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働く方々
PHASE-10
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――ん?
「食べないんですか?」
「お先に」
どうやら僕が口にするまで待つみたいだ。奢ってもらう分、先に口にしては失礼と考えている様子。
本当に、出来た子である。
ジャンバラヤを木のスプーンですくって一口。う~ん、このうま味から、後を追いかけてくる唐辛子の辛み。この辛みが午後からの活力になってくれそうだ。
労働者の為のボリューム有る一品である。
周りを見ればいつも通り、真っ昼間から酒に溺れている方が多い。
「いただきます」
食事と僕に一礼すると、震えた手でトーストを手に取り、口に運ぶと、サクっと小気味のよい音を立ててからのゆっくりとした咀嚼。
――え!?
咀嚼していたサージャスさんの頬に、つうっと涙が伝う。
「どうしました!?」
急の涙に驚いていたら、むせび泣き始め、両手で涙を拭いながら、とうとう声に出しながら泣き始めた。
鎧を纏った少女の号泣に、何事か? と、スプーンを止め、ジョッキを止めて、一斉にこちらを見てくる。
見ようによっては、僕が泣かしてるような光景。
痛い視線が方々から向けられる。勘弁してください……。
とにかく、訳を聞きたいのですよ。急に泣き始めた理由を、
「どうしたんです!?」
おお! ホルテン君と、如何にも偉そうな方、よく来てくれました。
「トーストを口にした途端に、こうなりまして」
僕が、泣き始めた理由を伝えると、二人とも顔面が蒼白。もしかして、何か食事に異物でも混入していたのかと、焦燥している。
有名な勇者御一行が訪れたという事で、毎日が千客万来であるのに、ここで不祥事を起こせば、ご破算と思っているのだろう。
――――僕と一緒に、サージャスさんに訳を聞こうと必死になっていると、呼吸が整ってきたようで、しゃくり上げながらも口を開いてくれた。
「トーストが、凄く美味しくて……」
「「「ふぁ!?」」」
三人でシンクロしてしまう。
いやいや、トーストでそこまで泣くなんてありえないから。何かしらの理由を隠しているのでは? と、思うのが当然で、無理しなくていいので、真実を話してくれるようにお偉いさんが説明を求めると、
「堅パンと野草と川の水の毎日だったんで、こんなにも柔らかなパンは一年ぶりだったから、あまりにも美味しくて、つい……感極まってしまって」
あ~。そうなんですか。まさか、トースト一枚を口にしただけで、そうなってしまうなんて、どれだけの極貧だったのか……。
辛い、公務員として、違令管理課の方々に代わって、僕が凄く辛い。
「凄く美味しいです」
美少女の涙目からの美味しい発言は、店員の二人にも突き刺さる物があったようで、
「ゆっくりと、お食事をお楽しみください」
と、言うと、仕事に戻っていった。
――二人とも目頭を押さえていた。同情しますよね。この子には、
纏っている鎧からは想像も出来なかったでしょ? でも、サージャスさんは凄く貧しい方なんです。
食に対する喜びを得てもらえるのは嬉しいけども、トーストでこれなら、厚切りベーコン食べたら、美味さでショック死なんてしないよね?
心配で、僕の食事が進まないですよ。
伸びる手が掴むのは、ナイフとフォーク。
――やはりベーコンに行くのか。
なぜに固唾を呑みながら見届けないといけないのか……。
切られるベーコン。
口に運ばれるベーコン。
咀嚼されるベーコン。
嚥下されるベーコン。
――――涙は流さないけど、固まってしまった。
そして、小刻みに震えると、ビクンビクンと大きく震える。
恍惚とした表情。
震える体とその顔で、なんかリアクションがエロく見えてしまった……。
「幸せすぎます」
喜びの脱力に見舞われて、惚けたまま、フライドエッグを捕捉すると、フォークで黄身の上を突っつき、流れてくる黄身をトーストですくい取って口にすると、同じように恍惚となる。
なんか、固唾呑んでたけど、見てて飽きないな。
本当に健気だ。辞書で健気って調べたら、サージャス・バレンタインと表記されていても納得する。
頬ばって食べております。
でも、そことなく上品なのは、美少女の特権なのか。
僕も、これで安心して食べる事が出来る。
――辛味が口が支配してきたら、甘みのあるコーンチャウダーを口に運んで、リセット。
完璧な布陣である。
――――最後に黄身の混じったサラダとベーコンをトーストに挟んでから、サンドイッチとして堪能している。
食べ終えると、満足の証である、屈託の無い笑顔を見せてもらえた。
「こんな贅沢して、罰とか当たりそうです」
ワンプレートの一般的な食事で罰が当たるなら、この店内にいる方々は、余すことなく地獄行きですよ。
彼女の極貧な食生活が相当に、食に関しての常識をねじ曲げてしまっているようだ。質素倹約はいい事だと思うけど、貴女のは違いますからね。世間知らずに括られますから。
「支払いも大事ですけど、生活費は残してから支払ってください。なにかあった時、対処出来なくなりますから」
「分かりました。もう装備にはお金を注ぎ込まなくていいので、そちらを生活費に当てさせてもらいます」
うむ、ならばよし。堅パンなんかより、ちゃんとした物を食べて活動しないと、立派な勇者として活躍なんて出来ませんからね。
――。
「どうぞ」
僕たちのやり取りを見極めて、会話が止まったところで、ホルテン君が注文していない物をテーブルに置いてくれる。
「フランボワーズタルトです。お店からです。力を付けて、勇者として頑張ってください」
あら、やだ。この店、出来る店だよ。
てっきり数をこなして、淡々とお客を捌いて利益重視な方針と考えていたけども、僕の考えが間違っていたようだ。
「食べないんですか?」
「お先に」
どうやら僕が口にするまで待つみたいだ。奢ってもらう分、先に口にしては失礼と考えている様子。
本当に、出来た子である。
ジャンバラヤを木のスプーンですくって一口。う~ん、このうま味から、後を追いかけてくる唐辛子の辛み。この辛みが午後からの活力になってくれそうだ。
労働者の為のボリューム有る一品である。
周りを見ればいつも通り、真っ昼間から酒に溺れている方が多い。
「いただきます」
食事と僕に一礼すると、震えた手でトーストを手に取り、口に運ぶと、サクっと小気味のよい音を立ててからのゆっくりとした咀嚼。
――え!?
咀嚼していたサージャスさんの頬に、つうっと涙が伝う。
「どうしました!?」
急の涙に驚いていたら、むせび泣き始め、両手で涙を拭いながら、とうとう声に出しながら泣き始めた。
鎧を纏った少女の号泣に、何事か? と、スプーンを止め、ジョッキを止めて、一斉にこちらを見てくる。
見ようによっては、僕が泣かしてるような光景。
痛い視線が方々から向けられる。勘弁してください……。
とにかく、訳を聞きたいのですよ。急に泣き始めた理由を、
「どうしたんです!?」
おお! ホルテン君と、如何にも偉そうな方、よく来てくれました。
「トーストを口にした途端に、こうなりまして」
僕が、泣き始めた理由を伝えると、二人とも顔面が蒼白。もしかして、何か食事に異物でも混入していたのかと、焦燥している。
有名な勇者御一行が訪れたという事で、毎日が千客万来であるのに、ここで不祥事を起こせば、ご破算と思っているのだろう。
――――僕と一緒に、サージャスさんに訳を聞こうと必死になっていると、呼吸が整ってきたようで、しゃくり上げながらも口を開いてくれた。
「トーストが、凄く美味しくて……」
「「「ふぁ!?」」」
三人でシンクロしてしまう。
いやいや、トーストでそこまで泣くなんてありえないから。何かしらの理由を隠しているのでは? と、思うのが当然で、無理しなくていいので、真実を話してくれるようにお偉いさんが説明を求めると、
「堅パンと野草と川の水の毎日だったんで、こんなにも柔らかなパンは一年ぶりだったから、あまりにも美味しくて、つい……感極まってしまって」
あ~。そうなんですか。まさか、トースト一枚を口にしただけで、そうなってしまうなんて、どれだけの極貧だったのか……。
辛い、公務員として、違令管理課の方々に代わって、僕が凄く辛い。
「凄く美味しいです」
美少女の涙目からの美味しい発言は、店員の二人にも突き刺さる物があったようで、
「ゆっくりと、お食事をお楽しみください」
と、言うと、仕事に戻っていった。
――二人とも目頭を押さえていた。同情しますよね。この子には、
纏っている鎧からは想像も出来なかったでしょ? でも、サージャスさんは凄く貧しい方なんです。
食に対する喜びを得てもらえるのは嬉しいけども、トーストでこれなら、厚切りベーコン食べたら、美味さでショック死なんてしないよね?
心配で、僕の食事が進まないですよ。
伸びる手が掴むのは、ナイフとフォーク。
――やはりベーコンに行くのか。
なぜに固唾を呑みながら見届けないといけないのか……。
切られるベーコン。
口に運ばれるベーコン。
咀嚼されるベーコン。
嚥下されるベーコン。
――――涙は流さないけど、固まってしまった。
そして、小刻みに震えると、ビクンビクンと大きく震える。
恍惚とした表情。
震える体とその顔で、なんかリアクションがエロく見えてしまった……。
「幸せすぎます」
喜びの脱力に見舞われて、惚けたまま、フライドエッグを捕捉すると、フォークで黄身の上を突っつき、流れてくる黄身をトーストですくい取って口にすると、同じように恍惚となる。
なんか、固唾呑んでたけど、見てて飽きないな。
本当に健気だ。辞書で健気って調べたら、サージャス・バレンタインと表記されていても納得する。
頬ばって食べております。
でも、そことなく上品なのは、美少女の特権なのか。
僕も、これで安心して食べる事が出来る。
――辛味が口が支配してきたら、甘みのあるコーンチャウダーを口に運んで、リセット。
完璧な布陣である。
――――最後に黄身の混じったサラダとベーコンをトーストに挟んでから、サンドイッチとして堪能している。
食べ終えると、満足の証である、屈託の無い笑顔を見せてもらえた。
「こんな贅沢して、罰とか当たりそうです」
ワンプレートの一般的な食事で罰が当たるなら、この店内にいる方々は、余すことなく地獄行きですよ。
彼女の極貧な食生活が相当に、食に関しての常識をねじ曲げてしまっているようだ。質素倹約はいい事だと思うけど、貴女のは違いますからね。世間知らずに括られますから。
「支払いも大事ですけど、生活費は残してから支払ってください。なにかあった時、対処出来なくなりますから」
「分かりました。もう装備にはお金を注ぎ込まなくていいので、そちらを生活費に当てさせてもらいます」
うむ、ならばよし。堅パンなんかより、ちゃんとした物を食べて活動しないと、立派な勇者として活躍なんて出来ませんからね。
――。
「どうぞ」
僕たちのやり取りを見極めて、会話が止まったところで、ホルテン君が注文していない物をテーブルに置いてくれる。
「フランボワーズタルトです。お店からです。力を付けて、勇者として頑張ってください」
あら、やだ。この店、出来る店だよ。
てっきり数をこなして、淡々とお客を捌いて利益重視な方針と考えていたけども、僕の考えが間違っていたようだ。
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