拝啓、あなた方が荒らした大地を修復しているのは……僕たちです!

FOX4

文字の大きさ
137 / 604
お兄様Incoming

PHASE-08

しおりを挟む
「甲鎧王様でしょうか?」
 ここは代表して、整備長。口を開く前に、生唾を飲んで一呼吸置いてからだから、緊張は相当だね。
 現状、僕たちは玉座に座る人物を前にして、周囲を鎧を纏ったヒャッハーな方々に囲まれている状況。
 本来こういうのってさ、配下は玉座の左右に横隊で立つんじゃないの?
 なんで町中のチンピラ達がいちゃもん付けてるような状態なんだろうね……。

「そうだよ。俺が甲鎧王のナーガ・ルジャ・ヌラルキアだ」
 縦長の黒目を目立たせるような輝く金目が不気味だ。
 不敵に口角を常に上げたままってのも嫌なもんだ。

「お前、前に来い」
 食指を動かして、僕たちを囲っている中から、兜が凹んだ方を呼んでいる。
 グライフ君にぶっ飛ばされて意識が飛んだ方だね。どうやら運ばれてる時に気がついたようだ。
 まだ足下がふらついている状態みたいだけど、主の命令に素早く玉座まで移動。

「呼ばれたらちゃんと来た。命令に従ったな」

「はっ、当然です」
 甲鎧王さんの前で片膝を突いて頭を下げる。

「じゃあさ、なんで、あの時は命令を聞かなかったのかな~」
 首を傾げている。どの時の事なのかと疑問符が浮かんでいるみたいだ。
 思い出せないのが腹立たしいのか、玉座から立ち上がった甲鎧王さんの体は、わなわなと震えている。

「さっきの雪山でだよ!!」
 激しい金属音。膝を突く方の顔面を思いっ切り踏みつけ、倒れたところに容赦のないストンピングを見舞っていく。

「お許しください」
「許すわけねえだろうが! 俺が連れてこいって言ったよな」
「ですから、ここに」
「アホか! 俺に連れてこいと二回も言わせやがって。死ね、てめえは今すぐ死ね!」
 ちょっと、ちょっと。僕たちの前でそんな事しないでください。

「とめてください」
 周囲に伝えるけども、おののいているだけだ。なんて頼りにならない。それだけ、怖い存在なのだろうか。

「いい加減にしてください」
 怒気を発するのはロールさん。その声に動きが止まる。
 痙攣している配下の方を蹴り上げて、室内の隅へと勢いよく転がした。

「やり過ぎです」
「配下への教育にまで口出す権利は整備局員にはないだろ」
「人として見過ごせないからです」
 強気なのもいいですけど、今回は止めた方がいい。この方は危ない。

「いいね~」
 なんと長い舌なのか。腕の皮膚が蛇みたいと思っていたけど、舌の長さも蛇みたいだ。
 長い舌での舌なめずりは不気味です。
 全体を眺めるためか、ロールさんの周囲を一周する。

「魔石鏡で見てたんだよ。最高だね~」
 レースを楽しむ為に、犬橇を使用して魔石鏡での中継を行っていたらしく、それにロールさんが映り込んでいた事で、興味を持ったみたいだ。

「いい女だ。俺の女になれ」
 なんてストレートなんだ。この蛇め! 
 気安くロールさんの手に触れるなよ! 

「絶対に嫌です」
 触れてくる手を振り払って、お断り。流石です。
 拒否されたのが不快なのか、眉根を寄せている。断られるとは思っていなかったようだ。確かに顔はいい。顔はいいけども、性根が問題だろう。
 配下の高圧的な態度から、その中心であるこの方は、確実に横暴な存在だろう。
 先ほどの暴行がいい証拠。

「いいから俺の女になれ。不自由ない生活をさせてやるから」

「嫌です」
 すげない態度で、甲鎧王さんから離れるけども、しつこくロールさんに言い寄る。
 うんざりするね。見ているだけでもそうなんだから、ロールさんはそれ以上に感じているだろう。さん付けなんて必要ないね。

「あの、それよりも、こちらのお話を」
 二人の間に整備長が割って入る。
 それに対して、蛇の目が一気に怒りのものに変わった。

「男が俺に指示をするな!」
 玉座の間に響く声は、軽い感じのものとは違い、殺意に満ちあふれていた。あまりの恐怖に整備長だけじゃなく、配下の方々も後退りしている。
 どうしたもんか、この方、本当に僕たちの命を取る事にまったく躊躇しなさそうだ。
 しかし、男に対してこの態度。何処の邪神みたいだな。まあ、まだ向こうの方が良心的だな。あれを良心的って思うのもどうかと思うけども。

「俺の女になれ。命令だ」
「断固拒否します。それよりも、街の人たちに多大な迷惑が出ています。違反金は支払っているでしょうけど、もう少し、雪中訓練の配慮を検討していただければ」
「俺の女になれば、考えてやってもいい」
「公私混同は最低行為です」
「じゃあ、今まで以上に派手にやろうかな~」
 むかつくわ~。ロールさんも相当に不愉快な表情。
 と、いうより、こんなにも渋面な表情は初めて見る。甲鎧王の事は生理的に受け付けないとばかりに、一定の距離を保ちつつ対応。

「なあ、いいだろ? 俺と一緒になれば毎日が楽しいぞ~。欲しい物も揃うし、働かなくてもいい。何より俺に抱かれるという、最高の快楽付きだ。俺の舌技を味わったら、もう他じゃ満足出来ないぞ」
「気持ち悪い事ばかり言わないで、こちらの意見を耳にする気はあるんですか?」
「気持ち悪いって何だよ。俺と一緒になれるのは最高の事だろう。何でも手に入れてやるぞ」
 無理だろう。世界の全てをくれてやると言う相手の事すら相手にしない人なんだから。
 しつこく言い寄られる事で、ロールさんの中で限界が来たのだろう、
 ――パシンと音が響いた。
 その後おとずれた森閑の中で、甲鎧王の頬を思いっ切りはたいたロールさんは、エメラルドグリーンの瞳を吊り上げて睨んでいた。
しおりを挟む
感想 27

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

無能なので辞めさせていただきます!

サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。 マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。 えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって? 残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、 無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって? はいはいわかりました。 辞めますよ。 退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。 自分無能なんで、なんにもわかりませんから。 カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

僕の秘密を知った自称勇者が聖剣を寄越せと言ってきたので渡してみた

黒木メイ
ファンタジー
世界に一人しかいないと言われている『勇者』。 その『勇者』は今、ワグナー王国にいるらしい。 曖昧なのには理由があった。 『勇者』だと思わしき少年、レンが頑なに「僕は勇者じゃない」と言っているからだ。 どんなに周りが勇者だと持て囃してもレンは認めようとしない。 ※小説家になろうにも随時転載中。 レンはただ、ある目的のついでに人々を助けただけだと言う。 それでも皆はレンが勇者だと思っていた。 突如日本という国から彼らが転移してくるまでは。 はたして、レンは本当に勇者ではないのか……。 ざまぁあり・友情あり・謎ありな作品です。 ※小説家になろう、カクヨム、ネオページにも掲載。

【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます

まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。 貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。 そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。 ☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。 ☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。

【完結】妖精を十年間放置していた為SSSランクになっていて、何でもあり状態で助かります

すみ 小桜(sumitan)
ファンタジー
 《ファンタジー小説大賞エントリー作品》五歳の時に両親を失い施設に預けられたスラゼは、十五歳の時に王国騎士団の魔導士によって、見えていた妖精の声が聞こえる様になった。  なんと十年間放置していたせいでSSSランクになった名をラスと言う妖精だった!  冒険者になったスラゼは、施設で一緒だった仲間レンカとサツナと共に冒険者協会で借りたミニリアカーを引いて旅立つ。  ラスは、リアカーやスラゼのナイフにも加護を与え、軽くしたりのこぎりとして使えるようにしてくれた。そこでスラゼは、得意なDIYでリアカーの改造、テーブルやイス、入れ物などを作って冒険を快適に変えていく。  そして何故か三人は、可愛いモモンガ風モンスターの加護まで貰うのだった。

後日譚追加【完結】冤罪で追放された俺、真実の魔法で無実を証明したら手のひら返しの嵐!! でももう遅い、王都ごと見捨てて自由に生きます

なみゆき
ファンタジー
魔王を討ったはずの俺は、冤罪で追放された。 功績は奪われ、婚約は破棄され、裏切り者の烙印を押された。 信じてくれる者は、誰一人いない——そう思っていた。 だが、辺境で出会った古代魔導と、ただ一人俺を信じてくれた彼女が、すべてを変えた。 婚礼と処刑が重なるその日、真実をつきつけ、俺は、王都に“ざまぁ”を叩きつける。 ……でも、もう復讐には興味がない。 俺が欲しかったのは、名誉でも地位でもなく、信じてくれる人だった。 これは、ざまぁの果てに静かな勝利を選んだ、元英雄の物語。

処理中です...