拝啓、あなた方が荒らした大地を修復しているのは……僕たちです!

FOX4

文字の大きさ
333 / 604
ウィザースプーン、ヴィン海域に行ったてよ

PHASE-35

しおりを挟む
「大魔法を!」
 次の一手を、と、ナイゼルさんが指示。

「させない」
 淡々とした語調にて、ナイゼルさんの指示で大魔法を唱えようとした冒険者さん達に向かって、シズクさんが手を振り向ける――――。
 
 それだけで、氷の世界に閉じ込められるんだもんな……。血に染めたくないなら、そうやって氷漬けにすればよかったんじゃないかな? 先ほどのダグラスさん達。
 
 氷の壁を見れば、マリアンさんにザンデさん、バロニアさんと、パーティー仲良く氷漬けだ……。
 この子は一体、こんな事を何度、経験していくのだろうか……。
 見たくなかったよ。十三歳の氷漬けとか……。

「大魔法とかされちゃったら、館まで被害が出る。館はいいとしても、浜辺を傷つけるわけにはいかない」
 射抜いてくるような、眼力。
 右目は、全てを凍りつかせるような冷酷さを宿した紺碧の瞳。
 左目は、負けてやるものか! とばかりの情熱的な深紅の瞳。
 オッドアイが感情を表してるね。

「くぅ……」
 おお! ナイゼルさんが気圧されてる。見た感じ、本気も出していないシズクさんに、豪傑たちが手も足も出せないでいる。
 ――――で、口を開く度に、シズクさんは僕を見る。なんでだろう?
 いやしかし、これで本気出したらどうなるんだ。
 以前も感じたけど、間接的にカグラさんの実力も理解できる。そら、不死王さんにキドさん、ちびっ子もビビるわ。
 妹であるシズクさんに対しても、同様の畏れの感情を抱いているだろうね。

「流石です! シズク様」
 主の姿に士気が上がる、館前方に待機する方々。

「うるさい」
 え!? なんで配下の皆さんまでも氷漬け……。
 半漁人サハギンさん達がそれだと、まるで魚の冷凍保存……。
 ――に、見えてしまう不謹慎な僕。

「貴方たちが不甲斐ないから、私が戦場に立つわけでしょ」
 お怒りなのは分かるけど、好感は下がるな。この辺は、配下の方々を大事にするカグラさんとは大きく差が開くね。

「相も変わらず冷血だな」
「うるさい」
「そればかりだ。ピートさんとよい関係になったと噂で聞いたが、冷血さは変わらんな」
「う、うるさいわね!」
 あ、なんかあっぷあっぷした。押し倒された事を思い出したのかな。
 あれは事故だけどね。
 変に噂を広げられて困っていたらすみません。
 顔まで赤くして、やはり初心だな。そこは可愛いんだけどね~。行動がね。冷酷すぎるんだよね。

 ――。
 
「ちょこまかと!」
 ナイゼルさんは流石だね。臆しながらも、指示を出しつつ、氷漬けにならないように回避しながら、切っ先をシズクさんに向けて突っ込んでいき、それを掩護するために、息の合った動きで、周囲も呼応。
 死線を潜ってきた――――というか、死んで絆を深めていった。というのが正しいのかな。
 とにかく、いい時宜で手にしたエクスペンダブルズを投げてから、自分たち自慢のタリスマンも併用して、威力を重複させてからの魔法発動。

「だから、ここを汚さないでほしいの!」
 強い語気になる。


「なん……だと」
 唖然とするナイゼルさん。
 シズクさんのフィンガースナップ一つで、投げ込まれたエクスペンダブルズだけを正確に氷漬けにしてしまった。
 ――――氷の内部で暴走爆発する魔法。
 ただの氷じゃないようだ。爆発が起きても、包んでいた氷は砕けない。
 通常魔法、それも上位のものになれば、エクスペンダブルズにタリスマン併用で、大魔法レベルにもなるというのに、その爆発を氷の中に封じ込めて、氷自体は無傷なんだもの。ナイゼルさんが唖然とするのも頷ける。
 全てにおいて、レベルがかけ離れすぎている。

「もう終わりなのかしら? まだまだ脅威になり得ない存在ね」
 またもフィンガースナップ。
 魔法を防いだ氷がそれを合図に細かく砕けて、キラキラとした粒子となって、ダイヤモンドダストのような幻想的な風景を見せてくれる。

「イリース!」
 戦楽師の歌で潜在能力の底上げを狙うナイゼルさん。
 イリースさんが首肯で返し、
「ボエェェェェェェェェェェ――――」

「うるさい」
 歌い始めたところで、氷の中の存在になってしまった。

「攻撃向きなんじゃないの? 今までの誰よりもダメージがあったわ。耳が痛い程度だけど」
 やっぱりそうなんだ。この歌は攻撃向きなんだな。

「分かっちゃいるが、毎度、痛感するな。とてつもない強さだ。どうするよ……ナイゼル」
 次の指示を仰いでいる。
 
 ――でも、返答はない。先ほどイスキさんを仕留めたやり方が、容易く対処されてしまった事で、ナイゼルさんの中で何かがポキリと折れたのかな。
 勇者であっても、圧倒的実力差の前では、矜持が挫かれるのかもね。
しおりを挟む
感想 27

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

無能なので辞めさせていただきます!

サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。 マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。 えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって? 残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、 無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって? はいはいわかりました。 辞めますよ。 退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。 自分無能なんで、なんにもわかりませんから。 カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

僕の秘密を知った自称勇者が聖剣を寄越せと言ってきたので渡してみた

黒木メイ
ファンタジー
世界に一人しかいないと言われている『勇者』。 その『勇者』は今、ワグナー王国にいるらしい。 曖昧なのには理由があった。 『勇者』だと思わしき少年、レンが頑なに「僕は勇者じゃない」と言っているからだ。 どんなに周りが勇者だと持て囃してもレンは認めようとしない。 ※小説家になろうにも随時転載中。 レンはただ、ある目的のついでに人々を助けただけだと言う。 それでも皆はレンが勇者だと思っていた。 突如日本という国から彼らが転移してくるまでは。 はたして、レンは本当に勇者ではないのか……。 ざまぁあり・友情あり・謎ありな作品です。 ※小説家になろう、カクヨム、ネオページにも掲載。

【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます

まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。 貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。 そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。 ☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。 ☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。

【完結】妖精を十年間放置していた為SSSランクになっていて、何でもあり状態で助かります

すみ 小桜(sumitan)
ファンタジー
 《ファンタジー小説大賞エントリー作品》五歳の時に両親を失い施設に預けられたスラゼは、十五歳の時に王国騎士団の魔導士によって、見えていた妖精の声が聞こえる様になった。  なんと十年間放置していたせいでSSSランクになった名をラスと言う妖精だった!  冒険者になったスラゼは、施設で一緒だった仲間レンカとサツナと共に冒険者協会で借りたミニリアカーを引いて旅立つ。  ラスは、リアカーやスラゼのナイフにも加護を与え、軽くしたりのこぎりとして使えるようにしてくれた。そこでスラゼは、得意なDIYでリアカーの改造、テーブルやイス、入れ物などを作って冒険を快適に変えていく。  そして何故か三人は、可愛いモモンガ風モンスターの加護まで貰うのだった。

後日譚追加【完結】冤罪で追放された俺、真実の魔法で無実を証明したら手のひら返しの嵐!! でももう遅い、王都ごと見捨てて自由に生きます

なみゆき
ファンタジー
魔王を討ったはずの俺は、冤罪で追放された。 功績は奪われ、婚約は破棄され、裏切り者の烙印を押された。 信じてくれる者は、誰一人いない——そう思っていた。 だが、辺境で出会った古代魔導と、ただ一人俺を信じてくれた彼女が、すべてを変えた。 婚礼と処刑が重なるその日、真実をつきつけ、俺は、王都に“ざまぁ”を叩きつける。 ……でも、もう復讐には興味がない。 俺が欲しかったのは、名誉でも地位でもなく、信じてくれる人だった。 これは、ざまぁの果てに静かな勝利を選んだ、元英雄の物語。

処理中です...