拝啓、あなた方が荒らした大地を修復しているのは……僕たちです!

FOX4

文字の大きさ
5 / 604
勇者御一行対炎竜王麾下戦闘後

PHASE-05

しおりを挟む
 ――魔王軍サイドに足を進めて、

「こちらは初見ではないので、手続きは理解してますよね?」
 以前、炎竜王のカグラさん自体がやらかした事があったという話を聞いた事があるし、目撃したこともある。
 
 ――五年前、学業のために王都の庶民街に住み始めた時だった。
 戦闘で違反を行ってしまったカグラさんが自ら王都に支払いにやってきたんだけども、あれは一見したら、王都を侵略しに来たとしか思えなかった。
 
 ファーストコンタクトは恐怖だったのを覚えている……。
 空を覆い、大地に大きな影を作る。
 この世の終末を告げるかのような強大で禍々しい深紅の翼は、王都に住んでいた人々に大きな恐怖を植え付けた。
 今でも僕が住んでいる、多層型共同住宅インスラの大家さんが、天を仰いで神の名を口にしていた記憶が残っている。
 
 荒々しい鱗に覆われ、巨石記念物メンヒルを思わせる巨大なつのが頭に二本ある紅蓮の巨竜の眉間の上に立っていた、遠くからでも分かる程の美人さん。
 ――――それがカグラさんだった。
 
 局員になって聞いた話では、カグラさんがその時、移動のため騎乗したのが、配下で小城サイズの巨大な火竜であるブラッドシップさんだった。
 別名、空飛ぶ移動要塞フライングフォートレス
 
 そんな移動要塞が、たまたま移動手段がなかったから一人で王都に赴こうとしたカグラさんに、御身を一人には出来ないとして、自身を足代わりにしてほしいと頼み、コレを快諾。
 結果、それが原因で、王都ではパニックが起こり、人々が我先にと避難。
 収拾がつかない状態に陥り、転倒や衝突で怪我人が続出。
 小城サイズの羽ばたきで城壁の一部が破損したり、民家の屋根が飛び、建物被害も相当なものだった。
 
 違反金のみならず、慰謝料も追加で払う事になったらしく。カグラさんが代表して被害に遭った方々に菓子折をもって謝罪行脚したらしい。
 
 とりわけ男性からは快諾で許してもらったそうだ。そこは美人には弱い男の性なんだろう。
 誠意ある謝罪に男女問わず業腹な態度を向ける事もなかったそうだ。カグラさんの仁徳さが窺われる。
 
 でも、このことが原因で、ブラッドシップさんは王都上空を飛行禁止にされてしまったそうだ。
 で、この時、整備長がカグラさんに厳重注意したのが王都の瓦版に載り、魔王の右腕である炎竜王が整備局整備長に謝罪という号外が出て、整備長英雄扱い。
 そして本人もそれを真に受けているもんだから手に負えない。多分だけど、この時のブラッドシップさんの起こした風で怪我でもして、右頬に傷でも負ったのではないかと僕は推測する。
 被害に合い、誠意をうけた方々かたがたが瓦版に目を通すと、〝コレは誇張しすぎ!〟と、カグラさんのフォローに回って、方々ほうぼうで擁護し、整備長に対する英雄視もすぐに熱が冷めたらしい。
 
 それでも酒が入ると〝俺が彼女に謝罪するように仕向けたんだ!〟と、まいど自慢してくるし、王都には俺がいるから勇者いらずとか言っちゃうしまつ……。
 
 この人、確かに怖いけど、正直ただ怖いだけのその辺にいるおっさんなんだよね。
 本人その事を早く理解した方がいいかもしれない。痛い目に遭わない前に……。

 ――今回は、魔王軍に賠償金支払いはない。正直に三発目を使用するところであったというのも説明されたし、未遂なので違反に触れていない。
 勇者御一行の違反に対する証人としての記入をして貰うだけでいいものだった。

「よし、魔石鏡の用意」
 整備長に返事を返して、魔道車のトランクから魔石を研磨して作られた鏡を脇に挟み、それを固定するための三脚を担いで皆さんが待つ場所に駆け足。
 辞典サイズのピカピカに磨かれた魔石鏡を、立てた三脚に設置し、
「準備オーケーです」
 整ったところで、鏡の前に整備長とンダガランさんが立つ。僕は二人の背後からひょっこりと顔を出して鏡を凝視。
 
 ――ンダガランさんが鏡の表面に触れると直ぐに、
『滞りなく話し合えたか?』
 きたぁぁぁぁぁああぁぁっ!
 ガッツポーズの僕。
 美人に囲まれてるエルンさんですら鼻の下が伸びております。お三方、その態度に頬を膨らませてますが、仕方ない。
 
 鏡に映る御方の美しさよ。
 フゥ――――! 興奮が止まらない! なにこの美人! どうやったらお嫁さんになってくれますかね。
 男三人、鏡に映ったカグラさんに血走った視線を向けている。
 
 炎竜王と言うだけあって、燃えるような髪。生え際は淡い朱色で、階調を思わせる独特の髪色は毛先に進むにつれて濃くなっていき、毛先は深紅そのもの。髪が揺らめけば燃えているようにも見えるかもしれない。整備長の赤髪が安っぽく見える。つまりは、僕の赤さび色の髪はもっとくすんでしまうな……。まあいいさ!
 
 再度、カグラさんを凝視。
 胸元までのびたふんわりなエアリーヘアー。
 右の瞳は毛先のように深紅で、左は紺碧の瞳と、虹彩異色オッドアイの持ち主。
 バストアップまで映る鏡にはふんわりな髪に勝るふんわりプルンな形が良くて大きな胸が目に飛び込んできます! 
 重力に逆らっております!
 
 ンダガランさんもそうだけど、けっこう露出が高くてね、なんでそんな体に沿った革の鎧的なもを装備してんですか。けしからんとです! 眼福すぎて感謝の思いしかでないです。

『話は本当に滞りないのか?』
 僕たちが興奮しているもんだから、呆れた口調でンダガランさんに進捗を窺っております。しかたないね。僕たち全く喋らずに鏡の中のカグラさん見てるだけなんだから。 
 チャームの能力もってるのかな?

「しっかりしろ! お前」
 呆れた感じのカグラさんに我に返った整備長が注意してきた。貴男も目が垂れ下がってたでしょうに。
 まあいい、ここからが肝心よ。

「初めまして。ピートマック・ウィザースプーンといいます。気軽にピートとお呼びください」
 人生最高の笑みと声を出した自信がある! 切れのいい一礼も完璧にやってのけた。興奮で血走った視線の時とは別物の僕を見せる事が出来たはず。
 頑張って好感度を上げなければ! とにかく記憶の片隅にでも僕の存在を残していただきたい!

『では、ピート殿。ご説明をお願いします』
 うはっ! ピートって呼んでもらえた! しかも僕みたいな小物に殿なんて付けてくれて敬語だなんて。淑女ですよ。鏡に映る美人は淑女でございます。がさつな整備長とは天壌てんじょうの差ですよ。
 
 ――恋人になってくれないかな――――――。




『あの……ご説明は……?』
 ――――おッふす! 
 このピートマック・ウィザースプーン。もしもカグラさんが恋人だったらという豊饒ほうじょうなる想像力の彼方にトリップしていた。
 刹那の早さで、カグラさんとの結婚まで進んでいたところで現実に戻された。
 
 ――――流石に全体からの視線が刺さりまくってきたので正気に戻らねば。
 両掌で頬を叩いて気を引き締めて、報告を始める――――。
しおりを挟む
感想 27

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

無能なので辞めさせていただきます!

サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。 マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。 えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって? 残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、 無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって? はいはいわかりました。 辞めますよ。 退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。 自分無能なんで、なんにもわかりませんから。 カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

僕の秘密を知った自称勇者が聖剣を寄越せと言ってきたので渡してみた

黒木メイ
ファンタジー
世界に一人しかいないと言われている『勇者』。 その『勇者』は今、ワグナー王国にいるらしい。 曖昧なのには理由があった。 『勇者』だと思わしき少年、レンが頑なに「僕は勇者じゃない」と言っているからだ。 どんなに周りが勇者だと持て囃してもレンは認めようとしない。 ※小説家になろうにも随時転載中。 レンはただ、ある目的のついでに人々を助けただけだと言う。 それでも皆はレンが勇者だと思っていた。 突如日本という国から彼らが転移してくるまでは。 はたして、レンは本当に勇者ではないのか……。 ざまぁあり・友情あり・謎ありな作品です。 ※小説家になろう、カクヨム、ネオページにも掲載。

【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます

まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。 貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。 そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。 ☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。 ☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。

【完結】妖精を十年間放置していた為SSSランクになっていて、何でもあり状態で助かります

すみ 小桜(sumitan)
ファンタジー
 《ファンタジー小説大賞エントリー作品》五歳の時に両親を失い施設に預けられたスラゼは、十五歳の時に王国騎士団の魔導士によって、見えていた妖精の声が聞こえる様になった。  なんと十年間放置していたせいでSSSランクになった名をラスと言う妖精だった!  冒険者になったスラゼは、施設で一緒だった仲間レンカとサツナと共に冒険者協会で借りたミニリアカーを引いて旅立つ。  ラスは、リアカーやスラゼのナイフにも加護を与え、軽くしたりのこぎりとして使えるようにしてくれた。そこでスラゼは、得意なDIYでリアカーの改造、テーブルやイス、入れ物などを作って冒険を快適に変えていく。  そして何故か三人は、可愛いモモンガ風モンスターの加護まで貰うのだった。

後日譚追加【完結】冤罪で追放された俺、真実の魔法で無実を証明したら手のひら返しの嵐!! でももう遅い、王都ごと見捨てて自由に生きます

なみゆき
ファンタジー
魔王を討ったはずの俺は、冤罪で追放された。 功績は奪われ、婚約は破棄され、裏切り者の烙印を押された。 信じてくれる者は、誰一人いない——そう思っていた。 だが、辺境で出会った古代魔導と、ただ一人俺を信じてくれた彼女が、すべてを変えた。 婚礼と処刑が重なるその日、真実をつきつけ、俺は、王都に“ざまぁ”を叩きつける。 ……でも、もう復讐には興味がない。 俺が欲しかったのは、名誉でも地位でもなく、信じてくれる人だった。 これは、ざまぁの果てに静かな勝利を選んだ、元英雄の物語。

処理中です...