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お兄様Incoming
PHASE-12
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「この者達の話を聞け」
「御意に」
「じゃあ、まずはこちらに来てもらっていいですか」
玉座に座ったチンピラが自分の前に来いと、食指で指示してら。流石にその態度には不愉快な面立ち。
なんでお前が、俺の腰を下ろす場に座している! というような視線だけども、整備長は意にも返していない。これが邪神の力を笠に着る男の姿。
「ロールちゃん」
いや……。邪神じゃなく、ロールさんか。部下の力を笠に着る、駄目なおっさんの姿だ。
「分かった――――分かりました! 話を聞きましょう」
素直になったぞ。あれだけ高圧的だったのに。
玉座の背もたれに体重を預けてふんぞり返り、膝を突く甲鎧王を見下しながら、二本目の葉煙草を吸い始めつつ、ロールさんに伝えてあげてと、手だけで指示を出す姿は、ここに新たなる独裁者が誕生したかのようにも見える。
痛む顔をさすりつつ、皆から一歩下がったところで見る、なんともおかしな光景。
玉座の整備長。その左に立つロールさん。その隣に邪神が立っている。
邪神は、我が座る場ではないのか? と、異を唱えていたけども、ロールさんが今回は我慢してほしいと伝えていた。
邪神としては隣にロールさんが立っているからか、別段、それ以上に不服を申し立てる事もなく、むしろ喜んでいる。
整備長が王なら、ロールさんはさしずめ大臣――というより、宰相と言ったところか。
王に代わって、今後、雪中訓練を大仰にやらないように、違反金だけで解決出来る問題ではない。謝罪もきちんと行うよう――――。
ここへ訪れた時と同様の願い出を口にする。邪神の存在で、ようやくまともにそれを耳に入れる甲鎧王。
「手ぬるい!」
紫煙を勢いよく吐き出し、独裁王が口を開く。本来は、スムーズにいっていれば、雪中訓練の縮小だけで済んでいたが、整備局の怒りを買った以上、事ここに至っては、全面廃止。
これは決定事項と。無茶苦茶な事を言い出した。
「流石にそれはないだろう。今後は街の者には迷惑はかけん。慰謝料も払わせてもらう」
「慰謝料を払うなら、ロールちゃんにも払わんかいワレ! お前アレだな、その長い舌で舌技とか言って、ロールちゃんの汚れないほっぺをペロペロしたな」
「は!? してなぞ! 冤罪だ! したふりだろ」
「いや、俺は見た。触れてた。あれは触れてた。アウトだ。コイツ、舐めてましたよ! ほっぺ」
邪神に捏造の記憶を伝えると、長い紫の髪が、生物のように逆立って蠢いており、銀色の瞳は血走って真っ赤に染まってます。
「違います! 本当に違いますから、我が主! 義妹様、自分、触れてないですよね!?」
「う~ん。どうだったかな~」
意地悪そうに、にんまりと笑い、食指を頬に当てて考え込む仕草。強引に抱き寄せられて怖い思いしているから、ここぞとばかりに意趣返し。
ロールさんが見捨てたような状況。
これはまずいと、甲鎧王は周囲を見回して、僕を捕捉。
口だけ動かして、【な! な! やってないよな!】と必死に伝えてきた。
仕方が無いな~。ここは一つ、僕が――――、
「いてててて……あまりの痛さに、僕はあの時の事、よく覚えてないな~。でも、整備長が言うなら間違いないのかな~」
局員として、整備長の援護射撃してあげないとね。
見捨てられた。そんな悲しげな金色の目を僕に向けてきたけども、次の瞬間には、むんずと頭を掴まれて、そのまま邪神に持ち上げられるポータブルな状況。
「本当に舐めたのか?」
「舐めてません。神に誓って」
「その神なら。貴様の眼前におるぞ」
「お慈悲を」
「舐めてるとか、それ以前に――――」
甲鎧王の頭を掴む手に力が込められている。
ギシギシと、頭から聞こえてはいけない音が、僕の耳朶にまで届く。
「抱きしめているとか! 抱きしめているとか! 抱きしめているとか! 我もまだなのにぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃい」
またも怒りがあふれ出す邪神様は、甲鎧王を水を入れたバケツを回すような感じで、ぐるぐると回し始めた。
「ハハハハハハハハ――――――ッ。ハハハ。ハッ――――――――ハハハハハハハハハハハハハッ。いいね~そのまま回せばバターになりそうだ。ハハハハハハハハハハハハハッ」
驚くべきは、整備長の何処の誰よりも、悪の権化に見えてしまう高笑いだろう。
玉座から身を乗り出して、回される甲鎧王を目にしてご満悦。
暴君もどん引きするほどの楽しみ方だ。
意識のある甲鎧王の配下の方々は、自分の主以上に恐怖の対象を見たとばかりに、大いに笑う整備長に畏れを抱いているようだった。
本当にこの人は……、権力持った途端にこの態度の変わりようなんだから。まあ、今回は気分いいけどさ。
「もういいですよ」
ここで、女神様からの慈悲あるお言葉で、開放。
でも、勢いよく宮殿の壁に打ち込まれる。
いやはや、訪れた時とは全くの別物な建築物になってしまったな。
穴だらけだ。ヒャッハーな声もなりを潜めて、整備長のご機嫌な笑い声だけが木霊している。
「来い」
「はっ……」
流石にダメージが大きいのか、邪神の三回目の呼びかけではフラフラな状態。
弱々しい足取りで膝を突く。
邪神Come hereからわずかな時間で、宮殿同様に見窄らしい姿になった。
栄枯盛衰、盛者必衰、諸行無常。
「御意に」
「じゃあ、まずはこちらに来てもらっていいですか」
玉座に座ったチンピラが自分の前に来いと、食指で指示してら。流石にその態度には不愉快な面立ち。
なんでお前が、俺の腰を下ろす場に座している! というような視線だけども、整備長は意にも返していない。これが邪神の力を笠に着る男の姿。
「ロールちゃん」
いや……。邪神じゃなく、ロールさんか。部下の力を笠に着る、駄目なおっさんの姿だ。
「分かった――――分かりました! 話を聞きましょう」
素直になったぞ。あれだけ高圧的だったのに。
玉座の背もたれに体重を預けてふんぞり返り、膝を突く甲鎧王を見下しながら、二本目の葉煙草を吸い始めつつ、ロールさんに伝えてあげてと、手だけで指示を出す姿は、ここに新たなる独裁者が誕生したかのようにも見える。
痛む顔をさすりつつ、皆から一歩下がったところで見る、なんともおかしな光景。
玉座の整備長。その左に立つロールさん。その隣に邪神が立っている。
邪神は、我が座る場ではないのか? と、異を唱えていたけども、ロールさんが今回は我慢してほしいと伝えていた。
邪神としては隣にロールさんが立っているからか、別段、それ以上に不服を申し立てる事もなく、むしろ喜んでいる。
整備長が王なら、ロールさんはさしずめ大臣――というより、宰相と言ったところか。
王に代わって、今後、雪中訓練を大仰にやらないように、違反金だけで解決出来る問題ではない。謝罪もきちんと行うよう――――。
ここへ訪れた時と同様の願い出を口にする。邪神の存在で、ようやくまともにそれを耳に入れる甲鎧王。
「手ぬるい!」
紫煙を勢いよく吐き出し、独裁王が口を開く。本来は、スムーズにいっていれば、雪中訓練の縮小だけで済んでいたが、整備局の怒りを買った以上、事ここに至っては、全面廃止。
これは決定事項と。無茶苦茶な事を言い出した。
「流石にそれはないだろう。今後は街の者には迷惑はかけん。慰謝料も払わせてもらう」
「慰謝料を払うなら、ロールちゃんにも払わんかいワレ! お前アレだな、その長い舌で舌技とか言って、ロールちゃんの汚れないほっぺをペロペロしたな」
「は!? してなぞ! 冤罪だ! したふりだろ」
「いや、俺は見た。触れてた。あれは触れてた。アウトだ。コイツ、舐めてましたよ! ほっぺ」
邪神に捏造の記憶を伝えると、長い紫の髪が、生物のように逆立って蠢いており、銀色の瞳は血走って真っ赤に染まってます。
「違います! 本当に違いますから、我が主! 義妹様、自分、触れてないですよね!?」
「う~ん。どうだったかな~」
意地悪そうに、にんまりと笑い、食指を頬に当てて考え込む仕草。強引に抱き寄せられて怖い思いしているから、ここぞとばかりに意趣返し。
ロールさんが見捨てたような状況。
これはまずいと、甲鎧王は周囲を見回して、僕を捕捉。
口だけ動かして、【な! な! やってないよな!】と必死に伝えてきた。
仕方が無いな~。ここは一つ、僕が――――、
「いてててて……あまりの痛さに、僕はあの時の事、よく覚えてないな~。でも、整備長が言うなら間違いないのかな~」
局員として、整備長の援護射撃してあげないとね。
見捨てられた。そんな悲しげな金色の目を僕に向けてきたけども、次の瞬間には、むんずと頭を掴まれて、そのまま邪神に持ち上げられるポータブルな状況。
「本当に舐めたのか?」
「舐めてません。神に誓って」
「その神なら。貴様の眼前におるぞ」
「お慈悲を」
「舐めてるとか、それ以前に――――」
甲鎧王の頭を掴む手に力が込められている。
ギシギシと、頭から聞こえてはいけない音が、僕の耳朶にまで届く。
「抱きしめているとか! 抱きしめているとか! 抱きしめているとか! 我もまだなのにぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃい」
またも怒りがあふれ出す邪神様は、甲鎧王を水を入れたバケツを回すような感じで、ぐるぐると回し始めた。
「ハハハハハハハハ――――――ッ。ハハハ。ハッ――――――――ハハハハハハハハハハハハハッ。いいね~そのまま回せばバターになりそうだ。ハハハハハハハハハハハハハッ」
驚くべきは、整備長の何処の誰よりも、悪の権化に見えてしまう高笑いだろう。
玉座から身を乗り出して、回される甲鎧王を目にしてご満悦。
暴君もどん引きするほどの楽しみ方だ。
意識のある甲鎧王の配下の方々は、自分の主以上に恐怖の対象を見たとばかりに、大いに笑う整備長に畏れを抱いているようだった。
本当にこの人は……、権力持った途端にこの態度の変わりようなんだから。まあ、今回は気分いいけどさ。
「もういいですよ」
ここで、女神様からの慈悲あるお言葉で、開放。
でも、勢いよく宮殿の壁に打ち込まれる。
いやはや、訪れた時とは全くの別物な建築物になってしまったな。
穴だらけだ。ヒャッハーな声もなりを潜めて、整備長のご機嫌な笑い声だけが木霊している。
「来い」
「はっ……」
流石にダメージが大きいのか、邪神の三回目の呼びかけではフラフラな状態。
弱々しい足取りで膝を突く。
邪神Come hereからわずかな時間で、宮殿同様に見窄らしい姿になった。
栄枯盛衰、盛者必衰、諸行無常。
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