137 / 604
お兄様Incoming
PHASE-08
しおりを挟む
「甲鎧王様でしょうか?」
ここは代表して、整備長。口を開く前に、生唾を飲んで一呼吸置いてからだから、緊張は相当だね。
現状、僕たちは玉座に座る人物を前にして、周囲を鎧を纏ったヒャッハーな方々に囲まれている状況。
本来こういうのってさ、配下は玉座の左右に横隊で立つんじゃないの?
なんで町中のチンピラ達がいちゃもん付けてるような状態なんだろうね……。
「そうだよ。俺が甲鎧王のナーガ・ルジャ・ヌラルキアだ」
縦長の黒目を目立たせるような輝く金目が不気味だ。
不敵に口角を常に上げたままってのも嫌なもんだ。
「お前、前に来い」
食指を動かして、僕たちを囲っている中から、兜が凹んだ方を呼んでいる。
グライフ君にぶっ飛ばされて意識が飛んだ方だね。どうやら運ばれてる時に気がついたようだ。
まだ足下がふらついている状態みたいだけど、主の命令に素早く玉座まで移動。
「呼ばれたらちゃんと来た。命令に従ったな」
「はっ、当然です」
甲鎧王さんの前で片膝を突いて頭を下げる。
「じゃあさ、なんで、あの時は命令を聞かなかったのかな~」
首を傾げている。どの時の事なのかと疑問符が浮かんでいるみたいだ。
思い出せないのが腹立たしいのか、玉座から立ち上がった甲鎧王さんの体は、わなわなと震えている。
「さっきの雪山でだよ!!」
激しい金属音。膝を突く方の顔面を思いっ切り踏みつけ、倒れたところに容赦のないストンピングを見舞っていく。
「お許しください」
「許すわけねえだろうが! 俺が連れてこいって言ったよな」
「ですから、ここに」
「アホか! 俺に連れてこいと二回も言わせやがって。死ね、てめえは今すぐ死ね!」
ちょっと、ちょっと。僕たちの前でそんな事しないでください。
「とめてください」
周囲に伝えるけども、戦いているだけだ。なんて頼りにならない。それだけ、怖い存在なのだろうか。
「いい加減にしてください」
怒気を発するのはロールさん。その声に動きが止まる。
痙攣している配下の方を蹴り上げて、室内の隅へと勢いよく転がした。
「やり過ぎです」
「配下への教育にまで口出す権利は整備局員にはないだろ」
「人として見過ごせないからです」
強気なのもいいですけど、今回は止めた方がいい。この方は危ない。
「いいね~」
なんと長い舌なのか。腕の皮膚が蛇みたいと思っていたけど、舌の長さも蛇みたいだ。
長い舌での舌なめずりは不気味です。
全体を眺めるためか、ロールさんの周囲を一周する。
「魔石鏡で見てたんだよ。最高だね~」
レースを楽しむ為に、犬橇を使用して魔石鏡での中継を行っていたらしく、それにロールさんが映り込んでいた事で、興味を持ったみたいだ。
「いい女だ。俺の女になれ」
なんてストレートなんだ。この蛇め!
気安くロールさんの手に触れるなよ!
「絶対に嫌です」
触れてくる手を振り払って、お断り。流石です。
拒否されたのが不快なのか、眉根を寄せている。断られるとは思っていなかったようだ。確かに顔はいい。顔はいいけども、性根が問題だろう。
配下の高圧的な態度から、その中心であるこの方は、確実に横暴な存在だろう。
先ほどの暴行がいい証拠。
「いいから俺の女になれ。不自由ない生活をさせてやるから」
「嫌です」
すげない態度で、甲鎧王さんから離れるけども、しつこくロールさんに言い寄る。
うんざりするね。見ているだけでもそうなんだから、ロールさんはそれ以上に感じているだろう。さん付けなんて必要ないね。
「あの、それよりも、こちらのお話を」
二人の間に整備長が割って入る。
それに対して、蛇の目が一気に怒りのものに変わった。
「男が俺に指示をするな!」
玉座の間に響く声は、軽い感じのものとは違い、殺意に満ちあふれていた。あまりの恐怖に整備長だけじゃなく、配下の方々も後退りしている。
どうしたもんか、この方、本当に僕たちの命を取る事にまったく躊躇しなさそうだ。
しかし、男に対してこの態度。何処の邪神みたいだな。まあ、まだ向こうの方が良心的だな。あれを良心的って思うのもどうかと思うけども。
「俺の女になれ。命令だ」
「断固拒否します。それよりも、街の人たちに多大な迷惑が出ています。違反金は支払っているでしょうけど、もう少し、雪中訓練の配慮を検討していただければ」
「俺の女になれば、考えてやってもいい」
「公私混同は最低行為です」
「じゃあ、今まで以上に派手にやろうかな~」
むかつくわ~。ロールさんも相当に不愉快な表情。
と、いうより、こんなにも渋面な表情は初めて見る。甲鎧王の事は生理的に受け付けないとばかりに、一定の距離を保ちつつ対応。
「なあ、いいだろ? 俺と一緒になれば毎日が楽しいぞ~。欲しい物も揃うし、働かなくてもいい。何より俺に抱かれるという、最高の快楽付きだ。俺の舌技を味わったら、もう他じゃ満足出来ないぞ」
「気持ち悪い事ばかり言わないで、こちらの意見を耳にする気はあるんですか?」
「気持ち悪いって何だよ。俺と一緒になれるのは最高の事だろう。何でも手に入れてやるぞ」
無理だろう。世界の全てをくれてやると言う相手の事すら相手にしない人なんだから。
しつこく言い寄られる事で、ロールさんの中で限界が来たのだろう、
――パシンと音が響いた。
その後おとずれた森閑の中で、甲鎧王の頬を思いっ切りはたいたロールさんは、エメラルドグリーンの瞳を吊り上げて睨んでいた。
ここは代表して、整備長。口を開く前に、生唾を飲んで一呼吸置いてからだから、緊張は相当だね。
現状、僕たちは玉座に座る人物を前にして、周囲を鎧を纏ったヒャッハーな方々に囲まれている状況。
本来こういうのってさ、配下は玉座の左右に横隊で立つんじゃないの?
なんで町中のチンピラ達がいちゃもん付けてるような状態なんだろうね……。
「そうだよ。俺が甲鎧王のナーガ・ルジャ・ヌラルキアだ」
縦長の黒目を目立たせるような輝く金目が不気味だ。
不敵に口角を常に上げたままってのも嫌なもんだ。
「お前、前に来い」
食指を動かして、僕たちを囲っている中から、兜が凹んだ方を呼んでいる。
グライフ君にぶっ飛ばされて意識が飛んだ方だね。どうやら運ばれてる時に気がついたようだ。
まだ足下がふらついている状態みたいだけど、主の命令に素早く玉座まで移動。
「呼ばれたらちゃんと来た。命令に従ったな」
「はっ、当然です」
甲鎧王さんの前で片膝を突いて頭を下げる。
「じゃあさ、なんで、あの時は命令を聞かなかったのかな~」
首を傾げている。どの時の事なのかと疑問符が浮かんでいるみたいだ。
思い出せないのが腹立たしいのか、玉座から立ち上がった甲鎧王さんの体は、わなわなと震えている。
「さっきの雪山でだよ!!」
激しい金属音。膝を突く方の顔面を思いっ切り踏みつけ、倒れたところに容赦のないストンピングを見舞っていく。
「お許しください」
「許すわけねえだろうが! 俺が連れてこいって言ったよな」
「ですから、ここに」
「アホか! 俺に連れてこいと二回も言わせやがって。死ね、てめえは今すぐ死ね!」
ちょっと、ちょっと。僕たちの前でそんな事しないでください。
「とめてください」
周囲に伝えるけども、戦いているだけだ。なんて頼りにならない。それだけ、怖い存在なのだろうか。
「いい加減にしてください」
怒気を発するのはロールさん。その声に動きが止まる。
痙攣している配下の方を蹴り上げて、室内の隅へと勢いよく転がした。
「やり過ぎです」
「配下への教育にまで口出す権利は整備局員にはないだろ」
「人として見過ごせないからです」
強気なのもいいですけど、今回は止めた方がいい。この方は危ない。
「いいね~」
なんと長い舌なのか。腕の皮膚が蛇みたいと思っていたけど、舌の長さも蛇みたいだ。
長い舌での舌なめずりは不気味です。
全体を眺めるためか、ロールさんの周囲を一周する。
「魔石鏡で見てたんだよ。最高だね~」
レースを楽しむ為に、犬橇を使用して魔石鏡での中継を行っていたらしく、それにロールさんが映り込んでいた事で、興味を持ったみたいだ。
「いい女だ。俺の女になれ」
なんてストレートなんだ。この蛇め!
気安くロールさんの手に触れるなよ!
「絶対に嫌です」
触れてくる手を振り払って、お断り。流石です。
拒否されたのが不快なのか、眉根を寄せている。断られるとは思っていなかったようだ。確かに顔はいい。顔はいいけども、性根が問題だろう。
配下の高圧的な態度から、その中心であるこの方は、確実に横暴な存在だろう。
先ほどの暴行がいい証拠。
「いいから俺の女になれ。不自由ない生活をさせてやるから」
「嫌です」
すげない態度で、甲鎧王さんから離れるけども、しつこくロールさんに言い寄る。
うんざりするね。見ているだけでもそうなんだから、ロールさんはそれ以上に感じているだろう。さん付けなんて必要ないね。
「あの、それよりも、こちらのお話を」
二人の間に整備長が割って入る。
それに対して、蛇の目が一気に怒りのものに変わった。
「男が俺に指示をするな!」
玉座の間に響く声は、軽い感じのものとは違い、殺意に満ちあふれていた。あまりの恐怖に整備長だけじゃなく、配下の方々も後退りしている。
どうしたもんか、この方、本当に僕たちの命を取る事にまったく躊躇しなさそうだ。
しかし、男に対してこの態度。何処の邪神みたいだな。まあ、まだ向こうの方が良心的だな。あれを良心的って思うのもどうかと思うけども。
「俺の女になれ。命令だ」
「断固拒否します。それよりも、街の人たちに多大な迷惑が出ています。違反金は支払っているでしょうけど、もう少し、雪中訓練の配慮を検討していただければ」
「俺の女になれば、考えてやってもいい」
「公私混同は最低行為です」
「じゃあ、今まで以上に派手にやろうかな~」
むかつくわ~。ロールさんも相当に不愉快な表情。
と、いうより、こんなにも渋面な表情は初めて見る。甲鎧王の事は生理的に受け付けないとばかりに、一定の距離を保ちつつ対応。
「なあ、いいだろ? 俺と一緒になれば毎日が楽しいぞ~。欲しい物も揃うし、働かなくてもいい。何より俺に抱かれるという、最高の快楽付きだ。俺の舌技を味わったら、もう他じゃ満足出来ないぞ」
「気持ち悪い事ばかり言わないで、こちらの意見を耳にする気はあるんですか?」
「気持ち悪いって何だよ。俺と一緒になれるのは最高の事だろう。何でも手に入れてやるぞ」
無理だろう。世界の全てをくれてやると言う相手の事すら相手にしない人なんだから。
しつこく言い寄られる事で、ロールさんの中で限界が来たのだろう、
――パシンと音が響いた。
その後おとずれた森閑の中で、甲鎧王の頬を思いっ切りはたいたロールさんは、エメラルドグリーンの瞳を吊り上げて睨んでいた。
0
あなたにおすすめの小説
僕の秘密を知った自称勇者が聖剣を寄越せと言ってきたので渡してみた
黒木メイ
ファンタジー
世界に一人しかいないと言われている『勇者』。
その『勇者』は今、ワグナー王国にいるらしい。
曖昧なのには理由があった。
『勇者』だと思わしき少年、レンが頑なに「僕は勇者じゃない」と言っているからだ。
どんなに周りが勇者だと持て囃してもレンは認めようとしない。
※小説家になろうにも随時転載中。
レンはただ、ある目的のついでに人々を助けただけだと言う。
それでも皆はレンが勇者だと思っていた。
突如日本という国から彼らが転移してくるまでは。
はたして、レンは本当に勇者ではないのか……。
ざまぁあり・友情あり・謎ありな作品です。
※小説家になろう、カクヨム、ネオページにも掲載。
防御力を下げる魔法しか使えなかった俺は勇者パーティから追放されたけど俺の魔法に強制脱衣の追加効果が発現したので世界中で畏怖の対象になりました
かにくくり
ファンタジー
魔法使いクサナギは国王の命により勇者パーティの一員として魔獣討伐の任務を続けていた。
しかし相手の防御力を下げる魔法しか使う事ができないクサナギは仲間達からお荷物扱いをされてパーティから追放されてしまう。
しかし勇者達は今までクサナギの魔法で魔物の防御力が下がっていたおかげで楽に戦えていたという事実に全く気付いていなかった。
勇者パーティが没落していく中、クサナギは追放された地で彼の本当の力を知る新たな仲間を加えて一大勢力を築いていく。
そして防御力を下げるだけだったクサナギの魔法はいつしか次のステップに進化していた。
相手の身に着けている物を強制的に剥ぎ取るという究極の魔法を習得したクサナギの前に立ち向かえる者は誰ひとりいなかった。
※小説家になろうにも掲載しています。
死んだはずの貴族、内政スキルでひっくり返す〜辺境村から始める復讐譚〜
のらねこ吟醸
ファンタジー
帝国の粛清で家族を失い、“死んだことにされた”名門貴族の青年は、
偽りの名を与えられ、最果ての辺境村へと送り込まれた。
水も農具も未来もない、限界集落で彼が手にしたのは――
古代遺跡の力と、“俺にだけ見える内政スキル”。
村を立て直し、仲間と絆を築きながら、
やがて帝国の陰謀に迫り、家を滅ぼした仇と対峙する。
辺境から始まる、ちょっぴりほのぼの(?)な村興しと、
静かに進む策略と復讐の物語。
冤罪で辺境に幽閉された第4王子
satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。
「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。
辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。
友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。
だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった
何故なら、彼は『転生者』だから…
今度は違う切り口からのアプローチ。
追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。
こうご期待。
後日譚追加【完結】冤罪で追放された俺、真実の魔法で無実を証明したら手のひら返しの嵐!! でももう遅い、王都ごと見捨てて自由に生きます
なみゆき
ファンタジー
魔王を討ったはずの俺は、冤罪で追放された。 功績は奪われ、婚約は破棄され、裏切り者の烙印を押された。 信じてくれる者は、誰一人いない——そう思っていた。
だが、辺境で出会った古代魔導と、ただ一人俺を信じてくれた彼女が、すべてを変えた。 婚礼と処刑が重なるその日、真実をつきつけ、俺は、王都に“ざまぁ”を叩きつける。
……でも、もう復讐には興味がない。 俺が欲しかったのは、名誉でも地位でもなく、信じてくれる人だった。
これは、ざまぁの果てに静かな勝利を選んだ、元英雄の物語。
裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね
竹井ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。
元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、
王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。
代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。
父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。
カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。
その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。
ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。
「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」
そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。
もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。
A級パーティから追放された俺はギルド職員になって安定した生活を手に入れる
国光
ファンタジー
A級パーティの裏方として全てを支えてきたリオン・アルディス。しかし、リーダーで幼馴染のカイルに「お荷物」として追放されてしまう。失意の中で再会したギルド受付嬢・エリナ・ランフォードに導かれ、リオンはギルド職員として新たな道を歩み始める。
持ち前の数字感覚と管理能力で次々と問題を解決し、ギルド内で頭角を現していくリオン。一方、彼を失った元パーティは内部崩壊の道を辿っていく――。
これは、支えることに誇りを持った男が、自らの価値を証明し、安定した未来を掴み取る物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる