拝啓、あなた方が荒らした大地を修復しているのは……僕たちです!

FOX4

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PHASE-02

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 ――――自分の部屋に戻って、考え事。
 最近は部屋の片隅を見つめるのが、サボテンの水やりに続いての日課となった。
 隅っこに置かれた、百人長から頂いた、銃が入っている金属製のアタッシュケース。
 これをどうするかってのが悩みの種。
 魔道開発局のブンゴ主任に預けてたけども、こった造形美に、作り手の気持ちを考えると、素直に持っているべきと言われたもんだから、自分の部屋に持って来たはいいけども、使う機会もないからな~。
 命を奪う物は必要ないのです。僕には無用の長物。

「とりあえず飾ろうかな~」
 別に独白する必要なんてないんだろうけどさ。
 何となく、百人長に悪い気がして、ついつい口を開いて、言い訳がましい事を言ってしまうけども……。
 ケースを手にしスナップ錠に拇指をかけて、パチンと音を立てて開ける。
 ――手間暇かかった彫刻。銃身だけじゃなく、木製のグリップにも施されてるんだよね。
 とても、僕のせせこましい部屋に飾るような物ではないけども、ケースから取り出して、棚に斜めに置いてみる。
 固定するのに適した物が無かったので、同じ棚にあった辞書で両側から押さえてみた。
 離れてから見てみる。
 ――――うん。まったくもって、浮いた存在だ。
 でもまあ、当分はこのままでいいか。
 埃が積もらないよう、こまめに掃除しますから。今はこれで勘弁して下さい百人長。

 ――――。

「今日のお昼は、お弁当なんだ」

「そうなんです。最近、この最強の片割れをよく食べてるんです」

「最強の片割れ?」
 局内で、ケーシ―さんのオニギリを手にする僕。
 レインちゃんの話を知らないと、何のことか分からないですよね~。
 首を傾げるロールさんも、本日はお弁当らしく。一緒に食べる。幸せである。

「不思議ですよね~」

「え? なにが?」
 この、オニギリだ。お米は口にはするけど、このワギョウのお米はなんでこんなにくっつくのだろう。三角形を象れるほどね。
 口に入れると粘りけもあるし。普段、口にするのはパラパラで、こんなには纏まらないよね。
 食感の違いに最初は抵抗もあったけど、慣れてくるとこれはこれでいい。
 白いお米に、黒い海苔のコントラストも、地味だと思ってたものだけど、シンプルな色味もいいものだ。
 それに――、
「おっ、具は厚切りベーコンだ」
 オニギリに何の具材が入っているかを創造しながら一口目を楽しむのもいい。
 中に何が入っているのか、口にするまで分からない期待感とドキドキ感。
 厚切りのベーコンのダイスカット。ゴロゴロで、塩っ気の強い味を、お米がマイルドにしていい塩梅だ。

「ワギョウに行く気まんまんだよね」

「胃を慣らしておかないとですね。水が合わないとかいうでしょ? あれと同じで、舌に合わなかったら困りますから」

「そういうものなんだ……」
 まだ、先の事なのにノリノリな僕に些か呆れてる感じ。

「大事ですよ。ワギョウの食事って、結構味気ないとか聞きますからね。普段から濃い味に慣れ親しんでる僕たちにはストレスに繋がる可能性もありますからね。食事が合わなくて、体調を崩すってのも珍しくないらしいですし」

「私は好きだから問題ないけどね。お味噌汁っていうスープが好き」
 へ~。それは飲んだ事無いな。ケーシ―さんの所では聞かない。
 需要が限られてるものは、小さなお店では置かないよね。
 バッカス辺りならあるだろうから、今度、頼んでみよう。

「う~ん」

「合わなかった?」

「はい」
 オニギリと、オレンジエードはやはり合わないな。砂糖の入ってない紅茶とかなら合いそうだ。
 普通に緑茶だな。でも、それもそんなに出回ってないし――――。

「ロールさん。お客さん」
 なんだ? この僕の至福の時間を邪魔する存在は! それとも、席を外した途端に、食べかけのサンドイッチを食べていいっていう、神からの恩恵なのか。
 なんて、馬鹿な事をわりかし本気で考えていると――――、
「どうも」
 おう、エルンさんか。久しぶりだな。
 何の用だろうか。
 サージャスさんに続き、エルンさん。
 最近は勇者さんが普通に整備局に足を運びますな。
 綺麗なパーティーメンバーも引き連れちゃって。
 ハーレムだね。けど、妬ましく羨ましいという感情はもう抱きません。
 破顔で迎えてあげる。暗黒面ダークサイドに捕らわれていた嫉妬の権化は身を潜めましたから。
 モテ期が来ている僕は、貴男と同じステージに立ってますから。
  
 ――。

「で、御一行がここに何用で?」

「あれ、忘れてる?」
 場所を待合室に変えてからの話し合い。
 ロールさんが説明を行ってくれる。
 王都でのお祭りの時に、クエストを相談していた事を。
 
 ――――思い出したよ。タリスマンが暴走して城門を壊したね。その時、街商をやっていた商人の方に疑いがかかったけども、卸問屋のラゴットに問題があるのでは? と、推理したロールさんが、エルンさん御一行にクエストでラゴットの内部を調査して欲しいと頼んでたね。

「苦労しました」

「まあ、苦労したのは、エルンが正面から調べようとしたからね……」
 青みがかった艶のある長く束ねた黒髪を揺らしつつ、戦士で、元侍職のフィット・マヘリアさんが嘆息混じりにこぼす。
 確か、僕もその辺りの事を心配していた記憶がある。
 エルンさんは、クソ真面目な勇者だから、話を聞こうとすると、言わなくていい内容まで口にしそうだもん。
 いきなり相手の確信を突くような事を平気で質問しそうだもんね。
 そうなったら、警戒フェイズとなって、はい――、それまでよ。
 クエスト失敗だ。
 フォローする周りの女性陣の苦労が容易に想像出来る。
 まあ、語りが苦労したって事だから、失敗はしてないんだろうけども。

「それで、ラゴットはどうでした?」
 着席する四人に紅茶を振る舞いつつ、単刀直入に、卸問屋の問題をさっそく聞かせてくださいと、僕の隣に腰を下ろすロールさん。
 四人は一礼して紅茶を口にしてから居住まいを正すと、
「ラゴットは怪しいと思われます」
 重厚な語調で、群青瞳の持ち主であるエルンさんが、僕たちを真っ直ぐに見つめる。
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