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視線は南へ
PHASE-1794【悪魔城に出てきそう】
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「今確認した」
ここでゲッコーさん。
皆が軍議室のテーブルを中心に話し込んでいる間も隅っこの通信機でやり取りをしてくれる。
潜入しているハリエットからの情報では、再編制中の十万は後方からの補充もあって、編制にはラダイゴロスの算出以上に時間を要するということだった。
そして先生が大きな関心を抱いているガガドムサが率いてきた後方からの補充兵は二万とのこと。
主軸となっているのはオーク兵だそうで、後詰めの一割ほどが機動力を有したワーグ騎獣兵。
ざっと二千ってところだな。
高順氏が指揮する騎兵隊よりは数は劣る。
総兵力は相手方が圧倒的なのはかわりないけど。
「ふむふむ。兵員の補充ということですが、号して十二万と考えた方がいいでしょう」
十二万か。
先の戦いで向こうの兵数を削ってはいるんだろうけど、警戒するなら最大限の数で考えていた方がこちらも油断怠りなく励める。
「こちらは七千。対して敵方は二万の増員。中々に脅威ですな」
ロンゲルさんが緊張した声を発する。
手柄は欲しいがまさかこの状況で打って出るとは考えてなかったんだろうな。
口の中が渇いているのか、生唾を飲みたくても飲み込めないようで、何度か挑戦した結果、カップに注がれた水を一気に呷って喉を鳴らしていた。
「だが大きな手柄となる」
飲み干したタイミングで高順氏が発せば、ロンゲルさんがくわりと目を見開く。
「やってやりましょう!」
大きな手柄となれば自分たちの領地に住む者たちが楽になる。
当然、自分たちも楽になる。
そう言って気合いを入れていた。
自分たちよりも領地に住む者たちを真っ先に口にする辺り、ロンゲルさんの人の良さが伝わってくる。
慕われている地頭なんだろうね。
バリタン伯もいい人材を有している。
「では――準備を」
「え、もう!」
「その通りですよシャルナ殿」
動くなら素早く。
単身乗り込んできた者を追い払ったことで活気づいた――という理由で南へとちょっと打って出てみましょう。
と、ピクニック気分の先生だった。
「可能ならば野営をしている場所から追い払いたいですね」
とのこと。
七千で十二万を相手にして追い払うとか言う辺り、先生の肝っ玉のデカさはここの面子以上。
でもって、そう言うんだから勝つつもりなんだろうな。
「勝ってやりましょう。そして私の偉大なる歴史にまた栄光が一ページ刻まれます」
「いえ、勝ちません。勝ちませんが、後ろには下がらせたいですね」
「荀彧の言っていることが分かりませんね。それは勝ちでしょう」
「いえ、勝つのは相手を追い込むことになるので駄目です。相手を気持ちよくさせないといけないので」
「はぁ!?」
コクリコが素っ頓狂な声を上げるのは理解できるよ。
俺もまったく意味が分からないからね。
俺とコクリコは分かっていないけど、ベルやゲッコーさんを見る辺り、理解はしているってところなんだろうな。
以前もあったな。話題に置いていかれる感じ……。
「荀彧殿、相手側の兵糧はどうする?」
と、俺やコクリコと違って先生の真意を理解しているであろうゲッコーさんが口を開けば、
「相手が攻勢に出た所で処理してください」
「分かった。その段取りでいこう」
「くれぐれも機会があるからといって、上の者達の暗殺はしないように願います」
「さっきも止めたが、その事はもう一度、連絡しておくさ」
「よろしくお願いします。偉大なる十四男、継承四位のガガドムサ殿の戦いというのを我々もしっかりと目に焼き付けましょう」
とか言う辺り、先生も前に出るつもりなんだな。
予定よりも早い前線参加だ。
これが俗に言うオリチャーってやつなのか?
先生が参加してくれるなら間違いなくこちらサイドが負けるということはないだろうけど、勝つということでもないんだな。
――。
「馬なんですね」
ヒッポグリフばかりに騎乗しているから馬に乗る先生は珍しい。
まだこちら側の力の全てを見せたくないからと言うことだった。
なのでツッカーヴァッテは要塞で留守番。
電撃完全無効で尚且つ強力な電撃による攻撃も可能。超高速飛行も可能。
戦術よりも戦略寄りの大型生物はまだ隠したいよね。
「普段は騎乗していないようだが、我々の動きに対応できるのか?」
「心配無用ですよ陥陣営殿。ここの馬が乗り手が違うだけで動かなくなるということはないでしょう。調練を行っているのは貴男なのですからね。普段、乗っていなくても乗り手を制御してくれる素晴らしい馬ですよ。敵意を持つ者が乗れば間違いなく振り落とすという訓練も受けているのでしょうね」
「まあな」
馬の練度が高いことをベタ褒めすれば素直に喜ぶ高順氏。
褒めるべきツボを心得ている先生。
俺たちが王都から離れて活動している時、こういったやり取りを繰り返して良い関係性を築いたんだろうな。
「この調子だと今回も勝てそうですね」
「だから勝つつもりはないみたいだぞ」
「常勝こそが我が道だというのに」
ご立腹なコクリコなんだけども。
うむ……。
「すげえよ……」
「そうでしょうとも」
轡を並べて――と例えると語弊があるようでないが……。
コイツ……。サーバントストーンの扱いが本当に向上しているようだな。
以前は曲芸乗りで馬を駆って最前線で大立ち回りだったけど、今回は――、
「それ痛くないのか?」
「全く!」
力強い返し。コクリコの現在の姿は胡座をかいて宙に浮いているという姿だった。
高さには制限があるようだが、それでもダイフクに跨がる俺と同じ視線の高さくらいまでならサーバントストーンに乗って移動が可能なようだ。
アドンとサムソンに尻を乗せて空中移動という芸当まで習得していた。
それにしても……その姿よ……。
有名なゲームに登場する某暗黒神官みてえだな。【最後のいけにえとして、 汝の死すべき半身を捧げる!】って言わせてみたい。
ここでゲッコーさん。
皆が軍議室のテーブルを中心に話し込んでいる間も隅っこの通信機でやり取りをしてくれる。
潜入しているハリエットからの情報では、再編制中の十万は後方からの補充もあって、編制にはラダイゴロスの算出以上に時間を要するということだった。
そして先生が大きな関心を抱いているガガドムサが率いてきた後方からの補充兵は二万とのこと。
主軸となっているのはオーク兵だそうで、後詰めの一割ほどが機動力を有したワーグ騎獣兵。
ざっと二千ってところだな。
高順氏が指揮する騎兵隊よりは数は劣る。
総兵力は相手方が圧倒的なのはかわりないけど。
「ふむふむ。兵員の補充ということですが、号して十二万と考えた方がいいでしょう」
十二万か。
先の戦いで向こうの兵数を削ってはいるんだろうけど、警戒するなら最大限の数で考えていた方がこちらも油断怠りなく励める。
「こちらは七千。対して敵方は二万の増員。中々に脅威ですな」
ロンゲルさんが緊張した声を発する。
手柄は欲しいがまさかこの状況で打って出るとは考えてなかったんだろうな。
口の中が渇いているのか、生唾を飲みたくても飲み込めないようで、何度か挑戦した結果、カップに注がれた水を一気に呷って喉を鳴らしていた。
「だが大きな手柄となる」
飲み干したタイミングで高順氏が発せば、ロンゲルさんがくわりと目を見開く。
「やってやりましょう!」
大きな手柄となれば自分たちの領地に住む者たちが楽になる。
当然、自分たちも楽になる。
そう言って気合いを入れていた。
自分たちよりも領地に住む者たちを真っ先に口にする辺り、ロンゲルさんの人の良さが伝わってくる。
慕われている地頭なんだろうね。
バリタン伯もいい人材を有している。
「では――準備を」
「え、もう!」
「その通りですよシャルナ殿」
動くなら素早く。
単身乗り込んできた者を追い払ったことで活気づいた――という理由で南へとちょっと打って出てみましょう。
と、ピクニック気分の先生だった。
「可能ならば野営をしている場所から追い払いたいですね」
とのこと。
七千で十二万を相手にして追い払うとか言う辺り、先生の肝っ玉のデカさはここの面子以上。
でもって、そう言うんだから勝つつもりなんだろうな。
「勝ってやりましょう。そして私の偉大なる歴史にまた栄光が一ページ刻まれます」
「いえ、勝ちません。勝ちませんが、後ろには下がらせたいですね」
「荀彧の言っていることが分かりませんね。それは勝ちでしょう」
「いえ、勝つのは相手を追い込むことになるので駄目です。相手を気持ちよくさせないといけないので」
「はぁ!?」
コクリコが素っ頓狂な声を上げるのは理解できるよ。
俺もまったく意味が分からないからね。
俺とコクリコは分かっていないけど、ベルやゲッコーさんを見る辺り、理解はしているってところなんだろうな。
以前もあったな。話題に置いていかれる感じ……。
「荀彧殿、相手側の兵糧はどうする?」
と、俺やコクリコと違って先生の真意を理解しているであろうゲッコーさんが口を開けば、
「相手が攻勢に出た所で処理してください」
「分かった。その段取りでいこう」
「くれぐれも機会があるからといって、上の者達の暗殺はしないように願います」
「さっきも止めたが、その事はもう一度、連絡しておくさ」
「よろしくお願いします。偉大なる十四男、継承四位のガガドムサ殿の戦いというのを我々もしっかりと目に焼き付けましょう」
とか言う辺り、先生も前に出るつもりなんだな。
予定よりも早い前線参加だ。
これが俗に言うオリチャーってやつなのか?
先生が参加してくれるなら間違いなくこちらサイドが負けるということはないだろうけど、勝つということでもないんだな。
――。
「馬なんですね」
ヒッポグリフばかりに騎乗しているから馬に乗る先生は珍しい。
まだこちら側の力の全てを見せたくないからと言うことだった。
なのでツッカーヴァッテは要塞で留守番。
電撃完全無効で尚且つ強力な電撃による攻撃も可能。超高速飛行も可能。
戦術よりも戦略寄りの大型生物はまだ隠したいよね。
「普段は騎乗していないようだが、我々の動きに対応できるのか?」
「心配無用ですよ陥陣営殿。ここの馬が乗り手が違うだけで動かなくなるということはないでしょう。調練を行っているのは貴男なのですからね。普段、乗っていなくても乗り手を制御してくれる素晴らしい馬ですよ。敵意を持つ者が乗れば間違いなく振り落とすという訓練も受けているのでしょうね」
「まあな」
馬の練度が高いことをベタ褒めすれば素直に喜ぶ高順氏。
褒めるべきツボを心得ている先生。
俺たちが王都から離れて活動している時、こういったやり取りを繰り返して良い関係性を築いたんだろうな。
「この調子だと今回も勝てそうですね」
「だから勝つつもりはないみたいだぞ」
「常勝こそが我が道だというのに」
ご立腹なコクリコなんだけども。
うむ……。
「すげえよ……」
「そうでしょうとも」
轡を並べて――と例えると語弊があるようでないが……。
コイツ……。サーバントストーンの扱いが本当に向上しているようだな。
以前は曲芸乗りで馬を駆って最前線で大立ち回りだったけど、今回は――、
「それ痛くないのか?」
「全く!」
力強い返し。コクリコの現在の姿は胡座をかいて宙に浮いているという姿だった。
高さには制限があるようだが、それでもダイフクに跨がる俺と同じ視線の高さくらいまでならサーバントストーンに乗って移動が可能なようだ。
アドンとサムソンに尻を乗せて空中移動という芸当まで習得していた。
それにしても……その姿よ……。
有名なゲームに登場する某暗黒神官みてえだな。【最後のいけにえとして、 汝の死すべき半身を捧げる!】って言わせてみたい。
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