拝啓、あなた方が荒らした大地を修復しているのは……僕たちです!

FOX4

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ITADAKI-頂-

PHASE-24

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 ――――この三日間。わずか三日。
 その為だけに十年の間、自分の心技体を鍛え、磨き上げてきた参加者は少なくないだろう。
 そして、また十年後と、固く誓った方もいるだろう。
 今回は手の届く事が叶わなかった方々。
 そして――――、手の届く手前に位置する三人が、本日、頂に登ろうとしている。

「いよいよだね」
「ですね。頑張れ! まずは運よ開きたまえ~」
「どうかな」
「「うるさいですよ」」
「息が合ってやがる……」
 おう、今の発言はよかったよ整備長。
 息がぴったりな僕とロールさん。なんて素敵な響きなのだろう、息が合う。
 
 ――――。

「決まったみたいだよ」
 あ~どうなの? 結果はよ!


「――――よっし!」

「運、開いたね」

「ですね!」
 ここでの僕の行動は、喜びに乗じて、ロールさんの細くて白い美しい両手をがっちりと掴むという手抜かりのないもの。
 堪能――――。
 こんなに細いのに、とても柔らかくて暖かい。女性の神秘だ。
 ロールさんは僕が喜ぶ姿に笑みを見せてしっかりと掴み返してくれる。
 天にも昇る喜びを得る事が出来たよ。
 
 願いは届いた。クジの結果、サージャスさんは次戦だ。

「ドレークさん、頑張ってくださいね~」
 もちろん、純粋な応援だ。
 サージャスさんの試合のために弱らせておいてとか、出来れば双方が弱ってとか、そんな事は…………、ちょっとは思ってますけども。
 応援の気持ちは本気ですからね。
 
 ――――そして、僕はロールさんの手を放す事なく闘技場に目を向ける。
 自分から放そうともしないし、このままでいいよね?


   *    *

「よろしくな」
 対峙するムツに、豪快且つ野太い声での挨拶。
 それに対し、口は一文字。頷くだけで返すムツ。

「なんだ? 暗い奴だな」
 笑いを一つ取ってみようと、剃り上がった自慢の頭をペチンと叩いてみたが、反応が返ってくる事はなかった。
 ムツは一点を見つめるだけ。
 精神を集中させドレークの目だけを凝視していた。

「ムツ・ノリムネ。ホーキン・ドレーク。両人、よいかな?」
 決勝という事もあり、闘技場に赴いた運営責任のセンジの問いに〝オウッ〟と、豪快な声。
 それと静かなる首肯での所作。
 双方からの返しを受け取ると、
「決勝、一回戦。始めさせていただく」
 低音でありながら、会場全体にいる者たちの耳朶に届くセンジの声に会場が沸く。
 ――――センジが闘技場から下りると、交代で上がってくる人物。

「決勝を取り仕切らせてもらうモンジ・カシュウだ。よき試合を」
 初老の人物。
 前大会より決勝主審を務める人物。
 今大会を最後に引退という事もあり、集大成とばかりに、相まみえる二人に負けないくらいの気迫を満ちさせている。
 黒髪と白髪の混じった灰色の総髪のモンジを中心に置き、相対する二名。
 双方、視線を外す事なく開始を待つ。
 
 そんな二人を待たせても悪いとばかりに、
「始めぃ!」
 沸いていた会場を一瞬にして黙らせるくらいの、心底まで届くモンジの開始の合図に、体躯からは想像の出来ない俊足でムツの背後に回り込むドレークが木斧を振り下ろす。

「お?」
 床にめり込む。ムツに当たる事はなかった。
 木斧を自分の体に沿わせるような紙一重での回避。
 その芸当に、ドレークは驚く。
 回避行動から瞬時に攻撃へと転向し、巨体に半歩足を進めると同時に、木刀で胴を狙う横一閃。
 カーンと小気味よい音が場内に響いた。

「甘えよ」
 手にする木斧で横一文字を容易く防ぐ。
 
 ――。

「ドレークさんやる!」

「大きい体で器用な立ち回りだよね」
 素早い動きに、豪快な攻撃、小手先が利いた防御。ピートとロールは感嘆の声を上げる。
 そんな中でニーズィーは未だに手を放さずにいる二人。主にピートの思惑で握られたものだが――――。
 継続されている事に納得いかないようだ。
 おいしい思いは許さないといった呪詛をこめた視線を送っている。
 
 ――。

「強い」

「喋ったか」
 会心の一閃を他愛なく防いだドレークに対し、ポツリと呟いて感嘆する。
 本来ならば、その一撃で倒すつもりだったのだろうが、それは叶わず。
 初撃を防がれた事で、音なしの剣の通り名を廃らせてしまったが、それ以上に、眼界の強者の存在に高揚するムツであった。
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