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働く方々
PHASE-06
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「ただ、過信はしないでくださいね。砂漠オオトカゲなんて、これをバリバリ食べてますから。本当に強靱か信じがたいですからね。そのための実験と考えてくだされば」
「いやいや、それ違うから」
と、タモンさんが割って入る。
タイラントデスストーカーの外骨格は、そのままでは、そこそこ頑丈な代物。
この外骨格の骨格構造は、非常に隙間が多く、スカスカなのだそうだ。砂漠オオトカゲにとっては、食感はエアリーなものらしい……。
だからこそ、虫なのに、大きな体をしていても、自重を支える事が出来るんだそうだ。
アレを虫と例えるのもどうかと思うけども……。
スカスカでも十分な強度を誇るけども、真価を発揮するのは、この外骨格を叩きに叩き、中のスカスカの部分をなくす事で、密度が高くなり、本来の物のとは比べものにならない強度に変わるそうだ。
更に、タモンさんは、鎧とロングソードを作るのに全ての外骨格を使用したそうで、鎧に至っては二重構造。名のある刀剣でも、この鎧に傷をつけられれば御の字。それくらいに強度は高いとの事。
加えて、タイラントデスストーカーは魔法耐性も強いそうで、この鎧は生前以上の魔法防御を備えているそうだ。
「自分で言うのもなんだが、同じ素材で宝具扱いされている代物より上等と断言出来るぞ」
タモンさんは、王都で魔道開発局、研究所の主任を務めている。その時点で、この方も超一流。なので、その発言は間違いないだろう。
「サージャスさん。装備してみてください」
「サイズも調整出来るようにしてます」
抜かりの無いのは流石だ。
いきなり高価な代物が自分の体に装備出来るとは思ってもみなかったから、弓を引いたような口元になっての破顔。
――……。
「ちょっと!?」
いきなり、鎧を僕たちの前で外し始めたから、手を伸ばして制止を考えたけども、別に下着になるわけでは無いんだね……。
女の子が脱ぐ動作が眼前で行われるんだもの。驚きを隠す事は出来ないよ。
反面、下着じゃないのかと、ガッカリした気持ちも抱く、いけない僕。
――うん、なんか今から装備する黒に似合う、黒地で、体の線に沿った鎧下着を来ている。
――ふむ。中々の発育――。十六でこれなら、あと二年もすれば更によき体に……。
「変態がいるぞ」
僕の耳元で、ささやかないでくださいよタモンさん。やだな~。変態とか、そんな気持ちで見てないですよ。今後の更なる発育を思う兄心的なものですから。
一週間じゃ、感情を表情に出さないようにするなんて、やはり直りませんでした。演習終わって直ぐに顔に出てたし。無理無理、直りませんよ。
顔に出たって仕方ないじゃない。だって、男の子だもの。
ありがたい事に、鎧に夢中で、僕の視線には気付いてなかったから良しとしよう。僕に好意を抱いているかも知れない乙女の心を悲しませるわけにはいかない。
――外骨格から金属音に似た擦れる音を発しつつ、一人で見事に鎧を着ていく。
流石はワンマン勇者。全てを一人でこなしてきただけはある。
「どうですか?」
やはり、美人は着こなすね。鎧を着こなすって考えは正しいのかな? とにかく、似合っている。
彼女の事を考えて、こしらえたようにも思えるよ。
「では、勇者よ、この剣を受け取るがよい」
ちょっと、おふざけ気味に、常套な王や領主の真似をしつつ、剣をサージャスさんの前に出すと、意外とノリがいいようで、
「光栄に存じます」
僕の前で片膝ついてから、剣を諸手で受け取った。
立ち上がってから、鞘から剣を抜き、剣身を眺める。
漆黒の剣身だけども、光が当たると、独特の青みがかった光を放つ。
鮮やかな透明がかった黄色いタリスマン。黒と黄色の二色が織りなす美。
美しさと可愛さを兼ね備えた勇者の手に収まっている。
得物も、やり手の主の元で世話になれると、剣身の輝きで、喜びを表しているようだ。
「これが、ボクの物になるなんて――。あ、すいません。借り物でしたね。調子に乗った発言でした」
いえいえ、なんの問題も無いですよ。もともと、あげるつもりだし。僕が持ってても何にもならないから。
売って膨大なお金を手にしてもね。惰性に落ちそうで嫌だし、僕が望むのは平地の行き届いた人生。大きな欲は身を滅ぼすと思うからね。
ゲロまみれの外骨格を砂で洗ってる時は、これで悠々自適とかも思ってたけども、有り余る財を操れるほど、僕のお金に対する器は大きくないだろう。
急にお金持ちになると、誰にも言ってなくとも、知らない人が親しげな笑みを振りまいて、大勢で寄って来るっていうし、それを相手にするのは嫌だしね。
「こっちの鎧どうします?」
タモンさんが、必要としないなら、こちらで利用させてもらうと言ってくる。
流石は出来た大人である。廃棄とか処理って言葉は使わない。本人にとって愛着があったかもしれない物を侮辱する言葉は避けていく。
「今までボクを護ってくれた物ですから、無下には出来ないので」
と、持ち帰らせてもらうとの事だった。廃棄、処理の発言をしないで正解だね。
――――――。
「じゃあ、ありがとうございました」
「おう、また面白い物でも手に入れたら来いよ。暇つぶし作ってやるから」
外まで出て、わざわざ見送ってくれるタモンさんに一礼して、馬車に乗る。僕以上に頭を深く下げて感謝を表して、手綱を持つと、タモンさんに大きく手を振って全身で礼を表し、馬車を動かす。
――さて、お腹も減ってきたし、ご飯でも食べるか。
「これからの予定は?」
手綱を引く先を食事処にしてもらえれば、ありがたいと思いつつ聞いてみると、
「役所の方に向かいます」
あ~、そうですか…………。
先ほど手に入れたお金を直ぐに違反金の支払いに充てるんですね……。
健気である。これほど、自分の責任でも無いのに、懸命に働き違反金を払う若き勇者がこの大陸に他にいるだろうか。いや、いない! いるわけがない! ひたむきな彼女に是非とも神よ恩恵を与えてください。このさい邪神でもいいぞ。
――……やっぱり止めとこう。邪神は粘着質だから、サージャスさんを新たなる義妹にしてしまいそうだ。
「それにしても、夢見心地です」
何度も、自分が装備する漆黒の鎧に目を通しながら幸せな笑みを一度も崩さないサージャスさん。心の底から喜んでおられる。僕も嬉しい限りだ。
「ウィザースプーンさんはどうします?」
役所なら大通りになるから、バッカスにでも行こうかな。
勘違い君がいるから、変な噂を広めていないかの確認もしないといけないからね……。
「どうしたんです、真剣な面持ちですね。重要な用件でもあるんですか」
「いえいえ、視察ですよ」
「視察するなんて、まだお若いのに大役ですね」
それ、大いなる勘違いですけどね。
まあ、そういう事にしておきませう。
――――大通りは三叉路の中央にドンと構えている役所。皆さん、単純に分かりやすい単語の役所を使用。僕もその一人。
――正式には王都官庁。
王に代わって、王都の行政を担っている場だ。
治世が敷かれて、カグラさんのように、近隣の魔王軍とも友好的関係を王都自体が築いている事から、働いている方々は、出来る方々が多い。
嫌が応にも通勤時にここを通るから、毎日見るけども、よっぽどの事が無いと、ここには来ないからね。
役所って、行きそうで行かない。納税とかは局が全部やってくれてるし。
基本ここに来るのって、王都に新しく住む人とか、よそに移る時とかがメインなのかな? サージャスさんみたいに違反で来る方もいるけども。
先ほどのバラクーダの某さん達も、今頃、違反金を支払ってるのかな?
「いやいや、それ違うから」
と、タモンさんが割って入る。
タイラントデスストーカーの外骨格は、そのままでは、そこそこ頑丈な代物。
この外骨格の骨格構造は、非常に隙間が多く、スカスカなのだそうだ。砂漠オオトカゲにとっては、食感はエアリーなものらしい……。
だからこそ、虫なのに、大きな体をしていても、自重を支える事が出来るんだそうだ。
アレを虫と例えるのもどうかと思うけども……。
スカスカでも十分な強度を誇るけども、真価を発揮するのは、この外骨格を叩きに叩き、中のスカスカの部分をなくす事で、密度が高くなり、本来の物のとは比べものにならない強度に変わるそうだ。
更に、タモンさんは、鎧とロングソードを作るのに全ての外骨格を使用したそうで、鎧に至っては二重構造。名のある刀剣でも、この鎧に傷をつけられれば御の字。それくらいに強度は高いとの事。
加えて、タイラントデスストーカーは魔法耐性も強いそうで、この鎧は生前以上の魔法防御を備えているそうだ。
「自分で言うのもなんだが、同じ素材で宝具扱いされている代物より上等と断言出来るぞ」
タモンさんは、王都で魔道開発局、研究所の主任を務めている。その時点で、この方も超一流。なので、その発言は間違いないだろう。
「サージャスさん。装備してみてください」
「サイズも調整出来るようにしてます」
抜かりの無いのは流石だ。
いきなり高価な代物が自分の体に装備出来るとは思ってもみなかったから、弓を引いたような口元になっての破顔。
――……。
「ちょっと!?」
いきなり、鎧を僕たちの前で外し始めたから、手を伸ばして制止を考えたけども、別に下着になるわけでは無いんだね……。
女の子が脱ぐ動作が眼前で行われるんだもの。驚きを隠す事は出来ないよ。
反面、下着じゃないのかと、ガッカリした気持ちも抱く、いけない僕。
――うん、なんか今から装備する黒に似合う、黒地で、体の線に沿った鎧下着を来ている。
――ふむ。中々の発育――。十六でこれなら、あと二年もすれば更によき体に……。
「変態がいるぞ」
僕の耳元で、ささやかないでくださいよタモンさん。やだな~。変態とか、そんな気持ちで見てないですよ。今後の更なる発育を思う兄心的なものですから。
一週間じゃ、感情を表情に出さないようにするなんて、やはり直りませんでした。演習終わって直ぐに顔に出てたし。無理無理、直りませんよ。
顔に出たって仕方ないじゃない。だって、男の子だもの。
ありがたい事に、鎧に夢中で、僕の視線には気付いてなかったから良しとしよう。僕に好意を抱いているかも知れない乙女の心を悲しませるわけにはいかない。
――外骨格から金属音に似た擦れる音を発しつつ、一人で見事に鎧を着ていく。
流石はワンマン勇者。全てを一人でこなしてきただけはある。
「どうですか?」
やはり、美人は着こなすね。鎧を着こなすって考えは正しいのかな? とにかく、似合っている。
彼女の事を考えて、こしらえたようにも思えるよ。
「では、勇者よ、この剣を受け取るがよい」
ちょっと、おふざけ気味に、常套な王や領主の真似をしつつ、剣をサージャスさんの前に出すと、意外とノリがいいようで、
「光栄に存じます」
僕の前で片膝ついてから、剣を諸手で受け取った。
立ち上がってから、鞘から剣を抜き、剣身を眺める。
漆黒の剣身だけども、光が当たると、独特の青みがかった光を放つ。
鮮やかな透明がかった黄色いタリスマン。黒と黄色の二色が織りなす美。
美しさと可愛さを兼ね備えた勇者の手に収まっている。
得物も、やり手の主の元で世話になれると、剣身の輝きで、喜びを表しているようだ。
「これが、ボクの物になるなんて――。あ、すいません。借り物でしたね。調子に乗った発言でした」
いえいえ、なんの問題も無いですよ。もともと、あげるつもりだし。僕が持ってても何にもならないから。
売って膨大なお金を手にしてもね。惰性に落ちそうで嫌だし、僕が望むのは平地の行き届いた人生。大きな欲は身を滅ぼすと思うからね。
ゲロまみれの外骨格を砂で洗ってる時は、これで悠々自適とかも思ってたけども、有り余る財を操れるほど、僕のお金に対する器は大きくないだろう。
急にお金持ちになると、誰にも言ってなくとも、知らない人が親しげな笑みを振りまいて、大勢で寄って来るっていうし、それを相手にするのは嫌だしね。
「こっちの鎧どうします?」
タモンさんが、必要としないなら、こちらで利用させてもらうと言ってくる。
流石は出来た大人である。廃棄とか処理って言葉は使わない。本人にとって愛着があったかもしれない物を侮辱する言葉は避けていく。
「今までボクを護ってくれた物ですから、無下には出来ないので」
と、持ち帰らせてもらうとの事だった。廃棄、処理の発言をしないで正解だね。
――――――。
「じゃあ、ありがとうございました」
「おう、また面白い物でも手に入れたら来いよ。暇つぶし作ってやるから」
外まで出て、わざわざ見送ってくれるタモンさんに一礼して、馬車に乗る。僕以上に頭を深く下げて感謝を表して、手綱を持つと、タモンさんに大きく手を振って全身で礼を表し、馬車を動かす。
――さて、お腹も減ってきたし、ご飯でも食べるか。
「これからの予定は?」
手綱を引く先を食事処にしてもらえれば、ありがたいと思いつつ聞いてみると、
「役所の方に向かいます」
あ~、そうですか…………。
先ほど手に入れたお金を直ぐに違反金の支払いに充てるんですね……。
健気である。これほど、自分の責任でも無いのに、懸命に働き違反金を払う若き勇者がこの大陸に他にいるだろうか。いや、いない! いるわけがない! ひたむきな彼女に是非とも神よ恩恵を与えてください。このさい邪神でもいいぞ。
――……やっぱり止めとこう。邪神は粘着質だから、サージャスさんを新たなる義妹にしてしまいそうだ。
「それにしても、夢見心地です」
何度も、自分が装備する漆黒の鎧に目を通しながら幸せな笑みを一度も崩さないサージャスさん。心の底から喜んでおられる。僕も嬉しい限りだ。
「ウィザースプーンさんはどうします?」
役所なら大通りになるから、バッカスにでも行こうかな。
勘違い君がいるから、変な噂を広めていないかの確認もしないといけないからね……。
「どうしたんです、真剣な面持ちですね。重要な用件でもあるんですか」
「いえいえ、視察ですよ」
「視察するなんて、まだお若いのに大役ですね」
それ、大いなる勘違いですけどね。
まあ、そういう事にしておきませう。
――――大通りは三叉路の中央にドンと構えている役所。皆さん、単純に分かりやすい単語の役所を使用。僕もその一人。
――正式には王都官庁。
王に代わって、王都の行政を担っている場だ。
治世が敷かれて、カグラさんのように、近隣の魔王軍とも友好的関係を王都自体が築いている事から、働いている方々は、出来る方々が多い。
嫌が応にも通勤時にここを通るから、毎日見るけども、よっぽどの事が無いと、ここには来ないからね。
役所って、行きそうで行かない。納税とかは局が全部やってくれてるし。
基本ここに来るのって、王都に新しく住む人とか、よそに移る時とかがメインなのかな? サージャスさんみたいに違反で来る方もいるけども。
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