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驕った創造主
PHASE-1768【悪因悪果】
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「ふむふむ。汗の代わりにガソリンが気化熱の役割を担うということですか。この室内では水をかけられるよりも辛いことになるわけですね」
俺が理解したところを見極めたのか先生が口を開く。
寒い中でも気体へと変化するガソリン。
水よりも早く気体へと変わる性質。
柄杓を使用してガソリンを体にかければ、即座にそこから気体へと変化。同時に体温を急速に奪うってことか……。
ヴィタリーさんが言うように、体を温めるために火が欲しくなる。が、火を欲せばそれで終わり。
拷問から火葬へと早変わりってことか……。
肉体的にも精神的にも追い込むのが拷問なのだから当然と言えば当然なんだけども……。
「こりゃキツいな」
受けるヤツがとんでもない極悪人であってもそれを見るというのは俺には厳しい……。
「分かった! 話そう! それどころか協力しようじゃないか!」
これから行われる事を想像したことでバルバダイが素直になる。
「私の叡智をお前――君たちに提きょ!?」
むんずと右手で口を強制的に防ぐヴィタリーさん。
口を潰すような勢いで閉じさせていた。
「シィィィィィ――」
残った左手の食指を一本立てれば、
「ここまで長々と得意げに講釈をたれてしまって、じゃあ拷問は無しにするね。ってなると、俺がただ知識をひけらかしたいだけのマヌケになってしまうじゃないか」
「んん! ん、んんんっ!!」
なんとか振り払おうと首を激しく振るけど、ヴィタリーさんの手を振り払うことは出来ない。
「もっと早くに素直になっていたならまた違っただろうが、分岐点は既に通過してしまった。二筋道という簡単な選択だったのにな。残念だ。これからは実地訓練だ。イシム君の為のダミードールになってもらう。天才殿の言葉を借りれば――被検体か」
「大いにこの被検体を使って学ばせてもらいます」
イシムの言い様……。
語調だけならヴィタリーさんといい勝負。拷問官としての風格が既に備わっている。
で、俺の左肩では悦に入る表情。
口元がめちゃくちゃ緩んでいる。最高の負の感情を全身で受け取っているんだろうな。
「大丈夫だから。貴男が凍傷に苦しんだとしても問題ないから。さっきみたいに直ぐヒールで治してあげる」
苦しめて苦しめて、回復。
即座に痛みを癒やすことで、終わることのない恐怖を身体に刻んでいく……。
「貴男が生み出していたのはアンデッドが多かったようね。創造主を気取るにしても、ままごと程度で留めておくべきだったわね。だから本物のアンデッドを相手にする事になる。貴男の目の前に立つアンデッドである私には感情なんてない。貴男がこれから苦しむ事になっても心は痛まない。だからずっと回復してあげる。でも――体は治っても、心までは治せないから。簡単には壊れないでね」
アンデッド特有というべきか、ヴィタリーさんのような酷薄な発言から来る冷たさではなく、体全体から放たれる死の冷たさってのがバルバダイへと向けられる。
感情が湧かないってのは嘘だろうけどな。明らかに怒っているし。
目の前で放たれる冷たい感情に当てられてしまい、恐怖から大粒の涙を流し出す。
暴れ回る目は、至近で見てくる三人からどうにかして視線を合わせないようにという必死さの現れ。
で、俺と目が合う。
合った瞬間に、
「おっと! 必死だな」
ヴィタリーさんが手を離す。
勢いよく噛まれそうになっていた。
解放されれば、
「勇者! いや、勇者様! お慈悲をお与えくださいぃぃぃぃぃぃい!!」
室内へと響く悲痛な叫びによる懇願。
滂沱のごとく涙を流して震えながら叫ぶ。
「さて、主。我々はお暇しますか」
絶望を与えるかのような先生の発言。
同時に先生が俺の背中を押して通路へと誘導しようとする。
「勇者様! 勇者さま゛っ!?」
「もう口を開くな。冷気を体に取り込むことになる。これからたっぷりと経験する前に欲張りな天才殿だ。人々や生物を弄び裏切るその身には、擬似的な嘆きの川を体験していただこう」
「んんんっ! んんん゛!!」
一瞥すれば、俺から視線を外すことはなく常に捕捉。
心が痛くなるが、
「主、いらぬ情は入りません。この者は今からこの者が経験すること以上の絶望を与え続けてきたのですから」
「そうですね……」
ここで余計な言動をするべきじゃないよな。
ならば、
「発言はせず、見るだけですね」
「長居することはないかと」
主は公爵であり勇者。
勇者が拷問という行為を見るのはよろしくない。執行してくださる方々を前にしてこのような事を言うのも申し訳ないですが。と、先生。
ヴィタリーさんとイシムはその考えは当たり前。拷問なんて見て楽しむとなればただの変態でしかないとのこと。
俺が残ると知れば、助けを懇願するバルバダイだったが、それを黙らせるようにパシャリ――と小さな水音が上がる。
「ひぎぃぃぃぃぃぃっぃいぃぃぃぃぃぃいいい!?」
絞るような悲鳴を上げて拘束された姿で暴れ出す。
暴れたところで完璧に固定された体は椅子から立ち上がる事も、倒れることも、逃げ出すことも出来ず、ただただ頭を激しく振るだけ……。
柄杓で軽くかけただけでこのリアクション。
「ああ……はぁ……あぁぁぁ……」
かけられた部分から冷気が立ち上る。
冷気という表現は正しいのか分からんが、気体となったガソリンだというのは理解できる。
途端に、バルバダイの唇が真っ青になる。
「ちょっとした量で暴れられてもな」
無感情な声のヴィタリーさん。
寒さと無感情な存在が前に立つだけでバルバダイは、
「ああ……ああぁぁぁ…………」
一度の行為だけで既に声が出せなくなってしまっていた。
恐怖と体を襲う冷たさ。
かけられた時の冷たさもだが、気化熱となって体温を奪っていく冷たさがかなり辛いようだった。
「凄いだろう。体温が奪われていくと同時に、自らの魂も奪われていく感覚を覚えるだろう?」
ぶれずに無感情。
バルバダイからすれば、目の前の男は死神でしかない。
目の前の死神から逃げ出したいという本能から目に力が宿れば、
「んん! んんふぅうんっ!!」
まだ動ける体力があるうちにとばかりに暴れる。
拘束されたベルトから体を脱しようとするも、非力な体ではそれは叶わない。
革のベルトが体に食い込んでいき、そこから血を流すだけ。
俺が理解したところを見極めたのか先生が口を開く。
寒い中でも気体へと変化するガソリン。
水よりも早く気体へと変わる性質。
柄杓を使用してガソリンを体にかければ、即座にそこから気体へと変化。同時に体温を急速に奪うってことか……。
ヴィタリーさんが言うように、体を温めるために火が欲しくなる。が、火を欲せばそれで終わり。
拷問から火葬へと早変わりってことか……。
肉体的にも精神的にも追い込むのが拷問なのだから当然と言えば当然なんだけども……。
「こりゃキツいな」
受けるヤツがとんでもない極悪人であってもそれを見るというのは俺には厳しい……。
「分かった! 話そう! それどころか協力しようじゃないか!」
これから行われる事を想像したことでバルバダイが素直になる。
「私の叡智をお前――君たちに提きょ!?」
むんずと右手で口を強制的に防ぐヴィタリーさん。
口を潰すような勢いで閉じさせていた。
「シィィィィィ――」
残った左手の食指を一本立てれば、
「ここまで長々と得意げに講釈をたれてしまって、じゃあ拷問は無しにするね。ってなると、俺がただ知識をひけらかしたいだけのマヌケになってしまうじゃないか」
「んん! ん、んんんっ!!」
なんとか振り払おうと首を激しく振るけど、ヴィタリーさんの手を振り払うことは出来ない。
「もっと早くに素直になっていたならまた違っただろうが、分岐点は既に通過してしまった。二筋道という簡単な選択だったのにな。残念だ。これからは実地訓練だ。イシム君の為のダミードールになってもらう。天才殿の言葉を借りれば――被検体か」
「大いにこの被検体を使って学ばせてもらいます」
イシムの言い様……。
語調だけならヴィタリーさんといい勝負。拷問官としての風格が既に備わっている。
で、俺の左肩では悦に入る表情。
口元がめちゃくちゃ緩んでいる。最高の負の感情を全身で受け取っているんだろうな。
「大丈夫だから。貴男が凍傷に苦しんだとしても問題ないから。さっきみたいに直ぐヒールで治してあげる」
苦しめて苦しめて、回復。
即座に痛みを癒やすことで、終わることのない恐怖を身体に刻んでいく……。
「貴男が生み出していたのはアンデッドが多かったようね。創造主を気取るにしても、ままごと程度で留めておくべきだったわね。だから本物のアンデッドを相手にする事になる。貴男の目の前に立つアンデッドである私には感情なんてない。貴男がこれから苦しむ事になっても心は痛まない。だからずっと回復してあげる。でも――体は治っても、心までは治せないから。簡単には壊れないでね」
アンデッド特有というべきか、ヴィタリーさんのような酷薄な発言から来る冷たさではなく、体全体から放たれる死の冷たさってのがバルバダイへと向けられる。
感情が湧かないってのは嘘だろうけどな。明らかに怒っているし。
目の前で放たれる冷たい感情に当てられてしまい、恐怖から大粒の涙を流し出す。
暴れ回る目は、至近で見てくる三人からどうにかして視線を合わせないようにという必死さの現れ。
で、俺と目が合う。
合った瞬間に、
「おっと! 必死だな」
ヴィタリーさんが手を離す。
勢いよく噛まれそうになっていた。
解放されれば、
「勇者! いや、勇者様! お慈悲をお与えくださいぃぃぃぃぃぃい!!」
室内へと響く悲痛な叫びによる懇願。
滂沱のごとく涙を流して震えながら叫ぶ。
「さて、主。我々はお暇しますか」
絶望を与えるかのような先生の発言。
同時に先生が俺の背中を押して通路へと誘導しようとする。
「勇者様! 勇者さま゛っ!?」
「もう口を開くな。冷気を体に取り込むことになる。これからたっぷりと経験する前に欲張りな天才殿だ。人々や生物を弄び裏切るその身には、擬似的な嘆きの川を体験していただこう」
「んんんっ! んんん゛!!」
一瞥すれば、俺から視線を外すことはなく常に捕捉。
心が痛くなるが、
「主、いらぬ情は入りません。この者は今からこの者が経験すること以上の絶望を与え続けてきたのですから」
「そうですね……」
ここで余計な言動をするべきじゃないよな。
ならば、
「発言はせず、見るだけですね」
「長居することはないかと」
主は公爵であり勇者。
勇者が拷問という行為を見るのはよろしくない。執行してくださる方々を前にしてこのような事を言うのも申し訳ないですが。と、先生。
ヴィタリーさんとイシムはその考えは当たり前。拷問なんて見て楽しむとなればただの変態でしかないとのこと。
俺が残ると知れば、助けを懇願するバルバダイだったが、それを黙らせるようにパシャリ――と小さな水音が上がる。
「ひぎぃぃぃぃぃぃっぃいぃぃぃぃぃぃいいい!?」
絞るような悲鳴を上げて拘束された姿で暴れ出す。
暴れたところで完璧に固定された体は椅子から立ち上がる事も、倒れることも、逃げ出すことも出来ず、ただただ頭を激しく振るだけ……。
柄杓で軽くかけただけでこのリアクション。
「ああ……はぁ……あぁぁぁ……」
かけられた部分から冷気が立ち上る。
冷気という表現は正しいのか分からんが、気体となったガソリンだというのは理解できる。
途端に、バルバダイの唇が真っ青になる。
「ちょっとした量で暴れられてもな」
無感情な声のヴィタリーさん。
寒さと無感情な存在が前に立つだけでバルバダイは、
「ああ……ああぁぁぁ…………」
一度の行為だけで既に声が出せなくなってしまっていた。
恐怖と体を襲う冷たさ。
かけられた時の冷たさもだが、気化熱となって体温を奪っていく冷たさがかなり辛いようだった。
「凄いだろう。体温が奪われていくと同時に、自らの魂も奪われていく感覚を覚えるだろう?」
ぶれずに無感情。
バルバダイからすれば、目の前の男は死神でしかない。
目の前の死神から逃げ出したいという本能から目に力が宿れば、
「んん! んんふぅうんっ!!」
まだ動ける体力があるうちにとばかりに暴れる。
拘束されたベルトから体を脱しようとするも、非力な体ではそれは叶わない。
革のベルトが体に食い込んでいき、そこから血を流すだけ。
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