拝啓、あなた方が荒らした大地を修復しているのは……僕たちです!

FOX4

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働く方々

PHASE-11

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 ――――なるほど、お客が多いのは、ただ酒ばかりをあおる目的じゃなく、こうやって細やかなサービスまでしてくれるから、ひっきりなしなんだね。
 そのサービス精神でさっさと勘違いだという事を気付いてくださいね。
 僕にビクビクしない!
 見て、女の子と楽しく食事。男には興味ないOK?
 
 ――ちっ、置いたらそそくさと行っちまいやがった!
 僕の気付いてね視線を、ホルテン君は違う意味でとらえたのだろうか……。熱い視線なんて送ってねえぞ!

「いいんですかね?」

「ご厚意なんで、いただきましょう」
 ワンカットだけどタルトの上に乗る溢れんばかりのラズベリーたるや。豪華だね。
 艶出しのナパージュが、更に豪華さを引き立てている。
 光が当たって、キラキラとルビーを思わせる。
 
 口に入れると、キラキラが目に移動したのか、瞳が輝くサージャスさん。
 では、僕も一口。

「う~ん」
 大衆食堂。しかも、酒飲みばかりのところで作られたとは思えないレベルの高さ。ラズベリーの甘みと、酸味が口いっぱいに広がって、嬉しい支配。
 一緒に運ばれてきた紅茶は、タルトの甘みを引き立たせて、且つ、口の中をリセットさせるために、渋みを少々効かせるためだろう、茶葉を些か多めに使用しているみたいだ。
 配慮が素晴らしい。これを、大賑わいの中でも、やってのける配慮が素晴らしい。
 経営者が、王都で邸宅を構えられるだけの稼ぎがあるのも頷ける。

「は~幸せの時間でした」

「それは、よかったです」
 堅パンハード・タックからしたら、普通の昼食もごちそうでしょう。
 野草とか耳にした時は、本当に心が痛かったですよ。たんと食べてくれて、笑顔になってくれたのが公務員ぼくにとっての、救いです。
 

 ――会計を済ませてと――――、

「あの、大きめの麻袋とか余ってませんか? 再利用じゃなくて、ボロボロで、もう処理前の物とか」
 なにやら、交渉していらっしゃる。
 麻袋なんて、何に使うの? しかもボロボロとか。

「麦の入っていた物なら、廃棄しようとした物がいくつかありますが」
 サージャスさんが、トーストの美味さにむせび泣いた時に、ホルテン君と一緒にやってきた上役の方に交渉しているところに、何に使うのか気になったので、横から質問してみる。
 何とも、恥ずかしそうにモジモジと体を揺らしながら、
「あの……その……ですね。寝間着とかに…………」

「「「ふぁ!?」」」
 またも、三人でシンクロしてしまった。
 何を言っているのか理解出来なかった、僕、ホルテン君、上役さんは口だけでなく、首を傾げる動作も見事に揃っていた。
 ここが舞台上で、踊りの一部の動作であったならば、間違いなく、拍手もらえるくらい揃っていたと自負出来る。
 
 寝間着ってなんだ? 上から布団代わりにするってのなら、まだ百歩譲って理解出来る。寝間着ってのが理解出来ない。
 そんな僕たちに、赤面の状況で、恥を忍んででも麻袋をどう活用するかを、周囲には聞こえないように、僕たちだけに聞こえるように囁く。

 麻袋の底中央部分を切り取って、側面にも同じような穴を開ける――――。
 そこまでを耳にした時点で、僕は店の天井を眺めていた。そこもシンクロしたのか、横に立つ二人も天井を見上げている。
 それはなぜか? 簡単だ。涙をこぼさない為だ。
 説明の途中で、直ぐさまサージャスさんが麻袋で作った寝間着を着ている姿が容易に想像出来て、心を締め付けられてしまった。
 
 最後まで聞くと、切り取った部分も無駄にはしないそうで、綺麗に細く長く仕立てていって、それをよって腰紐を作り、はだけないように固定するそうだ。
 やばい、目に溜まりに溜まった涙が決壊しそうである。
 
「ホーク君、今日、樽に麦を移したばかりの新しい麻袋があったね。いくつか譲ってやりなさい」

「よろこんで」
 サージャスさんを食料庫に案内してあげるホルテン君。

「あんなにも素晴らしい鎧を纏っているのに……」
 上役さん、支払いのやり取りをしつつ独白する。

「あれ、一応、僕の所有物で、貸してるんです」

「そうなんですか。整備局員の方の優しさですね」

「そちらの優しさも身に染みてます。あの、そちらの干し肉と、オートミール下さい。持ち合わせないので、ツケでいいですかね。身分は証明しますので」

「構いませんよ。支払いはいつでも。サービスで、多めに入れときますね」
 僕が保存食を何にどう使用するのかを理解してくれたのか、笑顔で頼んだ量より明らかに倍の料を用意してくれる。

「勇者様の今後の活躍を」

「あの子は名をはせますよ。何たって、あの不死王さんの幹部の方が、千五百年に一人の天才と言いましたし、不死王さんに大きな傷を負わせた子ですから」
 嘘はついていない。超回復的なので傷はみるみる治っていたけども、傷は負わせていた。見舞われた本人も感心していたし。

「そりゃ凄い! 名前を聞かせてください。こりゃまた、いい宣伝効果になる」
 そう言って、追加で食料を袋に入れてくれた。
 ここの人たち、いい方々だな。ホルテン君に対する考え方も軟化しないといけないな。
 
 ――――。

 馬車までわざわざ見送ってくれる二人に、巻いた麻袋を手にしたまま頭を下げ、僕が抱えた食料袋は受け取れないと断るけども、三人で無理矢理、馬車に乗せて強引に渡した。
 僕たちの行為に似た事を今まで受けた事がなかったのか、その善意に、涙を流して感謝してくれる。
 第三者が見れば、自己満足の偽善行為とも思われるだろうけど、それでも、サージャスさんの今後の事を考えると、協力したくもなる。
 贈答と思われるのも嫌なので、バッカスからの支援という名目で、食料袋は渡した。
 
 
 ――――馬車に乗り、整備局まで送ってもらう最中、
「これからの計画は?」

「一応、王都には残ります」

「へ~」
 馬車をクエスト先に返して、新しいクエストでも受けるのかと思っていたよ。

「もうすぐ王都に、壌獣王と風雷王が叙勲式に訪れますよね」
 はい……。そうです。来ますよ…………。
 何を、考えてますかね? やめてよ。不死王さんの時みたく、襲ったりしないでよ。叙勲式なんで、正当に王様が勲章を与えるんで。
 それを邪魔したら、この場合、相手がたとえ魔王軍でも、襲った方はお尋ね者の犯罪者になりますからね。

「勇者のボクが言うのもなんですけど、叙勲式の妨害を企てる輩から、魔王幹部の二王を護衛するクエストがありまして」
 え~!? そんなクエストあるの? 
 勇者が、魔王幹部を守るの? 何処が出してるクエストなのかと聞けば、王都の官庁が出してるものだそうだ。
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