拝啓、あなた方が荒らした大地を修復しているのは……僕たちです!

FOX4

文字の大きさ
43 / 604
胎動

PHASE-04

しおりを挟む
「では、進みましょう」
 離れないように、ハッタさんにくっつくようにして歩く。
 
 ロールさんいい香り――――。
 
 ――なんて思えるんだから、普通の存在でしかないのに、僕は意外と肝が据わっているのではないのでしょうか。
 

 ――――――。
 
 う~。寒さがどんどん強くなってる気がする。そう思うのは僕だけかと思ったけど、自然と体を密着しあって体を温め合う。整備長だけ離れていただきたい。
 ――とは言えないほど寒い。
 
 神殿入り口から真っ直ぐ歩いているけども、結構、歩かされてる。
 
 ほのかな光で進んでいるから、そう錯覚しているのか? とにかく歩かされている距離はかなりあると思える。

「ここからは階段を下るので、より足下にご注意を」
 左右対称に作られた上に続く階段。
 その中央にある、祭壇と思われるところで、ハッタさんが敷石の一つを足で踏む。
 
 ――ゴゴゴゴッと、音を立てて祭壇が横へとずれ動くと、下へと続く階段が現れた。

「寒さが更に強くなってきましたよ」

「あとちょっとなので、頑張ってください」
 体を震わせる僕たちに励ましをくれるけども、この冷気は正直こたえる。
 
 ――――螺旋造りの階段を下へと一歩一歩進むにつれて、僕たちの足取りは鈍くなっていく。
 来なきゃよかった……。
 仮病でもよかったから休むべきだった。
 
 もし、整備長と二人での行動だったら、確実に休んでいたはず。ロールさんが参加するってことで、テンション上がってたけど、一般人が邪神と邂逅するなんて想像出来なかったもの…………。


「はい、到着です」
 階段を下り終えると、頑丈そうな大きな門が眼界に入る。
 
 地下の岩をくり抜いて、そこに両開きの門をはめ込んだ造り。
 
 門の前には番兵さんみたいに、ハッタさんと同じ黒いローブを身に纏った二人が待機していた。

「「どうも~」」
 ローブも同じなら、テンションも同じだ……。こんな地下の暗がりに似つかわしくない……。
 
 門を開くようにハッタさんが指示をすると、左右の二人が、重厚な門を諸手で全力を出して押し開けてくれる。
 きっと、僕たちなんかじゃ、押したところで、びくともしない造りなんだろうね。
 
 留めてくれている間に、速歩で門をくぐる。留めている状態でも、僕たちが通る時には、律儀に頭を下げてくれる細かい配慮。



「こりゃ凄い」
 神秘的とは正にこの事。
 
 門の先の空間は広い。そして、岩の方々から、むき出しになっているクリスタルが、淡い緑の光を発していて、ハッタさんの魔法が必要ではないくらいに明るい。
 
 眼界には地下神殿。
 
 形状は、この上にあるでっかい神殿を、そのまま縮めた感じ。
 
 神殿の右奥には滝があり、ゆっくりと水が流れ落ちて、滝壺がまるで小さな湖みたいであり、その中心に神殿があるから、風景自体も上の神殿に酷似している。
 
 あえて似せて造ったのだろう。
 大昔の建築家の遊び心、矜持が窺われる。
 
 滝壺から水路を通って、せせらぐ水のなんと澄んでいること。飲むときっと、体全体に染みこんでいくようなおいしさだろう。
 そんな風に思いながら、神殿に続く、綺麗に敷石が埋め込まれた石畳を歩き、

「よく、おいでくださいました」

「どうも、アレイン・ソーヤ局長に代わり、王都より来ました。整備局、整備長のニーズィー・ブートガイです。こちらがロール・ジャイロスパイク。そして、その他です」
 おい! もう一回バトルするか? おい! やってやんぞ。
 
 まったくこのおっさん精神年齢がキッズだ。
 
 正面に立つ、黒いローブの初老の男性に自分で挨拶をする。
 
 ハッタさんたちと違うとすれば、黒いローブの縁に、金の刺繍が施されている。
 差別化されたローブからして、この方がこの教団の長てき立場の方だろう。

「わたくし、パンゲア教にて、最高神祇官じんぎかんを務めております、グラド・コニートともうします」
 邪神復活を企てている集団なのに、なぜにこうも明るいのか。邪神崇拝=根暗な思考という先入観を抱いてはいけないと、考えさせられる方々である。

「遠いところよりわざわざご足労を――――神殿内は寒かったでしょう。暖かいものを用意してますので」
 食事を用意してくれているとのことだ。蛇とか下手物なんかが出て来るなんてことはないよね?
 ――いかんいかん、先入観を抱いてはいけないと思ったばかりじゃないか。

 ――――ほらぁ! 先入観持っちゃ駄目だよ。
 
 なにこれ、やだこれ。
 神秘的な空間での食事なんて素敵じゃないか。
 
 神殿に続く道から滝壺に沢渡りが設けられていて、そこから先にはガボゼ。
 そのガボゼに設置されたテーブルセットに運ばれてくる食事。
 
 グレービーソースがたっぷりの柔らかなローストビーフに、湯気だけで暖かさが伝わってくる空豆のスープ。景観も最高だから、ちょっとした避暑地みたいだ。
 
 整備長、お酒が出ないのが不満みたいだけど、仕事中ですからね。

「このソースの隠し味を後で教えてくれます?」
 味付けに興味津々なのか、教徒の方にレシピを聞いているロールさん。

 ――――。

「お口にあって何よりです」
 僕たちが次々に口に運んでいる姿を目にして、グラドさんが喜んでいる。
 
 ――ふぃ~。食った、食った。もう、後は帰るだけって事にはなりませかね? 邪神なんかと会いたくないんですけども。

「では、行きましょう」
 人心地ついたところで、奈落に落とされるような気分になる台詞だ……。
 
 正直、復活はしてないんだよね? パンゲアの心臓を捧げたことで、疎通だけは出来るようになっただけだよね?
 いきなり完全復活してます。なんて事だったら本当に迷惑ですから。
 
 行きたくないな~。条約とか出来る遙か昔に封じられてるわけだから、ちょっと言葉を間違っただけで、命取られそうなんだけど。

「ささ、この階段を上って神殿へ」
 掌を階段に向けて誘導してくれるから、足をそちらに進めるしかない僕たち。ここで反発しても相手はマンティコアとか、魔獣を素手で退治する方々だ。逆らえば何されるか分かったもんじゃない。
 ――――進んでも地獄。退いても地獄。
 
 スキュラとカリュブディスの間だ…………。

 上っていく階段が、断頭台に続いているのじゃないか――と、いう錯覚すら覚える。一歩一歩が先ほど下ってきた螺旋階段の時よりも重い。
 
 先ほどの食事はさながら最後の晩餐か…………。
しおりを挟む
感想 27

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

無能なので辞めさせていただきます!

サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。 マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。 えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって? 残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、 無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって? はいはいわかりました。 辞めますよ。 退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。 自分無能なんで、なんにもわかりませんから。 カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

僕の秘密を知った自称勇者が聖剣を寄越せと言ってきたので渡してみた

黒木メイ
ファンタジー
世界に一人しかいないと言われている『勇者』。 その『勇者』は今、ワグナー王国にいるらしい。 曖昧なのには理由があった。 『勇者』だと思わしき少年、レンが頑なに「僕は勇者じゃない」と言っているからだ。 どんなに周りが勇者だと持て囃してもレンは認めようとしない。 ※小説家になろうにも随時転載中。 レンはただ、ある目的のついでに人々を助けただけだと言う。 それでも皆はレンが勇者だと思っていた。 突如日本という国から彼らが転移してくるまでは。 はたして、レンは本当に勇者ではないのか……。 ざまぁあり・友情あり・謎ありな作品です。 ※小説家になろう、カクヨム、ネオページにも掲載。

【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます

まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。 貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。 そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。 ☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。 ☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。

【完結】妖精を十年間放置していた為SSSランクになっていて、何でもあり状態で助かります

すみ 小桜(sumitan)
ファンタジー
 《ファンタジー小説大賞エントリー作品》五歳の時に両親を失い施設に預けられたスラゼは、十五歳の時に王国騎士団の魔導士によって、見えていた妖精の声が聞こえる様になった。  なんと十年間放置していたせいでSSSランクになった名をラスと言う妖精だった!  冒険者になったスラゼは、施設で一緒だった仲間レンカとサツナと共に冒険者協会で借りたミニリアカーを引いて旅立つ。  ラスは、リアカーやスラゼのナイフにも加護を与え、軽くしたりのこぎりとして使えるようにしてくれた。そこでスラゼは、得意なDIYでリアカーの改造、テーブルやイス、入れ物などを作って冒険を快適に変えていく。  そして何故か三人は、可愛いモモンガ風モンスターの加護まで貰うのだった。

後日譚追加【完結】冤罪で追放された俺、真実の魔法で無実を証明したら手のひら返しの嵐!! でももう遅い、王都ごと見捨てて自由に生きます

なみゆき
ファンタジー
魔王を討ったはずの俺は、冤罪で追放された。 功績は奪われ、婚約は破棄され、裏切り者の烙印を押された。 信じてくれる者は、誰一人いない——そう思っていた。 だが、辺境で出会った古代魔導と、ただ一人俺を信じてくれた彼女が、すべてを変えた。 婚礼と処刑が重なるその日、真実をつきつけ、俺は、王都に“ざまぁ”を叩きつける。 ……でも、もう復讐には興味がない。 俺が欲しかったのは、名誉でも地位でもなく、信じてくれる人だった。 これは、ざまぁの果てに静かな勝利を選んだ、元英雄の物語。

処理中です...