拝啓、あなた方が荒らした大地を修復しているのは……僕たちです!

FOX4

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ブートキャンプへようこそ♪

PHASE-18

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 冷静に対処出来るって事に関してなら、僕に一日の長がある。
 
 彼等は新兵。まだ学舎から出たばかりだ。
 
 対して僕は、畑は違えど、仕事で様々な方々と対面してきた。カグラさん、不死王さん、大公様に、邪神シスコンなどなど――。
 
 お歴々に比べれば、ここの方々はまだまだ嘴の黄色いひな鳥だ。
 きっと、いま僕が思い浮かべた方々を前にしたら、醸し出す圧によって卒倒するだろう。
 その点の胆力では負けない自信も自負も経験もある。
 
 根気比べ、知恵比べと行こうじゃないか。
 要は、相手に捕捉されなければ良いんだからね――。
 頭の中に、僕を死地に追い詰めたジュラルミンさんが浮かんでくる。
 
 ――――静かだ。
 
 やはり、周囲が砂漠地帯という事もあって、鳥以外の動物が発する音は耳には入らない。
 だからこそ、それ以外の音はよく耳に届く。
 耳の良い亜人の方なら更に聞こえているはずだ。

『こちら、チャーフィー・アルファ。対象――――まもなく。オーバー』

「シャーマン了解。アウト」
 夜目に頼りすぎているな。羽音と高いびきがよく聞こえている。
 堂々としすぎだね。
 夜目が利かなくても、これだけ大きな羽音をさせて飛んでいれば、僕にでも距離感は掴めるもんさ。

「いくニャ」

「まだまだ」
 猫のように体を伏せさせての姿勢。今にも狩りを始めようとしているシナンさん。
 負けじとロウさんも伏せて待つ。
 
 息を殺したように、細心の注意を行い、会話、そして、息づかいにも神経を研ぎ澄ませる。間違いなく、ここにいる僕たちは狩る側の立ち位置にいる。
 
 僕はゆっくりと通信機のボタンに手を伸ばす。木々、草に触れないように、耳元のボタンに指を持っていくだけでも、慎重に慎重を重ねる。
 
 深い呼気を行い、
「タリホー。対象、着地。数は三だニャ」
 闇を見通すシナンさんの発言に頷いて返す。
 
 ――暗順応っていうんだっけ? 遠くまで見えるわけじゃないけど、近場なら新月の暗闇の中でも見えるようになってきた。

「おい、このオーク寝てるぜ」

「ラッキーだな。周りにも人影はない。てか、よく演習中に寝られるな。馬鹿なのか?」

「勝ってる余裕だろ。それよりも早くしろ、そいつ等が起きたらマズイ」
 警戒してきた。シナンさんが隣で僕に逐次報告。
 辺りを見渡しながら、嫌な気配を感じたのか、寝ているオークさんのベレー帽に触れようとしつつも、中々に触れられないでいる。
 でも、触れる。手にしなければ逆転できないという欲に負けて。
 ――――そこを狙う。
 銃は音が出る。なので、極力使用せず、時宜を見計らってアタック。

「おい、いくぞ」
 人型の男性鳥人タンガタ・マヌさんが、そう言うと、頷いて鳥の顔である鳥人さんの手がベレー帽に触れた瞬間。
 
 僕は、耳元のボタンを押して、
「ゴーゴーゴー」
 と、伝える。
 待ってましたとばかりに、伏せていた体を勢いよく伸ばして、シナンさんと、ロウさんが飛び出し、あっという間に二人の動きを封じ制圧。
 驚いて、飛び立とうとした一人も、彼の頭上から制空権を我が物にしたアクシャイさんが片手で顔を掴むと、力に物をいわせて地面に無理矢理キスをさせて拘束。

「くっそぉぉぉぉぉぉ」
 アズナさん同様の悔しい声をいただきました。
 ランタンに火を灯して、ググタムさんと僕が銃を向けつつ、拘束された三人へと近づく。

「何だよその恰好!? 妖精ギリードゥの真似か?」
 全身に木の葉や苔を纏っている妖精だね。上手いこと例えるね。
 
 捕らえた、鳥人タンガタ・マヌさんが言うように、僕たちは全身を草で覆って、この方々が隙を見せるまで、森と一体化していた。
 この森に足を踏み入れた時のジュラルミンさんの登場を思い出してのアイデアだ。

「これで、こちらはベレー帽を合計8奪取」
 いいぞ。倍の数だ。各分隊にも早速この――――、ギリードゥ――。
 ――の、名前を拝借したギリースーツを作らせて、この戦いにおける隠蔽率を高めさせよう。
 
 相手は通信のロストを知れば、更に三人がやられたと思うだろう。
 そこに拍車をかける焦りで、大いに動きが散漫なものになる。そうなればこちらが完全に狩りの主導権を握る事が出来る。

「なんか、笑い方が悪い奴みないだニャ」
 いいんじゃないかな。そのくらいの表情の方が、今のこの戦いの最中には必要かも知れませんよ。
 古の怜悧狡猾な軍師よ、僕に宿りたまえ~。

「おい、起きろ」

「ふえ? アクシャイ――終わった?」
 演技で寝てもらうと、ばれる可能性もあったので、リアリティを出す為に、グラント・ブラボーのオークさん達には本気で寝てもらっていた。
 顔を軽く叩かれ、涎を拭きながら目を覚ましている。 

 

 ――ここからは、釣りの要領だ。
 餌である居眠り隊を配置。それが利かなくなれば更に効果のある、はぐれたと見せかけた遊撃部隊ロウカストの一人を配置し、襲いかかってくるところを逆に襲う。カウンターアタック。先手を取れると自負している相手にすると、抜群の効果だ。
 
 ――――これで、更に五つをゲット。
 成功したけども、一人を逃がしたとの報。
 
 今までの編成から考えると、相手は三人一分隊で構成されていると思われる。
 五十人の三人一組だから、十六組くらいか。四分隊ぐらいは潰したな。
 こっちは四人一組の十二組と、残る二名がリーとグラントに一人ずつ入っている編成。で、損害は一分隊分。
 彼我の残存は37対46か。
 まだだな……。
 相手との差をダブルスコアにしたいところ。
 そしたら、後はごり押しでもいけると思う。もちろん油断するつもりはないけども。

  
 ――――――。

 東側の空がうっすらだけど、淡い赤に染まり始める。
 これだけ動き回って、神経すり減らして心身共にへばっているのに、以外と体は動く。
 演習の成果が出ているのかな? 
 
 二日も持たないと思っていた堅パンハード・タックも慣れてしまって、今では当たり前のように口に入れて食べている。
 初日、テントでダークエルフの男性に教わった、口に含んで、柔らかくなったところをいただく方法。
 味気ないし、物足りないけど、噛んでたら満腹中枢が刺激されるって言うのは、心底、理解出来る。
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