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胎動
PHASE-04
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「では、進みましょう」
離れないように、ハッタさんにくっつくようにして歩く。
ロールさんいい香り――――。
――なんて思えるんだから、普通の存在でしかないのに、僕は意外と肝が据わっているのではないのでしょうか。
――――――。
う~。寒さがどんどん強くなってる気がする。そう思うのは僕だけかと思ったけど、自然と体を密着しあって体を温め合う。整備長だけ離れていただきたい。
――とは言えないほど寒い。
神殿入り口から真っ直ぐ歩いているけども、結構、歩かされてる。
ほのかな光で進んでいるから、そう錯覚しているのか? とにかく歩かされている距離はかなりあると思える。
「ここからは階段を下るので、より足下にご注意を」
左右対称に作られた上に続く階段。
その中央にある、祭壇と思われるところで、ハッタさんが敷石の一つを足で踏む。
――ゴゴゴゴッと、音を立てて祭壇が横へとずれ動くと、下へと続く階段が現れた。
「寒さが更に強くなってきましたよ」
「あとちょっとなので、頑張ってください」
体を震わせる僕たちに励ましをくれるけども、この冷気は正直こたえる。
――――螺旋造りの階段を下へと一歩一歩進むにつれて、僕たちの足取りは鈍くなっていく。
来なきゃよかった……。
仮病でもよかったから休むべきだった。
もし、整備長と二人での行動だったら、確実に休んでいたはず。ロールさんが参加するってことで、テンション上がってたけど、一般人が邪神と邂逅するなんて想像出来なかったもの…………。
「はい、到着です」
階段を下り終えると、頑丈そうな大きな門が眼界に入る。
地下の岩をくり抜いて、そこに両開きの門をはめ込んだ造り。
門の前には番兵さんみたいに、ハッタさんと同じ黒いローブを身に纏った二人が待機していた。
「「どうも~」」
ローブも同じなら、テンションも同じだ……。こんな地下の暗がりに似つかわしくない……。
門を開くようにハッタさんが指示をすると、左右の二人が、重厚な門を諸手で全力を出して押し開けてくれる。
きっと、僕たちなんかじゃ、押したところで、びくともしない造りなんだろうね。
留めてくれている間に、速歩で門をくぐる。留めている状態でも、僕たちが通る時には、律儀に頭を下げてくれる細かい配慮。
「こりゃ凄い」
神秘的とは正にこの事。
門の先の空間は広い。そして、岩の方々から、むき出しになっているクリスタルが、淡い緑の光を発していて、ハッタさんの魔法が必要ではないくらいに明るい。
眼界には地下神殿。
形状は、この上にあるでっかい神殿を、そのまま縮めた感じ。
神殿の右奥には滝があり、ゆっくりと水が流れ落ちて、滝壺がまるで小さな湖みたいであり、その中心に神殿があるから、風景自体も上の神殿に酷似している。
あえて似せて造ったのだろう。
大昔の建築家の遊び心、矜持が窺われる。
滝壺から水路を通って、せせらぐ水のなんと澄んでいること。飲むときっと、体全体に染みこんでいくようなおいしさだろう。
そんな風に思いながら、神殿に続く、綺麗に敷石が埋め込まれた石畳を歩き、
「よく、おいでくださいました」
「どうも、アレイン・ソーヤ局長に代わり、王都より来ました。整備局、整備長のニーズィー・ブートガイです。こちらがロール・ジャイロスパイク。そして、その他です」
おい! もう一回バトルするか? おい! やってやんぞ。
まったくこのおっさん精神年齢がキッズだ。
正面に立つ、黒いローブの初老の男性に自分で挨拶をする。
ハッタさんたちと違うとすれば、黒いローブの縁に、金の刺繍が施されている。
差別化されたローブからして、この方がこの教団の長てき立場の方だろう。
「わたくし、パンゲア教にて、最高神祇官を務めております、グラド・コニートともうします」
邪神復活を企てている集団なのに、なぜにこうも明るいのか。邪神崇拝=根暗な思考という先入観を抱いてはいけないと、考えさせられる方々である。
「遠いところよりわざわざご足労を――――神殿内は寒かったでしょう。暖かいものを用意してますので」
食事を用意してくれているとのことだ。蛇とか下手物なんかが出て来るなんてことはないよね?
――いかんいかん、先入観を抱いてはいけないと思ったばかりじゃないか。
――――ほらぁ! 先入観持っちゃ駄目だよ。
なにこれ、やだこれ。
神秘的な空間での食事なんて素敵じゃないか。
神殿に続く道から滝壺に沢渡りが設けられていて、そこから先にはガボゼ。
そのガボゼに設置されたテーブルセットに運ばれてくる食事。
グレービーソースがたっぷりの柔らかなローストビーフに、湯気だけで暖かさが伝わってくる空豆のスープ。景観も最高だから、ちょっとした避暑地みたいだ。
整備長、お酒が出ないのが不満みたいだけど、仕事中ですからね。
「このソースの隠し味を後で教えてくれます?」
味付けに興味津々なのか、教徒の方にレシピを聞いているロールさん。
――――。
「お口にあって何よりです」
僕たちが次々に口に運んでいる姿を目にして、グラドさんが喜んでいる。
――ふぃ~。食った、食った。もう、後は帰るだけって事にはなりませかね? 邪神なんかと会いたくないんですけども。
「では、行きましょう」
人心地ついたところで、奈落に落とされるような気分になる台詞だ……。
正直、復活はしてないんだよね? パンゲアの心臓を捧げたことで、疎通だけは出来るようになっただけだよね?
いきなり完全復活してます。なんて事だったら本当に迷惑ですから。
行きたくないな~。条約とか出来る遙か昔に封じられてるわけだから、ちょっと言葉を間違っただけで、命取られそうなんだけど。
「ささ、この階段を上って神殿へ」
掌を階段に向けて誘導してくれるから、足をそちらに進めるしかない僕たち。ここで反発しても相手はマンティコアとか、魔獣を素手で退治する方々だ。逆らえば何されるか分かったもんじゃない。
――――進んでも地獄。退いても地獄。
スキュラとカリュブディスの間だ…………。
上っていく階段が、断頭台に続いているのじゃないか――と、いう錯覚すら覚える。一歩一歩が先ほど下ってきた螺旋階段の時よりも重い。
先ほどの食事はさながら最後の晩餐か…………。
離れないように、ハッタさんにくっつくようにして歩く。
ロールさんいい香り――――。
――なんて思えるんだから、普通の存在でしかないのに、僕は意外と肝が据わっているのではないのでしょうか。
――――――。
う~。寒さがどんどん強くなってる気がする。そう思うのは僕だけかと思ったけど、自然と体を密着しあって体を温め合う。整備長だけ離れていただきたい。
――とは言えないほど寒い。
神殿入り口から真っ直ぐ歩いているけども、結構、歩かされてる。
ほのかな光で進んでいるから、そう錯覚しているのか? とにかく歩かされている距離はかなりあると思える。
「ここからは階段を下るので、より足下にご注意を」
左右対称に作られた上に続く階段。
その中央にある、祭壇と思われるところで、ハッタさんが敷石の一つを足で踏む。
――ゴゴゴゴッと、音を立てて祭壇が横へとずれ動くと、下へと続く階段が現れた。
「寒さが更に強くなってきましたよ」
「あとちょっとなので、頑張ってください」
体を震わせる僕たちに励ましをくれるけども、この冷気は正直こたえる。
――――螺旋造りの階段を下へと一歩一歩進むにつれて、僕たちの足取りは鈍くなっていく。
来なきゃよかった……。
仮病でもよかったから休むべきだった。
もし、整備長と二人での行動だったら、確実に休んでいたはず。ロールさんが参加するってことで、テンション上がってたけど、一般人が邪神と邂逅するなんて想像出来なかったもの…………。
「はい、到着です」
階段を下り終えると、頑丈そうな大きな門が眼界に入る。
地下の岩をくり抜いて、そこに両開きの門をはめ込んだ造り。
門の前には番兵さんみたいに、ハッタさんと同じ黒いローブを身に纏った二人が待機していた。
「「どうも~」」
ローブも同じなら、テンションも同じだ……。こんな地下の暗がりに似つかわしくない……。
門を開くようにハッタさんが指示をすると、左右の二人が、重厚な門を諸手で全力を出して押し開けてくれる。
きっと、僕たちなんかじゃ、押したところで、びくともしない造りなんだろうね。
留めてくれている間に、速歩で門をくぐる。留めている状態でも、僕たちが通る時には、律儀に頭を下げてくれる細かい配慮。
「こりゃ凄い」
神秘的とは正にこの事。
門の先の空間は広い。そして、岩の方々から、むき出しになっているクリスタルが、淡い緑の光を発していて、ハッタさんの魔法が必要ではないくらいに明るい。
眼界には地下神殿。
形状は、この上にあるでっかい神殿を、そのまま縮めた感じ。
神殿の右奥には滝があり、ゆっくりと水が流れ落ちて、滝壺がまるで小さな湖みたいであり、その中心に神殿があるから、風景自体も上の神殿に酷似している。
あえて似せて造ったのだろう。
大昔の建築家の遊び心、矜持が窺われる。
滝壺から水路を通って、せせらぐ水のなんと澄んでいること。飲むときっと、体全体に染みこんでいくようなおいしさだろう。
そんな風に思いながら、神殿に続く、綺麗に敷石が埋め込まれた石畳を歩き、
「よく、おいでくださいました」
「どうも、アレイン・ソーヤ局長に代わり、王都より来ました。整備局、整備長のニーズィー・ブートガイです。こちらがロール・ジャイロスパイク。そして、その他です」
おい! もう一回バトルするか? おい! やってやんぞ。
まったくこのおっさん精神年齢がキッズだ。
正面に立つ、黒いローブの初老の男性に自分で挨拶をする。
ハッタさんたちと違うとすれば、黒いローブの縁に、金の刺繍が施されている。
差別化されたローブからして、この方がこの教団の長てき立場の方だろう。
「わたくし、パンゲア教にて、最高神祇官を務めております、グラド・コニートともうします」
邪神復活を企てている集団なのに、なぜにこうも明るいのか。邪神崇拝=根暗な思考という先入観を抱いてはいけないと、考えさせられる方々である。
「遠いところよりわざわざご足労を――――神殿内は寒かったでしょう。暖かいものを用意してますので」
食事を用意してくれているとのことだ。蛇とか下手物なんかが出て来るなんてことはないよね?
――いかんいかん、先入観を抱いてはいけないと思ったばかりじゃないか。
――――ほらぁ! 先入観持っちゃ駄目だよ。
なにこれ、やだこれ。
神秘的な空間での食事なんて素敵じゃないか。
神殿に続く道から滝壺に沢渡りが設けられていて、そこから先にはガボゼ。
そのガボゼに設置されたテーブルセットに運ばれてくる食事。
グレービーソースがたっぷりの柔らかなローストビーフに、湯気だけで暖かさが伝わってくる空豆のスープ。景観も最高だから、ちょっとした避暑地みたいだ。
整備長、お酒が出ないのが不満みたいだけど、仕事中ですからね。
「このソースの隠し味を後で教えてくれます?」
味付けに興味津々なのか、教徒の方にレシピを聞いているロールさん。
――――。
「お口にあって何よりです」
僕たちが次々に口に運んでいる姿を目にして、グラドさんが喜んでいる。
――ふぃ~。食った、食った。もう、後は帰るだけって事にはなりませかね? 邪神なんかと会いたくないんですけども。
「では、行きましょう」
人心地ついたところで、奈落に落とされるような気分になる台詞だ……。
正直、復活はしてないんだよね? パンゲアの心臓を捧げたことで、疎通だけは出来るようになっただけだよね?
いきなり完全復活してます。なんて事だったら本当に迷惑ですから。
行きたくないな~。条約とか出来る遙か昔に封じられてるわけだから、ちょっと言葉を間違っただけで、命取られそうなんだけど。
「ささ、この階段を上って神殿へ」
掌を階段に向けて誘導してくれるから、足をそちらに進めるしかない僕たち。ここで反発しても相手はマンティコアとか、魔獣を素手で退治する方々だ。逆らえば何されるか分かったもんじゃない。
――――進んでも地獄。退いても地獄。
スキュラとカリュブディスの間だ…………。
上っていく階段が、断頭台に続いているのじゃないか――と、いう錯覚すら覚える。一歩一歩が先ほど下ってきた螺旋階段の時よりも重い。
先ほどの食事はさながら最後の晩餐か…………。
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