拝啓、あなた方が荒らした大地を修復しているのは……僕たちです!

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勇者御一行対炎竜王麾下戦闘後

PHASE-06

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『なるほど……未遂だったとはいえ、三度使用しそうになったと』
 渋面に変わるカグラさんに申し訳なさそうなンダガランさん。
 流石は一度違反しちゃってるから飲み込みが早くて助かる。もしそのまま三度目を発動して違反をしていたら、謝罪行脚をしなければならないし、自身がやらかした事があるからか、強く叱責も出来ないといった感じ。

〝また炎竜王さんの所が違反したんだって〟なんて後ろ指を指されて、王都の方々の信頼が離れていくのが怖いみたい。
 
 鏡の中で、丁寧な謝罪を行ってくれる。
 う~ん、魔王軍の方々って本当にいい方々だよね。ますます好きになってしまう僕。罰と銘打って、一回デートしてくれないかな~。
 
 公私混同の下劣な策を思い浮かべる。
 
 ――確実に嫌われるね……。
 見上げても見えないほどの高嶺の花に願望を抱くこの心。
 ピュアでありたい。

「お前は要所要所でなんの想像してんだ! さっさと説明続けろ!」
 要所要所で蹴り入れてきますよね。
 
 知らず知らずに顔がにやついてんだね僕……。さっきは刺さるような視線だったけど、完全に呆れられてるようで、カグラさん苦笑い。
 ヘルハウンドさんなんかは半眼で口角を上げて嘲笑している。ようやく魔族的な笑みを見れた気がする。

「ンダガランさん達には注意喚起で今回は違反なしという事で」
 僕の発言にカグラさん安堵の顔に変わる。
 ほころんだその笑みに、僕の脳内では、小さな僕が大人数で小躍りをしとります。
 
 
 ――――安心で心が軽くなったのか、魔王軍の女性二名は、楽しげに語り合っている。
 主と臣下っていうより、仲の良い友達みたいに見えるガールズトーク的なやり取り。
 人間とは違って長命な方々。いくつかは分からないけども、見た目は二十代前半かな。
 実際はどのくらいなのか気になるところ。
 
 ――かといって女性に年齢を聞くのは野暮。

 出来る事なら、気兼ねなく年齢なんかを聞ける間柄になりたいと思いつつも――、
 
 ――勇者さん達の方に顔を向ける。
 丁度、違反証明書を整備長に渡しているところ。抜けてるところや、間違いが無いかを几帳面に見直して、時間をかけて書き込んでいたところがいかにも真面目な勇者様といったところか。
 
 わずかな時間で荒涼な大地になった場を今一度見直してみる。
 これ、軽く見積もっただけでも、保険適用があったとしても軽く五千万ギルダーはいきそうだ。
 
 リアルに王都に邸宅構えられるな……。
 通帳を見せてもらった限り問題はないだろうけど、それでも大痛打な出費だね。

「支払いは二週間以内に王都の各役所のいずれかでお支払いください」
 営業スマイルの整備長。右頬の目立つ傷のスマイルは完全にそのスジの方に見えました。

「もちろん。お上りさんでも誉れ高き勇者様なんですから、即日と信じてますよ~二週間の猶予っていってもね~一週間とか過ぎたら……ね~。顰蹙ひんしゅくを買うと思いませんか? 天下の勇者様ですからね~」

「今日中に支払いますので……つつがなく。はい……」
 
 堅気じゃね~。この中のどの魔王軍の方々よりも邪悪そのものだよ。僕の上司。
 支払える額持ってるから囲い込みが早いね。
 踏み倒しなんて、勇者として踏み外しちゃいけない道だからとばかりに諭してるようだけど、語調や、語末を伸ばした語り口は脅迫そのものだ。
 
 ――なにはともあれ、ぐずることなく支払いに前向きな姿勢のまま勇者御一行は王都へと向かっていった。何度もこちらに振り返りながら会釈をしつつ……、でも、始めて王都に訪れるきっかけが王様に謁見するのではなく、支払いを済ませるためっていうのもシュールだな……。
 
 その後に王様に合うのかもしれないけど、なんて言われるんだろうか? 
 
〝よくぞ、魔王軍との長く険しい戦いの道を乗り越え、ここまでたどり着いた〟なのか。
 
〝おお! 勇者よ! 違反金を支払うとはなんと情けない〟なのか。
 
 ――――うん。後者だな。間違いない。僕が王様ならそう言うもの。

『それでは、こちらも撤収を。ニーズィー殿。ピート殿。このたびはお手数をおかけしました』
 え~、もうお別れなのか……。もっと親交を深めたかったのに……。
 丁寧な一礼を鏡の中から見せてくれる。いい人が丸出しなカグラさん。
 お手数おかけしたって言っても、結局は違反じゃなくても、僕たちが修復することには変わりないんだけどね。
 違反行為の調査を省くか、そうじゃないかだけの問題なんだよね実際。
 まあ、違反だらけだと、僕たちの仕事が増えるから大迷惑ではある。

「ご迷惑をおかけしました。では、これにて。困った事があればご助力いたします」
 カグラさんに負けないくらいの綺麗な一礼を行って、ンダガランさんは右手の食指と中指を立てて空間を縦に切ると、そこに切れ目が現れ、徐々に広がっていき、闇に覆われた穴がぽっかりと出現。その中に入っていく。
 
 最後に穴に入っていくヘルハウンドさんは僕に顔を向けると嘲笑を向けてから闇の中へと消えていった。
 出会ったばかりの時は、お腹見せて服従の姿勢をしようとしたのを制止してやったのに! 恩を忘れたのか駄犬め! ただ、カグラさんに見入ってただけじゃん! そこまで評価下がるかね。そんなにも酷い表情だったのか?
 
 まあいい、それよりも見納めだ! 鏡の向こうのカグラさんの透き通るような白いお肌をもっと目に焼き付けなければ!
 
 ――鏡に目を向ければ、そこには眠たそうな蒼眼で、うだつの上がらない表情の男が映っていた。 ていうか、それは僕だった…………。
 もう、通信切れてますやん……。もっと和気藹々としたトークしたかったのに……。
 
 にしても、こんな便利な空間移動魔法があるなら、カグラさんもこれ使って王都に来れば慰謝料を払わなくてすんだのに。

「ちなみに、王都や他の街より一里以内では空間移動魔法は厳禁な」
 僕の考えを読み取ったようで、整備長が教えてくれた。
 そういえば、マニュアルにそんなん書いてあったな。いきなり王都や町村を襲わせないようにっていうルールで厳しく取り扱ってたね。
 
 王都上空には容易に進行出来ないように魔法による防御結界が年中無休で展開されてるけど、カグラさんと、ブラッドシップさんは何もなかったようにダイナミック訪問してたな~。あのクラスだと結界とはまったく意味ないんだろうね~。
 だからこそのルールか……。
 
 僕たちがこうやって生活出来るのは、両陣営ともに真面目な方々がトップにいるからなんだろうね。
 
 ありがたや~。

「拝んでないで、はよ動け! まあ、俺の溢れんばかりのカリスマ性に当てられれば、仕方のない事だろうがな」
 けっ! こちとら、あんたみたいな小物を拝んだりはしませんよ。頭の中だけで考えていたと思ったら体もしらずに連動していて、拝んだ先には整備長がいたから、すごい勘違いをされた。
 
 嬉しかったのか、鼻先を指で掻きつつ照れてらっしゃる。
 勘違いとはいえ、機嫌良くなって良かった。なんたって、こっからロールさん達が来るまで一緒にいなきゃいけないんだから。
 
 正直、コイツ等の存在が非常にありがたい。
 僕はコシに備えたポシェットをポンポン叩きながらそう思った。
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