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勇者御一行対炎竜王麾下戦闘後
PHASE-04
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説明を聞く中で僕たちが最も嫌う大魔法がこの大地系だと言っても過言ではない。
地方の方では荒れ果てた大地を修復するのが億劫で、手抜きや放置があると聞く。
それどころか主要道でないならば、勇者様たちの戦場跡などと銘打って、観光資源にしているたくましい町や村もあるそうだ。
だけどここは人間が生活をする大陸の中心地である王都だ。各都市とをつなぐインフラ整備に打撃を受けるのはいだだけない。主要道が途切れれば交通の負担が大きくなって、商圏との繋がりに鈍さが生じてしまう。必ず修復しなければならない。たとえ重労働であっても! デスクワークが大好きでも! 立場的には頭脳労働なのに、それは嘘だ、と言わんばかりの、つなぎファッションで、肉体労働を行わなければならないとしても、働かないと生活出来ないから。王都が廃れると僕の懐も廃れるから!
そもそも整備員とか名乗ってる時点で肉体労働なんだろうけども……。雇用条件は現場査察からの報告書のまとめだったはずなのに、なぜか修繕までやるというものだからな~。だからこその整備員やら整備局だったんだろうけど。
雇用条件に目が行くあまり、局名を軽視していた就活時代の自分の失態か……。
とは、思いつつも、
「レッドスライムA氏、C氏のご冥福をお祈りします」
報告を記録する中で犠牲者が出た場合、勇者御一行、魔王軍とわずに、必ず哀悼の意を表す。僕と整備長はンダガランさんたち魔王軍の方々に一礼する。
「いえ、ご心配なく」
と、にこやかな表情で返してきた。
彼女の掌から指先に沿っていけば、レッドスライムB氏に行き着く。
眼界ではB氏がプルプルとイチゴゼリー状の色をした体を震わせて、勢いよくプルンッと小気味のいい音を発しつつ、分裂。
D氏とE氏が現れた……。
「この様に分裂するタイプなので問題ないです」
新たな生命の誕生を目にしたと言うことになるのだろうか? 死の定義とはなんぞや? という題材で考えたくなる。
――が、まあ、いいや。ここは流そう。
再び記録をとり始める。
――――大地転生でンダガランさん達を追い詰めるエルンさん。ここが好機と思ったらしく再び詠唱を始めたそうである。耳朶に入るそれは完全なる大魔法のものだったそうで、唱えているエルンさん以外の方々は一斉に顔を見合わせ、え!? っとなったそうだ。
エルンさんの習得している中で最大最強の雷系最上級魔法、雲耀疆域が発動する。
雲一つ無い蒼天の中に薄暗い曇天が一カ所にだけ現れる。
その雲の濃淡がだんだんと濃くなっていき、一筋の強い輝きを放つ光がンダガランさん達の頭上に落ちた。
一つの輝きを皮切りに、強力な稲妻の連べ打ちが始まる。大地をまるでグランカッサに見立てて、稲妻のマレットが激しく叩き、大地を大きく揺らし轟音を響き渡らせる。
エリーさんの同じ雷系である、範囲魔法の大雷雨なんか比じゃない破壊力は荒廃した大地でわかる。
コレだな。この連べ打ちな雷音が局内で仕事している時に聞こえていた音だな。この音が原因で、整備長が不機嫌になったんだよな……。
結果ここに来てしまった、原因の源であるエルンさんに怒りを感じながら、僕は記録を続けて取る。
ンダガランさん、大魔法と判断したと同時に、これは整備局が動くと判断して、即座に結界魔法を使用して、自分と部下を守る動きを行う。
素早く上空に両掌を掲げて三重の魔方陣からなる結界を展開。直撃を回避することに成功するが、地面に落ちた雷は八方に分かれて襲いかかり、配下の方々は瀕死の状態に追い込まれたらしい。
ンダガランさんは、流石は炎竜王の右腕である火蛇ともあって、軽傷であったそうだ。
瀕死の部下の方を目にして、頭にきたようで、お返しとばかりに大魔法の詠唱を行い始めたらしいけど、違反行為だということを思い出し、詠唱半ばで口を動かすのをやめた。
やめるきっかけになったのが、眼前でやっちゃった間丸出しのエルンさんを取り巻く美人さん達があたふたし、自分のやったことを三人に咎められ、頭を抱え込んでいたエルンさんを目にしてから冷静さを取り戻したそうだ。
ンダガランさん、直ぐに配下の方々に回復魔法を唱えて、合計五回による違反が発生してしまった事から、王都に連絡を入れたということだった。
――――記録して、双方に間違いが無いことを確認し、
「じゃあ、この書類に名前を記入してくださいね。保険は任意ですけど、入ってますよね?」
「はい、勇者になる時に母に絶対に入っておけと言われたので」
「いい、お母様をおもちになりましたね」
受け答えをしながら整備長の渡したパピルス紙の違反証明書に四つん這いの姿勢で、盾を下敷きに羽根ペンで記入している姿はなんともシュールである。
その下敷きにされている盾はとても高価なものなんだろうなと思ってしまう。ンダガランさんといい勝負出来るぐらいの力量の持ち主なんだから、持っている代物も一級品にちがいない。
損害保険に加入していなかったら全額負担だった。そんな事を想像しているのか、手が震えている。振動でペン先に付けたインクが盾にポトリと落ちて、一級品に黒い楕円がついてしまう。
無理もない、これだけの事をやってしまえば弁償額はとんでもないことになるだろう。
事実、任意だからと保険加入しないで、今回と同じような状況に置かれた勇者なんかが、どうしてもこれを払えなくなってしまい、逃げた結果、山賊や海賊に成り下がってしまい、他の勇者に討伐されるなんて事もあると聞く。
保険を見せてもらうと、パーティーメンバーも適応される集団損害に加入している。
これを見ただけでもエルンさんはメンバーを大事にしている勇者だとわかる。
我の強い人や、しわい方だと、安い個人加入だけにしていることもあり、それが原因でメンバー間がギスギスして解散なんてのもある。
「支払いは問題ないですよね?」
保険に加入しているとはいえ、一部の負担でも額は大きい。特に王都付近ともなれば地方と違い地価も高い。
弁償額だけで、王都の一等地に邸宅を構えることが余裕で出来る。
幸いにも、エルンさんは様々なクエストをこなしていたようで、
「だいぶ貯め込んでいますね~」
通帳を見せてもらった整備長が、悪者しか出来ないような、口角のつり上がりを僕たちに見せてくれる。
エルンさんの支払い態度に問題はない。それどころか三人の美人さんパーティーメンバーも工面するからと、肩やら背をさすってもらいながら慰めて貰っている。
自分のミスだから。と、何とも健やかな笑みで返していたので、〝イチャイチャしやがって! 負担額のゼロを一つ追加してやろうぜ!〟と、暗黒面が僕にささやいてくる。
「お前……悪役しか出来ないような口角のつり上がり方になってるぞ」
先ほど僕が抱いていた整備長への感情をまさか当人に言われてしまうとは……、僕はエルンさんに相当の嫉妬心を抱いているようだ。
余計なこと考えないで動けとばかりに整備長の蹴りが僕の臀部を襲う。
「だいっ!」
強烈な痛みに声を上げながら、お尻に走る痛みをさすり散らしていく。
パワハラだの、かわいがりなんて思ってはいけない。僕が負の感情にとらわれるからいけないんだと思わなければならない。
ここで反抗的な態度をとれば更に痛い目にあってしまうから。
地方の方では荒れ果てた大地を修復するのが億劫で、手抜きや放置があると聞く。
それどころか主要道でないならば、勇者様たちの戦場跡などと銘打って、観光資源にしているたくましい町や村もあるそうだ。
だけどここは人間が生活をする大陸の中心地である王都だ。各都市とをつなぐインフラ整備に打撃を受けるのはいだだけない。主要道が途切れれば交通の負担が大きくなって、商圏との繋がりに鈍さが生じてしまう。必ず修復しなければならない。たとえ重労働であっても! デスクワークが大好きでも! 立場的には頭脳労働なのに、それは嘘だ、と言わんばかりの、つなぎファッションで、肉体労働を行わなければならないとしても、働かないと生活出来ないから。王都が廃れると僕の懐も廃れるから!
そもそも整備員とか名乗ってる時点で肉体労働なんだろうけども……。雇用条件は現場査察からの報告書のまとめだったはずなのに、なぜか修繕までやるというものだからな~。だからこその整備員やら整備局だったんだろうけど。
雇用条件に目が行くあまり、局名を軽視していた就活時代の自分の失態か……。
とは、思いつつも、
「レッドスライムA氏、C氏のご冥福をお祈りします」
報告を記録する中で犠牲者が出た場合、勇者御一行、魔王軍とわずに、必ず哀悼の意を表す。僕と整備長はンダガランさんたち魔王軍の方々に一礼する。
「いえ、ご心配なく」
と、にこやかな表情で返してきた。
彼女の掌から指先に沿っていけば、レッドスライムB氏に行き着く。
眼界ではB氏がプルプルとイチゴゼリー状の色をした体を震わせて、勢いよくプルンッと小気味のいい音を発しつつ、分裂。
D氏とE氏が現れた……。
「この様に分裂するタイプなので問題ないです」
新たな生命の誕生を目にしたと言うことになるのだろうか? 死の定義とはなんぞや? という題材で考えたくなる。
――が、まあ、いいや。ここは流そう。
再び記録をとり始める。
――――大地転生でンダガランさん達を追い詰めるエルンさん。ここが好機と思ったらしく再び詠唱を始めたそうである。耳朶に入るそれは完全なる大魔法のものだったそうで、唱えているエルンさん以外の方々は一斉に顔を見合わせ、え!? っとなったそうだ。
エルンさんの習得している中で最大最強の雷系最上級魔法、雲耀疆域が発動する。
雲一つ無い蒼天の中に薄暗い曇天が一カ所にだけ現れる。
その雲の濃淡がだんだんと濃くなっていき、一筋の強い輝きを放つ光がンダガランさん達の頭上に落ちた。
一つの輝きを皮切りに、強力な稲妻の連べ打ちが始まる。大地をまるでグランカッサに見立てて、稲妻のマレットが激しく叩き、大地を大きく揺らし轟音を響き渡らせる。
エリーさんの同じ雷系である、範囲魔法の大雷雨なんか比じゃない破壊力は荒廃した大地でわかる。
コレだな。この連べ打ちな雷音が局内で仕事している時に聞こえていた音だな。この音が原因で、整備長が不機嫌になったんだよな……。
結果ここに来てしまった、原因の源であるエルンさんに怒りを感じながら、僕は記録を続けて取る。
ンダガランさん、大魔法と判断したと同時に、これは整備局が動くと判断して、即座に結界魔法を使用して、自分と部下を守る動きを行う。
素早く上空に両掌を掲げて三重の魔方陣からなる結界を展開。直撃を回避することに成功するが、地面に落ちた雷は八方に分かれて襲いかかり、配下の方々は瀕死の状態に追い込まれたらしい。
ンダガランさんは、流石は炎竜王の右腕である火蛇ともあって、軽傷であったそうだ。
瀕死の部下の方を目にして、頭にきたようで、お返しとばかりに大魔法の詠唱を行い始めたらしいけど、違反行為だということを思い出し、詠唱半ばで口を動かすのをやめた。
やめるきっかけになったのが、眼前でやっちゃった間丸出しのエルンさんを取り巻く美人さん達があたふたし、自分のやったことを三人に咎められ、頭を抱え込んでいたエルンさんを目にしてから冷静さを取り戻したそうだ。
ンダガランさん、直ぐに配下の方々に回復魔法を唱えて、合計五回による違反が発生してしまった事から、王都に連絡を入れたということだった。
――――記録して、双方に間違いが無いことを確認し、
「じゃあ、この書類に名前を記入してくださいね。保険は任意ですけど、入ってますよね?」
「はい、勇者になる時に母に絶対に入っておけと言われたので」
「いい、お母様をおもちになりましたね」
受け答えをしながら整備長の渡したパピルス紙の違反証明書に四つん這いの姿勢で、盾を下敷きに羽根ペンで記入している姿はなんともシュールである。
その下敷きにされている盾はとても高価なものなんだろうなと思ってしまう。ンダガランさんといい勝負出来るぐらいの力量の持ち主なんだから、持っている代物も一級品にちがいない。
損害保険に加入していなかったら全額負担だった。そんな事を想像しているのか、手が震えている。振動でペン先に付けたインクが盾にポトリと落ちて、一級品に黒い楕円がついてしまう。
無理もない、これだけの事をやってしまえば弁償額はとんでもないことになるだろう。
事実、任意だからと保険加入しないで、今回と同じような状況に置かれた勇者なんかが、どうしてもこれを払えなくなってしまい、逃げた結果、山賊や海賊に成り下がってしまい、他の勇者に討伐されるなんて事もあると聞く。
保険を見せてもらうと、パーティーメンバーも適応される集団損害に加入している。
これを見ただけでもエルンさんはメンバーを大事にしている勇者だとわかる。
我の強い人や、しわい方だと、安い個人加入だけにしていることもあり、それが原因でメンバー間がギスギスして解散なんてのもある。
「支払いは問題ないですよね?」
保険に加入しているとはいえ、一部の負担でも額は大きい。特に王都付近ともなれば地方と違い地価も高い。
弁償額だけで、王都の一等地に邸宅を構えることが余裕で出来る。
幸いにも、エルンさんは様々なクエストをこなしていたようで、
「だいぶ貯め込んでいますね~」
通帳を見せてもらった整備長が、悪者しか出来ないような、口角のつり上がりを僕たちに見せてくれる。
エルンさんの支払い態度に問題はない。それどころか三人の美人さんパーティーメンバーも工面するからと、肩やら背をさすってもらいながら慰めて貰っている。
自分のミスだから。と、何とも健やかな笑みで返していたので、〝イチャイチャしやがって! 負担額のゼロを一つ追加してやろうぜ!〟と、暗黒面が僕にささやいてくる。
「お前……悪役しか出来ないような口角のつり上がり方になってるぞ」
先ほど僕が抱いていた整備長への感情をまさか当人に言われてしまうとは……、僕はエルンさんに相当の嫉妬心を抱いているようだ。
余計なこと考えないで動けとばかりに整備長の蹴りが僕の臀部を襲う。
「だいっ!」
強烈な痛みに声を上げながら、お尻に走る痛みをさすり散らしていく。
パワハラだの、かわいがりなんて思ってはいけない。僕が負の感情にとらわれるからいけないんだと思わなければならない。
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