拝啓、あなた方が荒らした大地を修復しているのは……僕たちです!

FOX4

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公務員が発掘冒険とか……

PHASE-08

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「モルドー領主、ペアニト・ドゥール・ハワード男爵様の叔父である御方に、避難誘導の対処が耳に入ってね」

「はぁ?」
 いや知らんよ。それが僕と何の関係なんだ。
 それ以上に、男爵様ってそんな名前だったっけ? ていうのが率直な感想だ。

「君に対してご立腹のようでね」

「なぜです!?」
 解せぬ。避難の問題なら僕じゃなくて、あの場での責任者はこの局だと僕の前に座っている局長だし、後は警務局であそこにいたトップの人でしょ。
 
 なんで新人の僕が……。
 そこで、推測出来るのは…………、
 
 半眼で対面する方を見る。

「いやいやいやいやいや! 私はウィザースプーン君に、なすりつけなど画策していない。責任者として、私では? と、確認もした。だが、マリド・カルブレース・クラウザー子爵様が名指しで君の名を出したのだ。そんな目で見ないでくれ」
 叔父である御方って、子爵様か……。
 なんで、爵位持ちにばかり目をつけられるんだよ……。
 
 整備長と違って、責任の取れる責任者であると僕は局長を信じている。空気のような存在だけど、信じている。
 だから、なすりつけはしていないと信じてあげよう。
 もし、なすりつけてるなら、そのロマンスグレーな七三わけを零わけにしてあげるところだよ――――。
 バリカンを使用してな!!
 
 ――――。
 
 なんで子爵様の悋気に触れたかというと、男爵様が叔父の子爵様にお目通りした時に、叙勲式の話を口にしたそうだ。
 男爵様は世間話ていどのつもりだったみたいだけど、それを耳にした子爵様は大層ご立腹になられたそうな。
 ――――で、その時、僕という存在が、大公様や護衛についていた勇者であるサージャスさんと関係を持っていた事から、襲撃のさい、僕が率先して大公様を誘導していれば、他の方々も大公様に追従して、誘導も円滑なものになっていた。
 と、述べたそうだ。
 まあ、一理ある…………。
 加えて、サージャスさんに貸し与えた装備が、一公務員が手にするには不可能と言ってもいい代物を所有している事が我慢ならないようだ……。
 多分、避難どうこうじゃなく、こっちの方で不快になってるような気がする……。
 
 ここでロールさんの、肩入れしすぎるのはよくないという発言が、骨身に染みる……。
 
 もちろん装備をサージャスさん託した経緯は局長の耳にも入っている。
 砂漠オオトカゲのゲロだってのも知っている……。

「あれは一応クエスト名義で貸し出してるし、入手法も理解してる」

「でも直接、目にも耳にもしていない子爵様は、僕が所有している事が不愉快だと」 
 局長、首肯で返してくる。
 国宝にもなりえる装備を平民風情が所有。爵位持ちはそれが許せないようだ。
 流石は体裁やステータスばかりを気にしている方々だ。
 ある意味、貴族然としているのかもしれないけどさ。

「これから官庁に行ってくれるかな」
 ふう~。
 これからか……。
 ロールさんのお弁当。ミートボールはお預けか……。
 
 ――。

「失礼しました」
 退室すると、そこにはロールさん。

「どうしたの?」
 と、心配してくれる。

「これから、官庁に行ってきます」

「なんで!?」
 訳を話すと、ロールさんの眉が上がっていく。
 怒っておられる。
 なぜに僕だけが咎められるのかという事に、納得がいかないようだ。

「ちょっと行ってくる!」
 と、目の前の局長室へと勢いよく足を進めるものだから、必死になって手を掴んで歩みを制止。
 整備局では僕一人が官庁に赴けばいいんだから、わざわざここで咎められる人数を増やすのは得策じゃない。
 局長だって今回の事は得心がいかないって事だったし、そんな局長に意を唱えても、物事の進捗が良い方に転向するわけでもないし。

「飲み込みが早いロールさんなら分かりますよね?」
 ゆったりと、おおらかな口調で伝える。
 小さく頷いて返してくれた。
 あの場には自分もいたのに、僕だけがという事に罪悪感を抱いたから、小さな首肯なんだろうな――。
 その優しさだけで救われるし、ロールさんがこんな事で苛まれる必要もないですよ。

「じゃあ、行ってきます!」

「うん……」
 出来るだけ心配させないように笑顔で局を出る。
 
 ――――しっかし、面倒な事になったな……。
 男爵様もいちいちそんな事を口にしなくていいんだよ。
 そんなんだから、モルドーとか猫の額ほどの領地しか持てないんだ。
 貴族なんだから空気読んで立ち回れよ。それが出来たら、もうワンランク、ステップアップ出来るよ。
 
 大事おおごとになってしまって、下手こいたと思ってるだろうな。
 男爵様の勝手な設定だけども、僕の後ろにいるとされる大公様の逆鱗に触れてしまったのでは? と、今頃、心穏やかでない状況で、頭を抱えてそうだな。
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