拝啓、あなた方が荒らした大地を修復しているのは……僕たちです!

FOX4

文字の大きさ
327 / 604
ウィザースプーン、ヴィン海域に行ったてよ

PHASE-29

しおりを挟む
   *    * 
 
 帰りたい……。この異世界から、心底、帰りたい……。
 
 このまま夜になると、この辺も怖そうだから、必然的に足が冒険者という、ある意味アンデッドって呼んでもいいんじゃないかと思う方々がいる方向へと向く。
 
 ――――とにかく、帰らないと。
 適当に理由をつけて帰らないと。
 夜のとばりが下がる中、トボトボと歩き、明かりが灯された場に辿り着く。
 明かりを合図に意を決する僕。

 よし! 帰る言い訳をナイゼルさんに言って――――?
 なんだ? 何かがおかしい。
 先ほどまで馬鹿みたいに騒いでたのに、なんだこの森閑に支配された場は? 
 それに、なぜか皆さんが僕を見ている。
 僕が笑いながら駆けだした姿を見て、おかしくなったと心配してくれてるのかな?
 大丈夫、貴方方を越える乱痴気はこの世に存在しませんから。

「マジかよ」
 ポツリと、僕に投げかけてくるような発言。誰が言ったのかな? と、思っていたら、僕の登場でざわざわから、徐々に騒がしくなる。

「ナイゼルさん?」
 僕は帰る事を伝えようと思ったけども、僕の向けられる、市場の売れ残った魚の目の方々が怖いので、訳を聞く事にシフトチェンジ。
 
 ナイゼルさんは僕の登場を待っていたとばかりに、僕の横に立つと、
「ええ――――向こうサイドからの伝達があったとおり。今回のコンクエストにおけるMVPは、王都整備局員、ピートマック・ウィザースプーン氏である。おめでとうございます! ピートさん」

「ふぁ!?」
 何を言っているんだナイゼルさん。
 やはり貴男は馬鹿なのか?

「聞きましたよ!」
 何を! 近い、魚の目が近くて怖い!!

「あの氷竜王を倒したそうですね!!!!」

「ふぇ!? 倒した?」

「はっきりと氷竜王が言ったそうですよ。いや~ドレッドノートだと思ってたのに。まさかのヴィン海域実戦一日目でMVPなんて、未だかつていないですよ」
 倒したって何だ? 僕は――……、もしかして……あれか? 足を滑らせてのやつか?

「すげ~な! 武器も使わず氷竜王に体当たりして押し倒す」

「その後、体を弄って、泣いて謝る氷竜王を無理矢理に抱いて、モノにしたとか」
 まてぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇい!! 出来るかそんな事! そこのモブ二人。適当な事を口にするんじゃないよ!

「それ嘘ですよ!」
 否定しないと。

「そうなんですか?」
 そうですよ。全く、何を信じるところがある。

「俺は見てたぜ」
 何をだよ。
 
 ――――あ、この人、たしかダグラスさんとかいう、シズクさんにカチコチにされて粉々になった人だ。無精髭に、緑色の服に鎧皮の鎧。間違いないな。

「確かにウィザースプーンさんが、氷竜王と、ウンディーネのイスキの二名に挟まれながらも、凛とした不動の姿で立っていたのを見た。その後は記憶ないけどな」
 貴男が見たのは、僕とシズクさんの会話のやり取りだよ。後ろに立ってたイスキさんは、僕を浜まで案内して、たまたま僕の後ろに立ってたんだよ! 
 お願いだから話をややこしくしないでいただきたい!!

「すげ~ウィザースプーンさん」
 ロッケンジーさん。僕を尊敬の眼差しで見ないでください。
 僕はひ弱な整備局員です。

「噂では、氷竜王は男嫌い。まぐわってみてどうでした? 噂通りなら――――生娘でしたよね?」
 うるせー! 下卑た笑みを見せるな! 男性が苦手な初心な方なんだよ。
 まぐわうとかいう発言やめろ。女握りフィグサインもやめろ。そんな事をいちいち口にするな。僕はまだそんな経験したことないよ!
 シズクさんサイド、なんでこんな事をするの? なぜに僕をMVPに仕立て上げるの? 理由を聞かないといけないよね。
 でも、帰りたいという思いの方が強いし……。

「これは、明日からでも、ピートさんに参戦してもらうってのもありかもな」

「ないよ。ないですから! ね! ナイゼルさん。アンタ、いい加減にしろよ!」
 僕は死にたくないんだ。帰りたいんだ。

「とりあえず、ピートさんのMVPを祝して胴上げだ!」

「「「「ypaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaa!!!!」」」」
 ――――なんて?
 魚の目をした方々が僕の周囲に集まると、一人の方に軽々と担がれて、皆さんが僕を支えてから――、
「「「「MVP! MVP! MVP! MVP!!!!」」」」
 と、連呼しながら、空に向かって放り投げるという蛮行。
 
 普通の胴上げならさ、ちょっとした高さで宙に浮く程度だけども、ここのガチ勢は何事も全力を出さないと気が済まないという、整備長には是非に見習ってほしい気概をお持ちなのだが……。
 
 ――……なんで僕は、空を飛んでるのか? と、錯覚するくらいに、宙を舞わなきゃいけないのか…………。
 滞空時間が、長いんじゃあ…………。
 股間のふわぁってなる感覚は、得もいえぬものがあるけども――――。
 しかし、これが何度も何度も続くとね……。
 もし、誰も受け止めてくれなかったら、僕の体が弾けるんじゃないかという恐怖が、落下する度に脳裏によぎってしまう地獄……。

「僕はただ、帰りたいだけなんだ…………」
しおりを挟む
感想 27

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

無能なので辞めさせていただきます!

サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。 マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。 えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって? 残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、 無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって? はいはいわかりました。 辞めますよ。 退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。 自分無能なんで、なんにもわかりませんから。 カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

僕の秘密を知った自称勇者が聖剣を寄越せと言ってきたので渡してみた

黒木メイ
ファンタジー
世界に一人しかいないと言われている『勇者』。 その『勇者』は今、ワグナー王国にいるらしい。 曖昧なのには理由があった。 『勇者』だと思わしき少年、レンが頑なに「僕は勇者じゃない」と言っているからだ。 どんなに周りが勇者だと持て囃してもレンは認めようとしない。 ※小説家になろうにも随時転載中。 レンはただ、ある目的のついでに人々を助けただけだと言う。 それでも皆はレンが勇者だと思っていた。 突如日本という国から彼らが転移してくるまでは。 はたして、レンは本当に勇者ではないのか……。 ざまぁあり・友情あり・謎ありな作品です。 ※小説家になろう、カクヨム、ネオページにも掲載。

【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます

まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。 貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。 そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。 ☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。 ☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。

【完結】妖精を十年間放置していた為SSSランクになっていて、何でもあり状態で助かります

すみ 小桜(sumitan)
ファンタジー
 《ファンタジー小説大賞エントリー作品》五歳の時に両親を失い施設に預けられたスラゼは、十五歳の時に王国騎士団の魔導士によって、見えていた妖精の声が聞こえる様になった。  なんと十年間放置していたせいでSSSランクになった名をラスと言う妖精だった!  冒険者になったスラゼは、施設で一緒だった仲間レンカとサツナと共に冒険者協会で借りたミニリアカーを引いて旅立つ。  ラスは、リアカーやスラゼのナイフにも加護を与え、軽くしたりのこぎりとして使えるようにしてくれた。そこでスラゼは、得意なDIYでリアカーの改造、テーブルやイス、入れ物などを作って冒険を快適に変えていく。  そして何故か三人は、可愛いモモンガ風モンスターの加護まで貰うのだった。

後日譚追加【完結】冤罪で追放された俺、真実の魔法で無実を証明したら手のひら返しの嵐!! でももう遅い、王都ごと見捨てて自由に生きます

なみゆき
ファンタジー
魔王を討ったはずの俺は、冤罪で追放された。 功績は奪われ、婚約は破棄され、裏切り者の烙印を押された。 信じてくれる者は、誰一人いない——そう思っていた。 だが、辺境で出会った古代魔導と、ただ一人俺を信じてくれた彼女が、すべてを変えた。 婚礼と処刑が重なるその日、真実をつきつけ、俺は、王都に“ざまぁ”を叩きつける。 ……でも、もう復讐には興味がない。 俺が欲しかったのは、名誉でも地位でもなく、信じてくれる人だった。 これは、ざまぁの果てに静かな勝利を選んだ、元英雄の物語。

処理中です...