を聞けた」
言われてルーフェンスさんから舌打ちが聞こえてくるが、そのまま話を続ける俺とソドンバアム。
「何となく違和感もあった」
「その違和感とは?」
「私兵の振り分けだ。ここが重要な拠点だからってことで私兵の中でも腕の立つのがここに集められたと言われれば納得もするが、それでも極端だったからな」
製造所サイドは壮年以上や、実力がまだまだなので形成されていた。
本来の編制はバランス良く振り分けるそうだが、今回はそれがなかったという事だった。
白衣組は大事になると分かっているから、上澄みである面子を周囲に置いておきたいって魂胆だったんだろうな。
「先に進みたくもあるが、質問もある」
「なんでしょう舞姫」
「貴男が騎鳥隊を辞める理由となったのは、単独行動と規定にない場所を飛行したからと聞いた」
「まあな」
「それは――ある存在を確保する為だったのではないか?」
――……寒気を覚える冷たい空気が場を支配する。
ガリオンとジージーもコレには背筋を伸ばし、前者は口を真一文字にして状況を窺う。
「どうなのだ?」
冷え切った場になったことでソドンバアムも呑まれてしまい、ベルの再度の問いかけではたとなれば、
「そ、そうだ」
肯定にて返してきた。
「――そうか」
更に凍りつく場。
「確保したのは白い子グマで間違いないか?」
美人様がソドンバアムへと更に詰め寄る。
普段なら美人の接近というのは喜ばしいものだろうけども、冷たい怒気を纏わせているとなれば話は別。
へたり込んだ姿で後方へジリジリと下がっていくが、
「下がるなみっともない。質問に答えよ」
この一言に素直に従い動きを止め、
「間違いなく白い子グマだった」
「どうやって連れてきた」
「連れてきたと言うよりは……」
「くぐもらずにハッキリと!」
「ウッス! 俺の使用していたリレントレス・アウルが勝手に目的地まで移動したんだよ」
「どういうことだ? 貴男が手綱を操っていたのだろう」
「操っていたさ。だが指示されていた目的地付近で俺の命令に従わずに動き出した。あれは導かれるかのようだった」
――自らが騎鳥していたリレントレス・アウルが指示に従わず導かれるように移動した先では様々な鳥の群れ。
普段なら狩る側と狩られる側からなる鳥の群れが小魚のように一塊となって空を飛び、その下方では見た事もない大型生物の背に乗った白い子グマ。
一目散にリレントレス・アウルがそこへと向かい、そして子グマが乗ってきたそうだ。
「抵抗などせずに?」
問うベルにソドンバアムは首肯で返す。
「それで目的地であるここへと連れてきたと?」
「そうだ。大人しくしていた。鳴き声も上げずに静かに俺へとしがみついてここまで来たわけだ」
――鳴き声も上げず?
「異な事を。人語を話すことが出来るんですけどね」
ベルの横に立ち俺がそう言えば、
「人語を? いや知らん。二足歩行というのは驚いたが、子グマはただ静かに俺の方へとやって来ただけだ。そして俺が手綱を引く事なくリレントレス・アウルがここまで勝手に飛んできた」
「やはりゴロ太は何者かに操られているのか」
「可能性はあるな。挨拶もせずにただ静かに乗るなんてゴロ太らしくない」
「オルトの言うとおりだ」
礼儀正しいゴロ太が初対面の相手に挨拶をしないのはおかしいからな。
「意識はどんな感じでした?」
「そうだな。寝惚けているかのような感じではあった」
となれば、やはり催眠的な何かがゴロ太に施されていた可能性があるな。
「後、ゴロ太を乗せいていた大型の生物たちは?」
「それなら俺が飛び立ってから後をついてきた」
飛行能力と地形に左右される地上の移動となれば差は開く。
それでも懸命に後に続いていたのは覚えているそうだ。
となれば、もしかしたらチコ達もここへと来ている可能性があるな。
ゴロ太と一緒になって王都から出てきたのだから、ここへとついてきているかもしれない。
それこそゴロ太同様、何者かの力によって従っていると判断するべきだろうな。
「おお! よう吠えた。ならば我がその願いを叶えてくれよう」
ここでジージーがソドンバアムへと接近し、首どころか体を容易に両断できそうなロングソードの切っ先を触れるか触れないかの距離で額へと突きつける。
「まったく、豪腕で大立ち回りをしていた強者二人は凄む事しか出来ねえのかよ冒険者」
「勝者側として余裕ある言動をとってほしいね」
苦言を述べればガリオンは舌打ちをし、ジージーは剣を鞘へと収めて俺の後方へと移動。
会話しやすくなったところで、
「死を覚悟して対峙しているってのは、この二人への対応で本気だというのは理解しました」
「そうか」
「でも死なれるのは困るので、ここは話し合いで解決したいですね」
「良い提案だな」
関係性を良いものとするため、俺は雑嚢からポーションを取り出しソドンバアムへと手渡せば、軽い会釈から何の躊躇もなくソレを煽ってくれる。
俺に対して信頼を見せてくれていると判断していいみたいだな。
なので――、
「……にわかには信じられんな」
「真実ですよ」
――製造所ではアローンガットと名付けられた不気味なアンデッドが出現し、参加者が襲われる事態に陥っていた事を伝えた。
ソドンバアム達が白衣組と会場を後にする前に香炉を設置したが、その煙によって参加者の一部と私兵達が凶暴化した事も伝えれば渋面となる。
後者の方で特に眉尻が上がった。
私兵の面々の結束力は強いようだ。
「ルーフェンスの野郎が怒気を纏ってとち狂った事を言い出した時は小馬鹿にした笑みになっちまったが、冒険者が滔々と説明してくれればこちらも冷静に話を聞けた」
言われてルーフェンスさんから舌打ちが聞こえてくるが、そのまま話を続ける俺とソドンバアム。
「何となく違和感もあった」
「その違和感とは?」
「私兵の振り分けだ。ここが重要な拠点だからってことで私兵の中でも腕の立つのがここに集められたと言われれば納得もするが、それでも極端だったからな」
製造所サイドは壮年以上や、実力がまだまだなので形成されていた。
本来の編制はバランス良く振り分けるそうだが、今回はそれがなかったという事だった。
白衣組は大事になると分かっているから、上澄みである面子を周囲に置いておきたいって魂胆だったんだろうな。
「先に進みたくもあるが、質問もある」
「なんでしょう舞姫」
「貴男が騎鳥隊を辞める理由となったのは、単独行動と規定にない場所を飛行したからと聞いた」
「まあな」
「それは――ある存在を確保する為だったのではないか?」
――……寒気を覚える冷たい空気が場を支配する。
ガリオンとジージーもコレには背筋を伸ばし、前者は口を真一文字にして状況を窺う。
「どうなのだ?」
冷え切った場になったことでソドンバアムも呑まれてしまい、ベルの再度の問いかけではたとなれば、
「そ、そうだ」
肯定にて返してきた。
「――そうか」
更に凍りつく場。
「確保したのは白い子グマで間違いないか?」
美人様がソドンバアムへと更に詰め寄る。
普段なら美人の接近というのは喜ばしいものだろうけども、冷たい怒気を纏わせているとなれば話は別。
へたり込んだ姿で後方へジリジリと下がっていくが、
「下がるなみっともない。質問に答えよ」
この一言に素直に従い動きを止め、
「間違いなく白い子グマだった」
「どうやって連れてきた」
「連れてきたと言うよりは……」
「くぐもらずにハッキリと!」
「ウッス! 俺の使用していたリレントレス・アウルが勝手に目的地まで移動したんだよ」
「どういうことだ? 貴男が手綱を操っていたのだろう」
「操っていたさ。だが指示されていた目的地付近で俺の命令に従わずに動き出した。あれは導かれるかのようだった」
――自らが騎鳥していたリレントレス・アウルが指示に従わず導かれるように移動した先では様々な鳥の群れ。
普段なら狩る側と狩られる側からなる鳥の群れが小魚のように一塊となって空を飛び、その下方では見た事もない大型生物の背に乗った白い子グマ。
一目散にリレントレス・アウルがそこへと向かい、そして子グマが乗ってきたそうだ。
「抵抗などせずに?」
問うベルにソドンバアムは首肯で返す。
「それで目的地であるここへと連れてきたと?」
「そうだ。大人しくしていた。鳴き声も上げずに静かに俺へとしがみついてここまで来たわけだ」
――鳴き声も上げず?
「異な事を。人語を話すことが出来るんですけどね」
ベルの横に立ち俺がそう言えば、
「人語を? いや知らん。二足歩行というのは驚いたが、子グマはただ静かに俺の方へとやって来ただけだ。そして俺が手綱を引く事なくリレントレス・アウルがここまで勝手に飛んできた」
「やはりゴロ太は何者かに操られているのか」
「可能性はあるな。挨拶もせずにただ静かに乗るなんてゴロ太らしくない」
「オルトの言うとおりだ」
礼儀正しいゴロ太が初対面の相手に挨拶をしないのはおかしいからな。
「意識はどんな感じでした?」
「そうだな。寝惚けているかのような感じではあった」
となれば、やはり催眠的な何かがゴロ太に施されていた可能性があるな。
「後、ゴロ太を乗せいていた大型の生物たちは?」
「それなら俺が飛び立ってから後をついてきた」
飛行能力と地形に左右される地上の移動となれば差は開く。
それでも懸命に後に続いていたのは覚えているそうだ。
となれば、もしかしたらチコ達もここへと来ている可能性があるな。
ゴロ太と一緒になって王都から出てきたのだから、ここへとついてきているかもしれない。
それこそゴロ太同様、何者かの力によって従っていると判断するべきだろうな。
2
あなたにおすすめの小説
凡人がおまけ召喚されてしまった件
根鳥 泰造
ファンタジー
勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。
仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。
それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。
異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。
最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。
だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。
祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。
最強の異世界やりすぎ旅行記
萩場ぬし
ファンタジー
主人公こと小鳥遊 綾人(たかなし あやと)はある理由から毎日のように体を鍛えていた。
そんなある日、突然知らない真っ白な場所で目を覚ます。そこで綾人が目撃したものは幼い少年の容姿をした何か。そこで彼は告げられる。
「なんと! 君に異世界へ行く権利を与えようと思います!」
バトルあり!笑いあり!ハーレムもあり!?
最強が無双する異世界ファンタジー開幕!
夢幻の錬金術師 ~【異空間収納】【錬金術】【鑑定】【スキル剥奪&付与】を兼ね備えたチートスキル【錬金工房】で最強の錬金術師として成り上がる~
青山 有
ファンタジー
女神の助手として異世界に召喚された厨二病少年・神薙拓光。
彼が手にしたユニークスキルは【錬金工房】。
ただでさえ、魔法があり魔物がはびこる危険な世界。そこを生産職の助手と巡るのかと、女神も頭を抱えたのだが……。
彼の持つ【錬金工房】は、レアスキルである【異空間収納】【錬金術】【鑑定】の上位互換機能を合わせ持ってるだけでなく、スキルの【剥奪】【付与】まで行えるという、女神の想像を遥かに超えたチートスキルだった。
これは一人の少年が異世界で伝説の錬金術師として成り上がっていく物語。
※カクヨムにも投稿しています
貧弱の英雄
カタナヅキ
ファンタジー
この世界では誰もが生まれた時から「異能」と「レベル」呼ばれる能力を身に付けており、人々はレベルを上げて自分の能力を磨き、それに適した職業に就くのが当たり前だった。しかし、山奥で捨てられていたところを狩人に拾われ、後に「ナイ」と名付けられた少年は「貧弱」という異能の中でも異質な能力を身に付けていた。
貧弱の能力の効果は日付が変更される度に強制的にレベルがリセットされてしまい、生まれた時からナイは「レベル1」だった。どれだけ努力してレベルを上げようと日付変わる度にレベル1に戻ってしまい、レベルで上がった分の能力が低下してしまう。
自分の貧弱の技能に悲観する彼だったが、ある時にレベルを上昇させるときに身に付ける「SP」の存在を知る。これを使用すれば「技能」と呼ばれる様々な技術を身に付ける事を知り、レベルが毎日のようにリセットされる事を逆に利用して彼はSPを溜めて数々の技能を身に付け、落ちこぼれと呼んだ者達を見返すため、底辺から成り上がる――
※修正要請のコメントは対処後に削除します。
異世界に召喚されて2日目です。クズは要らないと追放され、激レアユニークスキルで危機回避したはずが、トラブル続きで泣きそうです。
もにゃむ
ファンタジー
父親に教師になる人生を強要され、父親が死ぬまで自分の望む人生を歩むことはできないと、人生を諦め淡々とした日々を送る清泉だったが、夏休みの補習中、突然4人の生徒と共に光に包まれ異世界に召喚されてしまう。
異世界召喚という非現実的な状況に、教師1年目の清泉が状況把握に努めていると、ステータスを確認したい召喚者と1人の生徒の間にトラブル発生。
ステータスではなく職業だけを鑑定することで落ち着くも、清泉と女子生徒の1人は職業がクズだから要らないと、王都追放を言い渡されてしまう。
残留組の2人の生徒にはクズな職業だと蔑みの目を向けられ、
同時に追放を言い渡された女子生徒は問題行動が多すぎて退学させるための監視対象で、
追加で追放を言い渡された男子生徒は言動に違和感ありまくりで、
清泉は1人で自由に生きるために、問題児たちからさっさと離れたいと思うのだが……
冷遇された聖女の結末
菜花
恋愛
異世界を救う聖女だと冷遇された毛利ラナ。けれど魔力慣らしの旅に出た途端に豹変する同行者達。彼らは同行者の一人のセレスティアを称えラナを貶める。知り合いもいない世界で心がすり減っていくラナ。彼女の迎える結末は――。
本編にプラスしていくつかのifルートがある長編。
カクヨムにも同じ作品を投稿しています。
神の加護を受けて異世界に
モンド
ファンタジー
親に言われるまま学校や塾に通い、卒業後は親の進める親族の会社に入り、上司や親の進める相手と見合いし、結婚。
その後馬車馬のように働き、特別好きな事をした覚えもないまま定年を迎えようとしている主人公、あとわずか数日の会社員生活でふと、何かに誘われるように会社を無断で休み、海の見える高台にある、神社に立ち寄った。
そこで野良犬に噛み殺されそうになっていた狐を助けたがその際、野良犬に喉笛を噛み切られその命を終えてしまうがその時、神社から不思議な光が放たれ新たな世界に生まれ変わる、そこでは自分の意思で何もかもしなければ生きてはいけない厳しい世界しかし、生きているという実感に震える主人公が、力強く生きるながら信仰と奇跡にに導かれて神に至る物語。
異世界へ行って帰って来た
バルサック
ファンタジー
ダンジョンの出現した日本で、じいさんの形見となった指輪で異世界へ行ってしまった。
そして帰って来た。2つの世界を往来できる力で様々な体験をする神須勇だった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる