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ITADAKI-頂-
PHASE-06
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「最後は拳の一撃か」
剣術の試合なのに、素手で勝利ってのもいいものなのかと思うけども、様々な武器が使用出来るみたいだから、素手でも問題ないのかな。
「剣術は剣を失っても対応出来る術があるから剣術と言うのだと――――俺は思っている」
何をしたり顔で、それっぽい事を僕に言ってきますかね。
含蓄っぽいし、それに妙に納得してしまったもんだから、余計に腹立つんですけど。
僕が得心がいったというような表情で返したものだから、更に得意げになっていく整備長。
――――そんなおっさんを目にしていたら、大きなどよめきがあがった。
急いで闘技場に目を移せば、サージャスさんと同じグループであるフィットさんの第一試合がすでに終わってしまっていた。
電光石火の決着劇が、感嘆の声の原因だったようだ。
見たかったな~。
なんて思ったのも束の間、順当に行けば三回戦で当たる事になる、サージャスさんと、フィットさんの二人が闘技場から下り、視線が交わると、歩みが止まる――――。
バチバチな感じが、離れた位置でも理解出来る。
見ているだけで、こちらも総毛立ってくる。
このまま場外戦でも始まるのかといった感じもあり、他の試合もやっているけども、バチバチな二人に、会場全体から視線が注がれている。
――。
注目を受ける中、当人達は微笑んでから一礼。
バチバチが消えた事で、それを目にしていた側の、張り詰めた状況がほぐれた。
観客席から一斉に嘆息。素晴らしいくらいに揃っていた。
嘆息に続いて、一斉に体が弛緩していくのが、ここからだとよく見える。
かく言う僕も、同じ動作だ――――。
「次はエルンさんだね」
エルンさんか――。気弱な勇者様はどこまで行けるのか。
ラゴットでは偵察で活躍し――――、女性陣が苦労したみたいだけど……。とにかく活躍してくれた勇者様だけど、未だに僕の中では、正座して僕たちを待っていた存在としか認識しておりません。
「大丈夫なのかよ」
葉煙草に火をつけて、ヘラヘラとした態度のおっさんは、僕と同じ認識かな。
あの時は相当に息巻いてましたからね。僕以上にエルンさんの事を、残念な存在としてしか見ていないかも知れない。
ここで、おっさんと僕の鼻っ柱を折るくらいの活躍を見せていただきたいものですな。
――――紺色の胴着で身を包んだ、エルンさんの群青の瞳には力がこもっている。
手にした得物は木剣と盾。ンダガランさん達と戦った時の装備と同じスタイルか。
盾は下敷き代わりじゃない。相手の攻撃を防ぐ物だというところを拝見させて下さいね。
震えた手でサインしていた事を思い出してしまった。
相対するのは、ブロンゴ・ドナヒュー氏。
名前と赤髪からして、大陸からの参戦者だね。
エルンさんが勇者だと理解しているなら、油断せずに戦うといったところか。
エルンさんと同じような装備だけども、盾は体全体を隠せるスクトゥムのデザイン。木剣のデザインはグラディウス。
王都で、キドさんとちびっ子の叙勲式の時に、市井で警護に当たっていた兵隊さんの装備に似ている。
双方の準備が万端となる。
――――そして、始まる。
予想通りというべきか、大きな盾を前面に展開して、エルンさんの動きを窺う考えだ。
変則的な動きをされたくないからか、ブロンゴ氏は短い木剣で盾を叩いての挑発行為。
真っ直ぐ来い、初撃を耐えてから、木剣での一撃を見舞ってやる! という思惑かな。
盾を前面に出された状況の中で、エルンさんはその場で軽い跳躍をリズミカルに取っている。
――――と、
「あ……」
目にも止まらぬ驀地。
からの――、盾に目がけて木剣での刺突。
切っ先が盾に触れると、そこから全体に飛び散る衝撃が生まれる。
主審が衝撃で尻餅をつき、スクトゥムを模した盾が木片となって飛び散り、衝撃の中心地にいたブロンゴさんは後方に吹き飛び、観衆が腰を降ろしてる下方の壁まで吹き飛ばされた。
「お……おお……」
整備長の咥えていた葉煙草が、ポロリと口から落ちた。
畳みを焦がしては大変と、急いでそれを拾うロールさん。
周囲の闘技場で戦闘中のお歴々も、衝撃の凄さに手足の動きが止まり、何が起こったのか!? と、視線が衝撃の源に向く。
尻餅をついたままの主審に、エルンさんが笑顔で目を向けて、判定を待っている状況。
矢庭に立ち上がって、臀部を手で払うと――、
「勝者、エルン・フェクシス!」
勝者の名が告げられると、しじまの状況が徐々に熱を帯びていくのが目に見えて分かる。
そして――――、その熱が大爆発。
本日一番の大歓声。
きっとデジマ全体で聞き取れるくらいの歓声だ。普段は静かに観戦する方々なんだろうけども、強い姿に当てられたのか、心が高揚しているようだ。
特に女性陣は、艶やかな黒髪を風に靡かせているエルンさんの甘い表情に、ウットリしている。
剣術の試合なのに、素手で勝利ってのもいいものなのかと思うけども、様々な武器が使用出来るみたいだから、素手でも問題ないのかな。
「剣術は剣を失っても対応出来る術があるから剣術と言うのだと――――俺は思っている」
何をしたり顔で、それっぽい事を僕に言ってきますかね。
含蓄っぽいし、それに妙に納得してしまったもんだから、余計に腹立つんですけど。
僕が得心がいったというような表情で返したものだから、更に得意げになっていく整備長。
――――そんなおっさんを目にしていたら、大きなどよめきがあがった。
急いで闘技場に目を移せば、サージャスさんと同じグループであるフィットさんの第一試合がすでに終わってしまっていた。
電光石火の決着劇が、感嘆の声の原因だったようだ。
見たかったな~。
なんて思ったのも束の間、順当に行けば三回戦で当たる事になる、サージャスさんと、フィットさんの二人が闘技場から下り、視線が交わると、歩みが止まる――――。
バチバチな感じが、離れた位置でも理解出来る。
見ているだけで、こちらも総毛立ってくる。
このまま場外戦でも始まるのかといった感じもあり、他の試合もやっているけども、バチバチな二人に、会場全体から視線が注がれている。
――。
注目を受ける中、当人達は微笑んでから一礼。
バチバチが消えた事で、それを目にしていた側の、張り詰めた状況がほぐれた。
観客席から一斉に嘆息。素晴らしいくらいに揃っていた。
嘆息に続いて、一斉に体が弛緩していくのが、ここからだとよく見える。
かく言う僕も、同じ動作だ――――。
「次はエルンさんだね」
エルンさんか――。気弱な勇者様はどこまで行けるのか。
ラゴットでは偵察で活躍し――――、女性陣が苦労したみたいだけど……。とにかく活躍してくれた勇者様だけど、未だに僕の中では、正座して僕たちを待っていた存在としか認識しておりません。
「大丈夫なのかよ」
葉煙草に火をつけて、ヘラヘラとした態度のおっさんは、僕と同じ認識かな。
あの時は相当に息巻いてましたからね。僕以上にエルンさんの事を、残念な存在としてしか見ていないかも知れない。
ここで、おっさんと僕の鼻っ柱を折るくらいの活躍を見せていただきたいものですな。
――――紺色の胴着で身を包んだ、エルンさんの群青の瞳には力がこもっている。
手にした得物は木剣と盾。ンダガランさん達と戦った時の装備と同じスタイルか。
盾は下敷き代わりじゃない。相手の攻撃を防ぐ物だというところを拝見させて下さいね。
震えた手でサインしていた事を思い出してしまった。
相対するのは、ブロンゴ・ドナヒュー氏。
名前と赤髪からして、大陸からの参戦者だね。
エルンさんが勇者だと理解しているなら、油断せずに戦うといったところか。
エルンさんと同じような装備だけども、盾は体全体を隠せるスクトゥムのデザイン。木剣のデザインはグラディウス。
王都で、キドさんとちびっ子の叙勲式の時に、市井で警護に当たっていた兵隊さんの装備に似ている。
双方の準備が万端となる。
――――そして、始まる。
予想通りというべきか、大きな盾を前面に展開して、エルンさんの動きを窺う考えだ。
変則的な動きをされたくないからか、ブロンゴ氏は短い木剣で盾を叩いての挑発行為。
真っ直ぐ来い、初撃を耐えてから、木剣での一撃を見舞ってやる! という思惑かな。
盾を前面に出された状況の中で、エルンさんはその場で軽い跳躍をリズミカルに取っている。
――――と、
「あ……」
目にも止まらぬ驀地。
からの――、盾に目がけて木剣での刺突。
切っ先が盾に触れると、そこから全体に飛び散る衝撃が生まれる。
主審が衝撃で尻餅をつき、スクトゥムを模した盾が木片となって飛び散り、衝撃の中心地にいたブロンゴさんは後方に吹き飛び、観衆が腰を降ろしてる下方の壁まで吹き飛ばされた。
「お……おお……」
整備長の咥えていた葉煙草が、ポロリと口から落ちた。
畳みを焦がしては大変と、急いでそれを拾うロールさん。
周囲の闘技場で戦闘中のお歴々も、衝撃の凄さに手足の動きが止まり、何が起こったのか!? と、視線が衝撃の源に向く。
尻餅をついたままの主審に、エルンさんが笑顔で目を向けて、判定を待っている状況。
矢庭に立ち上がって、臀部を手で払うと――、
「勝者、エルン・フェクシス!」
勝者の名が告げられると、しじまの状況が徐々に熱を帯びていくのが目に見えて分かる。
そして――――、その熱が大爆発。
本日一番の大歓声。
きっとデジマ全体で聞き取れるくらいの歓声だ。普段は静かに観戦する方々なんだろうけども、強い姿に当てられたのか、心が高揚しているようだ。
特に女性陣は、艶やかな黒髪を風に靡かせているエルンさんの甘い表情に、ウットリしている。
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