拝啓、あなた方が荒らした大地を修復しているのは……僕たちです!

FOX4

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熱砂地帯の二王

PHASE-01

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 ――――暑い……。
 肌がジリジリする。火傷しそうだ……。
 
 白地の外套で体を隠し、強い太陽の光から守っているのが、今の僕たちの状況。
 露出している手は、放っておけば、こんがり焼けそう。
 
 大陸東に位置する王都から遙か西。
 魔道都市クリネアから見て、南東に位置する大砂漠地帯、ゲンジ砂漠。
 そこにひっそりと存在する、オアシスであるシュタールの町。
 この暑さには、流石にグライフ君たちも辛いようで、大きな体を隠せる貴重な木陰で、ぐったりとしながら、羽根をうちわ代わりにして涼んでいる。
 
 白煉瓦造りの家々が並んで、ターバンを頭に巻いる方々が僕たちの前を歩いております。
 
 しかし暑い……。でも、カラッとした乾燥気候のおかげで、肌に不快な暑さは纏わり付いてこない事だけは救いで、ありがたい。 

「暑い!」
 せめてものありがたみを堪能している中で、暑いって言葉を口にしてくる。
 やめてくれ……。口に出すと暑さが増すような気分になるから。

「暑い、暑い、暑い、暑いぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!」
 うるせえな! この砂漠に埋めてやろうか、このおっさん!
 ガブガブガブガブ水飲みやがって! そんだけ飲んでるんだから我慢ぐらいしろよ!
 直ぐに空になった水筒を覗き見る整備長。暑いの連呼に拍車がかかるので、

「コレどうぞ」
 と、僕の水筒を渡すや、

「サンキュー。ああ、気持ちいい」
 まったくさ、何を頭からかぶってくれちゃってるかな! また、井戸に汲みに行かなきゃいけないじゃないか!
 面倒なことだけど、僕がしないと、おっさんは動こうともしないから、しかたなく僕が動くしかない。
 
 ――――このシュタールの町は、元々は小さな軍事要塞だった。
 俯瞰から見れば、円形の城壁に守られている小さいながらも堅牢な造り。
 しかし、土地柄、水を得るのも難しく、普通に生活を営むというのは困難。時が下って行くと、しだいに軍事要塞としての必要性もなくなっていき、多くの人々が移住を行い人口が激減していった。
 
 ――――だけど、ここ最近になって、人口が右肩上がりだそうだ。
 
 井戸に設置された釣瓶つるべを井戸の中に落とせば、ドブンと豪快な音が耳朶に届いてくる。砂漠地帯の中でありながら凄く恵まれた音だ。
 
 少し前まではこんなに恵まれてはいなかった。
 
 この水の恩恵もあって、人々が集まり始め、景気も良くなってきており、今では軍事要塞であった時よりも活気に溢れた土地に変貌だ。

 ふふふ……、褐色の美人さんもいいものですな。
 エキゾチックな美人さんの色香はたまりませんな!
 横を通る美人さんを見ての感想は、脳内がおっさんもいいところ。

「時間かかってるけど大丈夫」
 うむ、ロールさんの白い肌もやはりよいですな。
 僕が暑さにやられて、体調崩してないか心配して来てくれたそうだ。なんて、優しいんだろう。

「遅いよ。おかわり」
 それに比べて、葉煙草吸いながら、なんて楽してるんだろう。
 まったく……。

「ああ、染みてくる」
 炎天下の中では至福の冷たさだ。
 何よりも、
 んぐっんぐっと、喉を動かしてからの、
「ぷはぁ! うまし!」
 ここの水は凄く美味いんだよね。
 なんというか、不純物なんかが一切混じってない感じで、すっと体に染みこんでくるんだよね~。

「んじゃ、行くか」
 葉煙草の火を消してから、木陰に下ろしていた腰を起こし上げると、フードを被って気怠そうに歩き出す整備長。
 

 ――――本当に活気に満ちている。
 少ないながらも街商も出ていて、旅商人の方々も、新たな稼ぎ場を見つけたとばかりに気合いの入った呼び込みをしている。
 
 ――――。

「おお!」
 俄然、整備長の声が大きくなる。
 町より外に出ると、そこではそこで、活気のいい状況。
 
 いい大人達が、炎天下の中で、投票権を握りしめている。
 賭け事に夢中だ。

「俺も行っていいか。まだ、時間に余裕あるし」

「駄目ですよ! ねえ、ロールさん」

「時間外だからいいんじゃない。余裕もあるって言ってるし」
 え~。多数決で勝利を決めた整備長が僕にどや顔を向けてくる。
 じゃあ、好きにしなよ。
 肩をすくめる仕草を見せると、意気揚々と砂漠の勾配を走り出していく。めちゃくちゃ元気だなおい。
 呆れた視線を送っていると、

「私たちも折角だから見てみようよ」

「はい!」
 二つ返事で受け入れる僕。
 二人っきり、最近こういうシチュエーションが多い。幸せだ~。
 
 ただでさえ暑い地帯だ。これ以上のものは味わいたくないので、おっさん達が発する熱気に当てられない位置から見物。
 
 賭の対象は、砂漠オオトカゲに騎乗してのクライムヒル。
 斜度五十度の急勾配を登り切るタイムで決まるようだ。
 自分の一押しに投資している方々の目の血走り方が凄いのはよく分かる。
 聞いた声が、急勾配付近から聞こえてくる。
 投票権片手に握りしめ、誰よりも興奮している。今まで熱狂していた近くの方々も、それに気圧されて、若干引き気味だ。恥ずかしい……。あんなのが上司なんて……。
 
 オオトカゲに跨がる騎手が手綱をコントロールしながら加速を付けさせていき、急勾配を勢いよく駆け上がる――――。

「あ~」
 ロールさん、残念とばかりに声を漏らす。騎手とオオトカゲ、登り切れないで、転がり落ちていった。
 コレが、一般的に見学目的の人の感想だろう。
 
 整備長、先ほどよりも競技が行われているクライムヒルに接近している……。正に砂かぶりと言ってもいいポジション。
 声は聞こえない。声は聞こえないけども、見学目的ではなく、賭に熱の籠もった男の姿は急勾配の先で見て取れる。
 おおかた、【ざまぁ! お前じゃないんだよ! 俺の本命は! 脱落してありがとう。げひゃひゃひゃひゃひゃ――――】って、すごくなじりながら、馬鹿笑いしているのは、所作で理解出来る。
 賭に必死になって汚い言葉を飛ばしてるんだろう。引き気味だった周囲の人々が、さらに距離を開けて、変なのがいるって、可哀想な視線と指を整備長に向けていた。
 
 あの人、公務員になってなかったら、絶対にまっとうな人生を送る事はなかっただろうね。
 クライムヒルは観光目的で行っているもので、賭は副産物でしかないようだ。それに目の色変えて本気に取り組んでたら、周囲もそりゃ引くわな。
 まあ、整備長に似たタイプの方々もかなりいるようですが……。
 必然的に、そんな方々は、ひとまとまりになっていっている。
 駄目なおっさん達の掃き溜めがそこにはあった…………。

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