拝啓、あなた方が荒らした大地を修復しているのは……僕たちです!

FOX4

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出張

PHASE-01

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 あ~、たまらなく臀部と太ももが辛い。ちょっと足に力入れたらピッキーンとこむら返り待ったなしな状況。手綱を掴み続けていたから握力もありゃしない。
 
 フラフラになった足で大地に降りる。
 この安定して足をおけるありがたさに涙が出てきそうだ。
 腰砕けになりそうな体で、大地を強く踏んで感動を得る僕を、先ほどまで騎乗して、大空を飛翔してくれていたグライフ君が、小馬鹿にした感じで見てくる。
 
 猛禽特有の炯眼ではなく半眼で……。
 
 このグライフ君、王都より遠出の出張時に僕らの足になる。
 猛禽の上半身と、獅子の下半身からなる幻獣。知性はすこぶる高く、そこそこのモンスターくらいなら撃退してくれる頼りになる存在だけど、どうも僕は小馬鹿にされているみたい…………。

「無事に到着だ」
 流石は僕と違って長く仕事してるだけあって、グライフ君の騎乗に慣れているようで、しっかりとした足取りで僕に歩み寄ってくる整備長。
 
 ――あっ、今すこし膝がかくってなった……。流石と思った僕の貴男に対する、なけなしの尊敬を返してください。
 
 ――――だいぶ足腰もしっかりしてきたから軽く柔軟。背中当たりからコキコキと小気味のいい音が聞こえてくる。
 
 僕たちが降り立ったのは、古都、アルト・ヴォールの西城門前だ。
 西門は覇者の門とも呼ばれ、昔は凱旋時にここを通過し、民に勝者たちの雄々しい姿を見せていたそうだ。
 
 古都の周囲は、四方を険しい山脈に囲まれた天然の要害で、また元王都と言う事もあって、城壁も非常に高く、勤労君シリーズが腕部を伸ばしても壁上には届かないであろう高さだ。
 また、山脈からの恩恵である清らかな川が古都内に流れ、肥沃な大地を作り、人々の生活を豊かにしている。
 堅牢に加えて、元王都でありながら、穀倉地帯なみの豊饒な収穫量。
 難攻不落といえば、ヴォールと答えるのが当然だった。
 
 ――そう、だった。なのである。
 
 元王都、古都。現在のノイ・ヴォールと呼ばれる王都に対処するために差別化で、アルト――――、頭に過去を示す文字がつけられた。
 
 なぜ古都になったのか、それは難攻不落という肩書きを魔王軍に奪われてしまったからだ。

 占拠されて丁度、今年で四十年になるそうで、前王に代わり、最後にこの都を統治し、王家族を逃がしたのが、現王の叔父に当たるラゼン・ギル・ダロス大公様。
 賢君であり、王佐の才を持ち合わせた大傑物。
 また、そんな大公様を支える勇将、知将も多く存在し、地の利に人の和と揃っていたけども、魔王軍の前に力及ばず陥落してしまった。
 
 現王が今現在、王様でいられるのも、この方の存在が大きい。
 現王は感謝の意を込めて、現在の貨幣単位の名をギルダーと定めた。
 これは大公様のミドルネームから来ており、誰もが目にする貨幣に大公様をえがき、その名にすることで、いつまでもその大恩を忘れないためだとか。


「よし、行こうか」
 跳ね橋を渡り、巨大な煉瓦造りのアーチ門の前の番兵さんに整備長が証明書を見せると、簡単に開門してくれる。
 
「申し訳ありません。今現在、周年祭にて、古都上空は飛行禁止でして」
 と、謝罪の言葉もいただきつつ、責任を持ってグライフ君たちを預かると言って、番兵の一人が二頭の手綱を引いて、壁外にある木造作りの馬房に収容してくれる。
 
 巨大な堀と、その上を移動するための頑丈な跳ね橋、堅牢な二重の門からなる西門。
 重厚な開閉音を四度聞き、街へと入る。

「ええ~」
 なんだこれ? 確かに元王都であるけども、この賑わいかたよ。
 現王都に負けず劣らずな人口が眼界に飛び込んでくる。
 
 西門から真っ直ぐ伸びた目抜き通りには、旅商人が街商を開いていて、お腹の虫を刺激する、いい匂いの煙をあちこちから立ち上げている。
 
 門内はいたる各所に歩哨を配置していて、警邏する兵もかなりの数だ。しかもそれは全て人間から構成されている。
 魔王軍に統治されてるんだよね?
 本当に、占拠されてるの?
 というか、厳重すぎ。

 ――そんな厳重体制の中、それを気にもとめず、子供たちと、それにつきそう大人たちが大変楽しそうに街商を見て回っている。

「賑わってますね」
「周年祭だからな」
「なんの周年祭なんですかね?」
「お前ね、出張先の情報くらい前もって頭に入れとけよ」
 くっ、不覚。まさか、仕事のことでこの人に諭されるとは……、

「占拠四十周年祭だよ」
 は? なにそのふざけた祭り。
 遷都四十周年とかならわかるけど。占拠四十周年とかおふざけが過ぎるだろ。占拠している魔王軍の方の悪乗りか何かか?

 ――――とは思いつつも、目抜き通りを歩いていても、魔王軍の方々の姿は目にしない。
 すっごい違和感。
 
 
 ――――さて、迎えの馬車は……、
 出張先である、古都の象徴である巨城。そこまではかなりの距離。本来なら、グライフ君でひとっ飛びだけども、今回はおふざけがすぎる周年祭のため飛行禁止。
 

 ――――おかしい? 迎えは? 
 整備長が首を忙しく動かしている。待ち合わせは、西門の目抜き通りの広場。ここで間違いはない。でも、馬車といえば旅商人のものがあるくらい。

「ちょっと、すみません」
 たまらず整備長、警邏中の兵隊さんを呼び止める。
 僕たちのことを説明すると、兵隊さんの目が泳ぐ、

「あ~申し訳ありません。王都から来られることは聞いておりましたが、いかんせんこの人通り。迎えの馬車は用意出来なかったようで、配慮に欠けてしまったことお許しください。お手数ですが徒歩で城まで……」
 そう言うと、いたたまれなくなったのか、速い足取りで僕たちの前から人混みの中に消えていった……。
 
 嘘でしょ!? ここから城まで徒歩なの…………。
 
 心の折れる距離だよ。葉煙草で肺が残念な整備長の瞳からは生気が失われている。なんだよ魔王軍、本当に配慮ないよ。呼んどいてこれかよ!

 
 ――渋々、着替えなどを入れた帆布製の肩掛けカバンを肩にかけて歩く僕たち。
 喉が渇けば、街商が盛んだから、飲み物を買ってそれで喉を潤わせながら足を進める。
 
 グライフ君にまたがって移動してきたもんだから、足腰に疲労が残っていて、非常に足が重くて、歩くのが億劫になる。
 
 木造倉庫の陰になっている階段に、二人して腰を下ろして小休止。
 
 これだけ歩いても、魔王軍の所属っぽい方を目にしないな~。

 ――――最初にそれっぽいのを目にしたのは、陰で涼んでいる僕たちの前方にいる子供たちが勤しんでいる落書きだった。
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