拝啓、あなた方が荒らした大地を修復しているのは……僕たちです!

FOX4

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働く方々

PHASE-02

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「なんだ!?」 
 飛んできた方向に目を向ける武道着の方に続いて僕もそちらを見る。
 
 タンカラーの外套と、顔を隠すフードの人物が馬車に乗って、左手は手綱。右手で石を持って、上に投げては、掴んでを繰り返している。
 フードからちらりと見える亜麻色の髪の毛に、アメジストの瞳。
 外套の色に、髪と瞳――――。

「サージャスさん?」

「お久しぶりです」
 フードを取ると、ショートカットで快活な美少女が顔を見せてくる。
 おお、やっぱり。古都以来ですね。

「頑張ってますね」
 バラクーダの二人をほっといて、サージャスさんに近づく。
 馬車を手に入れるなんて、頑張ってるんだな~。

「どうしたんですか?」
 僕がなんで剣を振り上げられていたのかの経緯を聞いてきたので、教えてあげると、一気に表情が険しくなり、馬車から降りると、
「力で脅すなんて、なんて卑劣漢たちだ! ボクが性根をたたき直してあげる!」
 いいな~。ボクッ子。それも可愛い子が口にするから更にいい。
 背も低い方だし、ギュッてしたくなるね。華奢な体をギュッとね。
 ――まあ、そんな華奢な体の持ち主が、不死王さんを吹っ飛ばしてたんだけども。
 
 ついつい、両耳を押さえてしまう。巨神狂叫アウルゲルミルだったか? その衝撃音が蘇ってくる。

「このメスガキが」

「やめてください。手を出しては駄目です」
 痛めた手をさすりつつ、落ちた剣を拾い、サージャスさんに突っ込んでいく。
 なんて、愚かな行動なんだろう……。折角、警告してあげたのに。
 ご愁傷様って思いは、一応、抱いてあげますよ。

「傷つけるなよ。まだガキだが――いい女だ」
 下卑た常套句だな。整った武道着が、武道の精神を汚されて泣いてるよ。
 そんな常套句に笑みで返して、剣を振り上げる。
 
 ――振り上げたと同時に、膝から落ちていった、鎧の方。
 完全に意識が無くなっているようで、力なく崩れ落ちる。
 操り人形の糸を全て切り落としたら、こんな感じになるのかな? と、考えてしまう。 


「は!?」
 まあ、驚くよね……。
 実際、何が起こったかなんて、見てても分からないもの。
 ――本当に、なんで崩れ落ちたの?
 
 本来なら、力量差を見抜いて降参するところなんだろうけども、力量差に開きがありすぎると、力を見極められなくなるもので――――、
「くそ!」
 ――っと、よせばいいのに、武道着の方が構えてから、驀地。
 それに対してサージャスさんは一歩も動かずに、指だけを動かす。
 
 鼻先、剣が掠めてないよね? 記憶が蘇って、有りもしない剣を恐れる僕。
 
 浮き上がったのは剣ではなく、破壊されて、粉々になった石畳の敷石。
 
 武道着の方を一斉に破片が取り囲み、得物を狩ろうとする猛禽のように旋回する。
 不気味な迫力を感じ取ったようで、足を止めた武道着の方は足を止めて、畏れを抱きながらサージャスさんを見ると、彼女は微笑みを向ける。

「ねえ、なんでボクが直ぐに貴男を倒さないでいるか分かる?」
 首を横に振って返し、後退り。

「それはね――、ちゃんと反省の言葉を整備局の方に向かって言わせるため。それと、貴男の周りを旋回する、壊された石畳の違反金を支払わせるため。加えて、ここで寝ている男を担がせるため。OK」
 二の句を継ぐサージャスさん。
 語尾に進むにつれて、語気が低く強い物になる。
 まあ、脅してるわけだ。

「違反金はおいくらで?」
 急に素直だね。
 トレジャーハンターは保険適用外の存在。全額負担なんですよね~。特別に保険に加入していれば話しも変わるけど。入ってないでしょ。こんな感じじゃ。
 だから――――。

「見積もって、5万ギルダーくらいですかね」

「はあ!? ふかすなよ! 暴利だろう」
 保険って大事だね。これを期に入りましょうね。
 いや~本当に高いよ。僕の給金の二ヶ月分ちょい上くらいだもの。罰則の意味もあるから仕方ないね。

「規則なんで」
 握り拳を作って、今にも殴りかかろうとしているけど、周囲を旋回する敷石の破片が抑止になっているから、僕に手が出せないでいる。
 エルンさんがやらかしたのに比べれば、そして、サージャスさんが組んでたパーティーのクズによって生じた額に比べれば、格安ですよ!

「今日中に払える場合は支払ってください」
 猶予は二週間以内ってのは勇者御一行や、魔王軍の方々だけだからね。それ以外は緩かったりするけど、ほったらかしにして、督促状が届いた日には、むしり取られますよ。
 払う意志があっても、高額すぎて払えずに、むしり取られている存在が、今現在、貴男の周囲に石を飛ばしてますけども……。

「くそ~」
 革袋を取り出し中身を確認。
 小刻みに頷いているから、出せるみたい。
 違反証明書を与えて書いてもらう。実際はこの人じゃなくて、倒れてる方が原因なんだろうから、その方にも違反金の支払いを出させるように伝えてあげると、観念したのか、素直に頭を下げている。

「あと、これ、没収になりますが――いいですか?」

「待ってくれよ! それ、結構いい剣なんだよ」
 でしょうね。火球フェイヤーボールくらいとはいえ、火の玉を出せるって便利だもんね。そこらのモンスターなら、コロイチだもの。
 苦労して、得たのはわかるし、本来なら没収なんてしないけども、整備局員にそれを向けた時点で没収なのは当たり前なんで。
 知らないじゃ済まされません。
 
 ――――だって僕――、公務員なんで。
 
 公務執行妨害が適用されるんで。妨害を行った代物を没収するのは勤めの一つなんです。
 優しく作り笑顔で説明してあげたら、項垂れていた。
 目を覚ましたら、持ち主は発狂だろうね。でも、悪いのは、公務執行を妨害した貴方方です。

「すみませんね。規則なんで」
 たたみかけるように、トドメの公務員最強の真言マントラで締めて、お二人には役所に足を進めてもらう。
 一人は背負われて……。
 最初から素直に非を認めていれば、こうはならなかったのに……。
 抜き身の剣を、預かった鞘に納剣しつつ、残念な背中を見送ってあげる。
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