拝啓、あなた方が荒らした大地を修復しているのは……僕たちです!

FOX4

文字の大きさ
56 / 604
現在、魔王討伐に最も近いパーティーの中の、一人の男

PHASE-02

しおりを挟む
 どうやら、以前の使用者、といっても暗黒幽鬼ダークロードではなく、暗黒幽鬼を討伐しようとして、失敗した方の魂魄が、ダーインスレイブに宿っているらしく、普段はそこまで語りかけないらしいのだけども、綺麗な女性が目の前に現れると、テンションが上がるらしい。
 
 残念な呪剣だな……。取り憑かれてるカルタさんに同情してしまう。
 
 ダーインスレイブには、ヘグニなる人物の魂魄が入っているそうだ。
 生前は相当な女性好きだったそうで、頭の中に直接語りかけてくるもんだから、凄く煩わしくて、かなわないそうだ。

「どんなこと言ってんです?」
 気になって質問。

 ――…………。
 
 沈黙である。
 どうやら、女性の前ではとても口にすることが憚られる、恥ずかしい事みたいだ。

「くそ、コイツ! 本当にうるさい!」
 イライラしている魔剣士さん。足を上下に振って、床をダンダンと鳴らす。
 
 会話を交わせば、苛立ちなんかを表に出さない礼儀正しい方だと分かる。
 戦いにおいては、冷静に判断を行い、相手に付け入る隙をあたえることなく、スマートに倒すと思うんだ。
 修羅場をくぐった胆力の持ち主――。それでも、直接、頭に語りかけられるのは、我慢が出来ないようだ。

「話が進まないので、何を言っているのか聞かせてください? 別に気にしないので」
 優しくロールさんがそう言うけど、相当に抵抗があるみたいだ。
 顔は恥ずかしさから、真っ赤っかになってるし、

「オブラートに包んでみては? それなら、口に出来るでしょう」
 ロールさんが二の句を継ぐ。
 僕だって、大人手前だ。多少の痴的ちてきユーモアなら笑えるよ。
 
 眉間に皺を寄せて、渋面になりながら、覚悟を決めたように、重々しく口を開くと、

「そのつなぎを脱がせて、開放された柔肌に抱きつきたい。ロールたんのサイドテールな髪をクンカクンカしたい……それに胸がきつそう。つなぎが合ってない。おっぱいまろび出せ……」

「へ、へ~……」
 発言を聞いて、ロールさん引き気味である。
 心なしか、サイドテールをカルタさんに見せないように、上半身を若干捻って、斜めにしている。
 オブラートに包んでそれか……。完全に包んでないのは、子供には聞かせてはいけないものだなこりゃ……。
 
 もう、殺してくれと言わんばかりの捨て鉢な表情のカルタさん。凄いね。いま変態チックな発言したのが、トップを行くパーティーの一人なんだから。
 まあ、本人の気持ちじゃないんだけど……。
 瓦版が聞いたら瞬く間に汚点が広がるだろうね。

「この右腕、切り落とした方がいいですかね……」
 落ち着きましょう! こんなところで、そんな事しないでくださいね。

「なにか方法知りませんか」
 すぐに話をすげ替えてあげないと、カルタさんが本気でやりかねない。
 
 カルタさんが実行に移ると理解したロールさんは、腕組みをして、今までに聞いたことのある噂などを頭の中で巡らせているようだ。

「たしか」
 何かしらを脳内から引き出したのか、ロールさんは継いで、
「霊山であるケルプト山の麓にある森に、呪いを解く泉があるって話ですけど」
 それは無理だな……。
 ケルプト山ってカグラさんが住んでるからな~。暗黒幽鬼ダークロードを倒したパーティーが近づいたら、開戦まったなしだろうな。

「炎竜王の住まう場所ですか」
 流石に、面倒な場所だと、嘆息して、目つきがきついものになる。
 でも、呪いも解きたい。そんなジレンマに悩まされてるみたいだ。
 
 霊山ってのが、信憑性高いもんね。呪いとかに効果ありそうだもの。

「う~ん」
 行きたそうだ。どうしよう。この人、強いよね。もし、カグラさんやンダガランさんと戦って、玉の肌に傷を負わせたら承知しませんよ。
 ――出来れば、戦闘回避ねがいたいのですが。

「カグラさんが問題ですか?」

「カグラさん? ああ、炎竜王ですね。そうです」

「だったら、森に入れるようにアポイントとりましょうか?」

「出来るんですか!?」

「問題ないかと」
 ロールさん、いつの間にそんな事できるまでのルートをゲットしたの? 困れば助力するとは言ってたけども。
 でも、勇者御一行に塩を送る行為は断ると思うんだけど。
 
 しかも、相手は暗黒幽鬼を討伐した存在。近づけるのは嫌でしょう。

「連絡とってみますね」
 ないない。お願いしますって、カルタさん頭さげてますけど、そんな話し通るわけないですよ。

 ――――。
 頭だけを待合室から出して、魔石鏡のある隣の部屋のやり取りを窺う。
 ここからじゃ鏡は見えないけども、鏡の中ではきっとカグラさん、呆れ顔なんだろうなと、容易に想像がつく。
 
 ――――。

「いいそうです」
 ふぇ!? 嘘でしょ。
 なぜにいいの? いや良くないよね。

「暗黒幽鬼を倒した英雄に是非とも会ってみたいそうですよ」

「助かります。ありがとうございます」
 うそやん。そんなんで話し通るの? 確かに暗黒幽鬼は勇者御一行だけじゃなく、魔王軍にとっても敵だったんだろうから、脅威の対象だったんだろうけども、
 
 そもそも暗黒幽鬼ダークロードって、大洞窟から出ない引き籠もりだったんだよね? 別段、脅威でもなかったんじゃないの? スルーすれば、と、突っ込んでもみたい。
 
 そんな気持ちをグッと堪えて、カグラさん寛大ですね。と、だけ思おう。

「呪いが解けたからって、いきなりカグラさん達に戦いを挑むことはしないでくださいよ」
 念のために釘を刺しておく。
 もちろんと、笑顔でカルタさんが言うもんだから、それを信じましょうかね。

「じゃあ、俺はこれで」

「とりあえず、市井では、その剣は見せないでください」
 外套なりなんなりで、腕ごと隠していただきたい。
 
 これで、呪いが解けるかもという期待に胸を膨らませながら、ツレの方々をバッカスで待たせているからと、笑顔で局から去って行った。
 バッカスかよ! 絶対、ツレの勇者様たちはお酒大好きじゃないか。
 
 今度こそ外れるといいですね、カルタさん。
 右手に剣がくっついている以外はまともな方だったし、応援したくなる方だった。
 
 にしても――だ、

「カグラさんとの話、えらく簡単に済みましたね」

「普段から、仲良くしてるからかな、すんなりだったよ」
 普段から――、だと? 
 
 なんだ普段からって。まるで、一緒に同じ時間を過ごしているみたいじゃないか。

「結構、会ってたりするんですか?」

「うん。休みの日には王都で一緒に買い物したりするよ。カグラさんやンダガランさんとかと」
 な、なんだってぇぇぇぇぇぇぇ!
 なんですかその素敵な空間は! 僕がなぜそこにいないんですか。交ぜてくださいよ。ボッチの休日を送る。サボテンに水をやるだけの僕も、一緒に遊びたいですよ。

「僕も、遊びたいです」
 ダメ元で言ってみる。

「いいよ」
 いやっほぉぉぉぉぉぉぉ! 最高だぜぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!
 こんなにも簡単に了承を得られるなんて。日頃の僕の行いがいいからだね。真面目に仕事をやってるから、こうやってご褒美が訪れるんだ。
 
 休日がすこぶる楽しみだ! まあ、いつになるかは分からないけど。それでも約束はしてもらったし、普段からって言ってたから、近いうちには美人さん達と楽しい休日が迎えられそうだ。
 
 頑張って仕事をこなして、いいところ見せないとね。
 次はまたまた、出張だし。そこでもいいとこ見せるぞ!
 モチベーションが上がれば、俄然やる気が漲ってくるのが十代の特権だ。
しおりを挟む
感想 27

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

無能なので辞めさせていただきます!

サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。 マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。 えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって? 残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、 無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって? はいはいわかりました。 辞めますよ。 退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。 自分無能なんで、なんにもわかりませんから。 カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

僕の秘密を知った自称勇者が聖剣を寄越せと言ってきたので渡してみた

黒木メイ
ファンタジー
世界に一人しかいないと言われている『勇者』。 その『勇者』は今、ワグナー王国にいるらしい。 曖昧なのには理由があった。 『勇者』だと思わしき少年、レンが頑なに「僕は勇者じゃない」と言っているからだ。 どんなに周りが勇者だと持て囃してもレンは認めようとしない。 ※小説家になろうにも随時転載中。 レンはただ、ある目的のついでに人々を助けただけだと言う。 それでも皆はレンが勇者だと思っていた。 突如日本という国から彼らが転移してくるまでは。 はたして、レンは本当に勇者ではないのか……。 ざまぁあり・友情あり・謎ありな作品です。 ※小説家になろう、カクヨム、ネオページにも掲載。

【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます

まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。 貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。 そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。 ☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。 ☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。

【完結】妖精を十年間放置していた為SSSランクになっていて、何でもあり状態で助かります

すみ 小桜(sumitan)
ファンタジー
 《ファンタジー小説大賞エントリー作品》五歳の時に両親を失い施設に預けられたスラゼは、十五歳の時に王国騎士団の魔導士によって、見えていた妖精の声が聞こえる様になった。  なんと十年間放置していたせいでSSSランクになった名をラスと言う妖精だった!  冒険者になったスラゼは、施設で一緒だった仲間レンカとサツナと共に冒険者協会で借りたミニリアカーを引いて旅立つ。  ラスは、リアカーやスラゼのナイフにも加護を与え、軽くしたりのこぎりとして使えるようにしてくれた。そこでスラゼは、得意なDIYでリアカーの改造、テーブルやイス、入れ物などを作って冒険を快適に変えていく。  そして何故か三人は、可愛いモモンガ風モンスターの加護まで貰うのだった。

後日譚追加【完結】冤罪で追放された俺、真実の魔法で無実を証明したら手のひら返しの嵐!! でももう遅い、王都ごと見捨てて自由に生きます

なみゆき
ファンタジー
魔王を討ったはずの俺は、冤罪で追放された。 功績は奪われ、婚約は破棄され、裏切り者の烙印を押された。 信じてくれる者は、誰一人いない——そう思っていた。 だが、辺境で出会った古代魔導と、ただ一人俺を信じてくれた彼女が、すべてを変えた。 婚礼と処刑が重なるその日、真実をつきつけ、俺は、王都に“ざまぁ”を叩きつける。 ……でも、もう復讐には興味がない。 俺が欲しかったのは、名誉でも地位でもなく、信じてくれる人だった。 これは、ざまぁの果てに静かな勝利を選んだ、元英雄の物語。

処理中です...