拝啓、あなた方が荒らした大地を修復しているのは……僕たちです!

FOX4

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ウィザースプーン、ヴィン海域に行ったてよ

PHASE-28

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「こんな事でしか、自分たちの欲を満たせねえんだよ」
 と言うのは、バロニアさん。そら、虹彩も無くなるよ……。

「お~い」

「お! マリアンも蘇生したようだな」
 あの人――――、というより、あの子がマリアン? 明らかに僕より年下の少女のようだけど。
 快活だけど、やはり虹彩が無い……。
 サージャスさんに似たショートカットの赤髪。
 髪の色は違うけど、サージャスさんに何となく似てるからか、切なくなってくる。こんな所にいてほしくないと強く思うよ。

「いや~真っ先にやられちゃった。幹部のガルイルを見つけたから、仕掛けてみたら、三叉矛トライデントでぶっすりと、頭に首と胸を突かれちゃって。そこから記憶なくなったよ♪」
 なぜにそんなに自分の死を楽しげに語れるの? 
 耳にする、ザンデさんもバロニアさんも、なんで笑顔で聞いてるの。しかも、〝見てた、見てた。いや~ズップリだったな〟って、笑いながら返さないでください。

「マリアン。こちら王都整備局のウィザースプーンさん」
 ザンデさんの紹介で、マリアンさんがこっちに笑顔を向ける。
 屈託のない笑顔。これで虹彩がしっかりしてたら、文句なしの美少女なんだけどな……。
 やはり目だよ。目があれだから、人形のような表情なんだよな。とくにマリアンさんは幼いからそう見えてしまう。

「マリアン・ルルーチェと申します。お願いですから、ここを使用制限地帯にしないでくださいね」
 怖い。なんか怖いよ。可愛い分、怖さもアップといった感じだ。
 やはり気にする使用制限。しないから、そんなんじゃないから。ニッコリ笑顔な口元のまま、虹彩のない青い瞳で僕を凝視しないで。
 呪われそうだよ……。

「あの、マリアンさん、お歳は?」

「十三になります」
 じゅ……、十三だと……。子供じゃないか。
 やはり見た目同様の若さだった……。こんな子が、こんなところで戦ってるというのか……。

「辛くないですか?」

「全然! エキサイティングな日々です。ちなみに十三歳の誕生日の時は、ドレッドノートの尾っぽでぺっちゃんこにされちゃいました。痛恨の誕生日プレゼントでした♪」
 なんて、屈託のない笑顔で、病んでいる事を平然と口にするのだろう……。
 エキサイティングって、凄惨な世界をエキサイティングって……。この豊饒なる流血の世界を楽しんでいるのか、十三歳が……。

「でも、何度も命を落としてるでしょ!」
 死を軽くしたくない僕は、ついつい大音声で語りかけてしまった。
 マリアンさんだけじゃなく、周囲の方もしっかりと僕の言葉を耳にし、僕に顔を向けると、
「「「「ワハハハハハハハハ――――ッ」」」」
 楽しげに皆さん笑って返してきた。何がおかしいんだ。僕は至極まっとうな事を言ったはずだぞ。



「「「「自分たち――――――リセットのきく人生なんで」」」」
 シンクロしてからのその発言。とても楽しく人生を謳歌している。常に笑いが絶えないリセットがきく人生のようで……。
 ハハハ…………。

   *    *

「ハハハハハハハハハハハハハハハハハ」
 ピートは笑う。
 そこにいる誰にも負けないくらいの哄笑こうしょうを見せる。
 しかし、周囲との決定的な違いは――――、彼等のように、心から笑っているのではなく、乾いた笑いだった事である。
 
 口角を上げ、大きく口を開けて笑ってはいるが、目だけは全くもって笑っていなかった……。
 柏手かしわでを打ち続け、抱腹の姿にもなり、自らの太ももを軽快に叩きながら小気味のよい音をたてつつ、体全体で笑いを表現するが、ピートの目は笑ってはいない。
 
 矢庭に走り出すピート。
 薄暮になりつつある空の下を、気でも違ったかのように笑いながら……。
 息切れしようとも走り続け、到着したのは、プールの天地開闢ワールドエンドにより海へと注がれたマグマが冷まされ固まった、火成岩。
 足場となったそこを走る。
 未だ完全に冷まされておらず、所々でプスプスと煙も上がっているが、ピートはお構いなしに火成岩の先端まで走る。
 波が当たると、浅瀬であるから、激しく打ち寄せるわけではないが、足下にかかる波を受けつつ、ゆっくりと長い吸気を行う――――。
 
 夕陽も、もう間もなく沈むといったところで、その夕陽に向かい、諸手を自分の口に近づけると、
「おがあぢゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁん゛」
 現実離れした世界から、自分の住まう世界に向かっての渾身の大音声。
 だが、大陸の南西に位置するヴィン海域で、西に沈む夕陽に向かって叫んだところで、真逆の方向が自分の住む場所と考えれば、効果はなさそうである……。
 きっと彼は、今の鬱積した思いを単純に、大音声と共に、吐き出したかったのであろう。

「あ、間違えた」
 間違えたそうである……。体を反転させるのだろうか?

「ロォォォォルさぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!!」
 間違えたのは、伝えたいと思う対象の存在だったようだ…………。
 先ほどの母親以上に、思いのこもったものであった。

「帰りたい……」
 泣きっ面に支配されそうな表情。
 だが、ピートは忘れている。
 シズクの【では後日お会いいたしましょう】という台詞を。
 そして、それに対して、【後日に】と、発してしまっている自分を。
 彼はまだ、帰ることあたわないのである。
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